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クエストを請ける
錬金術士の腕前/練習/中和
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「それで、あたしの所に来たわけかい」
「ええ。こればかりはご主人様でないと教えられないと思いますので」
エリィは黒猫から事情を聞き、面倒くさそうに頭を掻いた。
「酒は飲んでなかったようだな。良かった」
「ですね~」
「今の時期は忙しいから当然ね。と、言いたいのだけど昨日は隠れて飲んでたみたいなのよね・・・・・・」
エリィは聞かなかったフリして話を進めた。
「そ、そうさねぇ。猫スケあんたその11通り試して何か気付いたことはないかい?」
「試した中には正解はなかったくらいだな」
「えっと~、試した中に正解がなかったくらい、だと言ってます」
「こりゃ、黒猫の言うとおりだね。その依頼をやるには、まず猫スケの腕前が足りてないさね」
エリィは腕を組みどう説明するか考えたそぶりをした後、近くの棚に置いてあった連金棒と小型の連金壷を取り出した。
「猫スケこれなんだか分かるかい?」
「錬金術で使う棒と壷だろ?」
「錬金術で~、使う棒と壷だって言ってます」
「使い方は分かってるかい?」
「融合液と材料入れて棒でかき混ぜるんだろ?」
「融合液と~、材料入れて棒を使ってかき混ぜるって言ってます」
「そこがダメさね。まぁ、弟子になったばかりの段階でそこまで考えてやるやつはいないし、普通ではあるけどねぇ。でもそれじゃ、今の依頼は無理だし概念練成も無理ってもんさ」
「あの~、概念練成が必要なんですか?」
「それは知らんさね。でもね?必要かどうかの見極めが出来ないと話にならないって事さね」
「ますます分からん・・・・・・」
「分からないって顔だね。先にさっきの質問の答え合わせするさね。この錬金術で使う棒と壷は、両方とも魔道具なのさね。魔道具はなんなのかの説明は面倒だからしないけどね。ただの棒、ただの入れ物、そんな扱いしてるようじゃダメなわけさね」
なるほどな・・・・・・。
俺はどこか慢心してた訳だ、俺がしっかりしてれば大丈夫だろうってな。
おれ自身も未熟で学ぶ事がたくさんある事を分かってなかった。あの棒も壷も魔道具である事を知らずに使ってた程に・・・・・・。
「魔道具はね魔道具として使ってこそ真価を発揮できる。覚えておきな」
「頼む教えてくれ。どう使えばいい?」
「え~と、頼む教えて欲しい。どう使えばいい?と、言ってますね」
「仕方ないさね。面倒だけどね、弟子にお願いされたわけだしこれは仕方ないさね。仕方ないから場所を変えるよ!」
「ん?」
エリィは他の職員にも聞こえるようにわざとらしく言った。
周りからはため息が漏れ、黒猫が申し訳なさそうにしていた。
「どうしたんでしょうか~?」
ミィナは気がつかない様子だが、仕事をサボる口実に使われたようだ。
そうして組合の休憩室でアレコレ教えてもらった後に、トラジとミィナは例の設計図をエリィに渡した。
「なんだいこりゃ?」
「えっとですね~。スライムを炙り出して見つけるのに必要なんだそうで、用意してもらいたいそうです」
「どう使うんだい?」
「中にですね~、粉を入れて箱についた車輪が回ると中の粉が一定量外にでる仕組みでして、取っ手を持って引っ張るだけで粉で線が引けるんだそうです」
「なるほどね。外の車輪が回ると箱の中の歯車みたいなのも回って掻き出すのかい」
転生前の学校とかにはよくあったライン引きだな。
あとはスライム避けの粉と合わせて、スライムを見つけるわけだ。
「えっと~、用意できませんか?」
「いや、用意してやるさね。ただし条件があるけどね」
「条件ですか~?」
「用意する代わりに、今回の件が片付いたら組合の所有物にさせて貰うさね。その代わりに組合の金で注文して用意できるさね」
「つまり無料・・・・・・。おっしゃぁぁ!それでOKだ!!」
「それでお願いします~。エリィさんありがとうございます!」
「いや、礼はいいさね。こっちも面倒な仕事が控えてるんだけどね。それにも使えそうだし、あいた時間酒を飲めるってもんさ」
「結局酒か」
「で、ですね~・・・・・・」
「お酒の部分言わなければ、もう少し感謝してもらえるはずなのに。いつもいつもどうしてこう・・・・・・」
「それがあたしだからさね!(どや~)」
「はぁー・・・・・・」
黒猫のため息は深くそして重たかった・・・・・・。
トラジとミィナはバーコード親父の店により、前と同じ材料を買って帰宅した。
「まずは、練習してみるか。ミィナ魔力の方頼むぞ!」
「了解です~」
練成より先にエリィから教わった練習をする事にした。場所はミィナの部屋。
空っぽの連金鍋に水をはり使い魔に魔力を込めさせて、連金棒で掻き回して鍋の中を棒を通して感じ取る練習だ。
「エリィは確か・・・・・・」
トラジは水を棒で掻き回しながら、エリィの説明を思い出す。
「いいかい猫スケ。まずはこの棒を自分の手だと思いながら使いな。手ってのは色んな感覚を感じ取ることの出来る体でも敏感な部分さね。温度、粘り気、振動、柔らかさ、アルコール度数。手を液体に突っ込んだだけでも分かるものは多いさね。連金棒は魔道具だからもっと多くの情報が分かるけどね、まず自分の手くらいには感じ取れるようにしな。そこがスタートラインで、出来なきゃ材料を無駄にするだけさね」
「えっと~、アルコール度数が分かるんですか?」
「当たり前さね。・・・・・・ん?あんたら分からないのかい?」
「わかるかい!!」
「まぁ、ご主人様ですからね・・・・・・」
という感じに余計な部分まで思い出した。
「この棒を自分の手・・・・・・。体の一部・・・・・・」
なんか、ひんやりしてきた気がするな。
これが連金棒の使い方か・・・・・・。
だが、まだまだ直接手を突っ込んだ時ほどの感覚はないな。
「ミィナごめんな。悪いがもっと魔力を強く込めてみてくれ!」
「が、がんばります~!」
連金棒は魔道具だ。
つまり魔力を消費する。消費できる魔力が多ければそれだけ連金棒の感度が良くなり、多くの情報を得られるようになる。
「だ、ダメだ・・・・・・。腕が痛くなってきた」
「わ、私も~、疲れてきました・・・・・・」
どれだけ掻き回したか分からないが、もうすでに外は真っ暗だった。
夕飯を食べていなかったのもあるだろうが、体力が尽きミィナは座り込んでいた。
「ごめんなミィナ。俺が不甲斐無いばかりに無理をさせてしまったな」
トラジが魔力を多く込めるよう指示したのは、より早く連金棒を手のように感じ取ろうとしたためだ。
もし、トラジの錬金術士としての腕前がもっとあればそこまで魔力を込める必要はなかっただろう。
「私のほうこそ~。その・・・・・・ごめんなさい。まだまだご主人様の思うとおりにはできませんでした」
「ミィナはよくやってるよ。今回は俺が無理を言ったんだ。何かしてほしい事はあるか?猫の手で出来ることなら何でもいいぞ」
ミィナは近づいてきたトラジを抱きかかえ、その胸で抱きしめた。
「私は~、これでいいです」
「なぁ、いつもと同じ気がするがいいのか?」
同じとは言ったがいつもよりちょっと苦しいけどな。
「いいんです~。私はご主人様大好きなので」
大好きなのは正直嬉しいが、病んだりしないよな?
好きな子をデレさせつつ他の娘にいい顔したら、一気にヤンデレBAD ENDで血を見る展開を初めて見た時はトラウマになりそうだったからな・・・・・・。
どこかで、デレ度を教えてくれる友人とか出て来て欲しいな。
出てきません。
「じぃ~~~」
「ん?どうしたミィナ」
「はむっ~」
「は??」
ミィナはトラジの耳をなんとなく、口にくわえた。
「はむはむ~」
「耳をしゃぶるんじゃなーーーい!」
「ご、ごめんなさい~。なんとなくしたくなってしまって・・・・・・。その、つい」
「今後耳しゃぶは禁止な!」
「え~・・・・・・」
「なんで残念そうなんだよ・・・・・・。うまくも無いだろうに」
「でもですね~?はむはむしてる間なんとなく幸せな気分になれたので・・・・・・。やっぱりダメですか?」
「ダ~メ!ほら、そろそろいいだろ?さっさと飯食って寝て明日に備えるぞ」
ミィナとトラジは疲れからか軽くご飯を食べたらそのままベットに向かい就寝した。
次の日、組合での仕事を終え市場で買い物をしてトラジとミィナは家に帰った。
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
「うりりがきたーの!」
「うるせー!ノックしすぎだーーーー!」
「ウ、ウリリちゃん~。ちょっとまって」
「きーたーのーーー!」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
ノックの音がうるさい為か、こっちの声が聞こえてないようでこっちが出向くまでずっとゴンゴンしていた。
「さて、ウリリ。今日もぷちスライムの世話頼むぞ!」
「おー!(ノリ)」
「ウリリちゃん~、今日もぷちスライムの世話お願いしますね。はい、約束の飴玉。あと、この黒いのを暇なときにぷちスライムに与えて観察してみて下さい」
黒いのは前に作った失敗作達である。
すぐ飽きて暇になるだろうから、与えて様子を見るようにお願いすることにしたのだ。
単にゴミ処理を兼ねてるだけとも言うが。
「出来れば今日中に、連金棒と連金鍋を使えるようになりたい所だな」
「ですね~。時間掛かり過ぎると冒険者の人が倒しちゃうかもですしね」
「だな」
ミィナとトラジは練習の甲斐あって、お昼頃には手のように感じ取れるようになった。
「お、おし。つ、次は毒の中和・・・・・・、だな」
「は、はい~・・・・・・」
次の練習法は毒の中和である。
2種類の毒を混ぜて完全な無毒にする作業である。
連金壷に水を張り片方の毒をテキトーに混ぜ、それを連金棒で掻き混ぜながら状態を把握しつつ、もう片方の毒を少しずつ入れて中和していく。
少しでも多く入れれば毒になり失敗になる難しい作業で、検査には組合にある水質検査用の棒を用いる。毒に反応し色が変化する優れものだ。
水を連金壷に張るのは、毒の量を目視で測らせないのと、目や鼻に入った場合を考え毒の効果を弱くする為と、均一に混ぜる練習を兼ねるからだ。
「あー、これヤバイな。難易度高そうだ・・・・・・」
「そうなんですか~?」
「水の中の毒が全体的に均一になってくれない・・・・・・。水に対して毒の量が少ないのもあるが、早く掻き混ぜると毒が外側によっていっちまうし、ゆっくり過ぎると底に沈んでく・・・・・・」
「でもすごいですね~。そこまでその棒から分かる様になったんですね。さすがご主人様です」
「まぁな。今思うと11通り試してた俺はなんだったんだって気になるけどな」
「確か~、一流の錬金術士は連金棒と鍋から成功するかどうか、何がダメで何が足りないのかまで錬成中にわかるらしいですね」
「まぁ、わかると言っても抽象的過ぎて分からん場合が多いらしい。で、その分からない部分を補う技が概念錬成らしいな」
「でも~、ただの概念錬成もかなり難しいらしいですし、通常の錬成と足りない部分だけを概念錬成で補う合わせ技はさらに難しいらしいですからね。私達じゃ無理ですよね・・・・・・」
「だな・・・・・・」
本当か嘘か。その合わせ技もエリィ達は余裕で出来るらしい・・・・・・。
正直嘘じゃないのか?と思う。
「まじかよ・・・・・・」
「どうしたんですか~?」
「それがな2つの毒を使うわけだが、この2つ重さでも違うのか水の中でうまく混ざり合ってくれないんだ。これじゃ中和もうまく出来ない・・・・・・」
「それも~、錬金術士の腕というものなんですね・・・・・・」
「だな。ウリリの依頼の難易度は想像以上に高かったらしいな」
「えっと~、いっその事諦めちゃいますか?」
「まさか!これできるようになってみんな驚かしてやろうぜ!」
「ご主人様は~、やっぱり素敵です」
「おうよ!」
難しいかったものの、数時間かけてコツを掴み出した。
少し分かってきたぞ。
混ぜ方にも工夫が要るんだな。
緩急や棒を入れる深さだけじゃない。
棒の上の部分を中央に固定して下の部分大きく外側に掻き回したり、逆に棒の下の部分を中央に固定して上の部分を大きく回して掻き混ぜたり、棒を常に垂直に持ちぐるぐる掻き混ぜたり、途中で逆回転かけたり、回さずに左右に動かしたり、いろんな掻き混ぜ方を駆使して均一を目指すもののようだな。
なかなか奥が深い。
ただし、中身がこぼれるような混ぜ方は危険なのでしないのが鉄則だ。
「もう少しだ。あと3滴ほど入れてみてくれ」
「は~い」
「そっちじゃないぞ。もう一つの方な」
「ご、ごめんなさい~」
そして、水質検査用の棒を入れると何の変化もしなかった。
ようするに中和できてるということだ。
「おっしゃーーー!中和完成!!」
「これで~、錬成に挑戦できますね!」
こうして、ついに錬成のスタートラインに立つ事ができたのだった。
「ええ。こればかりはご主人様でないと教えられないと思いますので」
エリィは黒猫から事情を聞き、面倒くさそうに頭を掻いた。
「酒は飲んでなかったようだな。良かった」
「ですね~」
「今の時期は忙しいから当然ね。と、言いたいのだけど昨日は隠れて飲んでたみたいなのよね・・・・・・」
エリィは聞かなかったフリして話を進めた。
「そ、そうさねぇ。猫スケあんたその11通り試して何か気付いたことはないかい?」
「試した中には正解はなかったくらいだな」
「えっと~、試した中に正解がなかったくらい、だと言ってます」
「こりゃ、黒猫の言うとおりだね。その依頼をやるには、まず猫スケの腕前が足りてないさね」
エリィは腕を組みどう説明するか考えたそぶりをした後、近くの棚に置いてあった連金棒と小型の連金壷を取り出した。
「猫スケこれなんだか分かるかい?」
「錬金術で使う棒と壷だろ?」
「錬金術で~、使う棒と壷だって言ってます」
「使い方は分かってるかい?」
「融合液と材料入れて棒でかき混ぜるんだろ?」
「融合液と~、材料入れて棒を使ってかき混ぜるって言ってます」
「そこがダメさね。まぁ、弟子になったばかりの段階でそこまで考えてやるやつはいないし、普通ではあるけどねぇ。でもそれじゃ、今の依頼は無理だし概念練成も無理ってもんさ」
「あの~、概念練成が必要なんですか?」
「それは知らんさね。でもね?必要かどうかの見極めが出来ないと話にならないって事さね」
「ますます分からん・・・・・・」
「分からないって顔だね。先にさっきの質問の答え合わせするさね。この錬金術で使う棒と壷は、両方とも魔道具なのさね。魔道具はなんなのかの説明は面倒だからしないけどね。ただの棒、ただの入れ物、そんな扱いしてるようじゃダメなわけさね」
なるほどな・・・・・・。
俺はどこか慢心してた訳だ、俺がしっかりしてれば大丈夫だろうってな。
おれ自身も未熟で学ぶ事がたくさんある事を分かってなかった。あの棒も壷も魔道具である事を知らずに使ってた程に・・・・・・。
「魔道具はね魔道具として使ってこそ真価を発揮できる。覚えておきな」
「頼む教えてくれ。どう使えばいい?」
「え~と、頼む教えて欲しい。どう使えばいい?と、言ってますね」
「仕方ないさね。面倒だけどね、弟子にお願いされたわけだしこれは仕方ないさね。仕方ないから場所を変えるよ!」
「ん?」
エリィは他の職員にも聞こえるようにわざとらしく言った。
周りからはため息が漏れ、黒猫が申し訳なさそうにしていた。
「どうしたんでしょうか~?」
ミィナは気がつかない様子だが、仕事をサボる口実に使われたようだ。
そうして組合の休憩室でアレコレ教えてもらった後に、トラジとミィナは例の設計図をエリィに渡した。
「なんだいこりゃ?」
「えっとですね~。スライムを炙り出して見つけるのに必要なんだそうで、用意してもらいたいそうです」
「どう使うんだい?」
「中にですね~、粉を入れて箱についた車輪が回ると中の粉が一定量外にでる仕組みでして、取っ手を持って引っ張るだけで粉で線が引けるんだそうです」
「なるほどね。外の車輪が回ると箱の中の歯車みたいなのも回って掻き出すのかい」
転生前の学校とかにはよくあったライン引きだな。
あとはスライム避けの粉と合わせて、スライムを見つけるわけだ。
「えっと~、用意できませんか?」
「いや、用意してやるさね。ただし条件があるけどね」
「条件ですか~?」
「用意する代わりに、今回の件が片付いたら組合の所有物にさせて貰うさね。その代わりに組合の金で注文して用意できるさね」
「つまり無料・・・・・・。おっしゃぁぁ!それでOKだ!!」
「それでお願いします~。エリィさんありがとうございます!」
「いや、礼はいいさね。こっちも面倒な仕事が控えてるんだけどね。それにも使えそうだし、あいた時間酒を飲めるってもんさ」
「結局酒か」
「で、ですね~・・・・・・」
「お酒の部分言わなければ、もう少し感謝してもらえるはずなのに。いつもいつもどうしてこう・・・・・・」
「それがあたしだからさね!(どや~)」
「はぁー・・・・・・」
黒猫のため息は深くそして重たかった・・・・・・。
トラジとミィナはバーコード親父の店により、前と同じ材料を買って帰宅した。
「まずは、練習してみるか。ミィナ魔力の方頼むぞ!」
「了解です~」
練成より先にエリィから教わった練習をする事にした。場所はミィナの部屋。
空っぽの連金鍋に水をはり使い魔に魔力を込めさせて、連金棒で掻き回して鍋の中を棒を通して感じ取る練習だ。
「エリィは確か・・・・・・」
トラジは水を棒で掻き回しながら、エリィの説明を思い出す。
「いいかい猫スケ。まずはこの棒を自分の手だと思いながら使いな。手ってのは色んな感覚を感じ取ることの出来る体でも敏感な部分さね。温度、粘り気、振動、柔らかさ、アルコール度数。手を液体に突っ込んだだけでも分かるものは多いさね。連金棒は魔道具だからもっと多くの情報が分かるけどね、まず自分の手くらいには感じ取れるようにしな。そこがスタートラインで、出来なきゃ材料を無駄にするだけさね」
「えっと~、アルコール度数が分かるんですか?」
「当たり前さね。・・・・・・ん?あんたら分からないのかい?」
「わかるかい!!」
「まぁ、ご主人様ですからね・・・・・・」
という感じに余計な部分まで思い出した。
「この棒を自分の手・・・・・・。体の一部・・・・・・」
なんか、ひんやりしてきた気がするな。
これが連金棒の使い方か・・・・・・。
だが、まだまだ直接手を突っ込んだ時ほどの感覚はないな。
「ミィナごめんな。悪いがもっと魔力を強く込めてみてくれ!」
「が、がんばります~!」
連金棒は魔道具だ。
つまり魔力を消費する。消費できる魔力が多ければそれだけ連金棒の感度が良くなり、多くの情報を得られるようになる。
「だ、ダメだ・・・・・・。腕が痛くなってきた」
「わ、私も~、疲れてきました・・・・・・」
どれだけ掻き回したか分からないが、もうすでに外は真っ暗だった。
夕飯を食べていなかったのもあるだろうが、体力が尽きミィナは座り込んでいた。
「ごめんなミィナ。俺が不甲斐無いばかりに無理をさせてしまったな」
トラジが魔力を多く込めるよう指示したのは、より早く連金棒を手のように感じ取ろうとしたためだ。
もし、トラジの錬金術士としての腕前がもっとあればそこまで魔力を込める必要はなかっただろう。
「私のほうこそ~。その・・・・・・ごめんなさい。まだまだご主人様の思うとおりにはできませんでした」
「ミィナはよくやってるよ。今回は俺が無理を言ったんだ。何かしてほしい事はあるか?猫の手で出来ることなら何でもいいぞ」
ミィナは近づいてきたトラジを抱きかかえ、その胸で抱きしめた。
「私は~、これでいいです」
「なぁ、いつもと同じ気がするがいいのか?」
同じとは言ったがいつもよりちょっと苦しいけどな。
「いいんです~。私はご主人様大好きなので」
大好きなのは正直嬉しいが、病んだりしないよな?
好きな子をデレさせつつ他の娘にいい顔したら、一気にヤンデレBAD ENDで血を見る展開を初めて見た時はトラウマになりそうだったからな・・・・・・。
どこかで、デレ度を教えてくれる友人とか出て来て欲しいな。
出てきません。
「じぃ~~~」
「ん?どうしたミィナ」
「はむっ~」
「は??」
ミィナはトラジの耳をなんとなく、口にくわえた。
「はむはむ~」
「耳をしゃぶるんじゃなーーーい!」
「ご、ごめんなさい~。なんとなくしたくなってしまって・・・・・・。その、つい」
「今後耳しゃぶは禁止な!」
「え~・・・・・・」
「なんで残念そうなんだよ・・・・・・。うまくも無いだろうに」
「でもですね~?はむはむしてる間なんとなく幸せな気分になれたので・・・・・・。やっぱりダメですか?」
「ダ~メ!ほら、そろそろいいだろ?さっさと飯食って寝て明日に備えるぞ」
ミィナとトラジは疲れからか軽くご飯を食べたらそのままベットに向かい就寝した。
次の日、組合での仕事を終え市場で買い物をしてトラジとミィナは家に帰った。
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
「うりりがきたーの!」
「うるせー!ノックしすぎだーーーー!」
「ウ、ウリリちゃん~。ちょっとまって」
「きーたーのーーー!」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
ノックの音がうるさい為か、こっちの声が聞こえてないようでこっちが出向くまでずっとゴンゴンしていた。
「さて、ウリリ。今日もぷちスライムの世話頼むぞ!」
「おー!(ノリ)」
「ウリリちゃん~、今日もぷちスライムの世話お願いしますね。はい、約束の飴玉。あと、この黒いのを暇なときにぷちスライムに与えて観察してみて下さい」
黒いのは前に作った失敗作達である。
すぐ飽きて暇になるだろうから、与えて様子を見るようにお願いすることにしたのだ。
単にゴミ処理を兼ねてるだけとも言うが。
「出来れば今日中に、連金棒と連金鍋を使えるようになりたい所だな」
「ですね~。時間掛かり過ぎると冒険者の人が倒しちゃうかもですしね」
「だな」
ミィナとトラジは練習の甲斐あって、お昼頃には手のように感じ取れるようになった。
「お、おし。つ、次は毒の中和・・・・・・、だな」
「は、はい~・・・・・・」
次の練習法は毒の中和である。
2種類の毒を混ぜて完全な無毒にする作業である。
連金壷に水を張り片方の毒をテキトーに混ぜ、それを連金棒で掻き混ぜながら状態を把握しつつ、もう片方の毒を少しずつ入れて中和していく。
少しでも多く入れれば毒になり失敗になる難しい作業で、検査には組合にある水質検査用の棒を用いる。毒に反応し色が変化する優れものだ。
水を連金壷に張るのは、毒の量を目視で測らせないのと、目や鼻に入った場合を考え毒の効果を弱くする為と、均一に混ぜる練習を兼ねるからだ。
「あー、これヤバイな。難易度高そうだ・・・・・・」
「そうなんですか~?」
「水の中の毒が全体的に均一になってくれない・・・・・・。水に対して毒の量が少ないのもあるが、早く掻き混ぜると毒が外側によっていっちまうし、ゆっくり過ぎると底に沈んでく・・・・・・」
「でもすごいですね~。そこまでその棒から分かる様になったんですね。さすがご主人様です」
「まぁな。今思うと11通り試してた俺はなんだったんだって気になるけどな」
「確か~、一流の錬金術士は連金棒と鍋から成功するかどうか、何がダメで何が足りないのかまで錬成中にわかるらしいですね」
「まぁ、わかると言っても抽象的過ぎて分からん場合が多いらしい。で、その分からない部分を補う技が概念錬成らしいな」
「でも~、ただの概念錬成もかなり難しいらしいですし、通常の錬成と足りない部分だけを概念錬成で補う合わせ技はさらに難しいらしいですからね。私達じゃ無理ですよね・・・・・・」
「だな・・・・・・」
本当か嘘か。その合わせ技もエリィ達は余裕で出来るらしい・・・・・・。
正直嘘じゃないのか?と思う。
「まじかよ・・・・・・」
「どうしたんですか~?」
「それがな2つの毒を使うわけだが、この2つ重さでも違うのか水の中でうまく混ざり合ってくれないんだ。これじゃ中和もうまく出来ない・・・・・・」
「それも~、錬金術士の腕というものなんですね・・・・・・」
「だな。ウリリの依頼の難易度は想像以上に高かったらしいな」
「えっと~、いっその事諦めちゃいますか?」
「まさか!これできるようになってみんな驚かしてやろうぜ!」
「ご主人様は~、やっぱり素敵です」
「おうよ!」
難しいかったものの、数時間かけてコツを掴み出した。
少し分かってきたぞ。
混ぜ方にも工夫が要るんだな。
緩急や棒を入れる深さだけじゃない。
棒の上の部分を中央に固定して下の部分大きく外側に掻き回したり、逆に棒の下の部分を中央に固定して上の部分を大きく回して掻き混ぜたり、棒を常に垂直に持ちぐるぐる掻き混ぜたり、途中で逆回転かけたり、回さずに左右に動かしたり、いろんな掻き混ぜ方を駆使して均一を目指すもののようだな。
なかなか奥が深い。
ただし、中身がこぼれるような混ぜ方は危険なのでしないのが鉄則だ。
「もう少しだ。あと3滴ほど入れてみてくれ」
「は~い」
「そっちじゃないぞ。もう一つの方な」
「ご、ごめんなさい~」
そして、水質検査用の棒を入れると何の変化もしなかった。
ようするに中和できてるということだ。
「おっしゃーーー!中和完成!!」
「これで~、錬成に挑戦できますね!」
こうして、ついに錬成のスタートラインに立つ事ができたのだった。
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ファンタジー
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彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
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