きのまま錬金!1から錬金術士めざします!

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再起

竜帝の孫娘

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 ここはアルディオーテ国。
 豊かな森と自然に溢れ、高い知性を有するドラゴン達が作ったとされる大陸最古の国。
 竜帝と呼ばれるドラゴンの王の下、人間とドラゴンが力を合わせて生活している。

「うんしょ、うんしょ・・・・・・」

 その王城の地下水路で、パシャパシャッと音を立てつつ狭い水路を這うように進む少女がいた。
 この少女はキラキラとした豪華な服に身を包んでいるにも関わらず、そんな事知ったことではないと言わんばかりに水路の水を掻き分けながら進んでいた。

「うー。こんなの前はなかったの・・・・・・」

 換気と定期的な掃除の為に作られた分厚い蓋のようなブロック、その隙間から漏れる僅かな光を頼りに進んでいた少女の目が、以前はなかった邪魔モノを捉える。

「でも行くの」

 少女は無理かもしれないと思いつつもその邪魔モノに向かってパシャパシャと音を立てて進む。
 そして、その邪魔モノに触れ考え無しに力技でどかそうとする。

「うぬーーー!」

 邪魔モノはびくともしなかった。
 だが、この少女が非力なわけでは決してない。
 見た目こそ人間の6歳前後だが、その力は一般的な人間の成人男性をゆうに超える。
 つまりはこの少女は人間ではないのだ。

「こんな硬い棒・・・・・・。前は生えてなかったの・・・・・・」

 2本の棒が邪魔して少女を悩ませる。
 その棒はただの鉄ではない。より強度を高めたミスリル製であった。
 なぜそんな物が?と思う人もいるだろうが、これはこの少女を先に行かせない為に設置されたモノだった。

「うにゅーーー!」

 少女は無理やり2本の棒の間に顔を突っ込んだ。
 頬の肉が棒にこすれ引っ張られる感じがするも、徐々に前へ進んだ。
 しかし・・・・・・。

 ガンッ!

 その進みも肩の辺りで止まった。

「うーーー・・・・・・。やっぱりダメなの・・・・・・」

 カンッ!

 進むのを諦めて顔を引っこ抜こうとした時、さっきは偶然引っ掛からなかった頭の上の左右から生えていたとても短い角が、2本のミスリル製の棒に引っ掛かった。

「なんで抜けないのーーー!」

 カンッ!カンッ!カンッ!

 何度も頭を引き抜こうとするが、どうしても抜けない。
 そして少女は癇癪を起こした。

「うがぁぁーなのぉーーー!!」

 ゴォォォーーーー!!

 ブンブンッ!と不満を表すように短い赤い尻尾を激しく振り回しながら、少女の口から勢いよく大量の炎が吐き出された。
 そして、狭い水路の水をジュウゥー・・・・・・っと音を立てつつ、濃霧と言えるほどの水蒸気を発生させた。

「な、なにごとだーーー!」
「くそっ!前が見えん!!」
「敵襲かもしれん!ドラゴン部隊を呼べっ!!」

 城の外側にある城門が白い煙につつまれ、少女の進撃は幕を閉じた。
 少女はその後城門を警備していた兵士達に助け出されるのだが、最後まで暴れていたらしい。



 アルディオーテ国王の間。
 城の中心。そこに国王の間があるのだが、そこは手入れのされた芝生が広がり、等間隔で花や木が並び、噴水から出た水がタイルの上を流れ小さなせせらぎの音を奏でる。
 他の国の者が見れば立派な庭園と思ってしまうだろうが、紛れも無くここが国王の間である。
 その国王の間には、天井等もなく魔道具によって雨風等を遮る透明な膜がドーム状に張られており、国王の間を囲むように建物がぐるりと囲み、外からこの城を見ると木の生えた城といった風貌である。
 その中心には高さ30mはあるであろう巨大な木があり、その木を背に尻尾も含め体長30mはあろうかという巨大な竜が腰を下ろしていた。
 ちなみに、噴水はただの水飲み場だったりする。

「おじい様。アウルディグ只今参りました」

 その巨大な竜こそアルディオーテ国の王。
 そして竜帝である。

「・・・・・・アウルディグよ。ドラコはどうしたのじゃ?」

 竜帝は孫のアウルディグに目を向け首を傾げた。
 見た目は人間の16歳前後と言える見た目で赤い髪の青年だった。
 ちなみにこの姿は人化と言って、一部のドラゴンしか使えない力で人の姿に化けたものである。

「ド、ドラコはまた城を抜け出そうとして捕まり、現在泡まみれになっておりました・・・・・・」
「泡まみれとな?実に楽しそうじゃ。わしも混ざりたいのぉ」
「やめてください。他のドラゴンであればまだ大丈夫ですが、おじい様の巨体では浴場が壊れてしまいます」
「わしも人化が出来れば良かったんじゃが、大昔の兄弟喧嘩の怪我のせいで出来ないのが残念じゃ」

 かつて竜帝には兄がいた。
 権力を嫌い自由に生きる事を望み、アルディオーテを飛び出した兄。だが、竜帝と同じく立派なドラゴンに成長したのだが、人間を嫌い町を襲う世界の脅威へとなってしまった。
 その兄を止める為に竜帝は壮絶な死闘を繰り広げた。
 それが竜帝の言う『大昔の兄弟喧嘩』である。

「それより、いいのですか?ドラコは幼いとはいえ、おじい様の血を引くドラゴニュート。その自覚を持つよう指導すべきでしょう」

 ドラコは城の中で遊び回るおてんばな姫だった。
 だが、長年遊び回るうちにそれも飽きてしまい城の外に出る事を望むようになってしまった。
 そして、ドラゴニュートとはかつて人化したドラゴンと人間の女性との間に生まれた種族で、ドラゴンの特徴とも言うべき角と尻尾を持って生まれる。能力が高いと逆に竜化と呼ばれるドラゴンの姿に変身できる者もいる。
 アウルディグとドラコは異母兄弟で、アウルディグはドラゴンでドラコはドラゴニュートの母だった。
 つまり、ドラゴンとして生まれるか、ドラゴニュートになるかは母親によって決まるのだ。

「言おうとした事はあるんじゃよ。じゃが、『難しい話するじぃちゃん嫌いなの!』とか言うんじゃもん・・・・・・」
「おじい様はドラコに甘すぎます。竜帝の役割を知る事と、その血を継ぐ者としての自覚が必要です」

 竜帝は少し悩みつつも、目の前のアウルディグに質問を投げかける。

「・・・・・・アウルディグよ。一つ問うが、竜帝の役割とはなんじゃ?」
「何を今更。強大な力でもって竜族を従え、世界の脅威に睨みを利かせる事で世の平穏を生み出す事です」
「そうじゃな。間違ってはおらぬ。・・・・・・ただし、表面上はの」

 アウルディグは疑問を抱く。
 なぜなら、他の誰でもないそう教えてきたのが目の前の竜帝でもある祖父だったからだ。

「どういう事ですか?」
「これは、公にはできぬ話なのじゃが、次期竜帝を継ぐであろうアウルディグにはそろそろ話してもいい頃合かもしれぬな」

 竜帝は巨大な顔をアウルディグに近づけ出来るだけ小声で話した。

「この世界が竜帝という存在に求めた役割は、世の平穏等ではない。世界にとって人や他の生物がどうなろうと知った事ではないのじゃ。仮に人間が絶滅しようとも、世界はその後も続いていくからの。世界より与えられた運命とも言うべき定めが竜帝にはあって、それはある敵を討つことにあるのじゃよ」
「ある敵とは?」
「それは・・・・・・、まだ教えられぬ。ただ、今の話を聞いてどう思ったかの?」
「・・・・・・表面上の役割は偽りという事なのですか?」
「偽りではない。むしろそれこそが真実なのじゃ」
「意味が分かりません」
「世界が竜帝に求める役割は言わば、避ける事のできぬ押し付けじゃ。表面上の役割と言いはしたが、それは初代竜帝の身から出た心の願いによって出来たものでの。人間は弱い。当時は多くの魔獣や獣に襲われるだけの側じゃったらしくての。初代竜帝はそれを哀れみ竜帝という力を使い多くの人間を保護して出来たのがこの国アルディオーテなのだ。今ではこの国に倣い多くの人間の国が出来たが、これがアルディオーテが最古の国と言われる所以じゃ。じゃから、偽りなどでは決してないのじゃ」
「初代という事はおじい様は違うのですか?」
「違わぬ。わしにも人間の友人がおるからの。むしろ、世の平穏というの役割の方を大事に想っておるくらいじゃ。わしはな、アウルディグもそうであって欲しいと思っておる」
「おじい様私は――」
「この話はここまでじゃ」

 竜帝は顔を上げて、入り口の方に目を向けた。
 それに習い、アウルディグもまたその方向に目を向ける。
 国王の間その入り口には、人間の兵士2人に連れられてたドラコがいた。
 膨れっ面で不満そうなドラコが2人の兵士の後を歩いてくる。

「竜帝様とアウルディグ様。ドラコ様をお連れしました」
「我が孫の為に苦労をかけてすまぬな。感謝する」
「い、いえ!感謝など必要あ、ありません!これも仕事ですので、し、失礼します!!」

 兵士2人は竜帝の巨体にビビリつつもそう言って、早足で仕事に戻って行った。
 それも仕方ない。なにせ、嫌がるドラコを無理やりに連れてきた。
 仕事ではあったが、竜帝は孫をとても可愛がっていることは周知の事実。もし怒りを買ってしまったら・・・・・・、という想像が働いていたのだった。

「じぃちゃん、アウルにぃ・・・・・・。遅れてごめんなさいなの」
「ドラコ、前から言っているが竜帝の血を引いている事の意味を理解した行動をしなければ――」
「よい。アウルディグ、ドラコは今年で52歳の幼い子供なのだ許そうではないか」

 アウルディグはそれ以上言わなかったが、やはりおじい様はドラコに甘いと思ったのだった。
 ドラゴンという種族は長命な為に成長速度もそれに比例して遅い。
 とりわけ、竜帝の血を引く者達はさらに遅い。ドラコの場合は人間の1/10くらいの遅さで、約100年で10歳程度の成長具合だ。
 さらに竜帝となった者はさらに長命になり、そして当然のごとく成長も老いもさらに遅くなる。

「それでじゃ、ドラコよ。今日は数字の勉強からしようかの」

 それを聞いてドラコは膨れっ面を止めて、眉の端を上げて少し怒ったような嫌な顔をした。

「数字きらーい。数えてるとこんがらがってくるの!さよならなのっ!!」

 ドラコは新緑を思わせるセミロングの髪を左右に揺らしながら逃げ出した。

「ドラコっ!待つのじゃ!!」
「またないのー!!」

 逃げ去ったドラコを見て、竜帝とアウルディグは深い溜息をした。
 だが、焦る必要もない。長命な事を活かし、時間を掛けていけばいいだけなのだから。

「・・・・・・そういえば、おじい様。ドラコの件で一つ思い出したことがあるのですが」
「ん?何かあったのかの?」
「いえ、ドラゴニュートの名家のドフォス家の者が、ドラコを将来の嫁に欲しいと言っておりました」
「ドフォス家が・・・・・・?じゃが、まだまだドラコは子供じゃろうに。ろりこん?とかいうやつかの?」
「ただの政略婚でしょう。ドラゴニュートとはいえ、おじい様の血を引いてますからね。そうなればより高い権力を握れると思っているのでしょう」
「やれやれじゃ・・・・・・。世の平穏の前に身内の平穏とはの。ドラコではないが、頭が痛いわい。いっそドラコみたく逃げ出してみようかの?」
「絶対ダメです!」

 ダメと言われ、竜帝はあさっての方向に顔を向けてボソッと呟く。

「・・・・・・冗談じゃ冗談」
「なんですか今の間はっ!」
「だから冗談じゃよ」

 単純な力であれば何も恐れる事の無い竜帝であるが、このご時世においては無闇に力を振るう事等許されるわけも無い。
 圧倒的強者であるが故の悩みを持つ竜帝であった。
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