51 / 57
再起
消えた主人/踊る捜査線/鬼ー!
しおりを挟む
「ミィナ残念だけど、私の勝ちは決まったようなものね」
「決まってません~!私の勝ちです!」
ミィナとナイミは自分の勝ちを確信した様子で買い物を終えて店を出た。
「トラジさん~。お待たせしま・・・・・・、あれ?」
「誰も・・・・・・、いないわね」
しかし、そこに主人であるトラジの姿は無かった。
何があったか冷静に考えようとするナイミに対し、ミィナは酷く慌ててしまう。
「えっ?ええ~っ!な、なんでいないんですか!!」
「落ち着きなさい!」
「いたっ~」
慌てるミィナにナイミはチョップをいれる。
考えようとしている横で慌てられると、冷静に考えられないからだった。
「まったく、少しは成長したと思っていたのに。そういう所は相変わらずなんだから」
「ナイミちゃんは~、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ではないわ。けど、慌てても何か良くなる事なんてないもの。だから少しは落ち着くことを覚えなさい」
「む~・・・・・・。そ、それでどうするつもり?」
「そうねぇ・・・・・・。まずは捜査の基本聞き込みからやるべきでしょうね」
ミィナとナイミは近くを通りかかる人に、一人一人聞き込みをしていった。
一人目。
「猫?ごめん知らないなぁ」
二人目。
「傷のある猫ねー。私猫アレルギーでダメなのよね」
三人目。
「猫がいなくなったか。これだから猫はダメなんだよな自由気質で。やっぱり時代は飼い主に従順な犬だな!」
「くたばれ犬派!!」
「な、ナイミちゃん~!ちょっと落ち着いて!!」
「うわぁー!!」
その後も近くを通る人に聞き込みをしていくが、有益な情報を得ることは出来なかった。
「今度見かけたらあの犬派のやつら蹴り倒してやるわ!」
「そ、その~・・・・・・。蹴っちゃダメだからね?一応」
「今のは聞かなかった事にするとして、見事に収穫なしだったわね」
「ほんとに蹴ったらダメ~!ですからね。念のために。で、次はどうします?」
「もちろん蹴りに・・・・・・、じゃなかった聞き込みね。今度は使い魔の」
「なるほど~。確かに私達は使い魔と会話できますからね。あと、蹴ったらトラジさんに言っちゃいますからね?」
「・・・・・・し、仕方ないわね」
ナイミは蹴るのを今度こそ諦め、ミィナ達は目についた使い魔に聞き込みを始めた。
1匹目、主人と散歩してた犬。
「傷猫?知らぬ」
2匹目、近くを飛んでいた鳩。
「見ない。故に不知」
3匹目、家を脱走して来たと思われる単独で歩いていた犬。
「ご飯くれ。なら、僕答える」
「ご、ごめんなさい~。食べ物は今持ってなくて・・・・・・」
「なら、僕帰っ――」
「させると思っているのかしら?」
犬が立ち去ろうとした先には相手を睨むような形相のナイミが立っていた。
「ひぃっ!」
「ナイミちゃん~!怖がらせちゃダメでしょう!」
「何を甘いことを言ってるの?動物にはこちらが上だと分からせないとダメなのよ」
「ダメ~!同じ使い魔だし、先輩なんだからそういうのなし!」
「こ、答える。僕答える!なら、僕見逃す!」
「最初から素直にそうすればいいのよ」
「もう~、ナイミちゃんはやり方が乱暴すぎ」
「相手が犬だからね」
「だめです~!さっきの事をひきずらないのっ!」
そして、ある手がかりを犬の使い魔から聞く事ができた。
「この辺は猫が近寄らない散歩コース・・・・・・、ねぇ」
「ね、猫探す。なら、別のとこ。僕答えた、さよなら!」
「あ、ありがとうございました~」
「犬相手にお礼まで言わなくてもいいでしょうに」
「ナイミちゃんは~、そういうとこダメダメですね。トラジさんが助けて貰ったらお礼を言うべきだって言ってたんですよ?」
ナイミは少しばかりスネたように頬を膨らませ髪を手でいじる。
「いいわね。私の知らない間にそうやって色々教えて貰えて」
「でも~、これからはナイミちゃんも一緒ですよ?」
「・・・・・・少しは姉っぽい事も言えたのね。こういう所も見抜いて姉に?さすがトラジ様だわ」
「それで~、次はどうします?」
「決まっているわ。猫が近寄らない場所とトラジ様がいなくなった事が関係してる可能性は高い。だから猫の使い魔に近寄らない事情を聞くべきね」
「猫の使い魔ですか~。すぐ見つかればいいんだけど・・・・・・」
「何を言ってるの?あなたが良く知ってる黒いのがいるじゃない」
「だ、大丈夫かなぁ~・・・・・・」
賢い黒猫にナイミを会わせて大丈夫かなと、不安に思うミィナだった。
「なるほどね。噂程度になるけど、その話聞いたことがあるわ」
「噂ですか~?」
「あの辺りには猫を襲う怪物が出るらしいの。迷信だとは思っていたけど、まさかトラジが行方不明になるなんてね。それに・・・・・・」
「他にも~、何かあるんですか?」
「ちょっとだけ、気になることがあるけど気にしないで」
黒猫はそう言いつつちらりとナイミの方に目を向けた。
そのナイミは黒猫の視線に気が付いてはいるが、気にした様子も無くつまらなさそうにしながら無言で壁に寄りかかっていた。
「え~と、そう言われると逆に気になるんですけど・・・・・・」
「時に好奇心は猫をも殺すのよ?気にしないの。それより少し待ってて、私も協力するから」
「その~、いいんですか?」
ミィナが気にするのも無理はない。
なぜなら、今朝も忙しそうに作業をしていたの知っていたからだ。
「本部からの指示でやっていた作業がついさっき終わったのよ。だから、少しくらいなら余裕があるわ。任せなさい」
「そこまでしなくてもいいんだけどね」
その一言を聞き取った黒猫がナイミを睨み付け、ナイミは表情を変えずに壁に寄りかかっていた。
そして、ミィナはこの二人をどうすればいいのだろうかと焦った。
黒猫達を連れて再びトラジが消えた現場に戻ったミィナとナイミ。
「にゃーにゃにゃっ!にゃー」
「その通りよ。頑張るようにね」
「にゃ・・・・・・」
「前みたいな有様で使い魔になれると思ってるの?これも訓練の一環よ。がんばりなさい!」
黒猫は使い魔の候補生のミケと先輩様を連れて来ていた。
候補生の面倒を見ている黒猫とはいえ、たいした理由もなく猫達を連れ出せる訳もないのだが、どうやら使い魔を決める時のアピールに必要な愛嬌の訓練という名目で連れ出したらしい。
「えっと~、何をするつもりなんですか?」
「説明がまだだったわね。おとり捜査というやつよ。猫を狙うのなら猫のおとりを使っておびき寄せて犯人を捕まえるの。ついでに人間に対しての愛嬌のやり方を勉強してもらうわ」
「この猫達で大丈夫なの?トラジ様程のいい猫に見えないのだけど」
「・・・・・・」
黒猫はナイミを無言で睨んだ。
なぜ言葉が通じるのか、なぜミィナに似ているのか。
そして、以前ミィナに向かってナイフを投げたのになぜ一緒にいるのか・・・・・・。
黒猫はナイミとどう接するべきか決めかね言葉が出なかった。
「大丈夫ですよ~。十分可愛いと思います」
「そ、そうね。トラジも愛嬌に関しては素人で不評だったくらいよ。そのトラジが攫われたなら多分選り好みはしてないと思う」
「ト、トラジ様の愛嬌・・・・・・。ブハッ」
「な、ナイミちゃん~!?鼻血出てるよ!!」
「想像したら、つい・・・・・・」
そんなやり取りを見ていた黒猫は毒気を抜かれたような気分になった。
「・・・・・・警戒し過ぎかしら?」
そして、ミケと先輩様を使ったおとり捜査が始まった。
ミケと先輩様は通りかかる人に擦り寄り可愛さをアピールして、ミィナ達は近くの建物の影からその様子を見守った。
「時にミィナさん。その荷物は?」
「えっと~、これは服ですね。復元クエストの報酬で買おうってトラジさんが言ってくれたので」
「なら、今のうちにその荷物を家に置いてきなさい。犯人次第では邪魔になるもの」
「え、え~と・・・・・・」
ミィナはこの二人だけにして大丈夫かどうか迷った。
お世辞にも愛想がいいとは言えないナイミと、ナイミに対して警戒してそうな雰囲気のある黒猫を見て不安になったからだ。
「・・・・・・そうね。ミィナ、私の服もお願いするわ。心配しなくてもあの猫達は見ておいてあげるから」
「わ、わかりました~。急いで戻ってくるからナイミちゃん喧嘩しないでね?」
「早く行ってきなさい」
ミィナはナイミと黒猫を気にしながらも走って行った。
「まったくあの子ったら。また何もないところで転んで・・・・・・、私の服無事だといいけど」
ナイミの視線の先ではミィナが前のめりで転んでいた。
「あと、これで話しやすくなったでしょ?」
ナイミはこの状況を望んでいたであろう黒猫の方を向き問いかけた。
黒猫は目付きを鋭くした。
「気が付いていてミィナさんを行かせたのね。好都合ではあるけど、どういうつもりかしら?」
「それは何のことを言ってるの?」
「あなたは何者?なぜ言葉が通じるのかしら?そして何より・・・・・・、なんでミィナさんを殺そうとしたあなたが一緒にいるの?」
「私はあの子の双子の妹よ・・・・・・。あと想像はつくけど、なぜそれを知ってるんでしょうね?」
黒猫はナイミの前でナイトホロウの力を使い猫耳人型の姿になってみせた。
「ミィナさんの双子・・・・・・?」
そして、その声のトーンは低く脅し意味が込められていた。騙したりしたら容赦しないとでも暗に言うように。
「その姿やっぱりね・・・・・・」
「まだ話は終わってないわ。双子ってだけでは説明がつかないし、それに何でミィナさんを殺そうとしたの?事と次第じゃあなたを殺すわ」
黒猫から向けられる威圧感にナイミの頬からは冷汗が一筋流れた。
「・・・・・・双子って以外には私にも分からない。けど、確かに私はミィナ同様トラジ様の使い魔よ。殺そうとした事は事実だけど、今はそのつもりは全くないわ」
「ミィナさんやトラジはそれを知っているの?」
「ミィナにはすべて話したわよ。でもトラジ様は知らないでしょうね。あの子はバラしてないと思うから」
「ミィナさんはすべて分かった上で一緒に?・・・・・・信じ難いけど、本当であるなら私が口を挟む事ではなくなるわね。本当であれば」
「本当の事よ」
しばし黒猫とナイミは睨み合っていたが、黒猫が根負けでもしたかのように先に睨むのをやめた。
「はぁ・・・・・・。今はそういう事にしておくわ・・・・・・」
黒猫はそう言って元の猫の姿に戻ると、離れた所から誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
「おまたせしました~!ナイミちゃん喧嘩してないですよねー?」
「・・・・・・してないわよ。心配性ね」
「ミィナさんは大丈夫?転んでいたのを見たのだけど」
「私は大丈夫なんですけど~。・・・・・・猫さんが1匹いないような?」
「「あ・・・・・・」」
居なくなっていたのはぎこちなくカチコチした遅い動きで、通行人に愛嬌のつもりを振りまいていた先輩様だった。
「ナイミちゃん~。何か言うことはないですか?」
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「ミ、ミィナさん。今回ばかりは私が悪いの。ごめんなさい」
「黒猫さんが~?そういう事なら仕方ないですけどどうします?」
「もちろんおとり捜査を続けるわ。まだセイヴァーが頑張っているし、今度こそ見逃したりはしないわ」
ミィナとナイミは揃って首を傾けた。
「「セイヴァ~?」」
「セイヴァーはあの猫の名前よ。トラジはミケと呼んでいたようだけどね」
「ミケね」
「ミケの方が~、しっくりきますね」
「ま、まぁ、あの子は名前を気にしてはいないみたいだからいいと言えばいいのだけど・・・・・・」
「あ~っ!見てください!」
ミィナが指を指した先では女性がミケを抱き上げていた。
「犯人かもしれないわ!ミィナさん行きましょう!」
「確保ーー!!」
「えっ?何、なんなの!?」
確保しはたがこの女性は犯人ではなかった。
ミケが可愛く擦り寄って来たので思わず抱き上げただけらしい。
「犯人はなぜセイヴァーを連れて行かないのかしら?」
「ですね~。見た感じだと愛嬌の方は良く出来ていたのに・・・・・・」
「トラジ様みたいな感じが足らないのよ」
「そうなのかな~?」
「たぶんだけど、見た目ではないと思うわ」
「愛嬌の悪さでしょうか~?」
「ミィナ、それだとトラジ様が可愛くないみたいじゃない。むしろ愛嬌の塊よ」
「さ、さすがにそれはどうかと思うわ・・・・・・。そうねぇ、共通してそうな所と言えば・・・・・・、危機回避能力の低そうな所かしらね」
「なるほど~、それなら納得ですね。さすが黒猫さん」
「ついつい護ってあげたくなる可愛さ!トラジ様の素晴らしいところね!!」
ナイミは手を合わせ目を輝かせてそう語った。
「・・・・・・ミィナさん。この子大丈夫なのかしら?」
黒猫はそんなナイミを見てミィナに聞いた。
「え、え~と。トラジさんが関わってなければ・・・・・・、大丈夫だと思います・・・・・・」
「・・・・・・そう。やっぱりミィナさんは私より苦労しそうだわ。頑張ってね」
「え~・・・・・・」
同時刻。
とある家の部屋。
「や、やめろーーー!!俺にそんなもん近づけんじゃねーーー!!」
トラジは首輪を付けられた上に逃げられないように丈夫そうな紐で繋がれていた。
「そんなに喜ばなくてもいいのにー」
「喜んでねーよ!鬼ー!悪魔ー!鬼畜ー!!」
「ふふふふふ・・・・・・」
どれだけトラジが叫ぼうとその言葉が相手に伝わる事はなかった。
それどころか、鬼とか呼ばれた相手の手がトラジの頭に伸びた。
「ぎゃーーーーーーー!!」
「・・・・・・南無」
「勝手に合掌すんな先輩様ぁ!!」
「決まってません~!私の勝ちです!」
ミィナとナイミは自分の勝ちを確信した様子で買い物を終えて店を出た。
「トラジさん~。お待たせしま・・・・・・、あれ?」
「誰も・・・・・・、いないわね」
しかし、そこに主人であるトラジの姿は無かった。
何があったか冷静に考えようとするナイミに対し、ミィナは酷く慌ててしまう。
「えっ?ええ~っ!な、なんでいないんですか!!」
「落ち着きなさい!」
「いたっ~」
慌てるミィナにナイミはチョップをいれる。
考えようとしている横で慌てられると、冷静に考えられないからだった。
「まったく、少しは成長したと思っていたのに。そういう所は相変わらずなんだから」
「ナイミちゃんは~、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ではないわ。けど、慌てても何か良くなる事なんてないもの。だから少しは落ち着くことを覚えなさい」
「む~・・・・・・。そ、それでどうするつもり?」
「そうねぇ・・・・・・。まずは捜査の基本聞き込みからやるべきでしょうね」
ミィナとナイミは近くを通りかかる人に、一人一人聞き込みをしていった。
一人目。
「猫?ごめん知らないなぁ」
二人目。
「傷のある猫ねー。私猫アレルギーでダメなのよね」
三人目。
「猫がいなくなったか。これだから猫はダメなんだよな自由気質で。やっぱり時代は飼い主に従順な犬だな!」
「くたばれ犬派!!」
「な、ナイミちゃん~!ちょっと落ち着いて!!」
「うわぁー!!」
その後も近くを通る人に聞き込みをしていくが、有益な情報を得ることは出来なかった。
「今度見かけたらあの犬派のやつら蹴り倒してやるわ!」
「そ、その~・・・・・・。蹴っちゃダメだからね?一応」
「今のは聞かなかった事にするとして、見事に収穫なしだったわね」
「ほんとに蹴ったらダメ~!ですからね。念のために。で、次はどうします?」
「もちろん蹴りに・・・・・・、じゃなかった聞き込みね。今度は使い魔の」
「なるほど~。確かに私達は使い魔と会話できますからね。あと、蹴ったらトラジさんに言っちゃいますからね?」
「・・・・・・し、仕方ないわね」
ナイミは蹴るのを今度こそ諦め、ミィナ達は目についた使い魔に聞き込みを始めた。
1匹目、主人と散歩してた犬。
「傷猫?知らぬ」
2匹目、近くを飛んでいた鳩。
「見ない。故に不知」
3匹目、家を脱走して来たと思われる単独で歩いていた犬。
「ご飯くれ。なら、僕答える」
「ご、ごめんなさい~。食べ物は今持ってなくて・・・・・・」
「なら、僕帰っ――」
「させると思っているのかしら?」
犬が立ち去ろうとした先には相手を睨むような形相のナイミが立っていた。
「ひぃっ!」
「ナイミちゃん~!怖がらせちゃダメでしょう!」
「何を甘いことを言ってるの?動物にはこちらが上だと分からせないとダメなのよ」
「ダメ~!同じ使い魔だし、先輩なんだからそういうのなし!」
「こ、答える。僕答える!なら、僕見逃す!」
「最初から素直にそうすればいいのよ」
「もう~、ナイミちゃんはやり方が乱暴すぎ」
「相手が犬だからね」
「だめです~!さっきの事をひきずらないのっ!」
そして、ある手がかりを犬の使い魔から聞く事ができた。
「この辺は猫が近寄らない散歩コース・・・・・・、ねぇ」
「ね、猫探す。なら、別のとこ。僕答えた、さよなら!」
「あ、ありがとうございました~」
「犬相手にお礼まで言わなくてもいいでしょうに」
「ナイミちゃんは~、そういうとこダメダメですね。トラジさんが助けて貰ったらお礼を言うべきだって言ってたんですよ?」
ナイミは少しばかりスネたように頬を膨らませ髪を手でいじる。
「いいわね。私の知らない間にそうやって色々教えて貰えて」
「でも~、これからはナイミちゃんも一緒ですよ?」
「・・・・・・少しは姉っぽい事も言えたのね。こういう所も見抜いて姉に?さすがトラジ様だわ」
「それで~、次はどうします?」
「決まっているわ。猫が近寄らない場所とトラジ様がいなくなった事が関係してる可能性は高い。だから猫の使い魔に近寄らない事情を聞くべきね」
「猫の使い魔ですか~。すぐ見つかればいいんだけど・・・・・・」
「何を言ってるの?あなたが良く知ってる黒いのがいるじゃない」
「だ、大丈夫かなぁ~・・・・・・」
賢い黒猫にナイミを会わせて大丈夫かなと、不安に思うミィナだった。
「なるほどね。噂程度になるけど、その話聞いたことがあるわ」
「噂ですか~?」
「あの辺りには猫を襲う怪物が出るらしいの。迷信だとは思っていたけど、まさかトラジが行方不明になるなんてね。それに・・・・・・」
「他にも~、何かあるんですか?」
「ちょっとだけ、気になることがあるけど気にしないで」
黒猫はそう言いつつちらりとナイミの方に目を向けた。
そのナイミは黒猫の視線に気が付いてはいるが、気にした様子も無くつまらなさそうにしながら無言で壁に寄りかかっていた。
「え~と、そう言われると逆に気になるんですけど・・・・・・」
「時に好奇心は猫をも殺すのよ?気にしないの。それより少し待ってて、私も協力するから」
「その~、いいんですか?」
ミィナが気にするのも無理はない。
なぜなら、今朝も忙しそうに作業をしていたの知っていたからだ。
「本部からの指示でやっていた作業がついさっき終わったのよ。だから、少しくらいなら余裕があるわ。任せなさい」
「そこまでしなくてもいいんだけどね」
その一言を聞き取った黒猫がナイミを睨み付け、ナイミは表情を変えずに壁に寄りかかっていた。
そして、ミィナはこの二人をどうすればいいのだろうかと焦った。
黒猫達を連れて再びトラジが消えた現場に戻ったミィナとナイミ。
「にゃーにゃにゃっ!にゃー」
「その通りよ。頑張るようにね」
「にゃ・・・・・・」
「前みたいな有様で使い魔になれると思ってるの?これも訓練の一環よ。がんばりなさい!」
黒猫は使い魔の候補生のミケと先輩様を連れて来ていた。
候補生の面倒を見ている黒猫とはいえ、たいした理由もなく猫達を連れ出せる訳もないのだが、どうやら使い魔を決める時のアピールに必要な愛嬌の訓練という名目で連れ出したらしい。
「えっと~、何をするつもりなんですか?」
「説明がまだだったわね。おとり捜査というやつよ。猫を狙うのなら猫のおとりを使っておびき寄せて犯人を捕まえるの。ついでに人間に対しての愛嬌のやり方を勉強してもらうわ」
「この猫達で大丈夫なの?トラジ様程のいい猫に見えないのだけど」
「・・・・・・」
黒猫はナイミを無言で睨んだ。
なぜ言葉が通じるのか、なぜミィナに似ているのか。
そして、以前ミィナに向かってナイフを投げたのになぜ一緒にいるのか・・・・・・。
黒猫はナイミとどう接するべきか決めかね言葉が出なかった。
「大丈夫ですよ~。十分可愛いと思います」
「そ、そうね。トラジも愛嬌に関しては素人で不評だったくらいよ。そのトラジが攫われたなら多分選り好みはしてないと思う」
「ト、トラジ様の愛嬌・・・・・・。ブハッ」
「な、ナイミちゃん~!?鼻血出てるよ!!」
「想像したら、つい・・・・・・」
そんなやり取りを見ていた黒猫は毒気を抜かれたような気分になった。
「・・・・・・警戒し過ぎかしら?」
そして、ミケと先輩様を使ったおとり捜査が始まった。
ミケと先輩様は通りかかる人に擦り寄り可愛さをアピールして、ミィナ達は近くの建物の影からその様子を見守った。
「時にミィナさん。その荷物は?」
「えっと~、これは服ですね。復元クエストの報酬で買おうってトラジさんが言ってくれたので」
「なら、今のうちにその荷物を家に置いてきなさい。犯人次第では邪魔になるもの」
「え、え~と・・・・・・」
ミィナはこの二人だけにして大丈夫かどうか迷った。
お世辞にも愛想がいいとは言えないナイミと、ナイミに対して警戒してそうな雰囲気のある黒猫を見て不安になったからだ。
「・・・・・・そうね。ミィナ、私の服もお願いするわ。心配しなくてもあの猫達は見ておいてあげるから」
「わ、わかりました~。急いで戻ってくるからナイミちゃん喧嘩しないでね?」
「早く行ってきなさい」
ミィナはナイミと黒猫を気にしながらも走って行った。
「まったくあの子ったら。また何もないところで転んで・・・・・・、私の服無事だといいけど」
ナイミの視線の先ではミィナが前のめりで転んでいた。
「あと、これで話しやすくなったでしょ?」
ナイミはこの状況を望んでいたであろう黒猫の方を向き問いかけた。
黒猫は目付きを鋭くした。
「気が付いていてミィナさんを行かせたのね。好都合ではあるけど、どういうつもりかしら?」
「それは何のことを言ってるの?」
「あなたは何者?なぜ言葉が通じるのかしら?そして何より・・・・・・、なんでミィナさんを殺そうとしたあなたが一緒にいるの?」
「私はあの子の双子の妹よ・・・・・・。あと想像はつくけど、なぜそれを知ってるんでしょうね?」
黒猫はナイミの前でナイトホロウの力を使い猫耳人型の姿になってみせた。
「ミィナさんの双子・・・・・・?」
そして、その声のトーンは低く脅し意味が込められていた。騙したりしたら容赦しないとでも暗に言うように。
「その姿やっぱりね・・・・・・」
「まだ話は終わってないわ。双子ってだけでは説明がつかないし、それに何でミィナさんを殺そうとしたの?事と次第じゃあなたを殺すわ」
黒猫から向けられる威圧感にナイミの頬からは冷汗が一筋流れた。
「・・・・・・双子って以外には私にも分からない。けど、確かに私はミィナ同様トラジ様の使い魔よ。殺そうとした事は事実だけど、今はそのつもりは全くないわ」
「ミィナさんやトラジはそれを知っているの?」
「ミィナにはすべて話したわよ。でもトラジ様は知らないでしょうね。あの子はバラしてないと思うから」
「ミィナさんはすべて分かった上で一緒に?・・・・・・信じ難いけど、本当であるなら私が口を挟む事ではなくなるわね。本当であれば」
「本当の事よ」
しばし黒猫とナイミは睨み合っていたが、黒猫が根負けでもしたかのように先に睨むのをやめた。
「はぁ・・・・・・。今はそういう事にしておくわ・・・・・・」
黒猫はそう言って元の猫の姿に戻ると、離れた所から誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
「おまたせしました~!ナイミちゃん喧嘩してないですよねー?」
「・・・・・・してないわよ。心配性ね」
「ミィナさんは大丈夫?転んでいたのを見たのだけど」
「私は大丈夫なんですけど~。・・・・・・猫さんが1匹いないような?」
「「あ・・・・・・」」
居なくなっていたのはぎこちなくカチコチした遅い動きで、通行人に愛嬌のつもりを振りまいていた先輩様だった。
「ナイミちゃん~。何か言うことはないですか?」
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「ミ、ミィナさん。今回ばかりは私が悪いの。ごめんなさい」
「黒猫さんが~?そういう事なら仕方ないですけどどうします?」
「もちろんおとり捜査を続けるわ。まだセイヴァーが頑張っているし、今度こそ見逃したりはしないわ」
ミィナとナイミは揃って首を傾けた。
「「セイヴァ~?」」
「セイヴァーはあの猫の名前よ。トラジはミケと呼んでいたようだけどね」
「ミケね」
「ミケの方が~、しっくりきますね」
「ま、まぁ、あの子は名前を気にしてはいないみたいだからいいと言えばいいのだけど・・・・・・」
「あ~っ!見てください!」
ミィナが指を指した先では女性がミケを抱き上げていた。
「犯人かもしれないわ!ミィナさん行きましょう!」
「確保ーー!!」
「えっ?何、なんなの!?」
確保しはたがこの女性は犯人ではなかった。
ミケが可愛く擦り寄って来たので思わず抱き上げただけらしい。
「犯人はなぜセイヴァーを連れて行かないのかしら?」
「ですね~。見た感じだと愛嬌の方は良く出来ていたのに・・・・・・」
「トラジ様みたいな感じが足らないのよ」
「そうなのかな~?」
「たぶんだけど、見た目ではないと思うわ」
「愛嬌の悪さでしょうか~?」
「ミィナ、それだとトラジ様が可愛くないみたいじゃない。むしろ愛嬌の塊よ」
「さ、さすがにそれはどうかと思うわ・・・・・・。そうねぇ、共通してそうな所と言えば・・・・・・、危機回避能力の低そうな所かしらね」
「なるほど~、それなら納得ですね。さすが黒猫さん」
「ついつい護ってあげたくなる可愛さ!トラジ様の素晴らしいところね!!」
ナイミは手を合わせ目を輝かせてそう語った。
「・・・・・・ミィナさん。この子大丈夫なのかしら?」
黒猫はそんなナイミを見てミィナに聞いた。
「え、え~と。トラジさんが関わってなければ・・・・・・、大丈夫だと思います・・・・・・」
「・・・・・・そう。やっぱりミィナさんは私より苦労しそうだわ。頑張ってね」
「え~・・・・・・」
同時刻。
とある家の部屋。
「や、やめろーーー!!俺にそんなもん近づけんじゃねーーー!!」
トラジは首輪を付けられた上に逃げられないように丈夫そうな紐で繋がれていた。
「そんなに喜ばなくてもいいのにー」
「喜んでねーよ!鬼ー!悪魔ー!鬼畜ー!!」
「ふふふふふ・・・・・・」
どれだけトラジが叫ぼうとその言葉が相手に伝わる事はなかった。
それどころか、鬼とか呼ばれた相手の手がトラジの頭に伸びた。
「ぎゃーーーーーーー!!」
「・・・・・・南無」
「勝手に合掌すんな先輩様ぁ!!」
0
あなたにおすすめの小説
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる