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再起
逃がす為に
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「やれやれ。つまり、君の弟子は先程まで組合に来ていたのか」
「そうだよ」
「入れ違いとはついてない。しかし、・・・・・・君はもう少し愛想よく出来ないのかね?」
組合の会議室にて。
白髪でがたいのいい紳士風の男と、口元をへの字にし会議室の机に頬杖をついて不満そうな顔のエリィが話し合っていた。
「これから酒を飲もうかと思ってた所を、呼び出しておいて何を言ってるさね・・・・・・」
「お酒については昔から変わらないな君は・・・・・・。弟子が出来て少しは変わったかと期待してたのだがな」
「そりゃご愁傷様。私はそう簡単には変わらないさね」
「君の復讐についてもか?」
復讐と聞いて、エリィは目付きを鋭くし相手を睨んだ。
「なんの話さね・・・・・・?」
「ふむ。その為に姿を眩ましたのではないのか?あと、私に隠す必要はない。基本的に組合は、錬金術士が犯罪者になろうと不干渉だからね。庇う事もないが、国に突き出したりもしない。ま、アルマゲイドという例外もあるがね」
「復讐なんかじゃないさね。私がするのは後始末さ。私がしでかした事のね・・・・・・。ま、そのついでにこの国の王も、やっちゃうかもしれないけどね」
「君も理解はしてるだろうが、あれは君の為にした事だぞ?」
エリィは無言で視線を窓の外に向けて言った。
「関係ないさね・・・・・・。私はあの子の為にやるだけさ」
エリィは自分はどうなろうと構わなかった。ただその子の為に行動をしていた。
だが、王様も周囲もエリィの為にと行動した。
それがエリィにとって許せない結果となっていたのだ。
「意思は変わらずか・・・・・・。わかった。その件については、もう何も言うまい」
「そりゃ助かる」
「で、次は君の弟子についてなんだが――」
「面倒だねぇ・・・・・・」
「言うと思ったよ。だがいいのか?私は一応こういう物を用意してきたのだがな」
そう言って、白髪の紳士が取り出したのは一本のお酒だった。
それを見てエリィは目の色を変えた。
「そ、それはアルディオーテの名酒!竜水じゃないかい!!」
「流石に詳しいな。実はアルディオーテの帰りにここへ来ていてね。竜帝の彼に土産にと持たされたんだよ」
「あの竜帝のじじぃの事かい?もう次の竜帝に世代交代してもいいだろうに」
「君にも、老いに負けたくない者の気持ちを理解して欲しいところだ。・・・・・・と言いたいが、流石に次の竜帝にするべくお孫さんを教育しているらしい」
「教育ねぇ・・・・・・。孫をかまいたいだけじゃないかい?」
「ふむ。・・・・・・かもしれないな」
コンコンコンッ。
エリィ達がいる会議室の扉を誰かが叩きノックをした。
「構わない入りたまえ」
ガラガラ・・・・・・。
エリィ達のいる部屋に入ってきたは、白いきつねの使い魔を連れた錬金医師だった。
「失礼します。長官、急ぎのお話が――」
ドゥーーーンッ!
その時、離れていたためだろう。少しぼやけたような大きな爆発音が外から聞こえてきたのだった。
「その急ぎの話とやらを聞こうか。手早くな」
白髪の紳士は目つきを鋭くしその話を聞いた。
大きな爆発によって舞い上げられた土埃が舞う中、トラジはゆっくり立ち上がった。
「くっそ・・・・・・。何が起きたんだ・・・・・・」
トラジは土煙が酷かったがなんとか周囲を確認する。
馬車は横転していて、それを引かせていた馬の姿は無い。おそらく逃げ去ったのだと思われた。
バーコード親父にしーちゃんとあっくん、そしてミィナを見つけトラジはミィナに駆け寄る。
「ミィナ大丈夫か!起きれるか!!」
トラジは声をかけつつミィナの頬をペシペシと叩いた。
「あむっ!」
「うおっ!食いついた!?」
「じゃりじゃりします~・・・・・・」
「地面を歩いたからな。つーか、汚いからぺっしろ!ぺって!」
「ぺっ!」
「でだ、ミィナは急いでしーちゃんとバーコード親父を起こすんだ。そんで、視界が悪い今のうちに少しでも遠くへ逃げるぞ!」
「はいっ!」
トラジが向かったのはあっくんの所だったのだが、あっくんはその前に自力で立ち上がっていた。
「お前大丈夫か?」
「トラジ。問題無い。少し足が痛む程度」
あっくんの右前足からは、量こそ少ないが出血してるようで毛が少し赤くなっていた。
「手当てしてやりたいが・・・・・・」
「大丈夫だ。走る」
そう言ってあっくんはミィナやしーちゃんいる方へ走っていった。
マジか・・・・・・。
足怪我してるのに、あっくんのやつ俺よりはえー・・・・・・。
「ミィナ、しーちゃんやバーコード親父は大丈夫そうか?」
「はい~。目立った怪我も無いようです」
「良かった。そうと決まれば急いで逃げるぞ!」
「逃がすと思うか?」
そこに白い虎が立ち塞がった。
「し、白くて大きい猫が喋ってます~!」
「猫扱いするな」
ミィナが言葉を聞き分けた!?
という事はコイツ使い魔か!
しーちゃんの顔が白虎を見たとたん険しいものに変わっていく。
まるで最悪の事態に直面してしまったと言わんばかりだ。
「・・・・・・ミィナちゃん。もう逃げるのは無理かもしれないわ」
「ど、どうして!?」
「あの虎はこの国でトップレベルの国家錬金術士・・・・・・。その使い魔かもしれない・・・・・・」
「こんな田舎にあの国家錬金術士が?んな馬鹿な事が――」
「あるんだとしたら、どうする?」
バーコード親父はその国家錬金術士を知っているらしく、その当人らしき人物の登場に驚きのあまり開いた口が塞がらない様子だった。
「さて、言いたい事はあるか?重罪人とその共犯者」
土煙が薄まっていく中その国家錬金術士は一歩前に出た。
「ケッ!!お偉い国家錬金術士がこんなガキ相手に何人も兵士連れで、追い詰めるなんて大人として恥を知れってんだ!!」
バーコード親父がミィナとしーちゃんを庇う様に前に出た。
そのバーコード親父の頬を汗がたらりと流れた。
「子供を庇うとは素晴らしい。我が聖女様もその行いを褒めてくださるだろう」
「おい!ガキ共いつまでも人の影に隠れてねぇで、とっとと逃げやがれ!!」
「ミィナ!行くぞ!!」
「はいっ!」
すまねぇ!バーコード親父!!
ミィナはしーちゃんの手をとり駆け出した。
だが、当のしーちゃんの顔色はよくない。逃げ切る事は既に絶望的と見ているようだった。
「ただし、庇う相手が犯罪者でなければ、だ」
「がぁっ!!」
国家錬金術士の男はバーコード親父の顔面を殴り飛ばし、使い魔に指示をする。
その男の顔には焦りはなく、冷静そのものだった。
「首謀者だけは決して逃がさず捕らえろ」
「他は?」
「邪魔するようなら痛い目を見せてやればいい」
「あの娘、人間の使い魔のようだぞ?」
「人間の使い魔?・・・・・・なるほど、あれが例の。なら、そいつとその主人は決して傷つけるな」
「面倒だ・・・・・・」
「いいから行け」
面倒とは言いつつも、全速力で白虎は走り出した。
「いかせるかよぉー!!」
「邪魔させるわけないだろう」
ドンっ!!
「ぐそぉ・・・・・・」
国家錬金術士の男はバーコード親父の腹に回し蹴りを叩き込み、蹴りを腹にもろに受けたバーコード親父は腹を抱えて倒れた。
この国家錬金術士の男は軍に所属し戦闘経験をも積んでいる。一般人相手なら素手だろうと負けない実力があった。
「ベナード殿。町を捜索および検問をしていた者達の召集はもう少しで終わります」
「とりあえず、そこに蹲っている者を拘束しておけ。召集が完了次第隊列を組み直し目標の捕縛に向かう」
白虎に追われつつ、ミィナ達は走っていた。
「主!先程の虎に追いつかれます!お急ぎを!」
「分かってるわよっ!」
トラジはミィナ達に並走していた。
いつもは抱っこをしたがるミィナもこの状況では、トラジを抱えて走る余裕などなかった。
くそー!あっくん後ろを見る余裕があっていいな。
俺なんてこれで全力だぞ!!
その距離はぐんぐん縮んでいき、白虎はミィナ達の頭上を飛び越え正面から立ち塞がった。
「諦めろ」
ミィナはしーちゃんを庇うように一歩前にでた。
一応、トラジもミィナの前に出るが体のサイズ的に庇うようにとはさすがにいかない。
「・・・・・・諦めたらどうなるんですか~?」
「その娘を連れて行く。それだけだ」
「嫌です~!諦めないために頑張って来たんですから!!」
「ミィナの言うとおりだな。諦めるならもっと前にやってるってーの!」
「そうです~!ご主人様の言うとおりです!」
とは言ったものの・・・・・・、どうする?
まず、援軍は望めない。
なんせ国家転覆の罪だ、協力なんてバカやらかすのは俺達くらいだ。
つまり、時間をただ稼ぐ意味は無い。つーか相手の増援が来て詰むな。
やるならバーコード親父みたいに足止めしつつしーちゃんを逃がすしかない・・・・・・。
「ミィナちゃんありがと・・・・・・・・・・・・。それと猫」
何その間!
「主!ここはお任せを!」
「やめなさいアーガストっ!!」
「そうだぞ。ここは俺とミィナであの虎を足止めする番だ。お前としーちゃんは合図したら逃げろ」
「し、しかし・・・・・・」
「誰を逃がす為にここまで来たと思ってるんだ。主人と使い魔はセットだろ!」
「しーちゃん~!ここは私とご主人様に任せて!」
ミィナは鞄から泥団子を2つ取り出した。
ちなみに、この2つが両親から貰った最後のゴーレムである。
「ミィナちゃん・・・・・・」
白虎は目の前で会話が終わるのを待ってから口を開いた。
「・・・・・・覚悟は決まったか?」
「素直に待っててくれた事には礼を言っておく」
「礼?ならもっと話してていいぞ。その方が楽だ」
「そのサービス精神には嬉し泣きもんだな。だが断る!」
当然だが、白虎はトラジ達の会話が終わるのをただ待っていたわけではない。
傷つけるなと言われていた猫の主人が、トラジかあっくんかで見分けが付かなかったから、見定めようとしていただけだった。
それに、足止めさえ出来ていればそれだけで有利になるというのもある。
「そういや、お前でかいだけあって頭もよさそうだな。計算とかもできたりするのか?」
「当然だ。2桁の足し引きくらいは余裕」
えっ?
国家錬金術士の使い魔なのに2桁の足し引き程度なのか?
通常計算したり等は使い魔の役割でない為、むしろ出来るほうであったりする。
察している人もいるだろうが黒猫は例外だ。
「あ、頭がいいんだなぁ・・・・・・」
「当たり前だ」
「んじゃ問題。21+56は?」
「な、77だ」
「正解で、さらに問題。94+38は?」
「・・・・・・ひゃ、132だ」
「正解!でここがラスト問題、さっきの2つの問題の答えを足すといくつになる?」
「さ、さっきのだと!!むぅ・・・・・・」
おし、考え込んでるな!
今がしーちゃん達を逃がすチャンスだな!
「え~と・・・・・・」
なんでミィナまで考えてんだよ!!
トラジはミィナの足をペシペシ猫パンチで叩き、しーちゃんを行かせろと合図をした。
「し、しーちゃん行って~!」
「わかったわ!」
「すまない。トラジ!あの世でまた会おう!!」
勝手に殺すな!!
そう言ってしーちゃんとあっくんは走っていった。
「ぬっ!!謀ったな!!」
「ちなみに答えは分かったか?」
白虎はミィナとトラジを無視するように急いで駆け出した。
「知るかっ!!!!」
209だよ!!
「ミィナ!命令だ!!あの虎を足止めしろぉ!!」
「はい!」
命令と言ったがトラジは命令のつもりでは言ってはいない。
捕まった場合を考えて、罪を全部引き受けれるようにする為のものだ。
ミィナは特に疑問を持つ事も無く、しーちゃんを助けたい一心で手にした泥団子を地面に投げつけた。
「ムっくんお願い!!」
地面からニョキニョキと這い出し姿を現したのは大きなムカデ型のゴーレムだ。
ムっくんは白虎に向かって突進していく。
「んじゃ、こっちもいくか」
トラジはもう片方の泥団子を両手で持ち上げて地面に叩き付けた。
すると、地面から手が生えた。
「もしかして、これ人型だったりするのかな?」
だが、それだけった。
地面から手が生える以上の変化が見られない。
「これだけかよぉ!!」
「それは~、のびたくんです」
いままでと名前の付け方が違う上に、余計に不安になる名前付けないでほしい!!
猫型のゴーレムとかなかったんだろうか?いや、なければ作ろうそれが錬金術士というもんだろ!
いやいや、猫型は作らなくていいか。本体はお腹のポケットの方だし、作るならそっちだな。
脱線したが、とりあえず今はやる気が出そうな応援をしておこう。
「頑張って!のびたさーーん!!」
「のびたくんです~!」
のびたくんは亀みたいなスピードで白虎に向かって動き出した。
「おそっ!!」
「そうだよ」
「入れ違いとはついてない。しかし、・・・・・・君はもう少し愛想よく出来ないのかね?」
組合の会議室にて。
白髪でがたいのいい紳士風の男と、口元をへの字にし会議室の机に頬杖をついて不満そうな顔のエリィが話し合っていた。
「これから酒を飲もうかと思ってた所を、呼び出しておいて何を言ってるさね・・・・・・」
「お酒については昔から変わらないな君は・・・・・・。弟子が出来て少しは変わったかと期待してたのだがな」
「そりゃご愁傷様。私はそう簡単には変わらないさね」
「君の復讐についてもか?」
復讐と聞いて、エリィは目付きを鋭くし相手を睨んだ。
「なんの話さね・・・・・・?」
「ふむ。その為に姿を眩ましたのではないのか?あと、私に隠す必要はない。基本的に組合は、錬金術士が犯罪者になろうと不干渉だからね。庇う事もないが、国に突き出したりもしない。ま、アルマゲイドという例外もあるがね」
「復讐なんかじゃないさね。私がするのは後始末さ。私がしでかした事のね・・・・・・。ま、そのついでにこの国の王も、やっちゃうかもしれないけどね」
「君も理解はしてるだろうが、あれは君の為にした事だぞ?」
エリィは無言で視線を窓の外に向けて言った。
「関係ないさね・・・・・・。私はあの子の為にやるだけさ」
エリィは自分はどうなろうと構わなかった。ただその子の為に行動をしていた。
だが、王様も周囲もエリィの為にと行動した。
それがエリィにとって許せない結果となっていたのだ。
「意思は変わらずか・・・・・・。わかった。その件については、もう何も言うまい」
「そりゃ助かる」
「で、次は君の弟子についてなんだが――」
「面倒だねぇ・・・・・・」
「言うと思ったよ。だがいいのか?私は一応こういう物を用意してきたのだがな」
そう言って、白髪の紳士が取り出したのは一本のお酒だった。
それを見てエリィは目の色を変えた。
「そ、それはアルディオーテの名酒!竜水じゃないかい!!」
「流石に詳しいな。実はアルディオーテの帰りにここへ来ていてね。竜帝の彼に土産にと持たされたんだよ」
「あの竜帝のじじぃの事かい?もう次の竜帝に世代交代してもいいだろうに」
「君にも、老いに負けたくない者の気持ちを理解して欲しいところだ。・・・・・・と言いたいが、流石に次の竜帝にするべくお孫さんを教育しているらしい」
「教育ねぇ・・・・・・。孫をかまいたいだけじゃないかい?」
「ふむ。・・・・・・かもしれないな」
コンコンコンッ。
エリィ達がいる会議室の扉を誰かが叩きノックをした。
「構わない入りたまえ」
ガラガラ・・・・・・。
エリィ達のいる部屋に入ってきたは、白いきつねの使い魔を連れた錬金医師だった。
「失礼します。長官、急ぎのお話が――」
ドゥーーーンッ!
その時、離れていたためだろう。少しぼやけたような大きな爆発音が外から聞こえてきたのだった。
「その急ぎの話とやらを聞こうか。手早くな」
白髪の紳士は目つきを鋭くしその話を聞いた。
大きな爆発によって舞い上げられた土埃が舞う中、トラジはゆっくり立ち上がった。
「くっそ・・・・・・。何が起きたんだ・・・・・・」
トラジは土煙が酷かったがなんとか周囲を確認する。
馬車は横転していて、それを引かせていた馬の姿は無い。おそらく逃げ去ったのだと思われた。
バーコード親父にしーちゃんとあっくん、そしてミィナを見つけトラジはミィナに駆け寄る。
「ミィナ大丈夫か!起きれるか!!」
トラジは声をかけつつミィナの頬をペシペシと叩いた。
「あむっ!」
「うおっ!食いついた!?」
「じゃりじゃりします~・・・・・・」
「地面を歩いたからな。つーか、汚いからぺっしろ!ぺって!」
「ぺっ!」
「でだ、ミィナは急いでしーちゃんとバーコード親父を起こすんだ。そんで、視界が悪い今のうちに少しでも遠くへ逃げるぞ!」
「はいっ!」
トラジが向かったのはあっくんの所だったのだが、あっくんはその前に自力で立ち上がっていた。
「お前大丈夫か?」
「トラジ。問題無い。少し足が痛む程度」
あっくんの右前足からは、量こそ少ないが出血してるようで毛が少し赤くなっていた。
「手当てしてやりたいが・・・・・・」
「大丈夫だ。走る」
そう言ってあっくんはミィナやしーちゃんいる方へ走っていった。
マジか・・・・・・。
足怪我してるのに、あっくんのやつ俺よりはえー・・・・・・。
「ミィナ、しーちゃんやバーコード親父は大丈夫そうか?」
「はい~。目立った怪我も無いようです」
「良かった。そうと決まれば急いで逃げるぞ!」
「逃がすと思うか?」
そこに白い虎が立ち塞がった。
「し、白くて大きい猫が喋ってます~!」
「猫扱いするな」
ミィナが言葉を聞き分けた!?
という事はコイツ使い魔か!
しーちゃんの顔が白虎を見たとたん険しいものに変わっていく。
まるで最悪の事態に直面してしまったと言わんばかりだ。
「・・・・・・ミィナちゃん。もう逃げるのは無理かもしれないわ」
「ど、どうして!?」
「あの虎はこの国でトップレベルの国家錬金術士・・・・・・。その使い魔かもしれない・・・・・・」
「こんな田舎にあの国家錬金術士が?んな馬鹿な事が――」
「あるんだとしたら、どうする?」
バーコード親父はその国家錬金術士を知っているらしく、その当人らしき人物の登場に驚きのあまり開いた口が塞がらない様子だった。
「さて、言いたい事はあるか?重罪人とその共犯者」
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「ケッ!!お偉い国家錬金術士がこんなガキ相手に何人も兵士連れで、追い詰めるなんて大人として恥を知れってんだ!!」
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「ミィナ!行くぞ!!」
「はいっ!」
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だが、当のしーちゃんの顔色はよくない。逃げ切る事は既に絶望的と見ているようだった。
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「がぁっ!!」
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「他は?」
「邪魔するようなら痛い目を見せてやればいい」
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「人間の使い魔?・・・・・・なるほど、あれが例の。なら、そいつとその主人は決して傷つけるな」
「面倒だ・・・・・・」
「いいから行け」
面倒とは言いつつも、全速力で白虎は走り出した。
「いかせるかよぉー!!」
「邪魔させるわけないだろう」
ドンっ!!
「ぐそぉ・・・・・・」
国家錬金術士の男はバーコード親父の腹に回し蹴りを叩き込み、蹴りを腹にもろに受けたバーコード親父は腹を抱えて倒れた。
この国家錬金術士の男は軍に所属し戦闘経験をも積んでいる。一般人相手なら素手だろうと負けない実力があった。
「ベナード殿。町を捜索および検問をしていた者達の召集はもう少しで終わります」
「とりあえず、そこに蹲っている者を拘束しておけ。召集が完了次第隊列を組み直し目標の捕縛に向かう」
白虎に追われつつ、ミィナ達は走っていた。
「主!先程の虎に追いつかれます!お急ぎを!」
「分かってるわよっ!」
トラジはミィナ達に並走していた。
いつもは抱っこをしたがるミィナもこの状況では、トラジを抱えて走る余裕などなかった。
くそー!あっくん後ろを見る余裕があっていいな。
俺なんてこれで全力だぞ!!
その距離はぐんぐん縮んでいき、白虎はミィナ達の頭上を飛び越え正面から立ち塞がった。
「諦めろ」
ミィナはしーちゃんを庇うように一歩前にでた。
一応、トラジもミィナの前に出るが体のサイズ的に庇うようにとはさすがにいかない。
「・・・・・・諦めたらどうなるんですか~?」
「その娘を連れて行く。それだけだ」
「嫌です~!諦めないために頑張って来たんですから!!」
「ミィナの言うとおりだな。諦めるならもっと前にやってるってーの!」
「そうです~!ご主人様の言うとおりです!」
とは言ったものの・・・・・・、どうする?
まず、援軍は望めない。
なんせ国家転覆の罪だ、協力なんてバカやらかすのは俺達くらいだ。
つまり、時間をただ稼ぐ意味は無い。つーか相手の増援が来て詰むな。
やるならバーコード親父みたいに足止めしつつしーちゃんを逃がすしかない・・・・・・。
「ミィナちゃんありがと・・・・・・・・・・・・。それと猫」
何その間!
「主!ここはお任せを!」
「やめなさいアーガストっ!!」
「そうだぞ。ここは俺とミィナであの虎を足止めする番だ。お前としーちゃんは合図したら逃げろ」
「し、しかし・・・・・・」
「誰を逃がす為にここまで来たと思ってるんだ。主人と使い魔はセットだろ!」
「しーちゃん~!ここは私とご主人様に任せて!」
ミィナは鞄から泥団子を2つ取り出した。
ちなみに、この2つが両親から貰った最後のゴーレムである。
「ミィナちゃん・・・・・・」
白虎は目の前で会話が終わるのを待ってから口を開いた。
「・・・・・・覚悟は決まったか?」
「素直に待っててくれた事には礼を言っておく」
「礼?ならもっと話してていいぞ。その方が楽だ」
「そのサービス精神には嬉し泣きもんだな。だが断る!」
当然だが、白虎はトラジ達の会話が終わるのをただ待っていたわけではない。
傷つけるなと言われていた猫の主人が、トラジかあっくんかで見分けが付かなかったから、見定めようとしていただけだった。
それに、足止めさえ出来ていればそれだけで有利になるというのもある。
「そういや、お前でかいだけあって頭もよさそうだな。計算とかもできたりするのか?」
「当然だ。2桁の足し引きくらいは余裕」
えっ?
国家錬金術士の使い魔なのに2桁の足し引き程度なのか?
通常計算したり等は使い魔の役割でない為、むしろ出来るほうであったりする。
察している人もいるだろうが黒猫は例外だ。
「あ、頭がいいんだなぁ・・・・・・」
「当たり前だ」
「んじゃ問題。21+56は?」
「な、77だ」
「正解で、さらに問題。94+38は?」
「・・・・・・ひゃ、132だ」
「正解!でここがラスト問題、さっきの2つの問題の答えを足すといくつになる?」
「さ、さっきのだと!!むぅ・・・・・・」
おし、考え込んでるな!
今がしーちゃん達を逃がすチャンスだな!
「え~と・・・・・・」
なんでミィナまで考えてんだよ!!
トラジはミィナの足をペシペシ猫パンチで叩き、しーちゃんを行かせろと合図をした。
「し、しーちゃん行って~!」
「わかったわ!」
「すまない。トラジ!あの世でまた会おう!!」
勝手に殺すな!!
そう言ってしーちゃんとあっくんは走っていった。
「ぬっ!!謀ったな!!」
「ちなみに答えは分かったか?」
白虎はミィナとトラジを無視するように急いで駆け出した。
「知るかっ!!!!」
209だよ!!
「ミィナ!命令だ!!あの虎を足止めしろぉ!!」
「はい!」
命令と言ったがトラジは命令のつもりでは言ってはいない。
捕まった場合を考えて、罪を全部引き受けれるようにする為のものだ。
ミィナは特に疑問を持つ事も無く、しーちゃんを助けたい一心で手にした泥団子を地面に投げつけた。
「ムっくんお願い!!」
地面からニョキニョキと這い出し姿を現したのは大きなムカデ型のゴーレムだ。
ムっくんは白虎に向かって突進していく。
「んじゃ、こっちもいくか」
トラジはもう片方の泥団子を両手で持ち上げて地面に叩き付けた。
すると、地面から手が生えた。
「もしかして、これ人型だったりするのかな?」
だが、それだけった。
地面から手が生える以上の変化が見られない。
「これだけかよぉ!!」
「それは~、のびたくんです」
いままでと名前の付け方が違う上に、余計に不安になる名前付けないでほしい!!
猫型のゴーレムとかなかったんだろうか?いや、なければ作ろうそれが錬金術士というもんだろ!
いやいや、猫型は作らなくていいか。本体はお腹のポケットの方だし、作るならそっちだな。
脱線したが、とりあえず今はやる気が出そうな応援をしておこう。
「頑張って!のびたさーーん!!」
「のびたくんです~!」
のびたくんは亀みたいなスピードで白虎に向かって動き出した。
「おそっ!!」
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※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
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