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BOSS戦II
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「ベナード殿どうしますか?」
「決まっている、全員捕まえて縛り上げる。嘘か本当かは知らないが、組合が何か言うようならその時対応すればいい」
「はっ!」
「君はずいぶん疑り深いんだな!ハッハー!」
「お前のようなふざけた奴の言動をいちいち真に受ける方がどうかしている」
ボンッ!
トーマスの近くで小さな爆発が起こるが、トーマスは読んでいたようで素早く避ける。
「初見で今のを避けるか・・・・・・。ただの馬鹿ではなかったらしい」
「私はこうみえても戦闘経験が豊富なんだ!ハッハー!相手の視線や動きで攻撃を多少は読めるんだよ!ハッハー!」
「今のを避けた程度で調子に乗るな」
「すまないが、ちょっと待ってくれるかな?」
ベナードが戦闘体勢になったところでトーマスは待ったをかけた。
そのトーマスの視線の先にはしーちゃんがいた。
「エリュシーくんだったね。ハッハー!この回復薬を飲んでミィナくんのところまで下がっているんだ。ハッハー!」
そう言ってトーマスがしーちゃんに投げて渡したのはビンに入った回復薬だ。
だが、しーちゃんは回復薬を飲む事はしない。
その回復薬をしばし見つめたあと、両手で大事そうに握ってミィナの元まで急いで走って行く。
白虎に傷つけられた背中の痛み耐えながら。
「あの程度の怪我を治したところで意味はない。国家を転覆させようとした罪はそれだけ重い」
トーマスはベナードの方を向く。
「君はあの子がそんな事をすると本当に思っているのかな?ハッハー!」
「少なくとも両親の方は加担していた証拠もある。その可能性は高い」
トーマスはその言葉を聞いてもなお助けようと思う気持ちは変わらなかった。
そして、にこやかに笑って言い切った。
「あの子がやったという証拠がないなら、それが証拠さ!ハッハー!」
ベナードの眉の端がピクリと僅かに動いた。
それと同時にトーマスの左右で二つの小規模な爆発が起こるが、それを分かっていたかのように後ろに下がりトーマスはかわした。
「君は思ったより顔に出やすいようだね。ハッハー!」
「・・・・・・よほど後悔したいらしいな」
ベナードは簡単に片付く相手でない事を悟り気を引き締める。
「全軍!今回の目標およびその協力者を捕縛しろ!」
「「はっ!」」
兵士達が隊列を整えてミィナ達に向かって歩き出し、それを見たトーマスは焦る。
「き、君、それは卑怯じゃないか!?ハッハー!」
「何を勘違いしている?お前達が相手にしているのは元から我々全員だぞ」
トーマスの視線が兵士達の方に向いた事をベナードは見逃さない。
その隙を容赦なく付いた。
ボンッ!
「ぐっ!!」
小規模とはいえ爆発をもろに受けたトーマスは地面を軽くだが転がされる。
「相手の視線や動きで攻撃を読む、か。どうやら本当の事だったらしいな」
「・・・・・・まったく。容赦がないな君は。ハッハー」
地面を転がったトーマスだったが、すぐに体を起こし方膝をついた姿勢のままベナードを見据える。
「当たり前だ。相手の隙を付くのは戦いの基本だ」
「それは、正しい。・・・・・・だが、私は好きではないなっ!ハッハー!」
ベナードがさらに攻撃をしかけようとした時だった。
トーマスは地面の砂を握りあたりに勢いよく撒き散らし、もう片方の手で小石をミィナ達と兵士達の間にぶん投げた。
「そんな子供だましな真似をしてなんのつもりだ?」
「君の爆発する攻撃は目で見える所にしか出来ないじゃないかと思ってね。当たりだろ?ハッハー!」
「それがどうした?その程度、お前ごと纏めて吹き飛ばせる」
「だろうね!ハッハー!」
トーマスは小石をもう一つ拾い上げベナードにもぶん投げた。
当然だが、ただ小石を敵に当ててダメージを与えようとしたわけではない。
これは、トーマスの遠距離戦においての奥の手だ。
「避けた方がいいぞ!ハッハー!」
トーマスは両手の手袋型の魔道具、終始一貫の理を発動させる。
始点は小石を投げた位置でその終点は当然小石だ。
それも、2つの小石それぞれに左右の手袋で始点と終点を2つ付けていた。
投げられた小石目掛けて一つ目の空気の弾丸が飛んでいき小石をさらに遠くへ飛ばし、さらにその小石を目掛けて2つ目の空気の弾丸が威力と速度を上げて飛んで行く。
二つ目の空気の弾丸、その威力はすさまじく余波だけでミィナ達に向かっていた兵士達が吹き飛ばされる。
「避けるだと?」
ベナードは不適に笑う。
目の前で向かってくる小石、その後ろの威力を増した空気の弾丸を目にしながらだ。
まともに受ければ死ぬかもしれない。それ程の威力であるだろう事を理解しながらも余裕の姿勢を崩さず避けようともしない。
その姿はまるで何の脅威にもならないと言っているかのようだった。
そして次の瞬間、ドカーンという音と供に大きな爆発が空気の弾丸を纏めて吹き飛ばした。
「言ったはずだ。纏めて吹き飛ばせるとな」
爆発によって巻き上げられた砂埃が舞う中、ベナードは余裕の姿勢を崩さなかった。
「これを待っていたんだ!ハッハー!」
目で見えない所に爆発する攻撃はできない。
トーマスはそれを狙い大きな爆発を起こさせ、砂埃を巻き上げさせた。
巻き上げられた砂埃の壁を突き破り、トーマスはベナードに殴りかかった。
「接近戦なら勝てるとでも?舐められたものだ」
敵が近すぎると自身を巻き込む為に、爆発を起こす魔道具は使うことはできない。
だが、ベナードは素手でも戦えるよう訓練を積んでいる。
その為にその顔に依然として焦る様子はない。
そして、トーマスとベナードの激しい接近戦が始まった。
その回復薬をしばし見つめたあと、しーちゃんは両手で大事そうに握ってミィナの元まで急いで走って行く。
その姿を見てトラジは理解する。
あっくんに回復薬を飲ませるつもりなんだと。
「トラジ、あなたもミィナさん達の所まで下がってて頂戴」
黒猫は白虎から目を離すことなくトラジに向かってそう言った。
「まさか一匹であいつを相手にするつもりか!そんな危ない事させるわけには――」
「いいから下がってて!この場で一番危ないのはトラジ、あなたなのよ」
「・・・・・・」
トラジはのびたくんを見やる。
すでに根元の方にあるであろうコアを、兵士達に壊されたのだろう。
ただの土の山となっていた。
もう俺に出来る事はないのか?
このまま下がって、黒猫があっくんみたいな事になりでもしたら・・・・・・。
「安心しなさい。私は強いから。でも、そうね・・・・・・」
「ん?」
「こんど、・・・・・・そのぉ」
黒猫は白虎の方を見ていたため、トラジにはその顔色を伺う事はできない。
ただ後ろからでも見えた尻尾と猫髭がピクピクしていた。
「どうした?」
「やっぱり、なんでもないわ。もういいから下がってなさい!!」
「お、おう。今度一緒に飯でも食おう!だから無事でいろよ!」
トラジは黒猫の言葉を信じて、ミィナ達の所へ走って行った。
「まったく・・・・・・。さっきからあなたしつこいわよ!おかげで言えなかったじゃない!!」
「相手の隙を狙うのは当然だ」
トラジには見えない為に何が起きているか分からないが、先ほどから白虎は魔力の玉を飛ばしまくっており、その魔力の玉を黒猫は同じく魔力の玉をぶつけ相殺していたのだ。
ちなみにだが、白虎のせいにしているが白虎のせいで『言えなかった』わけではない。
「私はね、仕事はきっちりやるタイプなの。隙なんてないわよ」
「そうか?動揺してるように見えるが?」
「む、むしろ逆よ!なんたって・・・・・・」
「一緒にご飯なんだからっ」と思わず視線をトラジの方に向けそうになりつつも、小声で誰にも聞こえないように言った。
「何か言ったか?」
「何でもないわよっ!!」
白虎は飛ばす魔力の玉数を増やし、黒猫もそれに応戦した。
「命令よ!いいから飲みなさい!!」
トラジがミィナ達の所まで駆け寄るとしーちゃんが涙目になりながら大声を出していた。
どうしたんだ?と疑問に思ったトラジであったが、次のあっくんの言葉を聞いてすぐにその疑問は解けた。
「主が、飲んで下さい・・・・・・」
どうみても大怪我をしているはずのあっくんが、あろうことか自分の怪我よりも主であるしーちゃんの怪我を心配し優先しようとしていたのだ。
しかも命令に逆らいながら。
俺から見ても重傷なのはあっくんだ。それも、下手したら命の危機すらありえるレベルで・・・・・・。
もしかしたら痛覚が麻痺して自分の状態を正しく認識できてないのかもしれないな。
俺がこっちに転生した時も、瀕死の状態なのに痛みも無かったし妙なくらい冷静だった。
こいつの場合は冷静だからこそ主人を優先しているんだろう。
基本的には逆らえないはずだが痛覚が麻痺しちまってるくらい弱っているわけだし、体が命令の効果を受けにくくなっているのかもしれない。
トラジは自分の経験から今のあっくんの状態を推測する。
前の俺に近い状態だとしたら・・・・・・、マジで危ない状態かもしれない!
「ダメだ!お前がその回復薬を飲むんだ!!」
「し、しか、し・・・・・・」
「これ以上主人を泣かすな。お前は使い魔だろう!それに俺だって、お前には無事でいて欲しいんだぞ!」
「私だって同じです!だから飲んで下さい!!」
「ミィナ様。トラジ・・・・・・」
あっくんは改めてみんなの顔を見る。
自分を心配そうに見る顔を見ていると情けなさと嬉しさで自然と涙が一滴目から落ちた。
「もういちど言うわ。命令よ!飲みなさいっ!!」
あっくんは主人である涙目のしーちゃんの顔を見つめ決意する。
主のこの恩に、生きて、生きて、生きて、恩を返そう。
そして、『もう悲しませないようにしよう』そう決意したのだった。
「主・・・・・・。わかりました」
あっくんは飲みづらそうにしながらも、なんとか顔を上げて口の中にゆっくり流し込まれる回復薬を飲んでいった。
「・・・・・・ぐっ!!ゲホッゲホッ!」
飲み終わったと同時に苦しそうにしながらあっくんは咳き込み出した。
「アーガスト!どうしたの!?」
「主、傷口が痛みだしただけです・・・・・・」
「だけって・・・・・・それは大丈夫なの?」
「大丈夫、それでいいんだ。体の正常な機能が戻りだしたんだと思う。むしろその怪我で痛みを感じてなかったさっきの状態の方が危険だ」
「・・・・・・そ、そうか」
「危険な状態は脱したんだろうが、怪我は治りきってない。無理をすればまたさっきの状態になるかもしれないから、大人しくして――」
大きな爆発音がトラジの後の言葉を打ち消した。
音のした方を見るとトーマスがいた方向だった。
砂埃がその方向を覆い隠しその先を伺い知ることは出来そうになかった。
「あっちは、・・・・・・大丈夫なのか?」
ここでトーマス達が負ければ、しーちゃんとその使い魔であるあっくんは兵士達にあっさり連れてかれてしまうだろう。
国家転覆の容疑が掛かった相手にまともな治療をするかは怪しい、そうなればあっくんの命も危うい。
さらに、共犯扱いにされてしまっているミィナやトラジもただでは済まないだろう。
エリィはまだなのか・・・・・・?
もしこの状況を覆せるとすれば、あのカイザースライムを両断してみせたエリィだけだろう。
たのむ、間に合ってくれ!
「まったく、黒猫もトーマスも急いで飛び出したくせにまだ終わってなかったのかい。めんどくさいねぇ」
「後から来ておいて文句言わないで下さい!」
「申し訳ないエリィさん!ハッハー!!」
そしてついにエリィが現れる。
それも白いキツネを連れた医術士を連れて。
「おお!あれは聖女様ではないかっ!!」
・・・・・・聖女ってだれだ?
「面倒な事になった・・・・・・」
この場で唯一、聖女の意味を知る使い魔はエリィの登場で頭が痛くなった。
「決まっている、全員捕まえて縛り上げる。嘘か本当かは知らないが、組合が何か言うようならその時対応すればいい」
「はっ!」
「君はずいぶん疑り深いんだな!ハッハー!」
「お前のようなふざけた奴の言動をいちいち真に受ける方がどうかしている」
ボンッ!
トーマスの近くで小さな爆発が起こるが、トーマスは読んでいたようで素早く避ける。
「初見で今のを避けるか・・・・・・。ただの馬鹿ではなかったらしい」
「私はこうみえても戦闘経験が豊富なんだ!ハッハー!相手の視線や動きで攻撃を多少は読めるんだよ!ハッハー!」
「今のを避けた程度で調子に乗るな」
「すまないが、ちょっと待ってくれるかな?」
ベナードが戦闘体勢になったところでトーマスは待ったをかけた。
そのトーマスの視線の先にはしーちゃんがいた。
「エリュシーくんだったね。ハッハー!この回復薬を飲んでミィナくんのところまで下がっているんだ。ハッハー!」
そう言ってトーマスがしーちゃんに投げて渡したのはビンに入った回復薬だ。
だが、しーちゃんは回復薬を飲む事はしない。
その回復薬をしばし見つめたあと、両手で大事そうに握ってミィナの元まで急いで走って行く。
白虎に傷つけられた背中の痛み耐えながら。
「あの程度の怪我を治したところで意味はない。国家を転覆させようとした罪はそれだけ重い」
トーマスはベナードの方を向く。
「君はあの子がそんな事をすると本当に思っているのかな?ハッハー!」
「少なくとも両親の方は加担していた証拠もある。その可能性は高い」
トーマスはその言葉を聞いてもなお助けようと思う気持ちは変わらなかった。
そして、にこやかに笑って言い切った。
「あの子がやったという証拠がないなら、それが証拠さ!ハッハー!」
ベナードの眉の端がピクリと僅かに動いた。
それと同時にトーマスの左右で二つの小規模な爆発が起こるが、それを分かっていたかのように後ろに下がりトーマスはかわした。
「君は思ったより顔に出やすいようだね。ハッハー!」
「・・・・・・よほど後悔したいらしいな」
ベナードは簡単に片付く相手でない事を悟り気を引き締める。
「全軍!今回の目標およびその協力者を捕縛しろ!」
「「はっ!」」
兵士達が隊列を整えてミィナ達に向かって歩き出し、それを見たトーマスは焦る。
「き、君、それは卑怯じゃないか!?ハッハー!」
「何を勘違いしている?お前達が相手にしているのは元から我々全員だぞ」
トーマスの視線が兵士達の方に向いた事をベナードは見逃さない。
その隙を容赦なく付いた。
ボンッ!
「ぐっ!!」
小規模とはいえ爆発をもろに受けたトーマスは地面を軽くだが転がされる。
「相手の視線や動きで攻撃を読む、か。どうやら本当の事だったらしいな」
「・・・・・・まったく。容赦がないな君は。ハッハー」
地面を転がったトーマスだったが、すぐに体を起こし方膝をついた姿勢のままベナードを見据える。
「当たり前だ。相手の隙を付くのは戦いの基本だ」
「それは、正しい。・・・・・・だが、私は好きではないなっ!ハッハー!」
ベナードがさらに攻撃をしかけようとした時だった。
トーマスは地面の砂を握りあたりに勢いよく撒き散らし、もう片方の手で小石をミィナ達と兵士達の間にぶん投げた。
「そんな子供だましな真似をしてなんのつもりだ?」
「君の爆発する攻撃は目で見える所にしか出来ないじゃないかと思ってね。当たりだろ?ハッハー!」
「それがどうした?その程度、お前ごと纏めて吹き飛ばせる」
「だろうね!ハッハー!」
トーマスは小石をもう一つ拾い上げベナードにもぶん投げた。
当然だが、ただ小石を敵に当ててダメージを与えようとしたわけではない。
これは、トーマスの遠距離戦においての奥の手だ。
「避けた方がいいぞ!ハッハー!」
トーマスは両手の手袋型の魔道具、終始一貫の理を発動させる。
始点は小石を投げた位置でその終点は当然小石だ。
それも、2つの小石それぞれに左右の手袋で始点と終点を2つ付けていた。
投げられた小石目掛けて一つ目の空気の弾丸が飛んでいき小石をさらに遠くへ飛ばし、さらにその小石を目掛けて2つ目の空気の弾丸が威力と速度を上げて飛んで行く。
二つ目の空気の弾丸、その威力はすさまじく余波だけでミィナ達に向かっていた兵士達が吹き飛ばされる。
「避けるだと?」
ベナードは不適に笑う。
目の前で向かってくる小石、その後ろの威力を増した空気の弾丸を目にしながらだ。
まともに受ければ死ぬかもしれない。それ程の威力であるだろう事を理解しながらも余裕の姿勢を崩さず避けようともしない。
その姿はまるで何の脅威にもならないと言っているかのようだった。
そして次の瞬間、ドカーンという音と供に大きな爆発が空気の弾丸を纏めて吹き飛ばした。
「言ったはずだ。纏めて吹き飛ばせるとな」
爆発によって巻き上げられた砂埃が舞う中、ベナードは余裕の姿勢を崩さなかった。
「これを待っていたんだ!ハッハー!」
目で見えない所に爆発する攻撃はできない。
トーマスはそれを狙い大きな爆発を起こさせ、砂埃を巻き上げさせた。
巻き上げられた砂埃の壁を突き破り、トーマスはベナードに殴りかかった。
「接近戦なら勝てるとでも?舐められたものだ」
敵が近すぎると自身を巻き込む為に、爆発を起こす魔道具は使うことはできない。
だが、ベナードは素手でも戦えるよう訓練を積んでいる。
その為にその顔に依然として焦る様子はない。
そして、トーマスとベナードの激しい接近戦が始まった。
その回復薬をしばし見つめたあと、しーちゃんは両手で大事そうに握ってミィナの元まで急いで走って行く。
その姿を見てトラジは理解する。
あっくんに回復薬を飲ませるつもりなんだと。
「トラジ、あなたもミィナさん達の所まで下がってて頂戴」
黒猫は白虎から目を離すことなくトラジに向かってそう言った。
「まさか一匹であいつを相手にするつもりか!そんな危ない事させるわけには――」
「いいから下がってて!この場で一番危ないのはトラジ、あなたなのよ」
「・・・・・・」
トラジはのびたくんを見やる。
すでに根元の方にあるであろうコアを、兵士達に壊されたのだろう。
ただの土の山となっていた。
もう俺に出来る事はないのか?
このまま下がって、黒猫があっくんみたいな事になりでもしたら・・・・・・。
「安心しなさい。私は強いから。でも、そうね・・・・・・」
「ん?」
「こんど、・・・・・・そのぉ」
黒猫は白虎の方を見ていたため、トラジにはその顔色を伺う事はできない。
ただ後ろからでも見えた尻尾と猫髭がピクピクしていた。
「どうした?」
「やっぱり、なんでもないわ。もういいから下がってなさい!!」
「お、おう。今度一緒に飯でも食おう!だから無事でいろよ!」
トラジは黒猫の言葉を信じて、ミィナ達の所へ走って行った。
「まったく・・・・・・。さっきからあなたしつこいわよ!おかげで言えなかったじゃない!!」
「相手の隙を狙うのは当然だ」
トラジには見えない為に何が起きているか分からないが、先ほどから白虎は魔力の玉を飛ばしまくっており、その魔力の玉を黒猫は同じく魔力の玉をぶつけ相殺していたのだ。
ちなみにだが、白虎のせいにしているが白虎のせいで『言えなかった』わけではない。
「私はね、仕事はきっちりやるタイプなの。隙なんてないわよ」
「そうか?動揺してるように見えるが?」
「む、むしろ逆よ!なんたって・・・・・・」
「一緒にご飯なんだからっ」と思わず視線をトラジの方に向けそうになりつつも、小声で誰にも聞こえないように言った。
「何か言ったか?」
「何でもないわよっ!!」
白虎は飛ばす魔力の玉数を増やし、黒猫もそれに応戦した。
「命令よ!いいから飲みなさい!!」
トラジがミィナ達の所まで駆け寄るとしーちゃんが涙目になりながら大声を出していた。
どうしたんだ?と疑問に思ったトラジであったが、次のあっくんの言葉を聞いてすぐにその疑問は解けた。
「主が、飲んで下さい・・・・・・」
どうみても大怪我をしているはずのあっくんが、あろうことか自分の怪我よりも主であるしーちゃんの怪我を心配し優先しようとしていたのだ。
しかも命令に逆らいながら。
俺から見ても重傷なのはあっくんだ。それも、下手したら命の危機すらありえるレベルで・・・・・・。
もしかしたら痛覚が麻痺して自分の状態を正しく認識できてないのかもしれないな。
俺がこっちに転生した時も、瀕死の状態なのに痛みも無かったし妙なくらい冷静だった。
こいつの場合は冷静だからこそ主人を優先しているんだろう。
基本的には逆らえないはずだが痛覚が麻痺しちまってるくらい弱っているわけだし、体が命令の効果を受けにくくなっているのかもしれない。
トラジは自分の経験から今のあっくんの状態を推測する。
前の俺に近い状態だとしたら・・・・・・、マジで危ない状態かもしれない!
「ダメだ!お前がその回復薬を飲むんだ!!」
「し、しか、し・・・・・・」
「これ以上主人を泣かすな。お前は使い魔だろう!それに俺だって、お前には無事でいて欲しいんだぞ!」
「私だって同じです!だから飲んで下さい!!」
「ミィナ様。トラジ・・・・・・」
あっくんは改めてみんなの顔を見る。
自分を心配そうに見る顔を見ていると情けなさと嬉しさで自然と涙が一滴目から落ちた。
「もういちど言うわ。命令よ!飲みなさいっ!!」
あっくんは主人である涙目のしーちゃんの顔を見つめ決意する。
主のこの恩に、生きて、生きて、生きて、恩を返そう。
そして、『もう悲しませないようにしよう』そう決意したのだった。
「主・・・・・・。わかりました」
あっくんは飲みづらそうにしながらも、なんとか顔を上げて口の中にゆっくり流し込まれる回復薬を飲んでいった。
「・・・・・・ぐっ!!ゲホッゲホッ!」
飲み終わったと同時に苦しそうにしながらあっくんは咳き込み出した。
「アーガスト!どうしたの!?」
「主、傷口が痛みだしただけです・・・・・・」
「だけって・・・・・・それは大丈夫なの?」
「大丈夫、それでいいんだ。体の正常な機能が戻りだしたんだと思う。むしろその怪我で痛みを感じてなかったさっきの状態の方が危険だ」
「・・・・・・そ、そうか」
「危険な状態は脱したんだろうが、怪我は治りきってない。無理をすればまたさっきの状態になるかもしれないから、大人しくして――」
大きな爆発音がトラジの後の言葉を打ち消した。
音のした方を見るとトーマスがいた方向だった。
砂埃がその方向を覆い隠しその先を伺い知ることは出来そうになかった。
「あっちは、・・・・・・大丈夫なのか?」
ここでトーマス達が負ければ、しーちゃんとその使い魔であるあっくんは兵士達にあっさり連れてかれてしまうだろう。
国家転覆の容疑が掛かった相手にまともな治療をするかは怪しい、そうなればあっくんの命も危うい。
さらに、共犯扱いにされてしまっているミィナやトラジもただでは済まないだろう。
エリィはまだなのか・・・・・・?
もしこの状況を覆せるとすれば、あのカイザースライムを両断してみせたエリィだけだろう。
たのむ、間に合ってくれ!
「まったく、黒猫もトーマスも急いで飛び出したくせにまだ終わってなかったのかい。めんどくさいねぇ」
「後から来ておいて文句言わないで下さい!」
「申し訳ないエリィさん!ハッハー!!」
そしてついにエリィが現れる。
それも白いキツネを連れた医術士を連れて。
「おお!あれは聖女様ではないかっ!!」
・・・・・・聖女ってだれだ?
「面倒な事になった・・・・・・」
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誤字報告
人気の薄い動物たちから講義
ではなく 抗議 です。
面白いと言って貰えて良かったです。それと、誤字報告ありがとうございます!
修正しておきますね。
面白そうな話なので期待しています。
面白そうと思って貰えただけでも嬉しいです!ありがとう!
続けてそう思って貰えるように頑張ります!
途中途中シリアスな話がありますが、基本は笑えるような話多めを目指してたりしてます。