女神様から同情された結果こうなった

回復師

文字の大きさ
160 / 184
商都フォレスト編

3-6 異世界料理?フィリアの身バレ?

しおりを挟む
 奴隷商を出て、近くにあった宿屋内の食堂で奴隷たちの腹ごしらえを行っている。注文してからの待ち時間に、ある程度俺たちの説明をしておこうと思う。

「セバス、悪いが俺たちは貴族じゃない……」
「はい、承知しております」

「え? 貴族っぽく話していたつもりだったけどダメだった?」
「いえ、旦那様はそれっぽくは見えましたが……お嬢様方の立ち居振る舞いで一目瞭然でございました」

「そうなんだ……」

「例えば今もそうでございますね……そちらのお嬢様はチロル様と歳は同じくらいとお見受けしますが、貴族のご令嬢というより商家のお嬢様という感じですね」

「あなた……もうその娘は……」
「そうであったな……チロルをご覧ください。椅子に浅く腰掛け、足を地にしっかりつけ、背筋を真っ直ぐ伸ばしてちょこんと大人しく座っています……ですが……」

 そう言って、雅の方を見た……同じくらいの背丈の雅は、深く椅子に座って背もたれに背をあずけているため、足が地についていない……しかも子供っぽく足をピコピコ跳ねて落ち着きがない……確かに貴族令嬢と、商家のお嬢様って感じで、あからさまに違う。

 途中でマイヤー夫人が言葉を止めさせたのは、チロルの事をつい昔の癖でチロル様と呼んだためだ。チロルはもう貴族でもないし、雇い主の子供でもない……これから礼節を教える立場なのだから、マイヤーが様呼びを注意したのは当然だな。

「うちは貴族じゃなく勇者パーティーなんだ。この世界の人間でもないので、いろいろこの世界の法や規則などが知りたい。明日、公爵家からそういう指導をしてくれる者がくるが、その人をずっと同行させるつもりはないのであなたたちを急遽買った次第だ」

 勇者パーティーと言ってもピンとこなかったようなので、少しこれまでの経緯を説明した。

「そうでございましたか……神による勇者召喚が行われたと噂には聞いておりましたが、旦那様たちが……確かに国の手配する者を同行させていては、国に逐一行動を監視されているのと変わらない事です。ですが、そのような世界の存亡に関わるほどのお方のクランに、私どものような子爵家を没落させてしまった家宰で宜しかったのでしょうか……」

 マイヤーやクレア、エリスまで勇者一行と聞き不安げな顔だ。そういえばエリスには関わらないようにしていたので、バグナーに会うまでお互い名すら知らなかったほどだ……かなり驚いている。


「俺たちの国では縁というものを大事にする。色々な行動や選択で繋がった縁なのだから、俺たちの関係はそういう巡り合わせだったのだろう」

「縁でございますか……そうかもしれませんね。終身奴隷に落とされ、残り少ない余生を夫婦で過ごせないのか……と愁いていたところを夫婦共々拾って頂きました。老骨でもお役にたてるなら、心血を注いで御恩をお返ししたいと思います」

「今後王族や神殿の高い地位の者とも関わってくるので、最低限のマナーを今居る奴隷たちに躾けてほしいのだ」

「今、旦那様たちは何人ほどのクランなのでしょう? 後、旦那様たちの方への指導は宜しいのですか?」
「現状奴隷が8人、君たちを入れたら12人。勇者パーティーが21人だ。俺たちにもある程度のマナー教育はしてもらうつもりだけど、それほどきっちりやるつもりはない。俺たちはこの世界の人間ではないからね。ルールは守るつもりだけど、王族だから、貴族だからと言って、俺たちを抑制する事はさせない。国が無理強いして邪魔してくるようなら、邪神討伐の前にその国を滅ぼしてやる……」

「「!!…………」」

 ちょっと引かれてしまったかな……。

「まぁ、心配するな。一応女神フィリアが選んだ勇者パーティーだ。悪いやつはいないよ。こちらから国に喧嘩を売るようなこともしないし、できるだけ多くの者を助けたいとも思っている。今回こうやって躾教育をしてもらうために奴隷を買ったのも事前にトラブルを避けるためだしね」

「思ったより大所帯でございますね。その奴隷の中に掃除や洗濯、料理のできる者は居るのでしょうか? 家事全般の指導はマイヤーが全て教えこむ事ができますが、調理技術は流石にプロには及びません。王侯貴族を招待する機会がございますのでしたら、名のある料理人を雇われた方が宜しいかと思われます」

「その辺は問題ない。明日見てもらうけど、実はうちの屋敷は基本掃除や洗濯などする必要がない」
「あの? どういうことでしょう?」

「屋敷全体に俺のオリジナル魔法の【ハウスクリーン】の魔法が施せるようになっている。掃除や洗濯は魔力を注ぎ込めば【クリーン】で一瞬で終える。食器洗いもそうだな。うちは家事で奴隷が苦労する事はないぞ。調理もプロ並みの娘たちが沢山いるので多分大丈夫だろう。この世界の料理がどんなものか食べてみないと分からないけどね」


 いろいろ話しているうちに料理が運ばれてきた。

 ・オークのステーキ
 ・ハリハリネズミの香草焼き
 ・野菜スープ
 ・黒パン
 ・生野菜のサラダ

 奴隷たちは皆、美味しそうに食べている。

「セバス、マイヤー、今食べてる料理は美味しいのか? 点数を付けるなら何点だ?」

「この店は宿屋ですが、それなりに美味しいですね。私的には85点ですかね」
「大変美味しゅうございますが、80点ですかね。残念ながら王侯貴族に出せるようなものではございません」

「エリス、クレア、チロルはどうだ? 何点付ける?」

 う~ん……。

 セバス  85点
 マイヤー 80点
 エリス  100点
 クレア  90点
 チロル  85点

 これまで食べていた物によって個人差がかなりあるようだ。

「あの、旦那様たちはどうなのでしょう?」

「俺は75点、美味しいけど、また来たいと思えるほどじゃないね」
「ん、70点……不味くはないけど、美味しくもない」
「70点ですね。最近美味しい物を毎日食べていたので、少し口が贅沢になっているのかもしれません」

「随分評価が低いようですね……」

 オークステーキを2枚出して皆に切り分けてやった。

「うちで出すオークステーキと言ったら、これが最低ランクのやつだ……」

「「「美味しい!」」」

「これならどこに出しても良いお味です……それより、旦那様の【亜空間倉庫】はひょっとして……」

「ああ、マイヤーもクレアも気づいたようだね?」
「「はい……驚きました」」

「俺は良い人材を手に入れられたみたいで嬉しいよ。気付きもしないで美味しいと食べる娘も嫌いではないけど、それなりの知識と頭の回転の速い者の方が有用性はあるからね」

「ご主人様ごめんなさい……」

 農家の娘のエリスはまだ解っていないようだ。
 クレアさんは元商人だし、時間停止機能のある【亜空間倉庫】のことは知っていて当然だろうからね。

 チロルにプリンを出してあげたかったけど、味見のオークは別として、店の中への持ち込みは失礼だと思い自重した。


「それにしても、奴隷の価格おかしくないか?」

「どういう事でしょう? 旦那様の話術で相場より安く買われたと思いますが」
「いや、安過ぎるって話だ……契約奴隷より終身奴隷を買った方が遥かに安いんじゃないか?」

 普通に雇うより終身奴隷の方が日割りしたら遥かに安いと思ったのだ。

 例えば日給5千ジェニーで契約奴隷を1年雇ったとしよう。実労300日で計算したとして1年で150万ジェニーにもなる。クレアが500万ジェニーだったから、4年もしないでお得になる計算だ。

「ああ、そういう事ですか……旦那様はご存じなかったのですね。終身奴隷には年税がかかるのです。用途によってかかる税も変わるので、自己の資産配分を考えて購入しなくては税で苦しむことになります……性奴隷などは飽きがきたり、若い娘の方が良いでしょうから、数年で買い換える者の方が多いです。何カ所も転々とする奴隷には購入者が付きませんし、飽きたからと処分するのにもお金が要りますので、終身奴隷の方がお得とは限りません。終身奴隷は生きる希望を失った者が殆んどですので、使いにくいというのも理由の1つに挙げられます」

 成程ね……一生自由がないと思えば病んでも仕方がないよな。やる気のない病んだ人間を扱うのは難しい……【奴隷紋】で縛っているので、無理やり働かせることは可能だが、やる気のない人間が雑な仕事をするのは目に見えている。


 もっといろいろ話が聞きたかったが、クレアがソワソワしてたので今日は帰る事にする。娘の安否が気になるのだろう……。

「明日の午前中には迎えに来るので、2人は宿で待機しててくれ」
「「はい、お待ちしております」」



 セバス夫婦と別れて、拠点に戻る。エリス、クレア、チロルの【個人認証】をし、ログハウスに入った。

「セシル! ああ、良かった……旦那様、ありがとうございます!」
「え? お母さん! 嘘! ご主人様? どうしてお母さんがここに……」

「奴隷商で見つけて連れてきてあげたよ。お父さんまでは流石に面倒見きれないけどね……」
「ご主人様、ありがとうございます! お母さんとはもう二度と会えないと思っていました……嬉しいです!」

 2人で抱き合ってわんわん泣いている。

「龍馬君……その娘、やっぱり売らなかったんだ?」
「途中で奴隷商に売りに向かっているバグナーさんに偶然会ってね。菜奈と雅がやっぱり可哀想だからって止めたんだよ。迷惑かけそうなら、その分は菜奈と雅にサポートさせるようにね。エリスとチロルは菜奈と雅が責任を持ってくれるそうだから、何かあったら俺じゃなく2人に言ってね」

「そうなんだ……まぁいいわ。王都に着いたら売り子でもやってもらうから、特に問題ないわ」

 桜的には歓迎してくれるようだ。それよりなにか全体の雰囲気が重い。

「桜、何かあったのか?」
「ええ、フィリアが自分が例のミスした女神だって、あなたが出て行った後に大影先輩と柴崎先輩に言っちゃったのよね……」

「あたた……いずれは言うつもりだったけど、もっと仲良くなってからにすればいいのになぁ~困った女神様だ……」

「そうね……フィリアの気持ちも分かるけど、タイミングって大事よね」

「とりあえず皆を集めてくれるか? 新しく入った人の紹介と部屋割りを決めなおさなきゃいけないからね」


 さて、大影先輩たちがどんな対応をするかで今後の方針がかなり変わってくる。フィリアを拒絶するなら、2人にはここを出てもらい、明日にでも王都に出発する。秘密厳守ができないようなら、体育館組からフィリアが責められる可能性があるからだ。そうなったら、ここには居られない……。


 できれば面倒な事にはなってほしくないな。
しおりを挟む
感想 523

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...