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商都フォレスト編
3-10 共同マンション?管理人の指名?
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昨晩、高畑先生に何人ぐらいが今の拠点に残るのか聞き取り調査をしてもらった。
あまりこの世界の事を知らない現状では、自立してこの拠点を後にするのは勇気がいるようで、直ぐに出て行こうとする者は1割ほどしかいなかった。その反面10日ほど様子を見てから出て行く者は4割を超える。
その者たちは俺と同じく、大部屋での集団生活に強い苦痛を感じる人たちだ。
学園の寮も相部屋だが、8畳ほどの2人部屋で、間にカーテンの間仕切りがあったのでそれほど苦にはならなかった。
俺は入学して半年ほどで、相方が佐竹たちを恐れて部屋を出て行ったので、最後の方は1人部屋になっていたけどね。
2人部屋でも、相方次第では苦になる場合がある……イビキとか歯軋りなんかがその代表格だろう。それ以外でも価値観の違いや性格の不一致で喧嘩になって部屋替え申請をする者も結構いた。桜や雅、菜奈や俺みたいなMMOを深夜までやる人の隣はさぞや腹立たしかっただろう……キーボードをカタカタ叩く音や、小声でも他人のボイスチャットは耳障りなものだ。
菜奈の相方だった未来は、ヘッドホンで安眠ミュージックをいつも聞きながら寝ていたようでぐっすりだったそうだけど……それってやっぱ最初はうるさかった為の対策なんだろうと思う……未来ちゃんごめん、そのMMOの相手は俺と雅です……時々綾ちゃんも交じってました……マジ御免なさい。
体育館組の拠点は、おおざっぱに暗幕で間仕切りしてあるだけでプライバシーなんか全くない……郊外での移動中ならともかく、ここでずっと暮らすのは普通では考えられない。あくまでテントの野宿よりは遥かに快適だというだけだ。
というわけで、【ハウスクリエイト】で女子寮を建造してあげた。
「流石にここで生活をするのは苦痛でしょう。人数に制限はありますが、6畳ほどのワンルームマンションを建造してみました」
1Fに20人ほどが入れる大浴場と50人ほどが一度に座れる食堂を作った。
2F・3Fは同じ造りで、6畳一間で各30人が入居できる。合計60人が入居できるワンルームマンションだ。
窓はガラスが少ないので、1mほどの明かり窓を木枠で作ってはめ込んであるだけだ。風呂とトイレは部屋にはなく、風呂は1Fで、トイレは各フロアに設置してある共同トイレを使う事になる。【エアコン】の付与が付いた空調設備と【ライト】が付与してある照明設備だけは各部屋に付けてある。
「小鳥遊君ありがとう! 流石にプライバシーが全くない此処は、私もちょっときつかったの」
「高畑先生、先に言っておきますが、もう無償で提供はしませんよ。新しく造った物は賃貸住宅です。前にも言いましたが、ずっとあなたたちの面倒を見る気はありません。こっちの拠点は無償で提供しますが、新しく作った方は賃貸ですので有料です」
「「「えええ~~!」」」
女子からブーイングが上がったが、いつまでも甘えるな! 逆にうちの嫁たちからは嬉しそうな雰囲気が出ている……何故?
『……直ぐに安定した資金源を確保したマスターの甲斐性に喜んでいるのですよ。嫁になるなら資産力は自分たちの幸福度にも直結しますからね……不和の夫婦の7割は貧困からくるモノだそうです。次に多い姑問題も結局は資金力があれば解決する問題ばかりだそうです』
『そうなんだ……まぁ、喜んでくれてるならいいよ』
「60人という人数制限があるので、そこはそちらで話し合ってください。4F建てにしようかとも考えましたが、1F増やすだけで強度面でいろいろ面倒だったので3F建てにしました。いずれは王都に行ったり、周辺の宿屋で自立する者も出てくるだろうと思い、60人としています。ワンルームの風呂トイレ共同ですが、各部屋空調が付いていますので、一室月に2万ジェニーほど頂くことにします。ちなみに王都にも同じものを設置してあげますので、向こうに行っても快適な住居は確保できるのでその点はご安心を……」
「2万か……それって安いの? 高いの?」
「商都の宿屋で一番安い素泊まりが2千ジェニーです。一般的な宿屋は風呂自体がないし、トイレも共同です。たとえ一軒家を借りても風呂付はあまりないそうです。風呂はこの世界では贅沢なものなので、貴族や大商人でもない限り、滅多に入れないそうですよ。それに空調付なんか高級宿屋しか設置されてないらしいです。2万とか破格じゃないですか?」
「そう聞かされればそんな気がするわね……そうだ、商業ギルドの受付のお姉さんなら詳しいわよね?」
「私ですか? え~~と、確かに賃貸住宅の斡旋や、販売も行っていますけど……現物を見てみない事にははっきりとは言えませんが、お風呂があって、部屋に温度調整と照明の魔道具が設置してあるなら、1カ月10万ジェニーでも安いのではないでしょうか?」
10万でも安いのか……2万は安過ぎたか? 月に120万の収入になるから良いかと思ったのだが、税金も引かれるらしいし、もう少し上げるか?
「あ、そうだ! 食堂は付いているんだけど、キッチンスタッフは居ないんだよね。それって商業ギルドで雇えるのかな? それとも冒険者ギルド?」
「どちらでも人材は雇えますが、料理人でしたら商業ギルドですね。60人分の調理でしたら、料理人が3名と朝夕にパートさんが3、4名いれば賄えるのではないでしょうか? これ以上少ないと怪我や病気で誰かが休んだ場合、その日は休業しないといけなくなるので少なすぎるのはお薦めしません」
この商業ギルドのお姉さん、横で話を聞いてただけで適切なアドバイスをしてくれる。
できる女性は良いね~。
「う~~ん、料理人を雇っていたら2万じゃ収益がないですね……やっぱ、食事代は別でもらうかな……」
「龍馬君、料理部から何人か残る?」
「茜、却下だ。お前たちはこの世界の一流料理人と言われてる人たちより旨いモノが作れるんだぞ? そんな人がなんで寮の賄い料理をしなきゃいけないんだよ……どうせ作るなら俺が王都に高級料理店を建ててやるから、そこで作って稼げ。お前たちの調理技術は超一流だ……安売りするものじゃない」
「あはは、嬉しい事言ってくれちゃって……そうね、分かったわ。うちの娘たちはもっと稼げるところで腕を振るってもらうわね」
という訳で現物を見せることにした。
ログハウスは収納して、そこに【共同マンション・タイプA】を召喚する。
「「「おお~~!」」」
「小鳥遊君……あなた、こんなもの何時の間に造ったの? おかしいよね?」
「スキルの複合魔法です……詳しくは言いませんんが、【錬金魔法】Lv8、【魔力操作】Lv7【ストーンガウォール】Lv5と【付与魔術】Lv6の物質強化の付与と建築技術の知識があれば誰でも建造可能です」
「複合魔法……私たちでも可能なんだ……う~ん、よく解らないから納得できないけど、そういう魔法で造ったんだね?」
「ええ、そうです……」
一通り中を見せていたら、女子2名が俺の下にやってきた。
確かこの人たち、学園でオークのステーキを焼いたり、うなぎを焼いたりした時に、茜たちに交じって料理を手伝ってくれていた人だよな。
「小鳥遊君、厨房の料理人に私たちを雇ってくれないかな?」
『……マスター、その者たちは料理部の生き残りです』
『ああ、高等部の料理部だった人たちか……桜は趣旨が違うから辞めちゃったんだよな』
『……金に糸目を付けない嗜好料理派と、いかに安く美味しく作るかの庶民派の違いですが、この場合彼女たちの方が適任だと思います』
『確かにそうだな。桜たちのように採算度外視では商売として成り立たないしね』
「私たち、高等部で料理部に入ってたの。【料理人】のスキルも熟練度8まで獲得しているわ」
「そうですか。雇用という形にするといろいろ指示出しが面倒ですので、店舗の貸し出しという形態にします。貸出料は純利益の2割でどうです? それ以外はあなたたちで好きにやってもらっていいですよ。一般人にも開放して食堂として経営しても良いですし、メニューや値段設定も自由にしていいです」
「固定料金じゃないの? それに売り上げの2割じゃなくて、純利益の2割で良いの? それってこっちにかなり条件が良いけど……」
「確かに一見最初はそちらに条件が良いように見えますが、スキル持ちの料理は美味しいのですよ。美味しければリピーターが付きますから、どんどん客は入ります。いずれは一般的な店舗貸出料より2割払う方が多くなるのではないかな」
「私たちの腕次第で、あなたも損や得をするのね……ええ、2割契約で良いわ」
後で詳細は話し合う事にしたが、店舗は彼女たちに任せることにした。
一度に100人分の料理ができるような調理道具は付属させてあるが、調味料なんかは一切ない。
包丁なんかも俺たち用に造ったミスリル入りではなく、和包丁のように鉄と鋼で各種造ってある。
万能包丁は調理室にあったステンレス合金のものを5本用意してあげている。
「魔道具の大型冷蔵庫や、大型冷凍庫も設置してありますが、中身は空っぽですので、足らない物は自分で補給してください」
「ええ、ある程度揃っているだけでも有難いわ」
彼女たちはやる気に満ち溢れている……色々確認したいと調理場にすっ飛んで行った。高校卒業後は調理学校に行くのが決まっていたようで、将来はそういう関係の仕事に就きたかったらしい。全国でも1、2を争う進学校なのに……親御さん、さぞや反対した事だろう……。
「高畑先生、引き続き体育館組の監督者をしてくれるのですよね? 月に30万ジェニー払いますので、このマンションの管理人をお願いします。家賃の徴収や、共同箇所の清掃なんかが主なお仕事です。【クリーン】の付与魔石を各所に埋め込んであるので、そこに魔力を込めるだけの簡単なお仕事です」
「えっ、いいの? 賃貸の管理人とか、超憧れの楽ちん仕事だよね?」
「仕事自体は楽かもしれないですが、思春期の女子が沢山住む場所の管理人です……いろいろ揉め事とか有りそうですけどね。男とか連れ込ませないようにしてくださいね」
「それはこれまでとなんら変わらないでしょ。喜んで管理人の仕事を請け負うわ。正直、異世界でどんな仕事があるのか不安だったの……30万ジェニーってどれくらいの収入なの? 贅沢は言わないけど、あまり少ないのはちょっと心許ないかな……」
「この世界の平均月収は5人家族の家庭で約15万ジェニーくらいだそうです。住む所があるのですから、全部小遣いみたいなものなので余裕じゃないですか?」
「嘘! 一般家庭の倍も有るじゃない! ありがとう小鳥遊君! 嬉しいわ!」
周りからいいな~とか、ズルいという声が聞こえたので一応言っておく。
「皆が嫌がったリーダー的な事をこれまで無償でやってくれた高畑先生へのご褒美だよ」
「小鳥遊……ここって女子寮なんだよな? 俺たち男子は?」
「水谷先輩……男なら自分で稼いで、風呂付の高級宿に泊まるとか、一軒家でも購入するぐらいの気概を見せてください。そんな情けない事言ってちゃ、いつまで経ってもモテないですよ……」
まぁ、なんだかんだで俺は何もしなくても月に90万の収入ができた事になる。今月分はタダでもいいが、来月1月からは賃貸料を頂く。
「では皆さん、勇者パーティーはこれで学園組とは別行動をとります。うちは邪神討伐がメインなので、基本そちらに何があっても手助けしないので、これ以降は自己責任でちゃんと考えて行動してくださいね」
最後に釘だけは刺しておいた……俺はマジで知らないからな。世界が滅ぶかもしれないのに、アホな奴らの尻拭いなんかやってられない。
さて、一旦街の外に出て、セバスたちに自慢のお屋敷を見せてあげますかね。
あまりこの世界の事を知らない現状では、自立してこの拠点を後にするのは勇気がいるようで、直ぐに出て行こうとする者は1割ほどしかいなかった。その反面10日ほど様子を見てから出て行く者は4割を超える。
その者たちは俺と同じく、大部屋での集団生活に強い苦痛を感じる人たちだ。
学園の寮も相部屋だが、8畳ほどの2人部屋で、間にカーテンの間仕切りがあったのでそれほど苦にはならなかった。
俺は入学して半年ほどで、相方が佐竹たちを恐れて部屋を出て行ったので、最後の方は1人部屋になっていたけどね。
2人部屋でも、相方次第では苦になる場合がある……イビキとか歯軋りなんかがその代表格だろう。それ以外でも価値観の違いや性格の不一致で喧嘩になって部屋替え申請をする者も結構いた。桜や雅、菜奈や俺みたいなMMOを深夜までやる人の隣はさぞや腹立たしかっただろう……キーボードをカタカタ叩く音や、小声でも他人のボイスチャットは耳障りなものだ。
菜奈の相方だった未来は、ヘッドホンで安眠ミュージックをいつも聞きながら寝ていたようでぐっすりだったそうだけど……それってやっぱ最初はうるさかった為の対策なんだろうと思う……未来ちゃんごめん、そのMMOの相手は俺と雅です……時々綾ちゃんも交じってました……マジ御免なさい。
体育館組の拠点は、おおざっぱに暗幕で間仕切りしてあるだけでプライバシーなんか全くない……郊外での移動中ならともかく、ここでずっと暮らすのは普通では考えられない。あくまでテントの野宿よりは遥かに快適だというだけだ。
というわけで、【ハウスクリエイト】で女子寮を建造してあげた。
「流石にここで生活をするのは苦痛でしょう。人数に制限はありますが、6畳ほどのワンルームマンションを建造してみました」
1Fに20人ほどが入れる大浴場と50人ほどが一度に座れる食堂を作った。
2F・3Fは同じ造りで、6畳一間で各30人が入居できる。合計60人が入居できるワンルームマンションだ。
窓はガラスが少ないので、1mほどの明かり窓を木枠で作ってはめ込んであるだけだ。風呂とトイレは部屋にはなく、風呂は1Fで、トイレは各フロアに設置してある共同トイレを使う事になる。【エアコン】の付与が付いた空調設備と【ライト】が付与してある照明設備だけは各部屋に付けてある。
「小鳥遊君ありがとう! 流石にプライバシーが全くない此処は、私もちょっときつかったの」
「高畑先生、先に言っておきますが、もう無償で提供はしませんよ。新しく造った物は賃貸住宅です。前にも言いましたが、ずっとあなたたちの面倒を見る気はありません。こっちの拠点は無償で提供しますが、新しく作った方は賃貸ですので有料です」
「「「えええ~~!」」」
女子からブーイングが上がったが、いつまでも甘えるな! 逆にうちの嫁たちからは嬉しそうな雰囲気が出ている……何故?
『……直ぐに安定した資金源を確保したマスターの甲斐性に喜んでいるのですよ。嫁になるなら資産力は自分たちの幸福度にも直結しますからね……不和の夫婦の7割は貧困からくるモノだそうです。次に多い姑問題も結局は資金力があれば解決する問題ばかりだそうです』
『そうなんだ……まぁ、喜んでくれてるならいいよ』
「60人という人数制限があるので、そこはそちらで話し合ってください。4F建てにしようかとも考えましたが、1F増やすだけで強度面でいろいろ面倒だったので3F建てにしました。いずれは王都に行ったり、周辺の宿屋で自立する者も出てくるだろうと思い、60人としています。ワンルームの風呂トイレ共同ですが、各部屋空調が付いていますので、一室月に2万ジェニーほど頂くことにします。ちなみに王都にも同じものを設置してあげますので、向こうに行っても快適な住居は確保できるのでその点はご安心を……」
「2万か……それって安いの? 高いの?」
「商都の宿屋で一番安い素泊まりが2千ジェニーです。一般的な宿屋は風呂自体がないし、トイレも共同です。たとえ一軒家を借りても風呂付はあまりないそうです。風呂はこの世界では贅沢なものなので、貴族や大商人でもない限り、滅多に入れないそうですよ。それに空調付なんか高級宿屋しか設置されてないらしいです。2万とか破格じゃないですか?」
「そう聞かされればそんな気がするわね……そうだ、商業ギルドの受付のお姉さんなら詳しいわよね?」
「私ですか? え~~と、確かに賃貸住宅の斡旋や、販売も行っていますけど……現物を見てみない事にははっきりとは言えませんが、お風呂があって、部屋に温度調整と照明の魔道具が設置してあるなら、1カ月10万ジェニーでも安いのではないでしょうか?」
10万でも安いのか……2万は安過ぎたか? 月に120万の収入になるから良いかと思ったのだが、税金も引かれるらしいし、もう少し上げるか?
「あ、そうだ! 食堂は付いているんだけど、キッチンスタッフは居ないんだよね。それって商業ギルドで雇えるのかな? それとも冒険者ギルド?」
「どちらでも人材は雇えますが、料理人でしたら商業ギルドですね。60人分の調理でしたら、料理人が3名と朝夕にパートさんが3、4名いれば賄えるのではないでしょうか? これ以上少ないと怪我や病気で誰かが休んだ場合、その日は休業しないといけなくなるので少なすぎるのはお薦めしません」
この商業ギルドのお姉さん、横で話を聞いてただけで適切なアドバイスをしてくれる。
できる女性は良いね~。
「う~~ん、料理人を雇っていたら2万じゃ収益がないですね……やっぱ、食事代は別でもらうかな……」
「龍馬君、料理部から何人か残る?」
「茜、却下だ。お前たちはこの世界の一流料理人と言われてる人たちより旨いモノが作れるんだぞ? そんな人がなんで寮の賄い料理をしなきゃいけないんだよ……どうせ作るなら俺が王都に高級料理店を建ててやるから、そこで作って稼げ。お前たちの調理技術は超一流だ……安売りするものじゃない」
「あはは、嬉しい事言ってくれちゃって……そうね、分かったわ。うちの娘たちはもっと稼げるところで腕を振るってもらうわね」
という訳で現物を見せることにした。
ログハウスは収納して、そこに【共同マンション・タイプA】を召喚する。
「「「おお~~!」」」
「小鳥遊君……あなた、こんなもの何時の間に造ったの? おかしいよね?」
「スキルの複合魔法です……詳しくは言いませんんが、【錬金魔法】Lv8、【魔力操作】Lv7【ストーンガウォール】Lv5と【付与魔術】Lv6の物質強化の付与と建築技術の知識があれば誰でも建造可能です」
「複合魔法……私たちでも可能なんだ……う~ん、よく解らないから納得できないけど、そういう魔法で造ったんだね?」
「ええ、そうです……」
一通り中を見せていたら、女子2名が俺の下にやってきた。
確かこの人たち、学園でオークのステーキを焼いたり、うなぎを焼いたりした時に、茜たちに交じって料理を手伝ってくれていた人だよな。
「小鳥遊君、厨房の料理人に私たちを雇ってくれないかな?」
『……マスター、その者たちは料理部の生き残りです』
『ああ、高等部の料理部だった人たちか……桜は趣旨が違うから辞めちゃったんだよな』
『……金に糸目を付けない嗜好料理派と、いかに安く美味しく作るかの庶民派の違いですが、この場合彼女たちの方が適任だと思います』
『確かにそうだな。桜たちのように採算度外視では商売として成り立たないしね』
「私たち、高等部で料理部に入ってたの。【料理人】のスキルも熟練度8まで獲得しているわ」
「そうですか。雇用という形にするといろいろ指示出しが面倒ですので、店舗の貸し出しという形態にします。貸出料は純利益の2割でどうです? それ以外はあなたたちで好きにやってもらっていいですよ。一般人にも開放して食堂として経営しても良いですし、メニューや値段設定も自由にしていいです」
「固定料金じゃないの? それに売り上げの2割じゃなくて、純利益の2割で良いの? それってこっちにかなり条件が良いけど……」
「確かに一見最初はそちらに条件が良いように見えますが、スキル持ちの料理は美味しいのですよ。美味しければリピーターが付きますから、どんどん客は入ります。いずれは一般的な店舗貸出料より2割払う方が多くなるのではないかな」
「私たちの腕次第で、あなたも損や得をするのね……ええ、2割契約で良いわ」
後で詳細は話し合う事にしたが、店舗は彼女たちに任せることにした。
一度に100人分の料理ができるような調理道具は付属させてあるが、調味料なんかは一切ない。
包丁なんかも俺たち用に造ったミスリル入りではなく、和包丁のように鉄と鋼で各種造ってある。
万能包丁は調理室にあったステンレス合金のものを5本用意してあげている。
「魔道具の大型冷蔵庫や、大型冷凍庫も設置してありますが、中身は空っぽですので、足らない物は自分で補給してください」
「ええ、ある程度揃っているだけでも有難いわ」
彼女たちはやる気に満ち溢れている……色々確認したいと調理場にすっ飛んで行った。高校卒業後は調理学校に行くのが決まっていたようで、将来はそういう関係の仕事に就きたかったらしい。全国でも1、2を争う進学校なのに……親御さん、さぞや反対した事だろう……。
「高畑先生、引き続き体育館組の監督者をしてくれるのですよね? 月に30万ジェニー払いますので、このマンションの管理人をお願いします。家賃の徴収や、共同箇所の清掃なんかが主なお仕事です。【クリーン】の付与魔石を各所に埋め込んであるので、そこに魔力を込めるだけの簡単なお仕事です」
「えっ、いいの? 賃貸の管理人とか、超憧れの楽ちん仕事だよね?」
「仕事自体は楽かもしれないですが、思春期の女子が沢山住む場所の管理人です……いろいろ揉め事とか有りそうですけどね。男とか連れ込ませないようにしてくださいね」
「それはこれまでとなんら変わらないでしょ。喜んで管理人の仕事を請け負うわ。正直、異世界でどんな仕事があるのか不安だったの……30万ジェニーってどれくらいの収入なの? 贅沢は言わないけど、あまり少ないのはちょっと心許ないかな……」
「この世界の平均月収は5人家族の家庭で約15万ジェニーくらいだそうです。住む所があるのですから、全部小遣いみたいなものなので余裕じゃないですか?」
「嘘! 一般家庭の倍も有るじゃない! ありがとう小鳥遊君! 嬉しいわ!」
周りからいいな~とか、ズルいという声が聞こえたので一応言っておく。
「皆が嫌がったリーダー的な事をこれまで無償でやってくれた高畑先生へのご褒美だよ」
「小鳥遊……ここって女子寮なんだよな? 俺たち男子は?」
「水谷先輩……男なら自分で稼いで、風呂付の高級宿に泊まるとか、一軒家でも購入するぐらいの気概を見せてください。そんな情けない事言ってちゃ、いつまで経ってもモテないですよ……」
まぁ、なんだかんだで俺は何もしなくても月に90万の収入ができた事になる。今月分はタダでもいいが、来月1月からは賃貸料を頂く。
「では皆さん、勇者パーティーはこれで学園組とは別行動をとります。うちは邪神討伐がメインなので、基本そちらに何があっても手助けしないので、これ以降は自己責任でちゃんと考えて行動してくださいね」
最後に釘だけは刺しておいた……俺はマジで知らないからな。世界が滅ぶかもしれないのに、アホな奴らの尻拭いなんかやってられない。
さて、一旦街の外に出て、セバスたちに自慢のお屋敷を見せてあげますかね。
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皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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