165 / 184
商都フォレスト編
3-11 虎の売り先?お屋敷の案内?
しおりを挟む
これから街の外に出て、一度屋敷の中を見てもらい、昼食後にセバスたちに足りない物を購入してきてもらおうと思っているのだが……バグナーさんやレイラさんが付いてきたそうにしている。
だが、俺はあまり大人数でウロウロしたくない。
まぁ、今日はどのみち体育館組の者が100人近く街に繰り出すのだから、一騒動有りそうだけどね……。
有難い事に、公爵が暫くの間は街に衛兵を増員して巡回させてくれるそうだ。
あまり手を借りたくないとは思っているのだが、公爵には既にいろいろ世話になってしまっている。
『……そう思うのでしたら、あの虎は公爵に譲ってあげたらどうですか? 値段交渉や面倒な手続きはバグナーに任せてしまえばいいのです。手持ちの予算も心許ないですし……公爵家なら資金の蓄えもあるので即金で払ってもらえ、活動資金に充てられて良いのではないですか?』
『でも、オークションで競わせた方が高値になるんだろ?』
『……それはどうでしょうか? 普通はそうですが、今回は公爵家が狙っていると分かった時点で他の者は引き下がるのではないでしょうか? 数回の価格アップ後、公爵家が絡んでいるのが知れた時点で打ち止めになるような気がします』
『確かに……公爵家に張り合うのは王家か同じ親戚筋の公爵家ぐらいだろう……よし、虎で貸しをチャラにするか……オークションで買うとネタバレしちゃうし、贈り物なら相手も知らないほうがインパクトあるしね』
『……それと、バグナーとレイラは、お昼を過ぎてるのであわよくばご馳走してもらえるのではないかと、淡い期待をしているようです……』
『成程……桜たちの飯が食いたいと……』
「バグナーさん、午後からあなたに一仕事してもらいます」
「私ですか? 何でしょう?」
「例の虎ですが、オークションに出しても公爵家が絡んでる時点でそれほど競り上がらないと思うのです。なので、午後から公爵様の都合次第ですが、バグナーさんの方で直接、販売交渉をしてきてもらいたいのです」
バグナーさんは少し考えた後結論を出した。
「確かにリョウマ君のいう通りかもしれない……他の貴族も下手に公爵家に対抗して、目を付けられたくはないからね。何か条件とかはあるかい? 君の方で最低価格とか決めておいてくれると交渉しやすいのだけど」
「正直あの虎の価値が分かりません。オークですら相場を知らないのです。なのでバグナーさんに一任しますが、条件として即金で貰いたいのです。できれば出立前の明日中に支払ってくれると有難いですね。あなたへの報酬は販売価格の1割でどうですか?」
「1割!? リョウマ君はあのサーベルタイガーの価値を分かっているのかい?」
「さっきも言いましたが、さっぱりです? 1割じゃ少ないですか?」
実は【詳細鑑識】で相場が分かるので価値は分かっている。
「いや貰い過ぎです……商業ギルドに行って、過去の販売記録や商人仲間から相場を精査してから交渉に向かいましょう。おそらく安く見積もっても億にはなると思うけど……本当に1割も貰っていいのですか?」
貰い過ぎだとバグナーさんは言ってるが、オークショナーに支払う手数料が1割、最初に持ち込んで依頼した場所に1割で本来は2割引かれてしまうのだ。今回最初に持ち込んだ場所というのはバグナーさんに該当するので、1割は元からある権利だと思う。
価値の低いモノはオークションに下手に出すと、手数料でマイナスになるので注意が要るのだ。
「ええ、売値の1割お支払いしますよ。代わりに値段交渉や面倒な手続きは全部そちらでお願いしますね。あの虎の魔石はこちらで使うので既に抜いていますが、魔石なしでそんなに高値で売れますか?」
「魔石無しでも億は超えると思います……私に任せてください」
「これから街を出て、王都で使うお屋敷を召喚してお昼にしますが、バグナーさんも交渉前に一緒にどうですか?」
大人数での移動は目立つので本当は嫌なのだが、これから世話になる人たちだ……あまり邪険にするのは良くないと思い、食事に誘ってあげる。
あのマンションを見せたのだ、お屋敷を今更見せるのを渋る必要もない。どうせ移動の際には出すんだしね。
「正直お昼をご馳走になれないかと期待していました……先日食べさせて頂いた夕飯の味が忘れられないのです……」
「「「あの! リョウマ君……ずうずうしいと思うのだけど……」」」
「レイラさんたちもお誘いしますよ……食べたいのでしょ?」
「「「ええ! ありがとう!」」」
街を出て1kmほど歩いたのだが……奴隷の何人かが体力なさ過ぎる。
チロルはすぐに俺が抱き上げて肩車をしてあげている。
目線が高くなったのが新鮮なのか、俺の頭に手を乗せてキャッキャと嬉しそうだ。元子爵家のご令嬢なのでこういうはしたない事はしたことないのだろう。横で「ん!」っといって手を差し出している雅は可愛いのだけど……肩車をする年齢じゃないだろ?
セバスとマイヤーが何か言ってくるかと思ったが、微笑ましそうに俺たちを見ている。礼節は教えてもらうが、うちは貴族家ではないのであまり煩く言うなといい含めてある。俺の意図がちゃんと伝わっているのだろう……ナビーが薦めてきただけあって実に優秀だ。
さしあたってはエリス、クレア、チロルの体力づくりかな……距離で1㎞、時間で15分歩いただけでへばっているようでは、仕事自体に差支えが出るレベルだ。
俺たちA班なら3分と掛からない距離なんだよね。
少し街道からそれた空きスペースにお屋敷を召喚する。
「「「エエエッ~~!?」」」
驚き過ぎて最初に声を上げてから……口をあんぐり開けて屋敷を見上げて呆けている。
「これが君たちが王都で暮らすのに使う屋敷だ。細部に拘った、俺ご自慢の逸品だぞ」
「ご主人様、早く中が見たいです!」
チロルが俺の頭をポンポンと叩いて催促してくる。
「あはは、ちょっと待ってろな。何人かで周辺に何匹かいる魔獣の狩りに出てくれるか? 1㎞圏内に8匹ぐらいいるようだけど、襲ってきそうなのはゴブリンの3頭ぐらいかな。食事中にこられたらウザいので事前に潰してきてほしい。B・C班と桜は調理に入ってくれるか? ハティ、お前は一番遠くにいるホーンラビットを狩ってきてくれ。兎は煮込み料理にすると美味しいから狩っておきたい。お礼にハティのお昼にはリンゴジュースを付けてやるからな」
「ミャン!」
雅と薫がゴブリン退治に出てくれた。
「龍馬君、もうお昼過ぎちゃってるから、材料を切るだけで簡単にできるスタンプボアのお鍋で良い?」
「良いね! 今日は寒いから牡丹鍋は体も温まるしね」
獣人たちはスタンプボアと聞いて超喜んでいる……やっぱお肉好きなんだ。
「D班と大影先輩と柴崎先輩はこっちに来て下さい。この屋敷の2階以上に入るには個人認証が要るのです。あ、アレクセイは悪いが上の階には入れないぞ。バグナーさんもレイラさんたちも駄目です」
しれっとバグナーさんたちも付いてこようとしていたが、入禁組は食堂で待機してもらう。レイラさんたちが不満そうだったので釘を刺しておく。
「上の階は王侯貴族などの上位貴族用の来賓室にする予定ですので、下手に登録してしまうと、暗殺や毒殺とか何かあった場合、真っ先に疑われますよ?」
「「「それはちょっと……」」」
15分ほどでお昼の準備ができるそうなので、その間に皆に屋敷の案内をしておく。
お屋敷の間取り
中世ヨーロッパ風鉄筋仕様レンガ造りの4階建て
・1F:厨房・大食堂・リビングルーム・応接室・執務室。メイド用居室6部屋
・2F:メイン浴場・応接室・リビングルーム・メイド用居室4室
・3F:メインリビングルーム・小浴場・来客用居室30室・メイド用居室4室
・4F:リビングルーム・キッチン・客用居室4部屋・仲間用居室20部屋・メイド用4室・浴場
「セバスとマイヤーには1階と4階に部屋を与えるので状況に応じて使い分けてくれ。前にも言ったがセバスには俺たちが邪神討伐に出ている間の執事長的な立場で留守番組のサポートをしてもらう。留守番組の責任者は美弥で、厨房の監督者は茜に任せてある。侍女長的な事はマイヤーに任せるので、美弥と茜の指示に従ってくれ」
「「了解しました」」
「旦那様、少し宜しいでしょうか」
「なんだ?」
「この規模のお屋敷だと、今居る奴隷だけでは足らないかと進言いたします」
「マイヤーの懸念は掃除などの維持管理の事を言っているのかな?」
「はい。勿論毎日頑張って掃除いたしますが、どれほど頑張ってもこの広さだと今の人数では追いつかないかと思います。少なくても後10人は必要ではないでしょうか……」
「この屋敷はあらゆる箇所に魔道具を仕込んでいて、俺のオリジナル魔法の【ハウスクリーン】という魔法で管理されているから、掃除は一切必要ないよ。お風呂場も厨房も含めてね。お風呂も24時間、適温管理されているからいつでも入れる。掃除は魔石に魔力を込めるだけだから、誰でもできるし、一瞬で済むから時間もかからない。厨房での食器の洗い物や衣服などの洗濯物も魔法で一瞬で終えるので、正直お前たちの仕事は特にないんだよね……調理もうちの女子が行うし、今のところシーツ交換や洗濯物を畳んで各自のクローゼットに片付けるぐらいかな……」
「全て魔道具で管理なされているのですか?……確かにどの階も適温に温度が保たれていますし、塵1つございません……ですが、仕える人たちに食事を作っていただくのは了承しかねます」
「料理は彼女たちの趣味のようなものだし、雇っても彼女たち以上に美味しいモノを作る料理人はそういないよ。この話はまた後でしよう……取り敢えず各自個室を与えるので、空調魔道具の温度調整の仕方や、お風呂の使い方を説明しておくよ。3Fの小浴場は暫くはセバス専用にするのでマイヤーさん以外は入らないように。2Fの大浴場と4Fの浴場は入口にプレートがあって、俺が入っている時には青いプレートを掛けるので気を付けて、確認してから入ってくれ。見られても良いならいつでも入ってきても良いけどね。俺が入ってない時はいつでも利用して構わないので好きに入ってくれていい。ただ、毎日入る事は義務にするので、億劫がらずに入るように。逆に、俺に見られたくない者がお風呂に入る際には、赤のプレートを差すようにね。青は俺、赤は女子なので、それを見て判断するといい。差すのを忘れて俺とバッティングしても文句は聞き入れないからね」
「ご主人様……お風呂凄いです……」
「龍馬君……これ何? その辺の温泉施設より凄いんだけど……」
「そうよ……こんなの聞いてないわ……」
「大影先輩と柴崎先輩ですか……あなたたちに教えたら、間違いなくズルいとか言ってたでしょ? だから黙ってたし、公爵に貰った土地でも敢えてこの屋敷は出さなかったのです。寄生しようとする者がでそうですからね」
「このお屋敷やお風呂を見たらね……それと……前にも言ったけど、私も柴崎先輩とかじゃなく皆のように名前で呼んでくれないかな?」
「そうよ……他の娘は名前で呼んでるのに、大影先輩とかちょっと疎外感で悲しくなってくるわ……」
確かにこの2人以外は全員名前で呼んでいる……以前にも言われたけど、美咲先輩も含めて年上の名前呼びはちょっとハードルが高いのだ。
美弥だって未だに美弥ちゃん先生と呼んでるくらいだ。
「……分かった……美紀と友美も4階のどこかに入ってくださいね。他の者はマイヤーの指示に従って部屋割りを決めるように。チロルはマイヤーかクレアが面倒見てあげてくれるか? 流石にその歳で個室は逆に可哀想だ」
「兄様、チロルは菜奈が面倒を見ます」
「ん、私もチロルと一緒で良い」
雅の奴、もう帰ってきてる……横ではハティも尻尾を振っている。
「そういえばそういう約束だったね……うん、2人で面倒を見てあげて。それと雅と薫、ご苦労様でした。ハティもお帰り。皆、随分早かったね」
「ん、走って行ってきた」
「雅ちゃん、足速過ぎ……追いついた時にはもう倒しちゃってた」
「ミャン」
魔石と兎を各自提出してきたのだが……兎に一切傷がない?
パッと見、傷が全くないのだけど……どうやって狩ったんだ?
『……ここから猛ダッシュでまっしぐらに兎まで駆けて、勢いそのまま兎の首にカプッと噛み付き、首をへし折ったのです』
言われて見れば首が折れているようだ。歯で傷つけないようにし、首だけ器用に折って即死させたんだね。
「ハティ、傷もなく首だけ折ってきたんだな。毛皮も高く売れるし、肉もこれだと傷みもなく解体できるよ。よくやった偉いぞ~」
「「「凄い……賢い仔だね」」」
冒険者のレイラさんや獣人たちから称賛の声が上がる。ハティも尻尾を振って褒められたことが嬉しそうだ。
「龍馬君、お昼の準備できたよ」
「お、もうできたの? じゃあ、皆も食堂に移動しようか」
桜が呼びにきてくれたので、皆で食堂に向かう。
カセットコンロを使い、4人1組で1つの鍋を囲む。
「お肉もまだ一杯あるから、遠慮しないでどんどん食べてね」
「「「はーい」」」
「「「美味しい!」」」
獣人とレイラさんたちの食べっぷりは今回も凄かった……兎人族のルフィーナはお肉より野菜が好きなようだ。
やはり兎だけあって人参が好きなようで、モキュモキュ小さなお口で食べている姿は可愛かった。
本日の昼食
・スタンプボアとオークの水炊き(ポン酢と胡麻ダレ)
・オークステーキ(塩コショウ焼き)
・米飯
・プリン
オークステーキは欲しい人だけ出してあげた……主に獣人たちの為の物だね。
チロルとハティにはリンゴジュース付きだよ。
だが、俺はあまり大人数でウロウロしたくない。
まぁ、今日はどのみち体育館組の者が100人近く街に繰り出すのだから、一騒動有りそうだけどね……。
有難い事に、公爵が暫くの間は街に衛兵を増員して巡回させてくれるそうだ。
あまり手を借りたくないとは思っているのだが、公爵には既にいろいろ世話になってしまっている。
『……そう思うのでしたら、あの虎は公爵に譲ってあげたらどうですか? 値段交渉や面倒な手続きはバグナーに任せてしまえばいいのです。手持ちの予算も心許ないですし……公爵家なら資金の蓄えもあるので即金で払ってもらえ、活動資金に充てられて良いのではないですか?』
『でも、オークションで競わせた方が高値になるんだろ?』
『……それはどうでしょうか? 普通はそうですが、今回は公爵家が狙っていると分かった時点で他の者は引き下がるのではないでしょうか? 数回の価格アップ後、公爵家が絡んでいるのが知れた時点で打ち止めになるような気がします』
『確かに……公爵家に張り合うのは王家か同じ親戚筋の公爵家ぐらいだろう……よし、虎で貸しをチャラにするか……オークションで買うとネタバレしちゃうし、贈り物なら相手も知らないほうがインパクトあるしね』
『……それと、バグナーとレイラは、お昼を過ぎてるのであわよくばご馳走してもらえるのではないかと、淡い期待をしているようです……』
『成程……桜たちの飯が食いたいと……』
「バグナーさん、午後からあなたに一仕事してもらいます」
「私ですか? 何でしょう?」
「例の虎ですが、オークションに出しても公爵家が絡んでる時点でそれほど競り上がらないと思うのです。なので、午後から公爵様の都合次第ですが、バグナーさんの方で直接、販売交渉をしてきてもらいたいのです」
バグナーさんは少し考えた後結論を出した。
「確かにリョウマ君のいう通りかもしれない……他の貴族も下手に公爵家に対抗して、目を付けられたくはないからね。何か条件とかはあるかい? 君の方で最低価格とか決めておいてくれると交渉しやすいのだけど」
「正直あの虎の価値が分かりません。オークですら相場を知らないのです。なのでバグナーさんに一任しますが、条件として即金で貰いたいのです。できれば出立前の明日中に支払ってくれると有難いですね。あなたへの報酬は販売価格の1割でどうですか?」
「1割!? リョウマ君はあのサーベルタイガーの価値を分かっているのかい?」
「さっきも言いましたが、さっぱりです? 1割じゃ少ないですか?」
実は【詳細鑑識】で相場が分かるので価値は分かっている。
「いや貰い過ぎです……商業ギルドに行って、過去の販売記録や商人仲間から相場を精査してから交渉に向かいましょう。おそらく安く見積もっても億にはなると思うけど……本当に1割も貰っていいのですか?」
貰い過ぎだとバグナーさんは言ってるが、オークショナーに支払う手数料が1割、最初に持ち込んで依頼した場所に1割で本来は2割引かれてしまうのだ。今回最初に持ち込んだ場所というのはバグナーさんに該当するので、1割は元からある権利だと思う。
価値の低いモノはオークションに下手に出すと、手数料でマイナスになるので注意が要るのだ。
「ええ、売値の1割お支払いしますよ。代わりに値段交渉や面倒な手続きは全部そちらでお願いしますね。あの虎の魔石はこちらで使うので既に抜いていますが、魔石なしでそんなに高値で売れますか?」
「魔石無しでも億は超えると思います……私に任せてください」
「これから街を出て、王都で使うお屋敷を召喚してお昼にしますが、バグナーさんも交渉前に一緒にどうですか?」
大人数での移動は目立つので本当は嫌なのだが、これから世話になる人たちだ……あまり邪険にするのは良くないと思い、食事に誘ってあげる。
あのマンションを見せたのだ、お屋敷を今更見せるのを渋る必要もない。どうせ移動の際には出すんだしね。
「正直お昼をご馳走になれないかと期待していました……先日食べさせて頂いた夕飯の味が忘れられないのです……」
「「「あの! リョウマ君……ずうずうしいと思うのだけど……」」」
「レイラさんたちもお誘いしますよ……食べたいのでしょ?」
「「「ええ! ありがとう!」」」
街を出て1kmほど歩いたのだが……奴隷の何人かが体力なさ過ぎる。
チロルはすぐに俺が抱き上げて肩車をしてあげている。
目線が高くなったのが新鮮なのか、俺の頭に手を乗せてキャッキャと嬉しそうだ。元子爵家のご令嬢なのでこういうはしたない事はしたことないのだろう。横で「ん!」っといって手を差し出している雅は可愛いのだけど……肩車をする年齢じゃないだろ?
セバスとマイヤーが何か言ってくるかと思ったが、微笑ましそうに俺たちを見ている。礼節は教えてもらうが、うちは貴族家ではないのであまり煩く言うなといい含めてある。俺の意図がちゃんと伝わっているのだろう……ナビーが薦めてきただけあって実に優秀だ。
さしあたってはエリス、クレア、チロルの体力づくりかな……距離で1㎞、時間で15分歩いただけでへばっているようでは、仕事自体に差支えが出るレベルだ。
俺たちA班なら3分と掛からない距離なんだよね。
少し街道からそれた空きスペースにお屋敷を召喚する。
「「「エエエッ~~!?」」」
驚き過ぎて最初に声を上げてから……口をあんぐり開けて屋敷を見上げて呆けている。
「これが君たちが王都で暮らすのに使う屋敷だ。細部に拘った、俺ご自慢の逸品だぞ」
「ご主人様、早く中が見たいです!」
チロルが俺の頭をポンポンと叩いて催促してくる。
「あはは、ちょっと待ってろな。何人かで周辺に何匹かいる魔獣の狩りに出てくれるか? 1㎞圏内に8匹ぐらいいるようだけど、襲ってきそうなのはゴブリンの3頭ぐらいかな。食事中にこられたらウザいので事前に潰してきてほしい。B・C班と桜は調理に入ってくれるか? ハティ、お前は一番遠くにいるホーンラビットを狩ってきてくれ。兎は煮込み料理にすると美味しいから狩っておきたい。お礼にハティのお昼にはリンゴジュースを付けてやるからな」
「ミャン!」
雅と薫がゴブリン退治に出てくれた。
「龍馬君、もうお昼過ぎちゃってるから、材料を切るだけで簡単にできるスタンプボアのお鍋で良い?」
「良いね! 今日は寒いから牡丹鍋は体も温まるしね」
獣人たちはスタンプボアと聞いて超喜んでいる……やっぱお肉好きなんだ。
「D班と大影先輩と柴崎先輩はこっちに来て下さい。この屋敷の2階以上に入るには個人認証が要るのです。あ、アレクセイは悪いが上の階には入れないぞ。バグナーさんもレイラさんたちも駄目です」
しれっとバグナーさんたちも付いてこようとしていたが、入禁組は食堂で待機してもらう。レイラさんたちが不満そうだったので釘を刺しておく。
「上の階は王侯貴族などの上位貴族用の来賓室にする予定ですので、下手に登録してしまうと、暗殺や毒殺とか何かあった場合、真っ先に疑われますよ?」
「「「それはちょっと……」」」
15分ほどでお昼の準備ができるそうなので、その間に皆に屋敷の案内をしておく。
お屋敷の間取り
中世ヨーロッパ風鉄筋仕様レンガ造りの4階建て
・1F:厨房・大食堂・リビングルーム・応接室・執務室。メイド用居室6部屋
・2F:メイン浴場・応接室・リビングルーム・メイド用居室4室
・3F:メインリビングルーム・小浴場・来客用居室30室・メイド用居室4室
・4F:リビングルーム・キッチン・客用居室4部屋・仲間用居室20部屋・メイド用4室・浴場
「セバスとマイヤーには1階と4階に部屋を与えるので状況に応じて使い分けてくれ。前にも言ったがセバスには俺たちが邪神討伐に出ている間の執事長的な立場で留守番組のサポートをしてもらう。留守番組の責任者は美弥で、厨房の監督者は茜に任せてある。侍女長的な事はマイヤーに任せるので、美弥と茜の指示に従ってくれ」
「「了解しました」」
「旦那様、少し宜しいでしょうか」
「なんだ?」
「この規模のお屋敷だと、今居る奴隷だけでは足らないかと進言いたします」
「マイヤーの懸念は掃除などの維持管理の事を言っているのかな?」
「はい。勿論毎日頑張って掃除いたしますが、どれほど頑張ってもこの広さだと今の人数では追いつかないかと思います。少なくても後10人は必要ではないでしょうか……」
「この屋敷はあらゆる箇所に魔道具を仕込んでいて、俺のオリジナル魔法の【ハウスクリーン】という魔法で管理されているから、掃除は一切必要ないよ。お風呂場も厨房も含めてね。お風呂も24時間、適温管理されているからいつでも入れる。掃除は魔石に魔力を込めるだけだから、誰でもできるし、一瞬で済むから時間もかからない。厨房での食器の洗い物や衣服などの洗濯物も魔法で一瞬で終えるので、正直お前たちの仕事は特にないんだよね……調理もうちの女子が行うし、今のところシーツ交換や洗濯物を畳んで各自のクローゼットに片付けるぐらいかな……」
「全て魔道具で管理なされているのですか?……確かにどの階も適温に温度が保たれていますし、塵1つございません……ですが、仕える人たちに食事を作っていただくのは了承しかねます」
「料理は彼女たちの趣味のようなものだし、雇っても彼女たち以上に美味しいモノを作る料理人はそういないよ。この話はまた後でしよう……取り敢えず各自個室を与えるので、空調魔道具の温度調整の仕方や、お風呂の使い方を説明しておくよ。3Fの小浴場は暫くはセバス専用にするのでマイヤーさん以外は入らないように。2Fの大浴場と4Fの浴場は入口にプレートがあって、俺が入っている時には青いプレートを掛けるので気を付けて、確認してから入ってくれ。見られても良いならいつでも入ってきても良いけどね。俺が入ってない時はいつでも利用して構わないので好きに入ってくれていい。ただ、毎日入る事は義務にするので、億劫がらずに入るように。逆に、俺に見られたくない者がお風呂に入る際には、赤のプレートを差すようにね。青は俺、赤は女子なので、それを見て判断するといい。差すのを忘れて俺とバッティングしても文句は聞き入れないからね」
「ご主人様……お風呂凄いです……」
「龍馬君……これ何? その辺の温泉施設より凄いんだけど……」
「そうよ……こんなの聞いてないわ……」
「大影先輩と柴崎先輩ですか……あなたたちに教えたら、間違いなくズルいとか言ってたでしょ? だから黙ってたし、公爵に貰った土地でも敢えてこの屋敷は出さなかったのです。寄生しようとする者がでそうですからね」
「このお屋敷やお風呂を見たらね……それと……前にも言ったけど、私も柴崎先輩とかじゃなく皆のように名前で呼んでくれないかな?」
「そうよ……他の娘は名前で呼んでるのに、大影先輩とかちょっと疎外感で悲しくなってくるわ……」
確かにこの2人以外は全員名前で呼んでいる……以前にも言われたけど、美咲先輩も含めて年上の名前呼びはちょっとハードルが高いのだ。
美弥だって未だに美弥ちゃん先生と呼んでるくらいだ。
「……分かった……美紀と友美も4階のどこかに入ってくださいね。他の者はマイヤーの指示に従って部屋割りを決めるように。チロルはマイヤーかクレアが面倒見てあげてくれるか? 流石にその歳で個室は逆に可哀想だ」
「兄様、チロルは菜奈が面倒を見ます」
「ん、私もチロルと一緒で良い」
雅の奴、もう帰ってきてる……横ではハティも尻尾を振っている。
「そういえばそういう約束だったね……うん、2人で面倒を見てあげて。それと雅と薫、ご苦労様でした。ハティもお帰り。皆、随分早かったね」
「ん、走って行ってきた」
「雅ちゃん、足速過ぎ……追いついた時にはもう倒しちゃってた」
「ミャン」
魔石と兎を各自提出してきたのだが……兎に一切傷がない?
パッと見、傷が全くないのだけど……どうやって狩ったんだ?
『……ここから猛ダッシュでまっしぐらに兎まで駆けて、勢いそのまま兎の首にカプッと噛み付き、首をへし折ったのです』
言われて見れば首が折れているようだ。歯で傷つけないようにし、首だけ器用に折って即死させたんだね。
「ハティ、傷もなく首だけ折ってきたんだな。毛皮も高く売れるし、肉もこれだと傷みもなく解体できるよ。よくやった偉いぞ~」
「「「凄い……賢い仔だね」」」
冒険者のレイラさんや獣人たちから称賛の声が上がる。ハティも尻尾を振って褒められたことが嬉しそうだ。
「龍馬君、お昼の準備できたよ」
「お、もうできたの? じゃあ、皆も食堂に移動しようか」
桜が呼びにきてくれたので、皆で食堂に向かう。
カセットコンロを使い、4人1組で1つの鍋を囲む。
「お肉もまだ一杯あるから、遠慮しないでどんどん食べてね」
「「「はーい」」」
「「「美味しい!」」」
獣人とレイラさんたちの食べっぷりは今回も凄かった……兎人族のルフィーナはお肉より野菜が好きなようだ。
やはり兎だけあって人参が好きなようで、モキュモキュ小さなお口で食べている姿は可愛かった。
本日の昼食
・スタンプボアとオークの水炊き(ポン酢と胡麻ダレ)
・オークステーキ(塩コショウ焼き)
・米飯
・プリン
オークステーキは欲しい人だけ出してあげた……主に獣人たちの為の物だね。
チロルとハティにはリンゴジュース付きだよ。
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる