2 / 184
学園ロワイヤル編 1日目
1-1-2 妾幼女は女神様?駄女神?
しおりを挟む
あれから1時間……俺はあの幼女の胸で子供のように泣きじゃくっている。
どうしてこうなっているのか……うまく誘導されたとしかいいようがない。
経緯は大体こんな感じだ。
「其方、名はなんと申すのじゃ? フム、白石龍馬、本名は小鳥遊龍馬か……良い名じゃな」
「答える前に頭の中を覗かないでよ。また見せるよ!」
「女神になんてモノ見せるのじゃ! 分かったからそう怒るでない。歳はいくつじゃ?」
「もうすぐ16になる。あなたはやっぱり女神なのか?」
「そうじゃぞ。この世界の主神で水を司る女神のフィリアじゃ」
そうなのだ。それとなく質問を繰り返し、俺の考えた事を読んで、俺の事を丸裸にしてしまったのだ。
虐待の事、妹の事、家族の事……これまで誰にも相談できず、相談しても相手にされなかった事を彼女は静かに質問を繰り返し聞いてくれる。
気付けば俺の方から全部喋っていた……これまで溜め込んでいた鬱憤を全部吐き出すように。
そして全てを聞き終えた彼女は『辛かったな』と言って、俺の側にトコトコ来たかと思ったら、そっと優しく抱きしめてくれたのだ。
で、今現在……彼女の腕に抱かれて、子供のように思わず泣きじゃくってしまっているという訳だ。
俺は泣いたことで少し落ち着いてきた。
最初に考えたのが『この子、見た目の割にはちゃんとちっぱいがあるんだな……』だったのがまずかった。
頭を拳骨で叩かれた。
「其方、妾の優しさをないがしろにしてなんてエッチなのじゃ!」
「ごめんったら、思春期の男の子なんだから大目に見てよ! それにいくら可愛くても10歳児に欲情とかはしてないでしょ」
「クッ! 10歳児じゃと! まぁ、よかろう……だいぶ落ち着いたようじゃな?」
「うん。じゃあ、説明してくれる? 俺の事は全部話しちゃったしね」
フィリアと名乗った女神様は聞くとちゃんと説明してくれた。
「結局俺たちはどうなるの?」
「弱肉強食の世界じゃ。頑張って生き残れるように努力するしかないの」
「フィリア様の話だと、間違いなく殆どの者が死んじゃうよね?」
「そうじゃな。申し訳ないと思っておるが、せいぜい1割生き残れたら良い方だと思っておる」
今現在、俺の時間は加速中だとの事……かといって肉体的に時間経過で年を取るようなものでもないらしい。
俺がこの亜空間にいる間、外の世界では止まったようにゆっくりとした時間が流れているそうだ。
流石は異世界、正直よく解らん。
「レベルアップしてこの部屋に来れた者には神の祝福が貰えるんだね」
「そうじゃ。ここに来るというのが唯一の条件じゃ。来さえすれば誰にでも加護や祝福を与える」
「誰にでもか……」
「そうじゃな……今、其方の考えているとおりじゃ。それもこれも妾のミスのせいじゃ」
どうやらここに来た者には、神様から加護や祝福が貰えるらしい。
ここに来る条件はレベルアップ。具体的にいうとオークなら1体、ゴブリンなら3体倒し、殺した際に得られる経験値となるものが必要だそうだ。
レベルアップの初回時だけ、この神のシステム部屋に来て、異世界仕様の体に造り変えてもらえるようだ。
地球とここでは少し肉体構造が違うらしく、異世界仕様に変態しない事には10日ほどで死んでしまうようなのだ。
そしてこのシステムは本来勇者に与える為のものだそうだ……俺たちは女神のミスで、勇者召喚に巻き込まれてしまったらしい。
誰にでも加護や祝福が付く……これは恐ろしい事だ。
もしあいつに強力なスキルが付いたとしたら……考えるだけでも恐ろしい。
「本来勇者に授けようとしていたのは、望んだオリジナルを神に創って頂く予定じゃったのだが、さてどうしたものかのう」
「神ってのはフィリア様の事じゃないのか?」
「妾が言っておる神とはこの世界をお創りになられた創造神ガイアス様の事じゃ。他にも沢山の世界をお創りになられておいでで、この世界にはユグドラシルという監視システムを授けてくださっている。妾はそのシステムを管理しておる。今回の勇者召喚の儀も、システムからの神託じゃったのじゃが、とんでもないミスをやってしまったからのう。妾は今回で3回目のミスじゃ。今回の大失態は許してはくれぬじゃろうから、これが妾の最後の仕事になるじゃろうな」
「女神にも罰があるのか……フィリア様はどうなるんだ?」
「どうなるじゃろうの? 妾にもわからぬ。前回は人族に与えてはならない武器を与えてしまって世界のバランスを崩してしまい罰を受けた。この世界への降格人事じゃったがの。その前は14歳の頃じゃったのだが、ちょっとしたいたずらをして成長を止められてしもうた」
「えっ? じゃあ、見た目と実年齢は違うんだ?」
「ふむ、見た目は14歳のままじゃからのう」
いやいや、見た目は10歳だって!
「声に出して言わなくても妾には分かるのじゃぞ! なんて無礼な奴なのじゃ!」
「うっ、だから人の思考を読まないでって言ってるじゃん! なるほど……こっちを見て思考を読むんだね?」
「むっ、バレてしもうた! なかなか其方、目ざといの」
思考をこれ以上読まれないようにフィリア様を膝の上に抱っこして、こっちを見れないように正面を向かせた。
これで考えは読まれないだろう。
フィリア様、凄く良い匂いがする……。
「妾を抱っこしてエッチな事を思うでないぞ!」
「10歳の子供に欲情なんてしないから!」
「10歳ではない! 14歳じゃ! それに実年齢は1847歳じゃ!」
「ロリババァかよ!」
「なんて無礼な奴なのじゃ! 龍馬よ、今のは言ってはならん事じゃ! 妾はちょっと傷ついたぞ!」
「ごめん悪かったよ。それで、このあと俺はどうなるんです? 祝福くれて、さっきの場に放逐とか?」
「そうじゃな、おそらく妾は女神の資格を失って消滅させられるじゃろう。本来勇者にのみ与えるはずのオリジナルを其方にも特別に授けよう。妾は其方が気に入った。妾の最後の望みぐらい創主様も見逃してくれるじゃろう。どんなものが欲しい? 武器か防具か? スキルか? 創主様のシステムの許す範囲なら望みの物を授けるぞ」
「え! 良いの?」
「妾は龍馬の事が気に入ったからのう……どうせ消えゆく妾じゃ。幸の薄い可哀想な其方に、神力を振り絞って授けてやるぞ。其方に死んでほしくはないからのう」
「めっちゃ同情かよ! でも、フィリア様が消滅とか嫌だな……」
「消滅刑とは限らないが、妾のミスで千人規模の死が起こってしまうのじゃ。其方の世界にも迷惑がかかるしの、当然重罪じゃ」
「できるだけ罪が軽くなるよう祈ってるよ」
「うむ、ありがとう。其方は優しいのう。さぁ、どんなモノが欲しい?」
「うーん、まずその最初に貰えるスキル2つはどんなのがあるか見たい。それから考えるよ」
「口頭より其方らはこっちの方が良いじゃろうと、システムが【クリスタルプレート】なるものを用意しておる。それを観覧すると解るじゃろうて。項目ごとに分けられておるし目視の方がよかろう?」
俺の手元の空中に、A4サイズのタブレットPCが現れた。
クリスタルの石版だが、タッチパネルで、どうみてもコレ、俺たちの世界の仕様だよな。
ゲームのステータス画面のようなものが表示されていて、いろいろこの【クリスタルプレート】でできるようになっているようだ。まぁ、訳分からない物よりは慣れ親しんだ感じで良いな。
「そうだね。俺たちの世界の人間なら凄く分かりやすいかも。パソコンは授業で必修だから全員使えるし、タブレット仕様ならスマホ感覚で扱えるのも良いね。へぇ~、一杯あるんだな。この中から2つか……」
「今後魔獣を倒せて、ここに訪れる者たちは、勇者以外はそのシステムが相手をして説明するじゃろう」
「フィリア様は来る人みんなに謝罪して回るんじゃないのか?」
「そのつもりじゃったが、ユグドラシルに止められてしもうた。謝ったからといって今更どうにもならないし、人によっては暴力を振るわれるだけだそうじゃ。皆が其方のように冷静に聞いてくれないじゃろうと判断したようじゃな。妾はどんなに殴られても良いのじゃが、創主様のシステムの命令には逆らえんのじゃ……創主様の言と同じじゃからな」
「俺もフィリア様が殴られるのは嫌だからその方が良いよ。どんなのがあるか暫く見ていて良いかな?」
「スキルの獲得は生涯に係わる事柄じゃ、ゆっくり選ぶとよい。既存スキルを無償で選べるのは2つだけじゃが、レベルアップ時のポイントが3ポイント付いておる。それを使って新たに3つ獲得しても良いし、獲得したスキルの熟練度のレベルを上げても良い」
格闘術・魔術・召喚術・精霊術・錬金術……一杯あるな。
格闘術をクリックしたら、更に剣術・拳術・槍術・弓術……と細分化されていた。
フィリア様の説明だと、最初に貰えるのはサービスでスキルを2つ。魔獣を倒した時に得られるAP(アビリティポイント)を消費してスキル獲得もできるとの事。
格闘術の中からレベル1の剣術を獲得するのに1ポイント消費するみたいだ。獲得したレベル1の剣術の熟練度をレベル2にするのに2ポイントいるのか……レベル3にするには3ポイントもいるみたいだ。
う~ん、悩むな。いろいろ覚えるなら今回最大で5つ習得できることになる。
初回特典で2つ貰える分と、レベルアップ時に入ったAP3ポイント消費して熟練レベル1のスキルなら3つ得られるという訳だ。
だが、いろんなMMOをやってオタク気味な俺は知っている。いろいろ分散して獲得しても器用貧乏になって弱いのだ。特に初期の頃は一極で技を極めた奴が強い。
AP3ポイント使うとして、剣術レベル1・火魔法レベル1・回復レベル1を取った者より、剣術Lv1を取ってAP1P消費し、剣術Lv1→Lv2に上げるのにAP2P使って、剣術レベル2にした奴の方が同じ3ポイント消費したとしても剣技Lv2を取った者の方が強いのだ。
魔法は呪文の発動に時間がいる……回復魔法もそうだ。
スキル詠唱中の間に、剣で滅多切りにされれば終わりだからね。
暫くと言ったが、すでに20時間ほど経っている。フィリア様はその間せかす事も嫌な顔もせず黙って待っていてくれた。時々俺がする質問にも丁寧に答えてくれ、こちらの世界の事やスキルの事もだいたい把握した。
よし決めた。3パターンの考えがあるが、1番最初のはダメもとでの案だ。
「フィリア様決めました。3パターンあるのですが勇者と俺だけが貰えるオリジナル魔法次第で変わってきます」
「随分考え込んでおったようじゃが、欲しい物が決まったのかの?」
「はい、ダメもとですが説明は難しいので俺の思考を読んでもらえますか?」
「フム……はぁ!? そんなものダメに決まっておるではないか! 其方むちゃくちゃじゃの!」
「やはりダメですか……まぁ流石に俺もダメもとで言ってみただけですので」
「流石にそれはズルいじゃろう。システムが許すはずがなかろう。エッ!? いいの? ウソじゃろ?」
「フィリア様、どうしました?」
「其方の願い、ユグドラシルが許可しよった! 妾の神力を使って授けるなら許可するそうじゃ」
「マジですか! これかなりのチートになりますよ? 自分で望んでおいて今更ですが、良いのですか?」
「ふむ、ユグドラシルが許可したのなら創主様が許可したのと同じなのじゃ。妾の神力が空になったら勇者にまわす分が無くなるのう。え? 足らない場合はユグドラシルが補填してくれるじゃと?」
なんかシステムとやり取りしているようだが、もしこのオリジナル魔法が貰えるならかなりチートっぽい事が可能だ。
「龍馬よ、話はついた。其方に妾から希望のオリジナル魔法を神力を賭して授けよう。妾の力もこれでほとんど使い果たすじゃろうが、どうせ先のない身。其方は有効に使って生き延びるのじゃぞ。それと残りのスキル2つと、AP3ポイントはどう使う?」
「なんかフィリア様の命を削ってこのスキルを貰うみたいで嫌だな……」
「其方はこれから厳しい世界を生き延びねばならぬのじゃ。妹を守りたいのじゃろ? これから甘い事は許されない世界に生きるのじゃ。遠慮など無用じゃ! じゃが、死ぬでないぞ」
「はい、ありがとうフィリア様。残りのスキルですが1つは格闘術の中の【剣術】を、もう1つは【身体強化】をお願いします。AP3ポイントはオリジナルを貰ってから決めます」
「【身体強化】は強力な支援系パッシブじゃが、其方が倒したオークが持っておったのは槍じゃったろう? 初期は【槍術】の方が良くはないか? 種族レベルを5レベルほど上げて、剣を手に入れてから【剣術】を覚えた方が良くはないか?」
「そうかもしれないですが、無駄なポイントは使いたくないです。魔法を取った方が確実なのですが、あいつが生き残った場合、殺し合いに間違いなくなります。初動で負けると殺されてしまいますので、【身体強化】とオリジナルだけで次のレベルを目指そうと思っています」
「分かった。では先に妾からそのオリジナルを授けるとするかのう」
無事俺専用オリジナル魔法を受け取って、フィリア様に見送られて現実世界に戻ってきた。
あの部屋に行くときに見た光のエフェクトは、どうやら初回時だけの演出のようなものみたいだな。
実際は、オークの死体は消えずにその場に残っていた。
「死ぬでないぞ!」
彼女の最後の言葉をかみしめるように、目の前で木からぶら下がって死んでいるオークを見つめるのだった。
どうしてこうなっているのか……うまく誘導されたとしかいいようがない。
経緯は大体こんな感じだ。
「其方、名はなんと申すのじゃ? フム、白石龍馬、本名は小鳥遊龍馬か……良い名じゃな」
「答える前に頭の中を覗かないでよ。また見せるよ!」
「女神になんてモノ見せるのじゃ! 分かったからそう怒るでない。歳はいくつじゃ?」
「もうすぐ16になる。あなたはやっぱり女神なのか?」
「そうじゃぞ。この世界の主神で水を司る女神のフィリアじゃ」
そうなのだ。それとなく質問を繰り返し、俺の考えた事を読んで、俺の事を丸裸にしてしまったのだ。
虐待の事、妹の事、家族の事……これまで誰にも相談できず、相談しても相手にされなかった事を彼女は静かに質問を繰り返し聞いてくれる。
気付けば俺の方から全部喋っていた……これまで溜め込んでいた鬱憤を全部吐き出すように。
そして全てを聞き終えた彼女は『辛かったな』と言って、俺の側にトコトコ来たかと思ったら、そっと優しく抱きしめてくれたのだ。
で、今現在……彼女の腕に抱かれて、子供のように思わず泣きじゃくってしまっているという訳だ。
俺は泣いたことで少し落ち着いてきた。
最初に考えたのが『この子、見た目の割にはちゃんとちっぱいがあるんだな……』だったのがまずかった。
頭を拳骨で叩かれた。
「其方、妾の優しさをないがしろにしてなんてエッチなのじゃ!」
「ごめんったら、思春期の男の子なんだから大目に見てよ! それにいくら可愛くても10歳児に欲情とかはしてないでしょ」
「クッ! 10歳児じゃと! まぁ、よかろう……だいぶ落ち着いたようじゃな?」
「うん。じゃあ、説明してくれる? 俺の事は全部話しちゃったしね」
フィリアと名乗った女神様は聞くとちゃんと説明してくれた。
「結局俺たちはどうなるの?」
「弱肉強食の世界じゃ。頑張って生き残れるように努力するしかないの」
「フィリア様の話だと、間違いなく殆どの者が死んじゃうよね?」
「そうじゃな。申し訳ないと思っておるが、せいぜい1割生き残れたら良い方だと思っておる」
今現在、俺の時間は加速中だとの事……かといって肉体的に時間経過で年を取るようなものでもないらしい。
俺がこの亜空間にいる間、外の世界では止まったようにゆっくりとした時間が流れているそうだ。
流石は異世界、正直よく解らん。
「レベルアップしてこの部屋に来れた者には神の祝福が貰えるんだね」
「そうじゃ。ここに来るというのが唯一の条件じゃ。来さえすれば誰にでも加護や祝福を与える」
「誰にでもか……」
「そうじゃな……今、其方の考えているとおりじゃ。それもこれも妾のミスのせいじゃ」
どうやらここに来た者には、神様から加護や祝福が貰えるらしい。
ここに来る条件はレベルアップ。具体的にいうとオークなら1体、ゴブリンなら3体倒し、殺した際に得られる経験値となるものが必要だそうだ。
レベルアップの初回時だけ、この神のシステム部屋に来て、異世界仕様の体に造り変えてもらえるようだ。
地球とここでは少し肉体構造が違うらしく、異世界仕様に変態しない事には10日ほどで死んでしまうようなのだ。
そしてこのシステムは本来勇者に与える為のものだそうだ……俺たちは女神のミスで、勇者召喚に巻き込まれてしまったらしい。
誰にでも加護や祝福が付く……これは恐ろしい事だ。
もしあいつに強力なスキルが付いたとしたら……考えるだけでも恐ろしい。
「本来勇者に授けようとしていたのは、望んだオリジナルを神に創って頂く予定じゃったのだが、さてどうしたものかのう」
「神ってのはフィリア様の事じゃないのか?」
「妾が言っておる神とはこの世界をお創りになられた創造神ガイアス様の事じゃ。他にも沢山の世界をお創りになられておいでで、この世界にはユグドラシルという監視システムを授けてくださっている。妾はそのシステムを管理しておる。今回の勇者召喚の儀も、システムからの神託じゃったのじゃが、とんでもないミスをやってしまったからのう。妾は今回で3回目のミスじゃ。今回の大失態は許してはくれぬじゃろうから、これが妾の最後の仕事になるじゃろうな」
「女神にも罰があるのか……フィリア様はどうなるんだ?」
「どうなるじゃろうの? 妾にもわからぬ。前回は人族に与えてはならない武器を与えてしまって世界のバランスを崩してしまい罰を受けた。この世界への降格人事じゃったがの。その前は14歳の頃じゃったのだが、ちょっとしたいたずらをして成長を止められてしもうた」
「えっ? じゃあ、見た目と実年齢は違うんだ?」
「ふむ、見た目は14歳のままじゃからのう」
いやいや、見た目は10歳だって!
「声に出して言わなくても妾には分かるのじゃぞ! なんて無礼な奴なのじゃ!」
「うっ、だから人の思考を読まないでって言ってるじゃん! なるほど……こっちを見て思考を読むんだね?」
「むっ、バレてしもうた! なかなか其方、目ざといの」
思考をこれ以上読まれないようにフィリア様を膝の上に抱っこして、こっちを見れないように正面を向かせた。
これで考えは読まれないだろう。
フィリア様、凄く良い匂いがする……。
「妾を抱っこしてエッチな事を思うでないぞ!」
「10歳の子供に欲情なんてしないから!」
「10歳ではない! 14歳じゃ! それに実年齢は1847歳じゃ!」
「ロリババァかよ!」
「なんて無礼な奴なのじゃ! 龍馬よ、今のは言ってはならん事じゃ! 妾はちょっと傷ついたぞ!」
「ごめん悪かったよ。それで、このあと俺はどうなるんです? 祝福くれて、さっきの場に放逐とか?」
「そうじゃな、おそらく妾は女神の資格を失って消滅させられるじゃろう。本来勇者にのみ与えるはずのオリジナルを其方にも特別に授けよう。妾は其方が気に入った。妾の最後の望みぐらい創主様も見逃してくれるじゃろう。どんなものが欲しい? 武器か防具か? スキルか? 創主様のシステムの許す範囲なら望みの物を授けるぞ」
「え! 良いの?」
「妾は龍馬の事が気に入ったからのう……どうせ消えゆく妾じゃ。幸の薄い可哀想な其方に、神力を振り絞って授けてやるぞ。其方に死んでほしくはないからのう」
「めっちゃ同情かよ! でも、フィリア様が消滅とか嫌だな……」
「消滅刑とは限らないが、妾のミスで千人規模の死が起こってしまうのじゃ。其方の世界にも迷惑がかかるしの、当然重罪じゃ」
「できるだけ罪が軽くなるよう祈ってるよ」
「うむ、ありがとう。其方は優しいのう。さぁ、どんなモノが欲しい?」
「うーん、まずその最初に貰えるスキル2つはどんなのがあるか見たい。それから考えるよ」
「口頭より其方らはこっちの方が良いじゃろうと、システムが【クリスタルプレート】なるものを用意しておる。それを観覧すると解るじゃろうて。項目ごとに分けられておるし目視の方がよかろう?」
俺の手元の空中に、A4サイズのタブレットPCが現れた。
クリスタルの石版だが、タッチパネルで、どうみてもコレ、俺たちの世界の仕様だよな。
ゲームのステータス画面のようなものが表示されていて、いろいろこの【クリスタルプレート】でできるようになっているようだ。まぁ、訳分からない物よりは慣れ親しんだ感じで良いな。
「そうだね。俺たちの世界の人間なら凄く分かりやすいかも。パソコンは授業で必修だから全員使えるし、タブレット仕様ならスマホ感覚で扱えるのも良いね。へぇ~、一杯あるんだな。この中から2つか……」
「今後魔獣を倒せて、ここに訪れる者たちは、勇者以外はそのシステムが相手をして説明するじゃろう」
「フィリア様は来る人みんなに謝罪して回るんじゃないのか?」
「そのつもりじゃったが、ユグドラシルに止められてしもうた。謝ったからといって今更どうにもならないし、人によっては暴力を振るわれるだけだそうじゃ。皆が其方のように冷静に聞いてくれないじゃろうと判断したようじゃな。妾はどんなに殴られても良いのじゃが、創主様のシステムの命令には逆らえんのじゃ……創主様の言と同じじゃからな」
「俺もフィリア様が殴られるのは嫌だからその方が良いよ。どんなのがあるか暫く見ていて良いかな?」
「スキルの獲得は生涯に係わる事柄じゃ、ゆっくり選ぶとよい。既存スキルを無償で選べるのは2つだけじゃが、レベルアップ時のポイントが3ポイント付いておる。それを使って新たに3つ獲得しても良いし、獲得したスキルの熟練度のレベルを上げても良い」
格闘術・魔術・召喚術・精霊術・錬金術……一杯あるな。
格闘術をクリックしたら、更に剣術・拳術・槍術・弓術……と細分化されていた。
フィリア様の説明だと、最初に貰えるのはサービスでスキルを2つ。魔獣を倒した時に得られるAP(アビリティポイント)を消費してスキル獲得もできるとの事。
格闘術の中からレベル1の剣術を獲得するのに1ポイント消費するみたいだ。獲得したレベル1の剣術の熟練度をレベル2にするのに2ポイントいるのか……レベル3にするには3ポイントもいるみたいだ。
う~ん、悩むな。いろいろ覚えるなら今回最大で5つ習得できることになる。
初回特典で2つ貰える分と、レベルアップ時に入ったAP3ポイント消費して熟練レベル1のスキルなら3つ得られるという訳だ。
だが、いろんなMMOをやってオタク気味な俺は知っている。いろいろ分散して獲得しても器用貧乏になって弱いのだ。特に初期の頃は一極で技を極めた奴が強い。
AP3ポイント使うとして、剣術レベル1・火魔法レベル1・回復レベル1を取った者より、剣術Lv1を取ってAP1P消費し、剣術Lv1→Lv2に上げるのにAP2P使って、剣術レベル2にした奴の方が同じ3ポイント消費したとしても剣技Lv2を取った者の方が強いのだ。
魔法は呪文の発動に時間がいる……回復魔法もそうだ。
スキル詠唱中の間に、剣で滅多切りにされれば終わりだからね。
暫くと言ったが、すでに20時間ほど経っている。フィリア様はその間せかす事も嫌な顔もせず黙って待っていてくれた。時々俺がする質問にも丁寧に答えてくれ、こちらの世界の事やスキルの事もだいたい把握した。
よし決めた。3パターンの考えがあるが、1番最初のはダメもとでの案だ。
「フィリア様決めました。3パターンあるのですが勇者と俺だけが貰えるオリジナル魔法次第で変わってきます」
「随分考え込んでおったようじゃが、欲しい物が決まったのかの?」
「はい、ダメもとですが説明は難しいので俺の思考を読んでもらえますか?」
「フム……はぁ!? そんなものダメに決まっておるではないか! 其方むちゃくちゃじゃの!」
「やはりダメですか……まぁ流石に俺もダメもとで言ってみただけですので」
「流石にそれはズルいじゃろう。システムが許すはずがなかろう。エッ!? いいの? ウソじゃろ?」
「フィリア様、どうしました?」
「其方の願い、ユグドラシルが許可しよった! 妾の神力を使って授けるなら許可するそうじゃ」
「マジですか! これかなりのチートになりますよ? 自分で望んでおいて今更ですが、良いのですか?」
「ふむ、ユグドラシルが許可したのなら創主様が許可したのと同じなのじゃ。妾の神力が空になったら勇者にまわす分が無くなるのう。え? 足らない場合はユグドラシルが補填してくれるじゃと?」
なんかシステムとやり取りしているようだが、もしこのオリジナル魔法が貰えるならかなりチートっぽい事が可能だ。
「龍馬よ、話はついた。其方に妾から希望のオリジナル魔法を神力を賭して授けよう。妾の力もこれでほとんど使い果たすじゃろうが、どうせ先のない身。其方は有効に使って生き延びるのじゃぞ。それと残りのスキル2つと、AP3ポイントはどう使う?」
「なんかフィリア様の命を削ってこのスキルを貰うみたいで嫌だな……」
「其方はこれから厳しい世界を生き延びねばならぬのじゃ。妹を守りたいのじゃろ? これから甘い事は許されない世界に生きるのじゃ。遠慮など無用じゃ! じゃが、死ぬでないぞ」
「はい、ありがとうフィリア様。残りのスキルですが1つは格闘術の中の【剣術】を、もう1つは【身体強化】をお願いします。AP3ポイントはオリジナルを貰ってから決めます」
「【身体強化】は強力な支援系パッシブじゃが、其方が倒したオークが持っておったのは槍じゃったろう? 初期は【槍術】の方が良くはないか? 種族レベルを5レベルほど上げて、剣を手に入れてから【剣術】を覚えた方が良くはないか?」
「そうかもしれないですが、無駄なポイントは使いたくないです。魔法を取った方が確実なのですが、あいつが生き残った場合、殺し合いに間違いなくなります。初動で負けると殺されてしまいますので、【身体強化】とオリジナルだけで次のレベルを目指そうと思っています」
「分かった。では先に妾からそのオリジナルを授けるとするかのう」
無事俺専用オリジナル魔法を受け取って、フィリア様に見送られて現実世界に戻ってきた。
あの部屋に行くときに見た光のエフェクトは、どうやら初回時だけの演出のようなものみたいだな。
実際は、オークの死体は消えずにその場に残っていた。
「死ぬでないぞ!」
彼女の最後の言葉をかみしめるように、目の前で木からぶら下がって死んでいるオークを見つめるのだった。
25
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる