女神様から同情された結果こうなった

回復師

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学園ロワイヤル編 9・10日目

1-10-5 決着?儀式?

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 佐竹の指示で教頭や大谷、他の奴ら全員がニヤケ顔で剣を抜いた。

 こいつらからすれば初めての殺人だろうに、よくそんな下卑た笑いができるものだ。俺なんか吉本を出血死させただけで、その日は食事もままならなかったのに……。やっぱ、元からこういう奴らってどこかおかしいのだろうな。

 『ヒッ!』っという女子の声にならない恐怖が伝わってくる。少し前に集団レイプがあったばかりだ。中には思い出してその時の恐怖が蘇った生徒もいるだろう。

 奴ら全員の抜剣を確認した後に嫁たちが動いた……まさかね?
 少しざわつく中で美弥ちゃん先生の声が聞こえてきた。

「大谷先生残念です。向こうの世界では仏の顔も三度までという言葉がありましたが、こちらの世界では二度目すら無いそうです。あなたたちには二度目の機会を上げたのに懲りずにまた襲ってきました。三度目は無いです。さようなら」

 そう言って、剣を心臓に一突きした。
 大谷は美弥ちゃんの流れるような動きに、剣を抜いているにもかかわらず、なにも反応できなかった。

 『うっっ……』と唸って、数秒で直ぐに意識を無くした。いや、おそらく死んだのだろう。

 他も同じような感じだ。まさかとは思ったが、やはりか。菜奈が教頭を、桜が泉本を、沙織が田中を、穂香が山本を瞬殺していた。未来は小太刀を構えているが、臨戦態勢で待機していた。ヒーラーとして万が一に備えたのだろう。そして雅が佐竹の後ろに既に張り付いている。

 どうして菜奈じゃなくて雅が佐竹をと思ったのだが【隠密】【忍足】【俊足】【筋力強化】【身体強化】が全てLv10の雅は、佐竹の背後にくるまでの一瞬のうちに全員のシールドを切って回っていたのだ。

 後衛職の魔術師組の武器に【結界切断】の付与はしていない。
 一番腕の立つ雅が、アサシンのように気配を消して事前にシールドの結界を切って回ったのだ。

「何だ! シールドはどうしたんだ? おい! 田中!」

 佐竹が皆が倒れたのを見て大声で喚いているが、田中は既に沙織に殺されてしまっている……当然返事など無い。


「雅、俺は何もしない約束だったけど、佐竹は譲ってくれないか?」
「ん! ダメ! これは私たちの儀式なの! 龍馬は我慢して……お願い!」

 儀式? クソッ俺の寝てる間に何があった?

「理由はちゃんと聞かせろよ? でないと納得いかない。俺はちょっと怒っているんだぞ?」
「ん……怒るのは分かってた。だから秘密にして言わなかった。後でちゃんと話す」

 佐竹は俺の肩に刺した剣を必死で抜こうとしているが、俺は指で挟んで捕まえている。向こうは両手で必死に引っ張っているのにビクともしないのだ。佐竹は恐怖で顔が引きつっている。

 俺は指を離して貫通している剣を抜いた。すぐさま未来からヒールが飛んできて傷が癒えていく。
 俺は佐竹を雅に譲ったが、【多重詠唱】で5属性の上級魔法を各種ごとに10個リング状に衛星回転させて俺の周りに周回軌道をさせた。今、俺の周りには5つの異なる属性のリングが衛星のように回っている。

 5種50個の上級魔法だ。誰が見ても圧倒的で、恐怖を感じる。
 約束で何もさせてもらえないが、佐竹に舐められたまま死なれては俺の気が治まらない。

「何だよそれは! 全部上級魔法じゃないか! どうなってやがる? レベル19じゃないのか!? 汚い手で騙しやがったな!」

「ん! もう喋るな! 逝け!」

 雅は佐竹の後ろで二刀を抜いてクルクルとアイススケーターのように高速回転した。
 当然のように体育館に悲鳴と嗚咽、嘔吐の声が沸きあがる。

「雅、何やってるんだよ! ちょっとは他者への配慮も考えろ!」

 想像できるだろう……剣も服も全てが輪切りになって肉塊としてボトッという感じで、膝から上が全て崩れ落ちたのだ。オーク討伐で慣れている者はいいだろうが、これは体育館の支援組みにはあまりにもショッキングだろう。

 俺は慌てて【インベントリ】に佐竹だった物を収納し【クリーン】をかけて痕跡を消した。ゴミとして塵処理工房に回したくもないので、後で山中に捨てていく。よく遺体に罪は無いと、丁重に弔うシーンが映画などではあるが、俺はこいつらには墓すら作る気にならない。


 死体の周囲には【亜空間倉庫】内の私物が全員ぶちまけてしまっている。


「何これ! 信じられない!」

 桜の声で全員がそちらに注目する。

 見たら教頭・大谷・泉本の三人の周囲には女性下着や女子の学生服がかなりの数散乱しているのだ。最初の頃に女子寮は俺たちが先に漁っていたが、下着類はあまり回収しなかったと桜が言っていた。やはり他人の使用済み下着は使いたくないと皆の意見が一致したからだ。

 その辺は女子に任せていたのだが、体育館の女子から、料理部の誰かがネコババしているという声もあったのだ。どうやらその犯人はこいつらだったようだ。死んでも救えないやつらだ。

「クソ! お前らのようなクズが居るから、格技場の俺たちまで男だというだけで変な目で見られるんだ!」
「大丈夫ですよ。三田村先輩たちは、この数日、真摯に女子のレベル上げをサポートしていました。同行していたうちの女子たちからも割りと評判良いですよ」

「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ」


 死体を全部収容する。あまりこういうモノは晒すべきじゃない。


 俺は一番の先導者であろうフィリアに声を掛ける。

「フィリア」
「うむ、解っておる。食事の後でよいな?」

「ああ」

 正直、俺は怒っている。
 おそらく俺が寝ている時に、俺に内緒にして皆で殺すという話をしていたのだ。俺は彼女たちには殺しに係わってほしくなかった。今後、殺さなければならないどうしようもない場合がこの危険な世界ならあるかもしれない。でもその時がくるまでは、可能な限り俺が汚れ仕事は担当するつもりでいたのだ。 



「森里先生! 何も殺さなくても良かったんじゃないの!? 教師が殺人を先導してどういうつもりなの!?」

 高畑先生が、真っ先に人を殺した美弥ちゃん先生に食ってかかってきた。

「仮にまた前回のように彼らを許して、見逃して生かしたとします。私たちが居ない時に間違いなくまた襲ってきますよ? 高畑先生の目の前で女子たちが何人も殺され犯され、事後になるまで何度も見逃してやるのですか? 日本人の遺伝子がどうのこうの言ってるような奴らです。生きてる限り執拗に私たちを狙ってきますよ? 料理部にも非戦闘員はいるのです。可愛い彼女たちは何時か必ず奴等のターゲットにされるでしょう。とても容認できませんでした。別に私は他の人から今回の殺人の同意を得たいとも思っていません。人殺しとなじってもらっても結構です」

「そんなつもりは……ごめんなさい。私的な感情論でしたね。ありがとうございます。いつか誰かがやらないといけなかった事かもしれません」

「いつかではなく、今だと私は思ったので行動しました。後でと嫌な事を先送りしていてはこの世界では生き残れませんよ? 私はあなたたちの為に人は殺せませんが、料理部の娘たちの為ならこうやって人も殺せます。後悔は一切ないです。高畑先生も自分で優先順位を決めて、いざという想定で覚悟はしておいた方が宜しいですわよ」

「そうね、肝に銘じておくわ。他の料理部の娘たちも私たちの将来を守ってくれてありがとうね。嫌な役回りをさせてしまって申し訳ないです。今後の不安要素が1つ無くなりました……」

 流石高畑先生だ。謝意を述べることで桜たちが人殺し扱いされるのを未然に予防してくれたのだろう。
 それでも日本人的思考をすると、人殺しには違いないので、何人かは俺たちを軽蔑する者も出てくるだろうとは思う。だが、そういう甘い考えの者たちは、いつかどこかで痛い目を見る事になるだろう。


 美弥ちゃん先生……口では気丈に振舞っているけど、手も足もガクブルじゃないか。高畑先生はそれに気付き、美弥ちゃん先生の手をそっと握ってやっている。

 他の娘たちも同じように手足が震えている。沙織ちゃんと穂香と菜奈は床にへたり込んでしまって今にも泣き出しそうだ。雅だけは何とか大丈夫みたいだ……言い方は悪いが、雅は少し病んでるのかもしれないな。


 皆の状態を観察してたら、ハティが俺の膝に掻きついて尻尾を振っている。床に座ると、傷口付近をペロペロ舐めてきた。どうやら怪我を心配してくれていたようだ。主人思いで可愛いな~。親とでも思っているのだろうか?

「ハティ、怪我は治ってるから大丈夫だ。さっきは偉かったぞ! 誰よりも早くお前が助けにきてくれた! 後で美味しい特別なジュースを作ってやるな」

「ミャン!」



 美味しい夕飯で皆、笑顔だったのが、一気にお通夜のようになってしまった。


「皆、聞いてほしい。予定どおり明日出発するけど、危険な奴等は居なくなった。この場の危険が無くなったのなら残りたいって人は居ないかな?」

 誰も手を挙げようとしない。

「小鳥遊君、危険はあるでしょう。超危ない奴が居なくなっただけで、男子ばかりのとこに残るのが如何に危険か、これまでの事でもう皆懲りてるのよ」

「いや、男子が皆危険なわけ無いでしょ。って、また大影先輩ですか……」

「何よ!? だって危険でしょ! 生き残ったうちの男子の2割が女子を襲おうとしたのよ? 2割よ! 男子が危険じゃないってどうしていえるのよ! 5人に1人が襲ってくるのにどうすれば信じられるのよ!」

「2割? そんなに多い確率なのか?」
「男子の生き残りが48人、そのうち襲った男達はバスケ部3人、体育教師の吉本、教頭達3人、男子寮の3人、計10人よ。約2割じゃない!」

「うわ~、マジ男って馬鹿なんだな……数字で聞いたら呆れてなにも言えないよ……マジごめん」
「おい! 龍馬認めるのか? たまたま生き残った男子に今回は変な奴が多かっただけで、男子の皆が常に発情しまくってると思われたくないぞ!」

 三田村先輩が反論してくる。

「ちょっと良いかしら。先生大学では心理学科を専攻してたのだけど、ここの異常な状況も影響してたんだと思うな~。閉塞的な空間内に間仕切りもなく、目視で見える部屋内に思春期の男女が同衾する。遠目に眺め、色欲が高まる男子たち。最近の研究では、命の危険を感じると、特に男は子孫を残そうとするような本能があるようなの……いろんな条件が重なって通常では有り得ないほどの性犯罪率になっちゃってるんだと思うんだけど……この推論どうかな?」

「先生の推論は当たってるのかもしれないけど、だからと言って危険が無くなる訳じゃないでしょ? 残りたくなんか無いわ!」

「うーん。俺が本当に言いたいことはね、残るのも違う危険が高まったって言いたかったんだ」
「え? さっき危険がなくなったからって言ってたよね?」

「男子の危険はなくなったけど、教員棟と男子寮の最大戦力がどっちも居なくなったんだよ。いくら周囲の魔獣を狩りつくしたといっても、全滅させたわけじゃないから、少しは残ってるんだよ。でも今の戦力だと熊でもきちゃったらヤバそうなんだ……」

「なら尚更残りたくなんかないわ!」

「まぁ、そうだよね……となったら、守り手の居ない男子たちは超ピンチだよね。お迎えがくるまで、シェルターから一歩も出ないようにするしかないね。最悪俺が転移魔法で救出にくるしかないかな……」



 正直言うと、パラサイト野郎どもの為に何もしてあげる気はない。
 男なら自分で何とかしろ……。
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