女神様から同情された結果こうなった

回復師

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王都街道編 1~3日目

2-2-1 川漁?風呂桶改?

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 全員の入浴後、1人MP回復剤を飲みながら浴槽を改造する。皆のお願いというより、体臭による魔獣の追尾を防ぐ効果があるという理由が大きい。

 風呂の提供でログハウスの事への追及はしないと約束させたから、俺たちは快適に移動生活ができる。
 なにせ、ログハウス内は空調設備が完備してあるのだ。テントと比べたら温かいというだけでも羨ましがられるだろう。夕食後、毛布を大量に配り、早めに就寝とした。

「皆、自分の布団は寮から持ち出しているとは思いますが、体育館と比べたらテントはかなり早朝に冷え込みます。毛布を余分に配布しますので、寒いかなと思う人は各自で取りにきてください」


 湯船の補強と整形もあらかた終わり、仕上げはナビーに引き継ぐ。工房では、家造りとは別に浴槽の改造を更に行っている。まぁ、これは明日のお楽しみだな。

『ナビー悪いな、その設計どおりに頼むな』
『……はい、【プランクリエイト】で設計さえしていただけたのなら後は簡単です。ほぼ浴槽の方はマスターの手により完成状態なので、追加機能はナビーにお任せください!』

『なんか嬉しそうだな?』
『……はい! 明日皆の喜ぶ笑顔を想像すると、造るのが楽しいのです!』

『なんだか、物造りの職人みたいな事言うんだな……』
『……そういえばレベルアップの件なのですが、何か案がおありなのですか?』

『格技場の男子の件だよな……いや、俺のPTのレイドに組み入れてあげようかなってぐらいにしか今は考えてない。どこかにオークの巣でもないか?』

『……それなら、蟻塚とかどうでしょうか……でもちょっと危険かも』
『ナビーが危険って言うならかなりヤバい奴か?』

『……キラーアントの大きさは約1mほどで、知能は大したことないのですが、オーク同様上位種が絡むとかなりの集団戦を挑んできます。そして何より危険なのが硬度です。オークよりかなり硬いので、熟練度の低い者では剣が弾かれて通らない可能性があります。C班はちょっと相手をするのは危険ですね』

『オークより強いのか? 1つの巣で蟻は何匹ぐらいいるんだ?』
『……強さは単体では武器持ちのオークより少し強いぐらいですかね。蟻酸を吐くので注意も要ります。数は巣毎でかなり違いますね。一番近くにある巣だとまだ小さいので700匹くらいです。あ、そうそう、このキラーアントの中には蜜蟻が居まして、お腹の袋に蜜を溜める個体が20匹ほどいるのですが、この蜜は液体シュガーのようなモノと思っていいです』

『液体シュガーか……それは料理部で使えそうだね』
『……う~ん、でもその個体は非戦闘個体で巣穴の奥から出てきません。その蜜は上位個体の食事になるので、奥の巣穴でじっと待機しています』

『蟻は夜は巣穴に帰って眠るんだよな?』
『……そうですね。蜂同様夜行性ではありませんね』

『いい案を思いついた! 夜、行って巣穴ごと俺の禁呪魔法で壊滅させる!』
『……禁呪、マスターが言うとなんかマジヤバそうで嫌なのですが……』

『ここからその巣穴は近いのか?』
『……いえ、明日の移動先を少し調整したほうが良いかと思います。どうせ花摘みにも行くのでしょうし、その川で魚も捕れますので、明日の移動距離が少なくなりますが、魚もとって食料とレベルアップの為に、1日時間を潰しても別に良いのではないですか?』

『そうだな……料理部用の魚はキープしてあるけど、皆の分はないしね。ついでに魚も獲っておこうかな』




 翌朝、朝食後に多少のコース変更と、魚の捕獲をすると伝える。

「夜レベルアップをする組が、料理部と格技場の男子のみっていうのが納得できないわ!」
「レイドPTの上限が30人なので仕方ないでしょう? 自分がレベルアップしたいからといって、我が儘言わないでくださいよ」

「まだくじ引きとかで決まったとかならあきらめもつくけど、優先的に料理部だけってのがズルくない?」

「またその事ですか……何度も言いましたが、あなたは只のお荷物なんです! 俺は料理部だけで良いんですよ。初日から風呂に入りたいとか、俺的には面倒なだけでしょ。あなたたちが居なければ、ログハウスがあるので、そんな手間も要らないですし、石鹸の補充に花摘みなんかもしなくていいのです。ついでに言えば料理部用の魚は確保済みなんですよ。あなたたちを無視するなら獲る必要すらないのです。何だったら居ないものと考えて非常食だけ食べててもらいましょうか?」

 今文句を言ってきてるのは、柴崎友美先輩。元新体操部で今年の夏で引退した3年生だ。部によっては秋まで残る人も居るようだが、この学校は国でも1、2を争う進学校だ。あまり部活に熱心になる者は少ない。あくまで一流大学を目指す進学校なのだ。

「龍馬、彼女の気持ちもお前ならわかるよな?」
「解りますが、なんで三田村先輩が柴崎先輩を庇うのですか?」

「いや……彼女も結構頑張ってレベル上げしてたからな。できれば最前線の戦闘組に加えてあげたいかな~って」

「今回のレベル上げは、本来予定にはなかった事です。戦闘の実地訓練でもないし、ただスキル獲得のための強制的なレベル上げが目的です。俗にいうパワーレベリングってやつです。料理部の可愛い娘たちが街でガラの悪い冒険者やアホ貴族に襲われても返り討ちできるように、基礎レベルの向上がメインなのです。格技場の男子は、レイドPTの空きが少しあったので護衛の為にもう少し強くなってもらおうかと誘ってあげただけです。これも何度も言いましたが、レベル上げがしたいのなら、一度街についてから自分の力でその後に行ってください。それこそ三田村先輩たちにお願いしておけばいいじゃないですか」

「俺か? 柴崎先輩が街についてから周辺でレベル上げがやりたいなら付き合って同行しますよ?」
「ほら、三田村先輩もそう言ってくれてるじゃないですか? レベル上げは自分の力で行ってください!」

「う~~~! あなたって意地悪なのか優しいのか解んない人ね! もうういいわよ! ベ~」

 柴崎先輩は俺にアッカンベーをして去って行った。

「三田村先輩! 俺リアルアッカンベーとか初めて見ました! 昭和人しかしないのかと思っていましたよ」 
「いや、俺も初めて見たけど……お前の感性が変だと思うぞ? 普通怒らせちゃったほうを気にするだろ?」 

「え? だって俺悪くないじゃないですか? 彼女が我が儘を言ってきただけです」

「あの? 龍馬先輩? 何でしたら私が代わってあげても良いですよ?」
「ダメだよ沙希ちゃん。俺は君たちの街での安全を優先してこのレベル上げをしようとしてるんだ。その君が抜けちゃったら意味ないでしょ? 街での危険性は話した通りなんだから、もっと自覚してほしいな」

「あ、はい。ごめんなさい……でもそんなに街って危険なのですか?」
「日本でも、危険なエリアはいっぱいあるでしょ? 歌舞伎町とかも一本裏道に入ったらかなり危険だよ? この世界の街の裏通りは日本なんかより何十倍も危険だからね。強くなっておくにこしたことはないんだよ。実際痛い目に遭ってからだと手遅れなんだよ?」

「龍馬は料理部の娘には甘いよな。確かにその娘もとんでもなく可愛いけど、心配し過ぎじゃないのか?」

「し過ぎで良いのです。事後では遅いですからね。オークに犯されるのと、人に犯されるのでは全く別物です。受ける心の傷は桁違いでしょう。そうなる前に事前に潰しておくのです。レイプを例に挙げましたが、勇者補正を持ってる異世界人ってだけでかなりヤバいのですから、貴族や領主、宗教団体とか、どんな悪意を持った奴が近付いてくるかわかったものじゃないのですよ? 三田村先輩も十分注意してくださいよ? 【奴隷紋】という魔術で行動を縛ったり、【隷属の首輪】とかいう犯罪者に付ける魔道具など、ヤバいものも沢山あるのです。知らないうちに装着されて、何年後かに俺の敵になってひょっこり現れたりしないでくださいね」 

「ありそうで怖い……気を付けるよ」


 丁度お昼ごろに川辺の花摘みポイントに到着し、俺は皆の食べる魚を確保する。


 3パターン考えたのだが、一番環境に優しい追い込み漁をする事にした。

 上流に空間指定で川一杯の幅の空間を【アクアシールド】で囲っておく。
 そこに下流から小規模な【ファイアボール】を撃ち込んで、どんどん上流の結界内に追い込んでいくのだ。

 そして結界内に入った魚を選別する。
 ある大きさの金網を作って、そのうえで結界に穴を開けて小さい魚は網をすり抜けてそのまま川に放流する仕組みだ。残った大きな魚を皆で捌いて食べるのだ。時間的に魚を食べるのは夕飯時だな。


 ちなみに他の2つは、【ファイアラボール】を使ったダイナマイト漁と【サンダラボール】の電気を使った感電漁だ。どっちも日本では禁止されている漁の仕方だ。


「ああ、あの小さな種類の魚も美味しそうなのに勿体ないわね」
「茜はホント食にうるさいよな。拘りは桜以上だよね?」

「茜のそれは病気よ? あきらめた方が良いわよ?」
「桜にだけは言われたくないわ!」

「「「先輩たちどっちもいい勝負です!」」」

 茜も桜も料理部員のダメ出しをくらっている。

「ねえ、川エビが沢山いるけど、何か捕らえる方法はない?」

 茜が川を覗きこんで提案してくる。

「う~ん。確かエビは夜行性だよな……網漁かな? 今晩寝る前に大きめな網を仕掛けてその上に魚のアラでも乗せておけば朝引き揚げたら一杯入っているんじゃないか?」

「それ、只の乗せ網漁じゃない。カゴ網漁とかできない?」
「餌をカゴ網の中に入れてから、入ったら中々出られなくするやつだよな? できるよ」

「やっぱ、できるんだ……」
「茜が言ってるカゴ網って、簡単に作れるの?」

「普通はできないわよ……網を編むだけでも結構な時間が要る筈よ。でも龍馬君だし……」

「夜までには、20個作っておくよ……」
「じゃあ、私はこの捌いた魚の内臓とかアラの部分は捨てずにとっておくわね」


 今日の夕食は、美味しいマス科の川魚の塩焼きが一品ついていた。
 肉派が多い中でも、偶には魚も良いねと好評だった。



 そして女子お待ちかねの、風呂の時間だ。昨日とは格段に髪質が変わった女子たちの視線が熱い。

「今日も風呂は用意します。くれぐれも指定のシャンプー以外は使わないでくださいね。それと昨日指摘があった、足元の泥跳ねの方も改善しています。浴槽周りは簀子で囲いましたので、足が汚れる事はもうありません。それと湯船も緩い傾斜をつけて浅いところは50cmで一番深いところは1mの深さがありますので、自分の好みの深さでお入りください。それとお湯は入れ替えが要らないように、4カ所から常に綺麗なお湯が出ていて掛け流しになっているので、中でお湯が汚れるおしっこなんかしないでくださいね」

「「「しないわよ! Booo! Booo!」」」
「まぁ、小学生じゃないので大丈夫だとは思いますけどね……念のために言っただけですよ」

「はい! それでも男子の前には、お湯を入れ替えてから入ってほしいのですが! ダメでしょうか?」 
「あ~うん、分かった。入れ替えてから入るよ」

 そういう女子もいるよね……桜も嫌だって言ってたし、面倒だが仕方ない。


 風呂の改善点

 ・足場の泥が跳ねて、泥で水も汚れていたので、簀子を左右に設置
 ・風呂に緩い傾斜をつけ、好みの位置で肩まで浸かって入浴できるように改善
 ・浴槽の4つ角に、お座りしたハティ風の口から綺麗なお湯が出る魔道具を設置
 ・湯船の中に【クリーン】を応用した水質浄化装置を設置
 ・ジェットバスのエリアと、打たせ湯のエリアを設置し、1日歩いて疲れた体を癒せる場を設置
 ・薬草を入れた薬湯風呂を併設し、疲労回復を促す湯船を設置
 ・上がり湯用のシャワーを5台設置

 衝立で周りを囲おうかとも思ったが、せっかくの露天の雰囲気が台無しになると思い、女子の入浴時間は男子は1カ所で集まって監視の元待機とした。


「あんなに昨日はブツブツ文句言ってたくせに、龍馬君やり過ぎよ! 何これ! ちょっとした温泉施設じゃない!」


 桜にダメだしされてしまった。
 雅とハティは喜んでくれているのにな……理不尽だ。
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