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王都街道編 6・7日目
2-7-1 スローモンキー?茜の奇食?
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朝食後、【インベントリ】に仮設住居とログハウスを収納し、皆に簡単に予定を伝える。
「先日話したとおり、今日は最も危険なエリアを通過します。ヤバいのが来たら俺と柳生先輩で対処しますので、皆は速やかに指示に従って退避してください」
「龍馬、危険な魔獣って何がいるんだ?」
三田村先輩は俺が危険危険というから、どんな魔獣が出るのか気になるようだ。
「この辺で1番ヤバいのが地竜だそうだけど、森の奥深くに居て殆ど出てこないそうだから、現状でヤバいのはサーベルタイガーになるのかな。体高が5mもあって体長は尻尾抜きで7mだって……もう特撮に出るような怪獣だよね。普通は遭遇したら全力で逃げるんだそうだけど、運悪く遭遇しちゃったら何人か犠牲者が出て喰われるらしい」
「そんな危険な魔獣、軍とか出して退治しないのか?」
「普段は森の奥に居て、腹が減ったら街道付近に出てきて、オークや人間とか肉ならなんでも食べちゃうみたいです。森は奥に行くほど危険だそうで、2次被害が起きるので、そう簡単に討伐に行けないようです。倒しても、魔獣なのでどうせまた魔素だまりから自然に生まれ出てくるしね……」
「なら街道をずらして通せば良かったのにな」
「この森は上から見たらひょうたん型をしてて、俺たちが通るのはくびれになっている森の厚みの薄い部分を通るんです。迂回路もあるのだけど、そっちを通ったら大きく森を迂回する事になるから、かなりの回り道になって10日は余分にかかるんだよね。普通は俺たちみたいに徒歩じゃないから、この森も馬車で半日ほどで駆け抜けるそうだよ」
「そういうことか……迂回すると俺たちの場合、食糧事情があるんだな」
「俺たちの方より、どちらかというと学園に残った組がヤバいかもね。街からの救出部隊の編成が遅かったら、餓死者が出るかも……」
「龍馬君が転移魔法で食糧を届けてあげたらいいんじゃないの?」
大影先輩だ……確かにそうすれば一見問題はない。彼女は、ただ単純に優しさから言っているのは解るんだけどね……。
「なんで、俺がそんなことをしてあげなきゃいけないんだよ……転移魔法はMP食うから凄く疲れるんだよ。距離が離れれば離れるだけ大変なんだよ。俺が助けて当たり前みたいな言い方は止めてほしい」
「助けられる力があるなら、助けてあげれば良いじゃない……」
以前ほど強くは言ってこないが、俺の価値観と違うんだよな。大影先輩の考え方は、未来や沙希ちゃんやフィリアや美弥ちゃんのような、誰にでも優しい聖女気質な者の考え方だ……俺には無理だな。
「前にも言ったけど、これまで何もしてこなかったツケだろ……俺はそんな奴らの尻拭いなんかしたくない」
考え方が違うのだから、議論しても時間の無駄なんだよね。最終的に、そんなに助けたいならお前が行けよって事になる……それ言っちゃうと、また睨まれそうだしね。
「2人とも、今は居残り組の話はいいだろ。龍馬、他に危険なのはいるか?」
「他は狼や熊とか豹とかなので、皆で対処できるはずだよ」
三田村先輩が助け舟に入ってくれた。
「分かった」
「小鳥遊君、他に何か注意事項はある?」
高畑先生……まだ排卵周期が抜けてないようだな。質問しながら額にうっすら汗がにじんでる。
「休憩をいつもより少なくするから、トイレは必ずその時に行っておいてほしいかな。休憩回数と休憩時間が少ないのは、できるだけ早く危険地帯から抜けたいのと、雨が降り出す前に拠点を構えたいっていう理由なので、皆もきついだろうけど今日は頑張ってほしい。寒空で雨に濡れると体力も奪われるし危険だからね。それと、生理痛や排卵周期中で辛い人は各種薬を使ってほしい。薬を嫌がって体調不良で遅れても、正直にいえば対処に困る……」
生理痛とかは回復剤でもかなり緩和できるようなのだ。
「あの……遅れたら置き去りにするって事?」
「置き去りにはしないけど、先頭の俺たちとあまり距離があったら、魔獣が出て駆けつけた時には手遅れって事もある。薬を嫌がって使わなかった本人が死ぬなら良いけど、殿をしてくれてる柳生先輩と男子たちが巻き添えで犠牲になったら気の毒でしょ? 高畑先生は辛そうにしていますが、どうして薬を使ってないんですか?」
「え~と……飲むタイプはまだ有るんだけど、注入タイプがもう無いのよ」
『……マスター、彼女は飲むタイプのヤツを使用したのですが、年齢と処女というペナルティが大きくて、飲んでもまだキツイのです……皆の前でそれを言わせるのは可哀想です……察してあげてください』
『そうか、飲んでもまだ効かないとは……適齢期を大幅に過ぎた、処女の女性の排卵周期って厄介だな』
「高畑先生、今すぐこれを使ってください。音は一切聞こえないようにしておきますので、安心してください」
俺のモノで作った希釈タイプの注入薬を手渡し、テントを出す。
「あ! これ、小鳥遊君のモノね!」
嬉しそうにテントに入って行ったが、そこまで差があるのか? 確かに俺はカスタマイズで弄ってあるので、ステータスは皆と比べたら桁違いな数値なんだけどね。
3分もしないうちに先生はスッキリ顔で、恥ずかしそうにテントから出てきた。男子から預かって生成した抑止剤を、全て先生に手渡す。
最近皆の抑止剤の使い方が怪しいので、飲むタイプを減らして、注入タイプを増やしてある。今回は男子全員の協力が有ったので、かなりの数が確保できている。
他の女子も順次使ってもらい、出発準備が終える。
準備が良ければ出発って時に、女子の1人が俺の下にやってきた。
「小鳥遊君ごめん……私も排卵日なんだけど、どうしても使いたくないの。迷惑なのは承知なのだけど、今はまだ彼を裏切りたくはないから……」
優ちゃんが美里先輩とか言ってた、野球部のマネージャーの娘だ……彼氏は彼女の目の前で喰われたんだったな。
「う~~ん、気持ちは解るんだけど……」
「城崎さんに他の男子のモノを飲ませたり、注入させたりあなたはできるの?」
「めっちゃ嫌だけど、この状況なら仕方ないので使ってもらうかな。やはり命が優先だね」
「龍馬君、私は絶対嫌よ!」
「兄様! 菜奈も嫌です!」
「ん! 死んだ方がマシ!」
話を聞いていた桜たちが嫌だと拒否ってきた。
「男子と女子の価値観の違いかの……彼氏持ちは嫌だと思うのは当然じゃが、皆に迷惑が掛かるのじゃぞ?」
「それでも嫌なモノは嫌! 置いて行ってくれて結構よ!」
「菜奈も無理やり使用させられるより、置いて行かれた方が良いです!」
「ん! 這ってでも追いつく!」
「雅は初潮すらまだ来てないだろ? なに普通にそっちに混じってるんだよ」
「ん! 皆の前でバラしたな! 龍馬のアホ!」
「イタッ! 悪かった、だからマジ蹴りヤメテ!」
「美里先輩、私が守ってあげますので、無理に使わなくても良いですよ!」
桜たち女子が先輩側について擁護している。別に俺だって、これまでも特に強要なんかしてないのに……。
他の男子のを使ってほしくないのも本心だよ? 只、何より死んでほしくないのが一番だから、大切な者の命と比べれば、嫉妬心なんか我慢できるってだけだ。
一騒動あったが、出発だ。
一番森の厚みの薄い場所を抜けるのだが、それでも70kmほどあるようで、これまでの移動距離の中では最大の距離を歩くことになる。
歩くというより、今日はマラソン並みのペースだな……しかも世界記録以上のペースだ。42.195kmを2時間切るだろう……【身体強化】のパッシブとはそういう類のモノなのだ。
昼食を食べ、出発して直ぐの辺りでMAPに大量の魔獣反応が現れる。
『ナビー、敵か?』
『……敵です。強くはないのですが……厄介な奴です』
現れたのは、スローモンキーという猿の魔獣だ。
『スローモンキー、名前からしたら動きが遅いのか?』
『……slowではなくthrowの方です』
『ナビー、throwの意味が分からない……』
『……知っているはずですよ? スローイングとか言うじゃないですか』
『ああ! 投げるって意味か?』
『……そうです』
『投げる猿? 成程……厄介だな……』
程無くして現れた猿たちは、街道の両サイドの木に登っていて、石やら木、腹が立つのは糞などを投げつけてくるのだ。
奴らの投げる石は結構脅威で、120kmほどの剛速球のモノまで飛んでくる。木の上からの遠距離攻撃はシールドで防げるのだが、こっちも魔法などの遠距離攻撃しかできない。群れで襲ってくるので数も多く、この森の厄介者だそうだ。
「皆、持ち物に気を付けて! 隙を見せたら武器や手荷物をひったくって盗むそうだから、武器以外はできるだけ【亜空間倉庫】に入れるように!」
言ってる傍から、誰かがネックレスを千切り奪われたようだ。
それを見たフィリアたちは、俺があげた婚約指輪を速攻で仕舞っていた。
大事にしてくれるのは、ちょっと嬉しい。
「龍馬! こいつらどうする?」
「狩ってもあまりメリットが無いんですよね。物理的に物を投げてくるぐらいしか攻撃手段が無いので、経験値も美味しくないし、魔石もオークより安い位だそうです」
「シールドが有るから、こっちは被害もないしな……ウンチ投げられた娘たちが怒り狂ってるぐらいか」
「持久力はなさそうなので、無視して駆け足で行きましょう」
「龍馬君、あの猿、食べられる? 隣国じゃあ、サルの脳ミソは満漢全席なる宮廷料理としてだされたそうよ?」
「茜……幾らなんでも、猿は止めようよ……食べられるそうだけど美味しくはないようだよ」
「あらそう……美味しくないのなら、まぁ、いいわ」
茜がそう言って離れた後に、三田村先輩がボソッとつぶやいたのが聞こえてしまった。
「あの娘、可愛いのに……なんか残念だな……」
可哀想なので、茜をそんな憐れんだ目で見ないであげて……。
何でも食材に見える茜は確かに残念な娘だけど……奇食も大概にしないとね。
確かに隣国の人が猿の脳みそを美味しそうに食べてるTVを見た事あるが、美味しいのかな?
おっと、イカンイカン!
茜のヤバいのが移りそうだな……先日も『蜂の子出せ!』とか、芋虫なんかも俺は喰いたくはない!
ネックレスを引き千切って行った猿だけ魔法で倒し、ネックレスを奪い返してやる。亡くなった彼氏に貰った品だったようで、その娘から泣いて感謝された。なんとなくで取り返してあげたのだが、そこまで大事な物だとは思っていなかった。そういう品なら【リストア】で切れた鎖も修復してあげる。
『……マスター! 21km先のサーベルタイガーが、こちらに向かって移動を始めました……凄い速さです』
『その距離から俺たちに気づいたのか? 探索範囲の広い雷系の探索魔法持ちか……』
『……魔法は一切使えないです。強化系のパッシブが幾つか掛かっていて、それが脅威なのです。奴が気付いたのは皆というより、フィリア様>マスター>ハティ>美咲>雅に反応したようです。何やら強そうなのが来たから、倒して食べてやろうと思ってるようですね』
『経験値狙いという訳か……でも、俺よりフィリアの方が強いのか』
『……そういうのとは違います。気配? のようなモノでしょうか? ナビーには良く分からないですが、強さではなく、フィリア様から只モノじゃない気配を感じ取ったようです』
『野生の勘、第六感ってヤツか……』
純然な強さなら、今のハティより美咲先輩や雅の方が強いらしい。
どうやら、一番ヤバい奴と戦闘になりそうだ。
「先日話したとおり、今日は最も危険なエリアを通過します。ヤバいのが来たら俺と柳生先輩で対処しますので、皆は速やかに指示に従って退避してください」
「龍馬、危険な魔獣って何がいるんだ?」
三田村先輩は俺が危険危険というから、どんな魔獣が出るのか気になるようだ。
「この辺で1番ヤバいのが地竜だそうだけど、森の奥深くに居て殆ど出てこないそうだから、現状でヤバいのはサーベルタイガーになるのかな。体高が5mもあって体長は尻尾抜きで7mだって……もう特撮に出るような怪獣だよね。普通は遭遇したら全力で逃げるんだそうだけど、運悪く遭遇しちゃったら何人か犠牲者が出て喰われるらしい」
「そんな危険な魔獣、軍とか出して退治しないのか?」
「普段は森の奥に居て、腹が減ったら街道付近に出てきて、オークや人間とか肉ならなんでも食べちゃうみたいです。森は奥に行くほど危険だそうで、2次被害が起きるので、そう簡単に討伐に行けないようです。倒しても、魔獣なのでどうせまた魔素だまりから自然に生まれ出てくるしね……」
「なら街道をずらして通せば良かったのにな」
「この森は上から見たらひょうたん型をしてて、俺たちが通るのはくびれになっている森の厚みの薄い部分を通るんです。迂回路もあるのだけど、そっちを通ったら大きく森を迂回する事になるから、かなりの回り道になって10日は余分にかかるんだよね。普通は俺たちみたいに徒歩じゃないから、この森も馬車で半日ほどで駆け抜けるそうだよ」
「そういうことか……迂回すると俺たちの場合、食糧事情があるんだな」
「俺たちの方より、どちらかというと学園に残った組がヤバいかもね。街からの救出部隊の編成が遅かったら、餓死者が出るかも……」
「龍馬君が転移魔法で食糧を届けてあげたらいいんじゃないの?」
大影先輩だ……確かにそうすれば一見問題はない。彼女は、ただ単純に優しさから言っているのは解るんだけどね……。
「なんで、俺がそんなことをしてあげなきゃいけないんだよ……転移魔法はMP食うから凄く疲れるんだよ。距離が離れれば離れるだけ大変なんだよ。俺が助けて当たり前みたいな言い方は止めてほしい」
「助けられる力があるなら、助けてあげれば良いじゃない……」
以前ほど強くは言ってこないが、俺の価値観と違うんだよな。大影先輩の考え方は、未来や沙希ちゃんやフィリアや美弥ちゃんのような、誰にでも優しい聖女気質な者の考え方だ……俺には無理だな。
「前にも言ったけど、これまで何もしてこなかったツケだろ……俺はそんな奴らの尻拭いなんかしたくない」
考え方が違うのだから、議論しても時間の無駄なんだよね。最終的に、そんなに助けたいならお前が行けよって事になる……それ言っちゃうと、また睨まれそうだしね。
「2人とも、今は居残り組の話はいいだろ。龍馬、他に危険なのはいるか?」
「他は狼や熊とか豹とかなので、皆で対処できるはずだよ」
三田村先輩が助け舟に入ってくれた。
「分かった」
「小鳥遊君、他に何か注意事項はある?」
高畑先生……まだ排卵周期が抜けてないようだな。質問しながら額にうっすら汗がにじんでる。
「休憩をいつもより少なくするから、トイレは必ずその時に行っておいてほしいかな。休憩回数と休憩時間が少ないのは、できるだけ早く危険地帯から抜けたいのと、雨が降り出す前に拠点を構えたいっていう理由なので、皆もきついだろうけど今日は頑張ってほしい。寒空で雨に濡れると体力も奪われるし危険だからね。それと、生理痛や排卵周期中で辛い人は各種薬を使ってほしい。薬を嫌がって体調不良で遅れても、正直にいえば対処に困る……」
生理痛とかは回復剤でもかなり緩和できるようなのだ。
「あの……遅れたら置き去りにするって事?」
「置き去りにはしないけど、先頭の俺たちとあまり距離があったら、魔獣が出て駆けつけた時には手遅れって事もある。薬を嫌がって使わなかった本人が死ぬなら良いけど、殿をしてくれてる柳生先輩と男子たちが巻き添えで犠牲になったら気の毒でしょ? 高畑先生は辛そうにしていますが、どうして薬を使ってないんですか?」
「え~と……飲むタイプはまだ有るんだけど、注入タイプがもう無いのよ」
『……マスター、彼女は飲むタイプのヤツを使用したのですが、年齢と処女というペナルティが大きくて、飲んでもまだキツイのです……皆の前でそれを言わせるのは可哀想です……察してあげてください』
『そうか、飲んでもまだ効かないとは……適齢期を大幅に過ぎた、処女の女性の排卵周期って厄介だな』
「高畑先生、今すぐこれを使ってください。音は一切聞こえないようにしておきますので、安心してください」
俺のモノで作った希釈タイプの注入薬を手渡し、テントを出す。
「あ! これ、小鳥遊君のモノね!」
嬉しそうにテントに入って行ったが、そこまで差があるのか? 確かに俺はカスタマイズで弄ってあるので、ステータスは皆と比べたら桁違いな数値なんだけどね。
3分もしないうちに先生はスッキリ顔で、恥ずかしそうにテントから出てきた。男子から預かって生成した抑止剤を、全て先生に手渡す。
最近皆の抑止剤の使い方が怪しいので、飲むタイプを減らして、注入タイプを増やしてある。今回は男子全員の協力が有ったので、かなりの数が確保できている。
他の女子も順次使ってもらい、出発準備が終える。
準備が良ければ出発って時に、女子の1人が俺の下にやってきた。
「小鳥遊君ごめん……私も排卵日なんだけど、どうしても使いたくないの。迷惑なのは承知なのだけど、今はまだ彼を裏切りたくはないから……」
優ちゃんが美里先輩とか言ってた、野球部のマネージャーの娘だ……彼氏は彼女の目の前で喰われたんだったな。
「う~~ん、気持ちは解るんだけど……」
「城崎さんに他の男子のモノを飲ませたり、注入させたりあなたはできるの?」
「めっちゃ嫌だけど、この状況なら仕方ないので使ってもらうかな。やはり命が優先だね」
「龍馬君、私は絶対嫌よ!」
「兄様! 菜奈も嫌です!」
「ん! 死んだ方がマシ!」
話を聞いていた桜たちが嫌だと拒否ってきた。
「男子と女子の価値観の違いかの……彼氏持ちは嫌だと思うのは当然じゃが、皆に迷惑が掛かるのじゃぞ?」
「それでも嫌なモノは嫌! 置いて行ってくれて結構よ!」
「菜奈も無理やり使用させられるより、置いて行かれた方が良いです!」
「ん! 這ってでも追いつく!」
「雅は初潮すらまだ来てないだろ? なに普通にそっちに混じってるんだよ」
「ん! 皆の前でバラしたな! 龍馬のアホ!」
「イタッ! 悪かった、だからマジ蹴りヤメテ!」
「美里先輩、私が守ってあげますので、無理に使わなくても良いですよ!」
桜たち女子が先輩側について擁護している。別に俺だって、これまでも特に強要なんかしてないのに……。
他の男子のを使ってほしくないのも本心だよ? 只、何より死んでほしくないのが一番だから、大切な者の命と比べれば、嫉妬心なんか我慢できるってだけだ。
一騒動あったが、出発だ。
一番森の厚みの薄い場所を抜けるのだが、それでも70kmほどあるようで、これまでの移動距離の中では最大の距離を歩くことになる。
歩くというより、今日はマラソン並みのペースだな……しかも世界記録以上のペースだ。42.195kmを2時間切るだろう……【身体強化】のパッシブとはそういう類のモノなのだ。
昼食を食べ、出発して直ぐの辺りでMAPに大量の魔獣反応が現れる。
『ナビー、敵か?』
『……敵です。強くはないのですが……厄介な奴です』
現れたのは、スローモンキーという猿の魔獣だ。
『スローモンキー、名前からしたら動きが遅いのか?』
『……slowではなくthrowの方です』
『ナビー、throwの意味が分からない……』
『……知っているはずですよ? スローイングとか言うじゃないですか』
『ああ! 投げるって意味か?』
『……そうです』
『投げる猿? 成程……厄介だな……』
程無くして現れた猿たちは、街道の両サイドの木に登っていて、石やら木、腹が立つのは糞などを投げつけてくるのだ。
奴らの投げる石は結構脅威で、120kmほどの剛速球のモノまで飛んでくる。木の上からの遠距離攻撃はシールドで防げるのだが、こっちも魔法などの遠距離攻撃しかできない。群れで襲ってくるので数も多く、この森の厄介者だそうだ。
「皆、持ち物に気を付けて! 隙を見せたら武器や手荷物をひったくって盗むそうだから、武器以外はできるだけ【亜空間倉庫】に入れるように!」
言ってる傍から、誰かがネックレスを千切り奪われたようだ。
それを見たフィリアたちは、俺があげた婚約指輪を速攻で仕舞っていた。
大事にしてくれるのは、ちょっと嬉しい。
「龍馬! こいつらどうする?」
「狩ってもあまりメリットが無いんですよね。物理的に物を投げてくるぐらいしか攻撃手段が無いので、経験値も美味しくないし、魔石もオークより安い位だそうです」
「シールドが有るから、こっちは被害もないしな……ウンチ投げられた娘たちが怒り狂ってるぐらいか」
「持久力はなさそうなので、無視して駆け足で行きましょう」
「龍馬君、あの猿、食べられる? 隣国じゃあ、サルの脳ミソは満漢全席なる宮廷料理としてだされたそうよ?」
「茜……幾らなんでも、猿は止めようよ……食べられるそうだけど美味しくはないようだよ」
「あらそう……美味しくないのなら、まぁ、いいわ」
茜がそう言って離れた後に、三田村先輩がボソッとつぶやいたのが聞こえてしまった。
「あの娘、可愛いのに……なんか残念だな……」
可哀想なので、茜をそんな憐れんだ目で見ないであげて……。
何でも食材に見える茜は確かに残念な娘だけど……奇食も大概にしないとね。
確かに隣国の人が猿の脳みそを美味しそうに食べてるTVを見た事あるが、美味しいのかな?
おっと、イカンイカン!
茜のヤバいのが移りそうだな……先日も『蜂の子出せ!』とか、芋虫なんかも俺は喰いたくはない!
ネックレスを引き千切って行った猿だけ魔法で倒し、ネックレスを奪い返してやる。亡くなった彼氏に貰った品だったようで、その娘から泣いて感謝された。なんとなくで取り返してあげたのだが、そこまで大事な物だとは思っていなかった。そういう品なら【リストア】で切れた鎖も修復してあげる。
『……マスター! 21km先のサーベルタイガーが、こちらに向かって移動を始めました……凄い速さです』
『その距離から俺たちに気づいたのか? 探索範囲の広い雷系の探索魔法持ちか……』
『……魔法は一切使えないです。強化系のパッシブが幾つか掛かっていて、それが脅威なのです。奴が気付いたのは皆というより、フィリア様>マスター>ハティ>美咲>雅に反応したようです。何やら強そうなのが来たから、倒して食べてやろうと思ってるようですね』
『経験値狙いという訳か……でも、俺よりフィリアの方が強いのか』
『……そういうのとは違います。気配? のようなモノでしょうか? ナビーには良く分からないですが、強さではなく、フィリア様から只モノじゃない気配を感じ取ったようです』
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