さくら

くまおやG

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炎上

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 花園は、ジョーが階段を降りていくのを見送ると
「カレン、弾は残って居るか?」
 とカレンに聞いた。
「兄者もうP90のマガジンとVZ61のマガジンがひとつづつしか無いわ!」
「そうか・・・・お前は、ここで見ていろ。俺に何かが有ったら、ジョーを頼む。残りの弾は、その時の為に取っておけ。」
 花園は、背中から日本刀を引き抜いた。
「久しぶりに抜いたぜ、村雨!」
 そう言うと化け物の群れに飛び込んで行った。

 俺は、ポケットからライターを探り、火を灯した。
 階段は湿っぽくて、如何にも何か出そうな雰囲気だった。
 一歩ずつ足元を探りながら降りた。
 今までの人生で降りた階段の中で一番長く感じた。
 階段の突き当たりは1m真角ほどの小さなホールがあり、正面は鉄の扉になっていた。
 俺は、勇気を絞って扉を開けた。
 ツーンと喉の奥を刺激する匂いがした。
 鼻血を出した時の感じに似ていた。
 血の匂いだ。
 俺は、手探りで電灯のスイッチを探した、割とすぐにスイッチは見つかった。
 スイッチを入れると、薄暗い蛍光灯が点いた。
 部屋は、思ったより広かった。
 部屋の中心が、深く掘られていた。
 丁度風呂桶くらいの穴が掘られてて居て、コンクリートで固められていた。
 その上に何かが吊り下げられていた。
 それは半ばミイラ化した女性の死体だった。
 穴は、女性の血で満たされていた。
 扉を開けたときの匂いは、その血の匂いだった。
 俺は、吐き気をもようした。
 穴の周りはハエがブンブンと飛んでいた。入り口に殺虫剤のスプレーが置いてあった。
「金庫……」
 俺は金庫を探した。
 金庫は、すぐに見つかった。
 部屋の突き当たりの壁に埋め込まれていいた。
 俺は、なるべく部屋の中心は見ないようにして、金庫の前に行った。
 カバンを探り鍵を取り出すと金庫の鍵を開けた。
 金庫は、アッサリと開いた。
 中に古い本が有った。
 割と大きな本だった。
「こいつさえ無ければ……」
 俺は、本を取り出した。
「ドカッ!」
 後頭部に激痛が走った。
 俺は、もんどり打って倒れ込んだ。
 振り返ると、そこには魚顔がニヤリとしていた。
 俺は、本を抱えながら後退した。
 インズマスは「よこせ」と言った。
『言葉喋れるんだ……くそっここまで来て……既に部屋に潜んでいたか……』
 俺はバッグの中に固いものが入っている感触を感じた……
『そうだ!』
 おれは、カバンに本を入れた。
 そして
「ほら、受け取れよ」と受け渡す振りをした。
 インズマスは、近づいてきた。
『後チョット、もうチョットで……』
 インズマスがカバンに手が届きそうな所まで近寄ってきた。
 俺は一旦カバンを後ろに引くとカバンの紐を持ってそのまま横に振り、カバンをインズマスの横面に叩きつけた。
 本の重みと相まって相当の衝撃がインズマスのテンプルに入った。
「バリン!!!」
 何かが割れる音がした。
 カバンから液体がポタポタと滴った。
 インズマスの肩口にもその液体が染み込んでいた。
 俺は入り口に向かって走った。
 インズマスもヨロけながらついてきた。
 俺は、入り口で振り返り。
 カバンを「ほら、返すぜ!」と言ってインズマスに放り投げた。
 インズマスは、それを受け取ると魚なりに不思議そうな顔をした。
 素早く俺は殺虫剤を手に取ると、インズマスに向けて噴射した。
 シューっと言う音を立てて殺虫剤は噴射した。
 インズマスは、煙たそうに手を左右に振った。
 俺は、ライターを取り出すとノズルに近づけ火を点けた。
 ブオーっと言う音を立ててスプレーは火を吹いた。
 まるで火炎放射機の様に。
 さっきカバンの中で割れたのは消毒用アルコールの瓶だった。
 アルコールを含んだカバンは勢いよく炎を上げた。
 インズマスの肩口に染み込んだ、アルコールにも飛び火した。
「グオー!!!!!」
 見る見るうちにインズマスは火だるまになった。
「アバヨ!」
 俺は、階段を駆け上がった。
 突き当たりのドアを開けるとカレンが「ビクッ」として後ろを振り返った。
「ジョー、本は?」
 俺が「始末した。」と言うと背後からバンとドアを開ける音がした。
 そこには、火だるまになったインズマスが立っていた。
 奴は、二三歩前に歩くと前のめりに倒れ込んだ。
 炎が建物のカーテンに飛び火した。
「ヤベー!逃げるぞ!」
 花園は、単身戦っていたが、異変に気が付いた。
 一様に奴等が苦しみ出した。
 すると、急にインズマス共は、青白い炎に包まれ始めた。
「兄者ー!!!!逃げるぞー!!!!」
 俺たちは、ロビーを抜け、表に飛び出した。

 呪われた家は、見る見る炎に包まれた。
 俺たちは、戦いの終わりを感じていた……


 俺は、パトカーに乗っていた。
 後始末は、花園が呼んだ警察がしていた。
『あっ』
「花園さん、チョットそこの公園寄ってくれませんか?」
 花園は「いいけど、なんで?」と聞いた。
「トイレです。いいでしょ。」
 俺は、あの桜が咲く公園に寄ってもらった。
 桜はもうすっかり葉桜になっていた。
 おれは、丘を駆け上がり桜の下に行った。
「これは、この前お花見をしていた桜ですね。なかなか見事な桜ですね。」
 後ろから、花園が話しかけてきた。
 俺は、ポケットから灰を取り出すと、桜の根元に撒いた。

 そして

「来年、また会おうな……」
 と言って手を合わせた。



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