【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

分かたれた道

125．興信所の男（第三者目線）

＜興信所の男目線＞

　俺は都内近郊で興信所をやっている男だ。毎日いろいろな男女や番のドロドロ愛憎劇を見ている。
　ゲスな話が大好きな俺にとっては、正直趣味半分実益半分といった仕事だ。

　今日も哀れな子羊たちが俺の元に駆け込んでくるだろう。

　ほら来た。
　開店早々駆け込んできたのは、綺麗な男オメガの若者だ。ここに来る客にしては少し若いな。


　名前を聞いてびっくり仰天！あの世間を賑わせた地下奴隷オメガオークションから生まれた純愛の主人公様じゃないか。

　しかも、探したい相手はその”純愛”相手と来た。

　こりゃあ美味しい鴨がネギ背負って飛び込んできたなぁ。
　俺が好きな下種なワイドショーネタの匂いがプンプンするぜ。


「お客さん、調べるのはいいですが…。
　柏木さんが連絡しちゃって、お相手さんが柏木さんに返信したら、下手したらお相手さん刑務所に入っちゃうってちゃんと解ってます？」


「それは解ってます！連絡したいわけじゃないんです！家にずっと帰ってないみたいで、彼の命が危ないかもしれないんです！
　彼が無事生きているかだけでもいいので、それだけでも調べてくれませんか？」


「お？」


　モールスに関わった地下オメガや飼い主が次々事故に遭うのは業界では有名な事だが、まさかあれだけワイドショーを賑わせた奴を処分するか？随分大胆な事をするな。

　うっしっしっし。なんか面白そうなことになってきたぞ。
　相手が無事でも無事じゃなくても、良いネタがとれそうだ。


　俺はその客の願いを結構な割引価格で了承し、調べていくうちにお相手様が金持ち美人オメガと都内の高級タワーマンションの一室で同棲している事を突き詰めた。


　うわぁ～世の中にはこういう事は多いけどさ。想定以上の事態だよ。

　あの駆け込んできた時のお客さんの取り乱し様がどうも気の毒になってしまう。
　お相手さんはもう違うオメガとよろしくやってるっていうのに、なんとも哀れなものだ。


　さぁ、お客様にはなんて言おう。まさかそのまま今は金持ち美人オメガの所に転がり込んでます。と言う訳にもいくまい。

　まぁ、あの純情そうなオメガちゃんがもし夜も寝れない位お相手さんの事を心配していたらちょっと可哀そうだから、一応生きてますって事だけは伝えておこうか。


　にしても、お相手さんには罰を与えないとなぁ。あれからまだ一年も経ってないっていうのに、もう他のオメガの愛人兼ヒモやってるなんて、こりゃ大スクープだな。

　俺は、手元の写真を見てほくそ笑んだ。
　二人で駅前で待ち合わせて仲良く夕飯の材料を買い出しにスーパーで並んでカートを押す写真。
　二人で仲良く荷物とケーキの箱を持って高級マンションに入って行く写真。しかも、奇しくもこの日はクリスマスだ。

　それから、日曜の朝に一緒に私服姿でどこかへ外出する写真。これで同棲している事を証明出来る。


　さぁ、週刊誌に幾らで売れるだろうか。