【完結】会社をクビになったら異世界で追放魔術師に性処理係として拾われました

夜曲

文字の大きさ
10 / 71
第一章

三つ指

しおりを挟む
『いいかとはなんだろうか。まさかまさかもう俺を食おうというのか。俺もまだ食ってないのに』

「二日間何も食べてなくてお腹が空いているんです。まずは食事をさせてくれませんか?」
 今にも服をはぎ取ろうとしていた手をやんわりと制しながら、陽向は上目遣いを意識してみた。少しは性処理係っぽく、しおらしく見えるだろうか。

 ネオはそのあまりのかわいさに言葉を失いながらも、すくっと潔く立ち上がった。

「悪い。そこの机に置いてあるものは自由に食べてくれ。少し出てくる」

 もちろん、大きく膨れ上がりビンビンに主張しているナニかを処理する為である。

「ありがとうございます! 助かります!」

 陽向は大人の包容力を駆使した。怖いほど立ち上がっている一点は見ずに、相手の気が変わらないうちにとすぐにテーブルにかじりついた。

『アレの対処についてはまた後だ。今は何も考えまい。
 腹が減ってはなんとやらだ』

 とりあえず一口。

『うま~~い!
 五臓六腑に染み渡るとはまさしくこのこと。優しい味付けと薄めのスープがうれしい。やっぱりアイツは良いやつだ!』

 野菜も肉もほろほろに崩れ、とろみのついたスープが胃の奥で膨らむ。一度はこぼれ出した生命力が、また身体に戻ってくるかのようだった。

 勢いよく食べ終わって陽向が匙を置くのと、ネオが扉を開けて戻ってくるのはほぼ同時だった。股間の膨らみもだいぶ落ち着いている様に見える。

『お? 危機は去ったか?
 安心したらもっとお腹が空いてしまった』

「おかえりなさいませ。その……大変厚かましいお願いなのですが、おかわりを頂戴することはできますでしょうか」
「それは構わないが……。あまり一度に食べ過ぎるとお腹を壊すぞ」

そうは言っても、陽向はまだまだお腹が空いている。もっともっと食べたい。

「っすみません! はしたないことを申し上げました。でも、その……まだ……」
「いや、いい。あと少しだけ、よそおう。
 食べ物は常に豊富にあるから心配しなくても良い。それくらいの甲斐性はある。もう一生飢えさせることはないと誓うよ。」

『今一生って言った!? 言ったよな?
 ってことは、年を取って、飽きられてポイされることは無いってことか?』

 よもや自分が、男から飽きられて捨てられる心配をすることになるとは。

 家に十分量がストックしてあるのはもちろんのこと。コンビニに行けば24時間いつでも食料が手に入る現代人にとって、飢えるというのは初めての経験だった。

 むやみにこの家を飛び出して、仕事の宛てもないこの世界でその日の宿と飢えと戦うか。
 この身体を差し出して、定宿と食料を取るか。
 この二択で、陽向は後者を取った。
 肉体労働が絶望的なもやし現代人29歳では、前者を選んでも明るい未来はない気がしたのだ。

 それに……この目の前の青年が、悪い人には見えない。
 服の上からでも解るあの立派な膨らみをもつ男の中の男に、身体を差し出すのは怖い。だが、少し接した感じは温厚そうで、そう無体なことはされない気がした。
 少なくとも、この世界のことや恐竜のことをもっと知ってから、逃げることを選んでも遅くはないだろう。

 だって、この世界には恐竜がいるのだ!陽向は願わくば、この恐竜保護区でネオと過ごすことで、恐竜博士的な立ち位置を手に入れたいという野望があった。

 突然こちらに来れたのだ。ならば、突然戻れることもあるだろう。
 もしそうなった時に、世紀の大発見の数々を現代に持ち帰れる。とても夢がある道だ。

 大好きな恐竜の為ならば、この身の一つや二つくれてやろう。

「ありがとうございます! 末永くお世話になります。
 不束者ですが、何卒よろしくお願いします!」

 陽向はテーブルにちょこんと三つ指を付くと、深々と頭を下げた。

『バタンッ』

 急に立ち上がったネオの後ろで、椅子が大きな音を立てて倒れたかと思うと、次の瞬間にはもうネオの腕の中にいた。
 まるで獣の跳躍のようなスピード。動きが早すぎる。

『この運動神経と反射神経の持ち主から逃げおおせることは、難しいだろうな』

 荒い鼻息から、相手の興奮が伝わってくる。
 やはり、もう今日からお勤めを果たさないといけないだろうか。初日くらいは多めにみてもらえないだろうかと陽向が懇願の目で見上げると、ギラギラと輝く燃ゆるような瞳とかち合った。

『あぁ……。食われる』

 外はもうすっかり暗くなっていた。長い長い夜のはじまりだった。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。 理想の彼氏はスパダリよ! スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。 受:安田陽向 天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。 社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。 社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。 ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。 攻:長船政景 35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。 いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。 妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。 サブキャラ 長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。 抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。 兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。 高田寿也:28歳、美咲の彼氏。 そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。 義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?

めがねあざらし
BL
役立たずと追放されたΩのリオン。 治癒師の家に生まれながら癒しの力もないと見放された彼を拾ったのは、獣人国ザイファルの将軍であり、冷徹と名高い王太子・ガルハルトだった。 だが、彼の傷を“舐めた”瞬間、リオンの秘められた異能が覚醒する。 その力は、獣人たちにとって“聖なる奇跡”。 囲い込まれ、離されず、戸惑いながらも、ガルハルトの腕の中で心は揺れて──偽りの関係が、いつしか嘘では済まなくなっていく。 異能×政治×恋愛。 運命が交錯する王宮オメガバースファンタジー。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

処理中です...