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第一章
火
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『どどどどどうしよう。異世界から来たなんて知られたら、面倒なことになるよね?』
一方で陽向は、どう隠し通そうかと考えていた。
「そうみたい……。気が付いたらここにいて……。自分でも何がなんだか……さっぱり」
「可哀そうに。きっと攫われたんだな。
一生ここにいて良いぞ。俺が一生守ろう」
『神様に攫われた……から嘘ではない、かな?』
人が良さそうなネオに隠し事をするのは良心が痛むが、この場合は致し方ないだろう。身の上話をするには、まだ出会ってからの日が浅すぎる。
「はいっよろしくお願いします! あのっ僕のいた国に恐竜はいなくて! 恐竜のことをいろいろと教えて頂け……ぐぅぅぅ~」
「ハハッ。お腹が空いただろう。パンを温めてやろう」
「パンっ!」
日向は炭水化物にようやくありつけるぞと喜んだ。
「急に食べると身体がびっくりすると思ったから、昨日は少なめにした。今日からは通常の食事量に戻そう」
『その配慮はできるのに、初日から僕のことがっついたくせに。
まぁ、あれは僕も良かったけど』
ネオとの”性処理”は悪くなかった。悪くなかったどころか、初カノにへたくそと振られてから恋愛に憶病になっていた陽向にとっては、実に九年ぶりくらいの人とのふれあいで、とても“良かった”。
上司のパワハラと突然のクビで空っぽになってしまっていた陽向の心に、少し何かが注がれた気がする。
かまどに移動したネオは、人差し指をひょいっと動かしただけで薪に火をつけた。
「えっすごい! これってもしかして魔法?」
「あぁ……。ヒナタは魔法が使えないんだったか」
「そうなんだ。僕は魔力が低いみたいで。この国の人は全員魔法が使えるの?」
「全員……ということは無いだろうな。病気で魔力が貯められなかったり体内で作られなかったりで、使えない者もいる。だが、ほとんどの者は使える。
魔法が珍しいのか?」
そうは言ったが、ネオは魔法が使えない人間というものに初めて会った。魔法が使えないなんて、文献上にはそういう記載もある。くらいの珍しい話だ。
それに、いくら自分が使えなくても、周りの人間は普通に魔法を使っていたはずだ。魔法を見て驚くのはおかしい。
『一体どんな環境で育ったのか。
労働を知らないきれいな手だ。自分で身の回りのことをしなくても良い環境……噂に聞く娼館か?
閨事についても、やけに詳しかった。もしや娼館から逃げ出してきたのではあるまいな』
ネオはとんでもない勘違いをしていた。
「いや……。久しぶりにこんなに魔法を上手に使える人に会った気がして……。あははははは」
『笑ってごまかしたが、少しわざとらしかっただろうか。』
『まぁいい。人には誰しも知られたくないこともあるだろう。俺にだって、陽向に知られたくない隠し事はある。あまり詮索しないでおこう』
ネオは、慣れた手つきでパンを切り、ハムとチーズをのせて窯で焼いてくれた。同時に、昨日のシチューも温めなおしてくれている。
『質素な見た目の台所に見合わず、調理器具はかなり充実している。見たところ、魔法が発達しているせいで文明は中世どまりなのかもしれない。それか、僕が過去にタイムスリップしているか』
「家事も手伝いたいから、魔法を使わなくてもできる方法を教えてくれない?」
「家事を。それは助かる。実はあまり得意ではないんだ」
「それは良かった! じゃあ僕、一生懸命覚えるよ!」
陽向が一人暮らしを始めて早10年。家事は得意な方だったが、ガスコンロも洗濯機もないこの文明レベルでの家事のやり方は、さすがの陽向も自信がなかった。
木皿の場所を聞いたり、水甕を覗いたり。薪や食材の場所を教えてくれたおかげで、ネオが仕事に行っている時でも、昼食を温めて食べるくらいのことはできそうだ。
陽向は、これからのスローライフを少し楽しみにしていた。
一方で陽向は、どう隠し通そうかと考えていた。
「そうみたい……。気が付いたらここにいて……。自分でも何がなんだか……さっぱり」
「可哀そうに。きっと攫われたんだな。
一生ここにいて良いぞ。俺が一生守ろう」
『神様に攫われた……から嘘ではない、かな?』
人が良さそうなネオに隠し事をするのは良心が痛むが、この場合は致し方ないだろう。身の上話をするには、まだ出会ってからの日が浅すぎる。
「はいっよろしくお願いします! あのっ僕のいた国に恐竜はいなくて! 恐竜のことをいろいろと教えて頂け……ぐぅぅぅ~」
「ハハッ。お腹が空いただろう。パンを温めてやろう」
「パンっ!」
日向は炭水化物にようやくありつけるぞと喜んだ。
「急に食べると身体がびっくりすると思ったから、昨日は少なめにした。今日からは通常の食事量に戻そう」
『その配慮はできるのに、初日から僕のことがっついたくせに。
まぁ、あれは僕も良かったけど』
ネオとの”性処理”は悪くなかった。悪くなかったどころか、初カノにへたくそと振られてから恋愛に憶病になっていた陽向にとっては、実に九年ぶりくらいの人とのふれあいで、とても“良かった”。
上司のパワハラと突然のクビで空っぽになってしまっていた陽向の心に、少し何かが注がれた気がする。
かまどに移動したネオは、人差し指をひょいっと動かしただけで薪に火をつけた。
「えっすごい! これってもしかして魔法?」
「あぁ……。ヒナタは魔法が使えないんだったか」
「そうなんだ。僕は魔力が低いみたいで。この国の人は全員魔法が使えるの?」
「全員……ということは無いだろうな。病気で魔力が貯められなかったり体内で作られなかったりで、使えない者もいる。だが、ほとんどの者は使える。
魔法が珍しいのか?」
そうは言ったが、ネオは魔法が使えない人間というものに初めて会った。魔法が使えないなんて、文献上にはそういう記載もある。くらいの珍しい話だ。
それに、いくら自分が使えなくても、周りの人間は普通に魔法を使っていたはずだ。魔法を見て驚くのはおかしい。
『一体どんな環境で育ったのか。
労働を知らないきれいな手だ。自分で身の回りのことをしなくても良い環境……噂に聞く娼館か?
閨事についても、やけに詳しかった。もしや娼館から逃げ出してきたのではあるまいな』
ネオはとんでもない勘違いをしていた。
「いや……。久しぶりにこんなに魔法を上手に使える人に会った気がして……。あははははは」
『笑ってごまかしたが、少しわざとらしかっただろうか。』
『まぁいい。人には誰しも知られたくないこともあるだろう。俺にだって、陽向に知られたくない隠し事はある。あまり詮索しないでおこう』
ネオは、慣れた手つきでパンを切り、ハムとチーズをのせて窯で焼いてくれた。同時に、昨日のシチューも温めなおしてくれている。
『質素な見た目の台所に見合わず、調理器具はかなり充実している。見たところ、魔法が発達しているせいで文明は中世どまりなのかもしれない。それか、僕が過去にタイムスリップしているか』
「家事も手伝いたいから、魔法を使わなくてもできる方法を教えてくれない?」
「家事を。それは助かる。実はあまり得意ではないんだ」
「それは良かった! じゃあ僕、一生懸命覚えるよ!」
陽向が一人暮らしを始めて早10年。家事は得意な方だったが、ガスコンロも洗濯機もないこの文明レベルでの家事のやり方は、さすがの陽向も自信がなかった。
木皿の場所を聞いたり、水甕を覗いたり。薪や食材の場所を教えてくれたおかげで、ネオが仕事に行っている時でも、昼食を温めて食べるくらいのことはできそうだ。
陽向は、これからのスローライフを少し楽しみにしていた。
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