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第一章
覚悟
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『さっき愛していると言っていた言葉はなんだったのだろうか。やはり、自分はネオにとってだたの愛玩動物なのだろうか』
ネオと同じ想いをそっくりそのまま返せないのに、相手には純心を求めてしまっているその不均衡さを陽向はあざ笑った。
『殿下ってことは、王子様ってことなんだろうな。王子様がこんなところで恐竜保護区の管理人。
左遷? 追放? 何か悪いことをした罰なのかな。
人に囲まれた華やかな宮殿からこんなところで一人きり。そりゃ寂しいわけか』
ネオの中での自分の立ち位置が解らなくなる。
さっきの森でのあの感じなら、自分が首を縦に振ればすぐにでも性処理係から恋人に昇格できるものだと思っていた。
これからは、少し肩の力を抜いて話せる。主導権はこちらに移ったものだと思いあがっていた。
『王子様か……』
相手の地位で対応を変えるような人間にはなりたくないと思いつつも、一国の王子が出自のわからない男を恋人にするだろうか。パートナーに選ぶだろうか。
『遊ばれてた?もしや、自分が性処理係に選ばれたのも、ご落胤ができないからなのでは……』
というところまで思い至って、陽向は自己嫌悪になった。
最初は、ただ温かい寝床と温かい食事が欲しいだけだったのに。今はネオの愛や隣にいる資格まで欲しいと考えてしまっている自分がいる。僅か一週間の間に、勘違いも甚だしい。
ネオは最初から性処理係が欲しいと言っていたではないか。
恋人だとか、パートナーだとか、そういう言葉を口にされたことはない。
ただ、可愛いと愛してると愛でられただけ。一生面倒を見てくれると言っただけ。
「いかなる御用命にてございますか」
「そうだな。来月は食器と寝具を一式持ってきてくれ。古くなってきたから替えたい」
「御意のままに。それでは、面前失礼させていただく無礼をお許しください」
「許す」
商人のあの畏まりようを見ると権力を失っているわけでもなさそうだ。
さよならの代わりに発せられる鷹揚な『許す』が、ネオと陽向との身分の違いを一層思い知らせた。
ネオのここでの任期はわからないものの、いずれ王宮に戻る可能性の方が高そうな気がする。ネオが自分で言っていた通りに強いのなら、猶のこと王族として軍隊を取り仕切ったりと責務も多そうだ。
その時、陽向はどうなるのだろうか。
もし、ネオがただの平民であったのなら。このまま何も考えずに、この山小屋で共に一生を過ごす選択肢もあったかもしれない。
今朝も一瞬でも逃げ出そうかと脳裏にちらついた陽向が、この関係性が有効期限付きのものであることを嘆く資格はない気がした。
でも、先行きが見通せない関係性は不安だ。
もし自分が女性であったならば、王族が愛妾を囲うのはままある話なのかもしれないと思える。でも、陽向はもうすぐ三十路になる男だ。王宮に連れ帰ってくれたとしても、良くて従僕の一人。悪くて下働き……いや、処分か?
もしネオが言っていた一生面倒を見るの”一生”が、老衰で亡くなるまでではなく、命の終止符を打つところまでだったとしたら?
陽向は底知れぬ恐怖に取りつかれた。
『ガチャ。ギーー』
ドアが開く音に合わせて陽向は目を閉じて寝たふりをした。
陽向が寝ていることを確認したネオが、商人から受け取った品を格納結界から出し、音を立てない様に台所に下ろしていく。
閉じた瞳の向こうで、陽向は二人の関係性を変える覚悟を決めた。
ネオと同じ想いをそっくりそのまま返せないのに、相手には純心を求めてしまっているその不均衡さを陽向はあざ笑った。
『殿下ってことは、王子様ってことなんだろうな。王子様がこんなところで恐竜保護区の管理人。
左遷? 追放? 何か悪いことをした罰なのかな。
人に囲まれた華やかな宮殿からこんなところで一人きり。そりゃ寂しいわけか』
ネオの中での自分の立ち位置が解らなくなる。
さっきの森でのあの感じなら、自分が首を縦に振ればすぐにでも性処理係から恋人に昇格できるものだと思っていた。
これからは、少し肩の力を抜いて話せる。主導権はこちらに移ったものだと思いあがっていた。
『王子様か……』
相手の地位で対応を変えるような人間にはなりたくないと思いつつも、一国の王子が出自のわからない男を恋人にするだろうか。パートナーに選ぶだろうか。
『遊ばれてた?もしや、自分が性処理係に選ばれたのも、ご落胤ができないからなのでは……』
というところまで思い至って、陽向は自己嫌悪になった。
最初は、ただ温かい寝床と温かい食事が欲しいだけだったのに。今はネオの愛や隣にいる資格まで欲しいと考えてしまっている自分がいる。僅か一週間の間に、勘違いも甚だしい。
ネオは最初から性処理係が欲しいと言っていたではないか。
恋人だとか、パートナーだとか、そういう言葉を口にされたことはない。
ただ、可愛いと愛してると愛でられただけ。一生面倒を見てくれると言っただけ。
「いかなる御用命にてございますか」
「そうだな。来月は食器と寝具を一式持ってきてくれ。古くなってきたから替えたい」
「御意のままに。それでは、面前失礼させていただく無礼をお許しください」
「許す」
商人のあの畏まりようを見ると権力を失っているわけでもなさそうだ。
さよならの代わりに発せられる鷹揚な『許す』が、ネオと陽向との身分の違いを一層思い知らせた。
ネオのここでの任期はわからないものの、いずれ王宮に戻る可能性の方が高そうな気がする。ネオが自分で言っていた通りに強いのなら、猶のこと王族として軍隊を取り仕切ったりと責務も多そうだ。
その時、陽向はどうなるのだろうか。
もし、ネオがただの平民であったのなら。このまま何も考えずに、この山小屋で共に一生を過ごす選択肢もあったかもしれない。
今朝も一瞬でも逃げ出そうかと脳裏にちらついた陽向が、この関係性が有効期限付きのものであることを嘆く資格はない気がした。
でも、先行きが見通せない関係性は不安だ。
もし自分が女性であったならば、王族が愛妾を囲うのはままある話なのかもしれないと思える。でも、陽向はもうすぐ三十路になる男だ。王宮に連れ帰ってくれたとしても、良くて従僕の一人。悪くて下働き……いや、処分か?
もしネオが言っていた一生面倒を見るの”一生”が、老衰で亡くなるまでではなく、命の終止符を打つところまでだったとしたら?
陽向は底知れぬ恐怖に取りつかれた。
『ガチャ。ギーー』
ドアが開く音に合わせて陽向は目を閉じて寝たふりをした。
陽向が寝ていることを確認したネオが、商人から受け取った品を格納結界から出し、音を立てない様に台所に下ろしていく。
閉じた瞳の向こうで、陽向は二人の関係性を変える覚悟を決めた。
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