【完結】会社をクビになったら異世界で追放魔術師に性処理係として拾われました

夜曲

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第一章

呼び名

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 ぐったりと倒れ込んだ陽向をネオはお姫様抱っこで連れ帰った。
『一番最初は俵だったもんな。前よりは大切にされてるな……』と陽向は思ったものの、足が慢性的に痙攣していて歩くのは難しい。

「なぁ、重くないか?
 僕をその格納結界に入れれば、もっと楽に持って帰れるんじゃないのか?」

「俺がヒナタの可愛い顔をずっと見ていたいのもあるが、一度格納結界に入れた生き物はその鼓動を止める。だから、それはできない」

 なるほど。ネオがそこまで自分を卑下する理由の一旦を垣間見た気がした。そりゃ普通の人は怖いだろうな。素手で触られるだけで音もなく死んでしまうんだから。

 かといって、足を取られやすい森の中をこの頼りない足腰のままで歩く気も起らず、陽向はこのままお姫様抱っこを甘受することにした。

「恐竜、見せてくれるって約束だったのに」
 こんな状態でも、恐竜への想いは捨てきれない。

「それは明日にしよう。今日は疲れさせすぎてしまった」
 確かに万全の体調で臨みたい。せっかくの機会なのに興奮しすぎて倒れるなんてこと、もったいなさすぎてできない。

「明日、絶対だぞ。約束」
「っ!あぁ。約束だ」

 ネオは、人生で初めてする約束に心躍らせた。
 約束。なんて素敵な響きなのだろうか。明日は誰かとの約束がある。そしてその相手は、愛しいヒナタで。
 たったそれだけのことでも、明日が来ることが楽しみになった。愛しい人を愛の巣へ連れ帰るネオの足取りは軽い。


 ベッドで横になり、陽向が事後の気怠さに任せてうとうととしていると、ネオが台所にある樽を運び出していた。恐らく今日は商人が来るのだろう。

『今朝僕の痕跡を消していたのに、本人がここにいたらまずいよな……』
 起き上がって隠れたいが、全身の倦怠感と睡魔には勝てない。運び出したということは、部屋に入れずにきっとドアの前で対応する気なのだろうと、陽向はそのままうとうととしていた。


「毎月ご苦労。荷物はそこでいい」
 ネオは馬車から荷下ろしをしている商人に声をかけた。

 ドア越しでもネオの声が聞こえる。木造の家の防音機能は結界魔法で強化できないのだろうか。それとも普段は人が来ないから敢えてしていないのだろうか。いや、今それはどうでもいいか。

「っっっ!カルネオール殿下!
 恐れながら、殿下の御前とも存ぜず、無礼の段、平にご容赦を!

 御意のままに」

『今、殿下って言った!?!?
 言ったよな。しかも、名前もネオではなかった』

 もちろん、陽向の方もネオへの隠し事は沢山ある。でも、自分が知っている名前さえも本名ではなかったことに、陽向は自分の想定以上にショックを受けた。
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