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第二章ーー招かれざる客
手癖
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しかし、牢まで入ってきたのは一人だけだった。
「ご苦労だった。持ち場に戻ってよいぞ」
隠せぬ愉悦が滲む王太子の声に、陽向は旗色の悪さを知る。
「「「はっ。御前失礼いたします」」」
陽向をここまで運んできた兵士達が階段を上がっていく音がする。少し経ってから入れ替わりに誰か入ってきて、ドアが閉まる音がした。
見えなくても、目の前にいるのは王太子とその護衛だということが想像ついた。
――『楽しい楽しい尋問の時間だぞ』
――『ヒュッ』
――「う゛ぅっ!いやっ!やめて!謝るから!今までのことは謝るから、お願いです!やめて下さい!」
地下牢には他にも尋問を受けている人がいるようで、空気を切る鞭の音と命乞いをする悲鳴が聞こえてくる。
『自分もあんな風に鞭で打たれるのだろうか。怖い怖い怖い』
平和な日本育ちの陽向は、自分が牢に繋がれて鞭で打たれる日がくるなんて、想像もつかなかった。
コッコッコッコッ。
石の床を革靴で歩き回る音が聞こえる。その音と気配は、両手を上げる様にして吊るされている陽向の周りを回っていく。
「ふぅ~ん。兄上はこういうのが好きなんだ」
王太子はそう言いながらも、陽向の横を通りすぎざまに悪戯に脇腹を撫でた。
「んんっ!」
陽向は手かせ足かせをじゃらじゃらとさせながら、身体を捩って逃れようとする。
王太子は次に、そのまま陽向の背中側に足を進め、今度は陽向の剥き出しの背中を下からつつーっとなぞった。
「んっ!」
陽向はそれをのけ反って避けた。
今度は左側からすれちがいざまに、お尻を掴まれた。そのまま歩いて陽向の正面に回るまで、三秒は触られてしまったと思う。昨日ネオに散々可愛がられたところが、キュッと締まった。
陽向は『僕に触れるな!』と叫びたかったが、口枷をされていてそれは叶わない。
口の端から唾液が一筋垂れ、陽向の胸を伝った。それが胸の先端に触れる前に、おもむろにそこをひねり上げられ、陽向は声にならない声で叫んだ。
「ん~~~っ!!」
「へぇ。反応が初々しくてかわいいね。色も珍しいし。兄上にはもったいない。
私が飼ってあげてもいいかな」
手癖が悪い王太子の手は、今度は陽向の髪に触れているようだ。
陽向は、首を振って王太子の手を振り払った。
――その間も、入り口の方から鞭の音と悲鳴が断続的に聞こえてきている。
「目隠し取ってよ。珍しい色の瞳が見たい」
「へいっ」
陽向の目かくしが外され、壁に掛けられたろうそくの明かりが目を刺した。
そこにいたのはネオの弟と思われる王太子と、先ほどの貴族然とした護衛とはまた別の男だった。あれ?地下に入ってきたときの足音は三つだったのに、護衛は一人?ということは、もう一人はあの鞭をしならせているのだろうか。
二人とも、欲を隠さない下種びた視線を陽向に向けていた。
その立ち振る舞いから察するに、先ほど陽向を拘束したときにいたのは近衛兵で、こちらは王太子の私兵といったところか。その育ちが悪そうな風体に、何をされるか解らない怖さが陽向を襲った。
「ほう。改めて見るとこれは見事だな」
涙に濡れている陽向の黒曜の瞳を覗きこみ、王太子が感嘆の声を漏らす。
「言ったでしょう?これがまた、良い声をして啼くんですよ」
ネオと商人の会話が聞こえてくるくらいだ。あの山小屋の防音は紙だった。なるほど。その頃から、陽向の存在はこの弟王子にバレていたのかもしれない。
「よし。ひとまず屋敷に連れ帰ろう」
「がってんでぇ」
男が荒れた太い指で陽向の拘束を外そうと陽向に近づいてきたところで、入口の方からけたたましい音が響いた。
『きっとネオだ!』
陽向は期待しながら、音がした方に首を伸ばそうとして天井からつるされている首輪に阻まれた。
「ご苦労だった。持ち場に戻ってよいぞ」
隠せぬ愉悦が滲む王太子の声に、陽向は旗色の悪さを知る。
「「「はっ。御前失礼いたします」」」
陽向をここまで運んできた兵士達が階段を上がっていく音がする。少し経ってから入れ替わりに誰か入ってきて、ドアが閉まる音がした。
見えなくても、目の前にいるのは王太子とその護衛だということが想像ついた。
――『楽しい楽しい尋問の時間だぞ』
――『ヒュッ』
――「う゛ぅっ!いやっ!やめて!謝るから!今までのことは謝るから、お願いです!やめて下さい!」
地下牢には他にも尋問を受けている人がいるようで、空気を切る鞭の音と命乞いをする悲鳴が聞こえてくる。
『自分もあんな風に鞭で打たれるのだろうか。怖い怖い怖い』
平和な日本育ちの陽向は、自分が牢に繋がれて鞭で打たれる日がくるなんて、想像もつかなかった。
コッコッコッコッ。
石の床を革靴で歩き回る音が聞こえる。その音と気配は、両手を上げる様にして吊るされている陽向の周りを回っていく。
「ふぅ~ん。兄上はこういうのが好きなんだ」
王太子はそう言いながらも、陽向の横を通りすぎざまに悪戯に脇腹を撫でた。
「んんっ!」
陽向は手かせ足かせをじゃらじゃらとさせながら、身体を捩って逃れようとする。
王太子は次に、そのまま陽向の背中側に足を進め、今度は陽向の剥き出しの背中を下からつつーっとなぞった。
「んっ!」
陽向はそれをのけ反って避けた。
今度は左側からすれちがいざまに、お尻を掴まれた。そのまま歩いて陽向の正面に回るまで、三秒は触られてしまったと思う。昨日ネオに散々可愛がられたところが、キュッと締まった。
陽向は『僕に触れるな!』と叫びたかったが、口枷をされていてそれは叶わない。
口の端から唾液が一筋垂れ、陽向の胸を伝った。それが胸の先端に触れる前に、おもむろにそこをひねり上げられ、陽向は声にならない声で叫んだ。
「ん~~~っ!!」
「へぇ。反応が初々しくてかわいいね。色も珍しいし。兄上にはもったいない。
私が飼ってあげてもいいかな」
手癖が悪い王太子の手は、今度は陽向の髪に触れているようだ。
陽向は、首を振って王太子の手を振り払った。
――その間も、入り口の方から鞭の音と悲鳴が断続的に聞こえてきている。
「目隠し取ってよ。珍しい色の瞳が見たい」
「へいっ」
陽向の目かくしが外され、壁に掛けられたろうそくの明かりが目を刺した。
そこにいたのはネオの弟と思われる王太子と、先ほどの貴族然とした護衛とはまた別の男だった。あれ?地下に入ってきたときの足音は三つだったのに、護衛は一人?ということは、もう一人はあの鞭をしならせているのだろうか。
二人とも、欲を隠さない下種びた視線を陽向に向けていた。
その立ち振る舞いから察するに、先ほど陽向を拘束したときにいたのは近衛兵で、こちらは王太子の私兵といったところか。その育ちが悪そうな風体に、何をされるか解らない怖さが陽向を襲った。
「ほう。改めて見るとこれは見事だな」
涙に濡れている陽向の黒曜の瞳を覗きこみ、王太子が感嘆の声を漏らす。
「言ったでしょう?これがまた、良い声をして啼くんですよ」
ネオと商人の会話が聞こえてくるくらいだ。あの山小屋の防音は紙だった。なるほど。その頃から、陽向の存在はこの弟王子にバレていたのかもしれない。
「よし。ひとまず屋敷に連れ帰ろう」
「がってんでぇ」
男が荒れた太い指で陽向の拘束を外そうと陽向に近づいてきたところで、入口の方からけたたましい音が響いた。
『きっとネオだ!』
陽向は期待しながら、音がした方に首を伸ばそうとして天井からつるされている首輪に阻まれた。
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