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第二章ーー招かれざる客
"秘玉"
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予想通りの展開に、ネオはヘリオドール卿の日記を王様に渡した。
それを静かに読み終わった陛下の顔は、なぜか確信に満ちていた。
「やはりな。恐竜保護区を作った闇魔術師も王家の"秘玉"であったのなら、我の仮説が信ぴょう性を増すな」
「仮説……でございますか?」
ネオが恐る恐る聞く。
「あぁ。この国の建国の英雄は双子だったことは習っているな」
「はい。しかし、片方が隣国と共謀して謀反を企てたと習いましたが……もしや?」
「そうだ。その謀反を疑われていた方は"秘玉"だったという。
だが、我が母方の生家の蔵書に残っていた記述はむしろ逆でな。
双子の弟の方が王家の"秘玉"だったらしいのだが、王位に就いた兄の方が、弟の才能や統治能力に嫉妬して、無実の罪を着せて国外追放にしたと書かれていた」
『確か、父王のお母様は王国の古い公爵家の出だった。王室では破棄された真実の記録が残っていてもおかしくはないだろう』
とネオは考えた。
「事例はそれだけではない。この王家で愚王と呼ばれる者が生まれたとき、必ず王家の"秘玉"も同時に生まれている。王家の記録にははっきりと愚王だとは残っていないが、我が母方のほうの蔵書には愚策を行っていた記録が、すべて残っている」
「それはつまり、やはり"秘玉"は災いの元だと?」
ネオは苦虫を嚙み潰した様な顔をしている。ネオの手を握る陽向の手に力が入った。
「あぁ。一般的にはそういわれているな。"秘玉"が現れる代は、愚王が誕生する。
そのため"秘玉"を殺すことでその代の王が呪われるのではと歴代の王家は考え、その呪いが発生しないように、"秘玉"を閉じ込める監獄として恐竜保護区を維持する方針に変えた」
「"秘玉"を閉じ込める監獄……」
実の父から、監獄送りにされたとはっきりと聞くのは辛いものがある。
適材適所で、闇魔法が得意な自分に最適な職場を用意してくれたとネオは心の折り合いをつけようとしていたのだから。
「だが、我はそうは思わん。我はカルネオール、そなたこそ帝王に相応しい素質を持っていると思っている。
そして、この日記を見て確信した。この日記に記されている秘玉も、人並外れた能力を持っていたからこそ、毒を盛られて少しずつ弱体化させられたと聞いている。
また、その時に生まれた次王——この日記の中の恐竜保護区を維持すると決めた王の次王は事実、とんでもない愚王だった。
そのため我は、帝王に相応しくない王位後継者と相応しい者をわかりやすく区別するために、秘玉は神様から印を授かって生まれてくるのではと考えている。
我々愚かな人類が、道を踏み誤らぬように」
「神様からの印……」
「そうだ。王家の秘玉は、元は宮廷言葉でもなんでもなく、文字通り玉であったということだ。
残念ながら、我々はことごとく間違えてしまった。初代の王のつまらぬ嫉妬のせいで」
ネオと陽向は、顔を見合わせた。
自分の父親が定説や流言に惑わされず、きちんと自分個人を見てくれていた。その感動を分かち合ったのだ。
「しかし、今の王太子。アレはダメだ。人としての何かが欠けている。統治者には向かん」
まさか自ら王太子に指名した陛下ですらそうお考えだとは。
「今回はヒナタが被害者となったが、ヒナタは良くてただの平民。悪くて不法侵入者だ。
今回アレがヒナタにしたことで、王太子を罪に問うことはできない。そこは理解してくれるか」
「――自分の力不足が悔しいです」
ネオは、きつく拳を握りながら悔やんでいる。
「いや、むしろ自分の最愛を侵されて、よく感情に任せてアレを殺さなかったなと感心した。
やはり、ネオは王になるのに相応しい」
「王太子を殺してしまえば、さすがにもうヒナタと平穏には暮らせないと思ったので……」
「あぁ。その思慮深さだ。それがアレにはない。
どうだ? ここで歴史を変えてみないか?」
陛下はまるで悪巧みをするかのような表情で笑った。それは、本当に歴史を変えてしまいそうな顔だった。
「歴史を変える……とは?」
「カルネオール・フォン・ベルンシュタインの王位継承権を復活させることを誓おう。
我の後を継ぐために、王太子になる気はないか」
「「!!!!」」
ネオと陽向は驚きの余り、顔を見合わせる。
『“悪魔の子”と呼ばれていた子が…王位に!?』
だが、ネオの答えは一つだった。
それを静かに読み終わった陛下の顔は、なぜか確信に満ちていた。
「やはりな。恐竜保護区を作った闇魔術師も王家の"秘玉"であったのなら、我の仮説が信ぴょう性を増すな」
「仮説……でございますか?」
ネオが恐る恐る聞く。
「あぁ。この国の建国の英雄は双子だったことは習っているな」
「はい。しかし、片方が隣国と共謀して謀反を企てたと習いましたが……もしや?」
「そうだ。その謀反を疑われていた方は"秘玉"だったという。
だが、我が母方の生家の蔵書に残っていた記述はむしろ逆でな。
双子の弟の方が王家の"秘玉"だったらしいのだが、王位に就いた兄の方が、弟の才能や統治能力に嫉妬して、無実の罪を着せて国外追放にしたと書かれていた」
『確か、父王のお母様は王国の古い公爵家の出だった。王室では破棄された真実の記録が残っていてもおかしくはないだろう』
とネオは考えた。
「事例はそれだけではない。この王家で愚王と呼ばれる者が生まれたとき、必ず王家の"秘玉"も同時に生まれている。王家の記録にははっきりと愚王だとは残っていないが、我が母方のほうの蔵書には愚策を行っていた記録が、すべて残っている」
「それはつまり、やはり"秘玉"は災いの元だと?」
ネオは苦虫を嚙み潰した様な顔をしている。ネオの手を握る陽向の手に力が入った。
「あぁ。一般的にはそういわれているな。"秘玉"が現れる代は、愚王が誕生する。
そのため"秘玉"を殺すことでその代の王が呪われるのではと歴代の王家は考え、その呪いが発生しないように、"秘玉"を閉じ込める監獄として恐竜保護区を維持する方針に変えた」
「"秘玉"を閉じ込める監獄……」
実の父から、監獄送りにされたとはっきりと聞くのは辛いものがある。
適材適所で、闇魔法が得意な自分に最適な職場を用意してくれたとネオは心の折り合いをつけようとしていたのだから。
「だが、我はそうは思わん。我はカルネオール、そなたこそ帝王に相応しい素質を持っていると思っている。
そして、この日記を見て確信した。この日記に記されている秘玉も、人並外れた能力を持っていたからこそ、毒を盛られて少しずつ弱体化させられたと聞いている。
また、その時に生まれた次王——この日記の中の恐竜保護区を維持すると決めた王の次王は事実、とんでもない愚王だった。
そのため我は、帝王に相応しくない王位後継者と相応しい者をわかりやすく区別するために、秘玉は神様から印を授かって生まれてくるのではと考えている。
我々愚かな人類が、道を踏み誤らぬように」
「神様からの印……」
「そうだ。王家の秘玉は、元は宮廷言葉でもなんでもなく、文字通り玉であったということだ。
残念ながら、我々はことごとく間違えてしまった。初代の王のつまらぬ嫉妬のせいで」
ネオと陽向は、顔を見合わせた。
自分の父親が定説や流言に惑わされず、きちんと自分個人を見てくれていた。その感動を分かち合ったのだ。
「しかし、今の王太子。アレはダメだ。人としての何かが欠けている。統治者には向かん」
まさか自ら王太子に指名した陛下ですらそうお考えだとは。
「今回はヒナタが被害者となったが、ヒナタは良くてただの平民。悪くて不法侵入者だ。
今回アレがヒナタにしたことで、王太子を罪に問うことはできない。そこは理解してくれるか」
「――自分の力不足が悔しいです」
ネオは、きつく拳を握りながら悔やんでいる。
「いや、むしろ自分の最愛を侵されて、よく感情に任せてアレを殺さなかったなと感心した。
やはり、ネオは王になるのに相応しい」
「王太子を殺してしまえば、さすがにもうヒナタと平穏には暮らせないと思ったので……」
「あぁ。その思慮深さだ。それがアレにはない。
どうだ? ここで歴史を変えてみないか?」
陛下はまるで悪巧みをするかのような表情で笑った。それは、本当に歴史を変えてしまいそうな顔だった。
「歴史を変える……とは?」
「カルネオール・フォン・ベルンシュタインの王位継承権を復活させることを誓おう。
我の後を継ぐために、王太子になる気はないか」
「「!!!!」」
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だが、ネオの答えは一つだった。
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