59 / 71
第二章ーー招かれざる客
手
しおりを挟む
して、手が早いと噂の王様は、本当に手が早かった。
なんと、陽向とネオが滞在している部屋になんの先ぶれもなく自ら来たのだ。
「そなたがヒナタか!
おぉ! 鴉羽色の髪! 黒真珠の如き美しき瞳! なんという神の奇跡だ!」
息子を無視していきなり抱き着いてくる始末である。おかげで陽向は、交渉する前にネオがいきなり強硬手段に出るのではと、冷や冷やする羽目になった。
「陛下! ヒナタは私のものです! 何卒ヒナタからお離れ下さりますよう!」
一年前、恐竜保護区への赴任を言いつけられてからはじめての父子の会話がこれである。
「ハハハハ。我は美しいものには目がないのだ」
『聞いた通りだった……』と陽向は苦笑いをした。
陛下は金髪碧眼の美丈夫で、目鼻立ちは大変ネオに似ている。つまり、とてつもなくイケメンだった。
もしネオが四十手前になったらこんな容姿になるのだろうなと思い、陽向はつい見とれてしまった。
陛下にお会いしたら跪こうと思っていたのに。陽向はそのタイミングを失ってしまうほどに。
三人はそのままその部屋にある応接セットに腰かけることとなった。ロイヤルファミリーに対し平民の陽向は、自分も同じ卓について良いか解らず、ネオの後ろに立とうとしたところを捕縛され、ネオの横に座らされている。
ブルエがドアの外から陛下が見える位置に陣取っている以外に、特に護衛がいなかった事は意外だった。
「ネオ相手だ。護衛が何人いても意味はないだろう?
ブルエは風魔法は使えない上に若干耳が遠いから、ここでの会話は聞こえん」
とは、陛下の弁だ。確かに、ネオは陽向が懐いているブルエを殺さないだろうし、ブルエが何が起きたかを証言できればそれで事足りる。
陛下のその合理的な考え方に、陽向はこの交渉はうまくいくと確信した。
「先ほど、ヒナタはネオのものだと言ったな? ということは、そなたらは報告通り、恋仲ということで良いのか?
それともヒナタ、もしネオに武力で嫌々言うことを聞かされているのなら今ここで言いなさい。
古今東西、英雄は美を救うものだと相場が決まっている。この覇王たる我が総力を挙げて助けてやろう」
陛下は顔ではニコニコとしているが、陽向の微妙な表情の変化を見逃さない様に、陽向に注視している。
陽向は、ネオの手を取ってから応えた。
「いえ、陛下。私はネオ殿下のことを心より好いております。願わくば、このまま恐竜保護区にて一生を添い遂げたいと考えております」
「私も同じ考えでございます。
陛下、もしまだ私を息子と思ってくださるのなら、一生に一度のお願いです。ヒナタと私が静かに添い遂げることをどうか認めてくださりませんでしょうか」
二人揃って頭を下げた。
「ふむ。その世にも珍しい色は惜しいが、自ら”悪魔”に捧げる供物となってくれるのならば、臣下の中で反対するものは少ないだろうな」
陽向は、つい“悪魔”という単語に反応してしまった。
「ネオは悪魔では——」
「ヒナタ!」
それを、ネオは陽向の手を引っ張って止めてくれる。
「ハハハハ。問題ない。わざとだ。
しかし、王家の秘”玉”とはよく言ったものだな。宮廷言葉、ここに極まれりだ。
なんでも反対の意味になってしまう」
陛下は、皮肉げに笑った。陽向がまた反撃の言葉を発せようとすると、陛下は手を上げてそれを遮った。
「だが、そなたがネオのことを大切に思ってくれていることは伝わった。
しかし、そなたはいったいどこから湧いて出たのか。その合理的な理由を聞けるまで、我は承諾しかねる」
なんと、陽向とネオが滞在している部屋になんの先ぶれもなく自ら来たのだ。
「そなたがヒナタか!
おぉ! 鴉羽色の髪! 黒真珠の如き美しき瞳! なんという神の奇跡だ!」
息子を無視していきなり抱き着いてくる始末である。おかげで陽向は、交渉する前にネオがいきなり強硬手段に出るのではと、冷や冷やする羽目になった。
「陛下! ヒナタは私のものです! 何卒ヒナタからお離れ下さりますよう!」
一年前、恐竜保護区への赴任を言いつけられてからはじめての父子の会話がこれである。
「ハハハハ。我は美しいものには目がないのだ」
『聞いた通りだった……』と陽向は苦笑いをした。
陛下は金髪碧眼の美丈夫で、目鼻立ちは大変ネオに似ている。つまり、とてつもなくイケメンだった。
もしネオが四十手前になったらこんな容姿になるのだろうなと思い、陽向はつい見とれてしまった。
陛下にお会いしたら跪こうと思っていたのに。陽向はそのタイミングを失ってしまうほどに。
三人はそのままその部屋にある応接セットに腰かけることとなった。ロイヤルファミリーに対し平民の陽向は、自分も同じ卓について良いか解らず、ネオの後ろに立とうとしたところを捕縛され、ネオの横に座らされている。
ブルエがドアの外から陛下が見える位置に陣取っている以外に、特に護衛がいなかった事は意外だった。
「ネオ相手だ。護衛が何人いても意味はないだろう?
ブルエは風魔法は使えない上に若干耳が遠いから、ここでの会話は聞こえん」
とは、陛下の弁だ。確かに、ネオは陽向が懐いているブルエを殺さないだろうし、ブルエが何が起きたかを証言できればそれで事足りる。
陛下のその合理的な考え方に、陽向はこの交渉はうまくいくと確信した。
「先ほど、ヒナタはネオのものだと言ったな? ということは、そなたらは報告通り、恋仲ということで良いのか?
それともヒナタ、もしネオに武力で嫌々言うことを聞かされているのなら今ここで言いなさい。
古今東西、英雄は美を救うものだと相場が決まっている。この覇王たる我が総力を挙げて助けてやろう」
陛下は顔ではニコニコとしているが、陽向の微妙な表情の変化を見逃さない様に、陽向に注視している。
陽向は、ネオの手を取ってから応えた。
「いえ、陛下。私はネオ殿下のことを心より好いております。願わくば、このまま恐竜保護区にて一生を添い遂げたいと考えております」
「私も同じ考えでございます。
陛下、もしまだ私を息子と思ってくださるのなら、一生に一度のお願いです。ヒナタと私が静かに添い遂げることをどうか認めてくださりませんでしょうか」
二人揃って頭を下げた。
「ふむ。その世にも珍しい色は惜しいが、自ら”悪魔”に捧げる供物となってくれるのならば、臣下の中で反対するものは少ないだろうな」
陽向は、つい“悪魔”という単語に反応してしまった。
「ネオは悪魔では——」
「ヒナタ!」
それを、ネオは陽向の手を引っ張って止めてくれる。
「ハハハハ。問題ない。わざとだ。
しかし、王家の秘”玉”とはよく言ったものだな。宮廷言葉、ここに極まれりだ。
なんでも反対の意味になってしまう」
陛下は、皮肉げに笑った。陽向がまた反撃の言葉を発せようとすると、陛下は手を上げてそれを遮った。
「だが、そなたがネオのことを大切に思ってくれていることは伝わった。
しかし、そなたはいったいどこから湧いて出たのか。その合理的な理由を聞けるまで、我は承諾しかねる」
55
あなたにおすすめの小説
【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
虎ノ威きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる