ハライツキ

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 僕は彼女を見た。その優し気な雰囲気に僕の瞳は、くぎづけになってしまった。胸の鼓動の高鳴りが、うるさいくらいだった。多分、今の僕はひたすらに顔を赤らめているのだろう、熱のような火照りが僕の呼吸を早くした。
 僕は彼女を見ていた、彼女は僕の瞳を見ていた。僕の瞳と彼女の瞳は、日々距離を近づけていった。僕の瞳は彼女が、彼女の瞳には僕がいる。互いに、はにかんで照れくさそうにしている。ただそれだけだが、それが最高の日々というのものなのだ。
 僕は彼女の嫌なところを見てしまった。二人を決定的に分かつものではない、ただ、接近しすぎた瞳が少し離れたときに色々なものが見えてしまった。多分、彼女にも色々が見えてしまったのであろう。その色々は、僕たちのものだけども、僕たちを困らせてしまう。そんな時に新しい、君のものを見つけた。だから、僕の瞳は、また君の瞳に接近するのだ。
 僕は彼女の涙を見てしまった。君の瞳が先を見たから、僕もその先のほうを同じ視点で見たいから、違う歩幅だけども同じ視線で見ようと思った。そのことを言おうとしたら、最初の時の火照りよりも、僕の呼吸を早くさせた。やっとのことで言ったら、彼女の瞳は輪郭を失っていた。瞳は微笑んだ涙で隠されてしまった。
 僕と彼女は新しい命を見た。それは儚い、それは優しい。それはどこか僕のような、それはどこか彼女のような、どこかで見たことがある、だけども新しい。新しい瞳の中には、涙を流して笑顔の僕がいた。僕たちは新しい未来を見るのだろう。
 僕と彼女は新しい未来を見送った。互いに涙を流しながら、僕と彼女の未来を見送った。未来の瞳は、あの時の彼女のように、一緒に歩む瞳はあの時の僕と同じようだった。不意に鏡を見ると、僕の瞳はあの時の、彼女のお父さんと同じものになっていた。
 
 僕は彼女を見た。僕の瞳は、もう何も写さなくなるから、最後に君を瞳に入れていたい。
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