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一章:インストール
2話 適合
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目の前の白衣の女性が端末を操作すると、シオンの視界に淡い光の文字が浮かび上がった。
—— No.1128
「……なんだこれ?」
シオンは思わず呟いた。自身の意志とは関係なく脳内に映し出される情報に、強い違和感を覚える。
「あなたにインストールされたAIの識別番号よ」
淡々とした口調で女性が答えた。その態度には感情の起伏がなく、ただ事実を告げているだけのように見えた。しかし、わずかに探るような視線をシオンに向けているのが気にかかる。
「識別番号? ……名前じゃなくて?」
「ええ。No.1128は識別番号だけのAIね」
シオンは眉をひそめた。
「それってどういう意味だ?」
端末を操作していた女性が手を止め、一瞬考え込むような間を置いてから答えた。
「AIには大きく分けて二種類あるの。名前を持つものと、持たないもの」
シオンは黙って先を促す。
「名前を持つAIは、過去に戦果を上げ、優秀だと認められた個体。彼らは経験を蓄積し、次の適合者へと受け継がれていく。そして、新たな戦果を上げるたびに、その名がさらに重みを増していくの」
「じゃあ、名前のないAIは?」
「……十分な実績を残していないか、何らかの理由でデータが欠落している個体ね」
シオンは肩をすくめた。
「つまり、俺のAIは“ハズレ”ってことか?」
女性は小さく息をついた。
「どうかしら? AIは人間と違って、経験を積めば成長するものよ。過去に戦果を上げたAIは、その記録を引き継いで、より洗練されたサポートができる。でも、No.1128は……過去の記録が極端に少ないのよ」
「少ない?」
シオンは首をかしげる。
「記録の欠落は珍しくないわ。ただ……このAIの場合は、意図的にデータが消去されたようにも見えるの」
「意図的に?」
「ええ。戦果を上げたAIは記録が保管され、次の適合者へと継承される。けれど、このAIの過去ログはほとんど残っていない。それに……」
彼女は言葉を切り、シオンをじっと見つめた。
「No.1128が最後に適合したのは20年前。でも、そのパイロットの記録も削除されている」
シオンの背筋に、冷たいものが走った。
「どういうことだ? そのパイロットは……死んだのか?」
女性は答えなかった。ただ、端末の画面をじっと見つめている。
沈黙が重くのしかかる。
「AIの適合者は、どうやって決めてるんだ?」
シオンが話題を変えるように尋ねると、女性は端末から視線を戻し、少しだけ口元を歪めた。
「AI自身が選んでいるのよ」
「AIが……?」
「そう。これは単なるランダムじゃなくて、過去の戦闘データや適合率を考慮して決められるの。特に、名前を持つAIは、自分の経験を最大限活かせるパイロットを選ぶ傾向があるわ」
「……じゃあ、No.1128は?」
女性は少し言い淀んだ。
「……なぜあなたを選んだのか、今のところ分からないわね」
シオンは額に手を当て、溜息をついた。
「おいおい……適当に選ばれたわけじゃないよな?」
「それはあなた自身が戦いの中で確かめることね」
シオンは、もう一度自分の中のAI——No.1128に意識を向けた。
「……なあ、お前はなんで俺を選んだ?」
その瞬間——
《No.1128、起動確認。適合者との同期率……32%》
無機質な電子音が、脳内に響く。
シオンの問いに、AIは答えなかった。ただ、静かに同期を続けていた。
その沈黙が、不気味なほど重く感じられた。
—— No.1128
「……なんだこれ?」
シオンは思わず呟いた。自身の意志とは関係なく脳内に映し出される情報に、強い違和感を覚える。
「あなたにインストールされたAIの識別番号よ」
淡々とした口調で女性が答えた。その態度には感情の起伏がなく、ただ事実を告げているだけのように見えた。しかし、わずかに探るような視線をシオンに向けているのが気にかかる。
「識別番号? ……名前じゃなくて?」
「ええ。No.1128は識別番号だけのAIね」
シオンは眉をひそめた。
「それってどういう意味だ?」
端末を操作していた女性が手を止め、一瞬考え込むような間を置いてから答えた。
「AIには大きく分けて二種類あるの。名前を持つものと、持たないもの」
シオンは黙って先を促す。
「名前を持つAIは、過去に戦果を上げ、優秀だと認められた個体。彼らは経験を蓄積し、次の適合者へと受け継がれていく。そして、新たな戦果を上げるたびに、その名がさらに重みを増していくの」
「じゃあ、名前のないAIは?」
「……十分な実績を残していないか、何らかの理由でデータが欠落している個体ね」
シオンは肩をすくめた。
「つまり、俺のAIは“ハズレ”ってことか?」
女性は小さく息をついた。
「どうかしら? AIは人間と違って、経験を積めば成長するものよ。過去に戦果を上げたAIは、その記録を引き継いで、より洗練されたサポートができる。でも、No.1128は……過去の記録が極端に少ないのよ」
「少ない?」
シオンは首をかしげる。
「記録の欠落は珍しくないわ。ただ……このAIの場合は、意図的にデータが消去されたようにも見えるの」
「意図的に?」
「ええ。戦果を上げたAIは記録が保管され、次の適合者へと継承される。けれど、このAIの過去ログはほとんど残っていない。それに……」
彼女は言葉を切り、シオンをじっと見つめた。
「No.1128が最後に適合したのは20年前。でも、そのパイロットの記録も削除されている」
シオンの背筋に、冷たいものが走った。
「どういうことだ? そのパイロットは……死んだのか?」
女性は答えなかった。ただ、端末の画面をじっと見つめている。
沈黙が重くのしかかる。
「AIの適合者は、どうやって決めてるんだ?」
シオンが話題を変えるように尋ねると、女性は端末から視線を戻し、少しだけ口元を歪めた。
「AI自身が選んでいるのよ」
「AIが……?」
「そう。これは単なるランダムじゃなくて、過去の戦闘データや適合率を考慮して決められるの。特に、名前を持つAIは、自分の経験を最大限活かせるパイロットを選ぶ傾向があるわ」
「……じゃあ、No.1128は?」
女性は少し言い淀んだ。
「……なぜあなたを選んだのか、今のところ分からないわね」
シオンは額に手を当て、溜息をついた。
「おいおい……適当に選ばれたわけじゃないよな?」
「それはあなた自身が戦いの中で確かめることね」
シオンは、もう一度自分の中のAI——No.1128に意識を向けた。
「……なあ、お前はなんで俺を選んだ?」
その瞬間——
《No.1128、起動確認。適合者との同期率……32%》
無機質な電子音が、脳内に響く。
シオンの問いに、AIは答えなかった。ただ、静かに同期を続けていた。
その沈黙が、不気味なほど重く感じられた。
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