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黄昏の古時計
黄昏の古時計3
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「お姉様の言葉で、私変わる事が出来たんです」
乙は、寮の廊下を歩きながら早希の言葉を思い出していた。
『あの子が早希ねぇ…
随分変わったな』
そんな事を思いながら廊下を歩いている時だった。
1人の生徒が擦れ違いざまに口を開いた。
「久しぶりだね、乙」
「!!!」
──ドクン!!!
聞き覚えのある声に目線をあげると目付きは鋭くなった。
「…輝李…」
瞳の奥に鈍く光る妖艶さを放ち輝李は微かに笑う。
「…クス…プレゼントは気に入ってもらえた…?」
「─ッ!!!!!」
ガタン!!!
乙は輝李の襟元を掴み、壁ぎわに思い切り叩きつける。
「ウッ!!」
「お前、瀾に何をした…!!」
「…別に…ちょっと遊んでもらっただけだよ…」
「昔から言ってるだろ、俺のものには手を付けるな。
お前の遊びはシャレにならないんだよ」
「…フン…」
「何でお前は、いつも俺に突っ掛かってくるんだよ!!」
「…決まってるでしょ…」
「おい!!お前等、何してるんだよ!!」
その時、廊下の向こう側から、たまたま通りかかり、二人の光景を目撃した神流の声が聞こえた。
「…フン!!ムキになっちゃってさ。
昔みたいに僕を抱いてよ…
たかがペット一匹じゃないか!!
…どうせ…本気じゃないくせに…」
「…!!」
ふいに悲しそうに輝李は乙に言葉をはき捨てた。
輝李の言葉が重く、のしかかる。
「…放してよ!!」
乙の手を振り払うと、輝李は廊下を走り去っていった。
「輝李…」
それと同時に神流も乙のもとへ駆け寄ってきた。
「…おい、今の…」
「…妹だ…」
神流の問いに目を伏せて乙が答える。
「やっぱり…。名前聞いた時、もしかしてって思ったけど…」
「……」
「お前達…何があったんだよ…」
「…別に…」
神流は軽く溜め息を付くと、少し明るく言った。
「…乙っていつもそうやって隠すのな。
私は乙の事、何でも話せる友達だと思ってたんだけど?」
「…神流ってウザったいし、面倒くさい奴だな…。
俺はそんな友達は望んでないし、欲しいとも思わない。
…フッ…お茶でも飲んでいけよ。」
「…クス」
その後、2人は乙の部屋に向かい歩いていった。
部屋に神流を案内すると、紅茶のマグカップを持ち神流に振る舞った。
「紅茶で良かったか?コーヒーがよければ…」
「いや、充分だ。結構、綺麗にしてるんだな。
…というよりは、殺風景っていうか必要最低限しかない部屋だな」
「ごちゃごちゃしてるのは好きじゃないんでな」
「ふーん…」
そう言うと、神流は紅茶を口に含んだ。
しばらく沈黙が部屋を包む。
最初に口を開いたのは神流の方だった。
「なぁ、乙、聞いていいか?」
「…何だ」
「輝李ちゃんの事…。
最初に会った時は人懐っこい印象を受けたけど、さっきの乙を見る目、何か違った気がする。
どことなくだけど物悲しそうっていうか…」
「……」
神流の質問に乙が目を伏せると、神流は乙を気遣い、続けた。
「…勿論、話したくなければ無理に話さなくてもいい」
「…俺達は…姉妹でありながら、お互いを求めていた事がある…」
乙は静かに語りだした。
──それは、弟の聖慈が2歳になる頃だった。
執事の今井と乙達は、父親に呼び出され家族会議が行われた。
家族会議と言っても名ばかりで、決定した事を父が報告するという殺風的なものだ。
「そろそろ聖慈も物心がつき始める頃だ。
聖慈には月影の次期当主として将来を担ってもらわねばならなくなるだろう。」
母が亡くなってからというもの、乙の父親に対する嫌悪感・敵対心は消えることがない。
(「アールグレイの月夜」参照)
相変わらず無機質な目付きで父の話を聞いていたが、父の言葉に不意に口を開いた。
「…まだ早いのではないですか?
聖慈はまだ2歳です。
父さんのサポート位なら俺でも出来ると思いますが」
「そうだよ、父様」
「乙には、これから先やってもらうことがある。
どんなに教育を受けたといえどもお前が女であることは曲げられない事実だ」
その後の父の放った言葉を聞いて乙は愕然とした。
「聖慈が生まれた今、お前が息子として振る舞う必要性もなくなった。
これからは本来の性の通り、女として振る舞い、
この月影に恥じぬよう支えていけ」
乙は、寮の廊下を歩きながら早希の言葉を思い出していた。
『あの子が早希ねぇ…
随分変わったな』
そんな事を思いながら廊下を歩いている時だった。
1人の生徒が擦れ違いざまに口を開いた。
「久しぶりだね、乙」
「!!!」
──ドクン!!!
聞き覚えのある声に目線をあげると目付きは鋭くなった。
「…輝李…」
瞳の奥に鈍く光る妖艶さを放ち輝李は微かに笑う。
「…クス…プレゼントは気に入ってもらえた…?」
「─ッ!!!!!」
ガタン!!!
乙は輝李の襟元を掴み、壁ぎわに思い切り叩きつける。
「ウッ!!」
「お前、瀾に何をした…!!」
「…別に…ちょっと遊んでもらっただけだよ…」
「昔から言ってるだろ、俺のものには手を付けるな。
お前の遊びはシャレにならないんだよ」
「…フン…」
「何でお前は、いつも俺に突っ掛かってくるんだよ!!」
「…決まってるでしょ…」
「おい!!お前等、何してるんだよ!!」
その時、廊下の向こう側から、たまたま通りかかり、二人の光景を目撃した神流の声が聞こえた。
「…フン!!ムキになっちゃってさ。
昔みたいに僕を抱いてよ…
たかがペット一匹じゃないか!!
…どうせ…本気じゃないくせに…」
「…!!」
ふいに悲しそうに輝李は乙に言葉をはき捨てた。
輝李の言葉が重く、のしかかる。
「…放してよ!!」
乙の手を振り払うと、輝李は廊下を走り去っていった。
「輝李…」
それと同時に神流も乙のもとへ駆け寄ってきた。
「…おい、今の…」
「…妹だ…」
神流の問いに目を伏せて乙が答える。
「やっぱり…。名前聞いた時、もしかしてって思ったけど…」
「……」
「お前達…何があったんだよ…」
「…別に…」
神流は軽く溜め息を付くと、少し明るく言った。
「…乙っていつもそうやって隠すのな。
私は乙の事、何でも話せる友達だと思ってたんだけど?」
「…神流ってウザったいし、面倒くさい奴だな…。
俺はそんな友達は望んでないし、欲しいとも思わない。
…フッ…お茶でも飲んでいけよ。」
「…クス」
その後、2人は乙の部屋に向かい歩いていった。
部屋に神流を案内すると、紅茶のマグカップを持ち神流に振る舞った。
「紅茶で良かったか?コーヒーがよければ…」
「いや、充分だ。結構、綺麗にしてるんだな。
…というよりは、殺風景っていうか必要最低限しかない部屋だな」
「ごちゃごちゃしてるのは好きじゃないんでな」
「ふーん…」
そう言うと、神流は紅茶を口に含んだ。
しばらく沈黙が部屋を包む。
最初に口を開いたのは神流の方だった。
「なぁ、乙、聞いていいか?」
「…何だ」
「輝李ちゃんの事…。
最初に会った時は人懐っこい印象を受けたけど、さっきの乙を見る目、何か違った気がする。
どことなくだけど物悲しそうっていうか…」
「……」
神流の質問に乙が目を伏せると、神流は乙を気遣い、続けた。
「…勿論、話したくなければ無理に話さなくてもいい」
「…俺達は…姉妹でありながら、お互いを求めていた事がある…」
乙は静かに語りだした。
──それは、弟の聖慈が2歳になる頃だった。
執事の今井と乙達は、父親に呼び出され家族会議が行われた。
家族会議と言っても名ばかりで、決定した事を父が報告するという殺風的なものだ。
「そろそろ聖慈も物心がつき始める頃だ。
聖慈には月影の次期当主として将来を担ってもらわねばならなくなるだろう。」
母が亡くなってからというもの、乙の父親に対する嫌悪感・敵対心は消えることがない。
(「アールグレイの月夜」参照)
相変わらず無機質な目付きで父の話を聞いていたが、父の言葉に不意に口を開いた。
「…まだ早いのではないですか?
聖慈はまだ2歳です。
父さんのサポート位なら俺でも出来ると思いますが」
「そうだよ、父様」
「乙には、これから先やってもらうことがある。
どんなに教育を受けたといえどもお前が女であることは曲げられない事実だ」
その後の父の放った言葉を聞いて乙は愕然とした。
「聖慈が生まれた今、お前が息子として振る舞う必要性もなくなった。
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