化け猫の憂鬱

阪上克利

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化け猫の憂鬱

プロローグ

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あたしには死というものに対して特別な思い入れが少ない。

他の人間の死に対して心を痛めるという感情がない。
人が死んで悲しいという感情に乏しい。頭では理解できるのだが心がついていかない。
病院勤めをしていると、人が亡くなることがある。
多くの人間が泣いている。
そんな時、あたしは死を頭では理解できているので一応神妙な顔をする。
なんで泣くのか分からない。
何が悲しいのか理解できない。

元々、人間は特別な動物なのかもしれない。
家族の死を悲しみ、友人の死を悲しむ。そして関係のない人の死に心を痛めている。
挙句の果てには他の動物の死にさえ涙を流すのだ。

他の動物たちは違う。
弱肉強食の世界で死を悲しむということは人間以外の動物にはありえない話だ。
人間以外のほかの動物にとって、死は必然であり、自然なものである。

あたしは人間ではない。
いや…人間なのかもしれない。
分かりやすく言うと半分は人間なのだ。
そして半分は三毛猫。
普段は人間の姿に化けている。

つまり…。
俗にいう化け猫と言うやつだ。

だからかもしれない。
死を頭で理解できても感情では理解できないのは…。
そもそも動物は死について考えない。
あたしが死について考えるのは半分人間だからだろう。

「猫むすめやろ。」

同じ化け族の平九朗にはよく馬鹿にされる。

「あんたは化け犬じゃなくてバカ犬だろ。」

あたしもやりかえす。
化け族。

たぬきやきつねが人を化かすというのを聞いたことがあるだろうか?
一部の動物たちには、この能力がある。この能力を持つ者たちを、ちまたで化け族と呼ぶ。

『化け族でも長く生きていると動物よりも人間の感情が強くなっていくのよね…。』
死生観についての話をあたしがしたところ、アキさんはそう言った。
彼女はもう200年以上生きている化け狸で、人間の姿をしているときは少しふっくらした丸い体型をした50代ぐらいの女性に見える。
彼女は「ふるだぬき」という居酒屋の女将をやっていて、化け族たちのまとめ役のような存在である。「ふるだぬき」には同じ化け族のみんなが集まるのだが、みんな人間の姿をしてなんらかの職をもって、この世の中で生きている。

あたしも例外ではない。

いろんな仕事がある中であたしは病院勤めをを選んだ。
特に理由があったわけではない。
しかしこうやって死について考えることになったことと病院勤めは無縁ではない。
あたしが勤めている病院はホスピスというところだからだ。
つまり…もう医者から治らないといわれた病気を病んでいる人たちが心安らかに死に向き合うためにやってくるところだからだ…。

独自の死生観を持つように…と職場で言われたのであたしはそのことを考えている。

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