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化け猫の憂鬱
読めない思考
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『アヤコちゃん。』と声をかけられて呼び止められるが多くなった。
あたしの名前は三池綾子。
職場の人はあたしのことを『三池さん』と苗字で呼ぶ。
『アヤコちゃん』と名前を呼ぶのは病院ではカンナという名前の14歳の女の子だ。
そういえば以前からカンナは何故かあたしと話しをしたがっていた。
彼女は少しばかり背が高くて、声が少し弱々しい。
目が二重でパッチリして、病気のせいもあるのかもしれないけど、肌は透き通るように白い。
少しばかり下膨れだが、どっちかといえば可愛いと言われる部類の女の子である。
カンナは末期の肝癌で、もう手の施しようがないらしい。
若いと細胞の分裂が早いせいで癌の進行が早いのだ。
カンナはそのことを知らない。
…と思っているのは医師や彼女の両親だけ。
彼女自身は自覚があるだろうと思う。
毎日、身体が重くだるいのだ。
誰だっておかしいと思うだろう。
14歳で死向き合わなければならないなんて…
あたしの周りの看護師はそのように言う。
看護師だけではない。
医師もそのように言う。
そして彼女の両親はいつも泣きそうな顔をしている。
あたしが死生観について考えるようになったのはカンナとの出会いがあったからだ。
今まであたしが出会ってきた患者はすべて高齢者だった。
だからあたしも死を受け入れるのにそんなに苦労はなかったのだ。
実はカンナと出会った時にもそんなに死についてあたしは考えなかった。
ただ周りがやたら『かわいそうだ』というから…この仕事をする上でそういう感情を理解することが必要だと思ったわけだ。
ただ…
一向に分からない。
動物の世界では弱い子供は淘汰されて死んでしまう。
これは仕方ないことだ。
特にかわいそうなどという感情はない。
一向に分からないからあたしはネコになって考えてみることにした。
人間の姿で分からないこともネコの思考なら分かるかもしれないと思ったからだ。
それで、あたしは一度、猫の姿でカンナの前に姿を表した。
実は少しだけだけど猫の姿になれば思考が読み取れるのだ。
あたしは一瞬、カンナを見てすぐに逃げようと思っていた。
思考を読むのは一瞬で事足りる。
それに…
病室に三毛猫…。
いかにも不自然な組み合わせだ。
逃げないと大変なことになる。保健所など呼ばれたら悲惨だ。
それなのにあたしはカンナと目があったら動けなくなっていた。
思考など読めるはずもない。ただその儚げな姿に身体がすくんで動けなくなってしまったのだ。
その時、カンナはあたしにつぶやいた。
「ネコちゃん…。あたし知ってるんだ。もうすぐあたし死ぬんだよ。でもね。お母さんもお父さんもそのことあたしに言わないの。だからあたしもなんにも言わないんだ。」
なんとも言えない思考があたしの頭に入ってきた。
自分の存在がなくなってしまうことに対する恐れと寂しさ。
残されたものに対する思い…。
できることならまだ生きたいと思う強い気持ち。
本当にもう何とも言えない。
あたしはネコの姿のまま「ニャオン」と鳴くしかなかった。
あたしの名前は三池綾子。
職場の人はあたしのことを『三池さん』と苗字で呼ぶ。
『アヤコちゃん』と名前を呼ぶのは病院ではカンナという名前の14歳の女の子だ。
そういえば以前からカンナは何故かあたしと話しをしたがっていた。
彼女は少しばかり背が高くて、声が少し弱々しい。
目が二重でパッチリして、病気のせいもあるのかもしれないけど、肌は透き通るように白い。
少しばかり下膨れだが、どっちかといえば可愛いと言われる部類の女の子である。
カンナは末期の肝癌で、もう手の施しようがないらしい。
若いと細胞の分裂が早いせいで癌の進行が早いのだ。
カンナはそのことを知らない。
…と思っているのは医師や彼女の両親だけ。
彼女自身は自覚があるだろうと思う。
毎日、身体が重くだるいのだ。
誰だっておかしいと思うだろう。
14歳で死向き合わなければならないなんて…
あたしの周りの看護師はそのように言う。
看護師だけではない。
医師もそのように言う。
そして彼女の両親はいつも泣きそうな顔をしている。
あたしが死生観について考えるようになったのはカンナとの出会いがあったからだ。
今まであたしが出会ってきた患者はすべて高齢者だった。
だからあたしも死を受け入れるのにそんなに苦労はなかったのだ。
実はカンナと出会った時にもそんなに死についてあたしは考えなかった。
ただ周りがやたら『かわいそうだ』というから…この仕事をする上でそういう感情を理解することが必要だと思ったわけだ。
ただ…
一向に分からない。
動物の世界では弱い子供は淘汰されて死んでしまう。
これは仕方ないことだ。
特にかわいそうなどという感情はない。
一向に分からないからあたしはネコになって考えてみることにした。
人間の姿で分からないこともネコの思考なら分かるかもしれないと思ったからだ。
それで、あたしは一度、猫の姿でカンナの前に姿を表した。
実は少しだけだけど猫の姿になれば思考が読み取れるのだ。
あたしは一瞬、カンナを見てすぐに逃げようと思っていた。
思考を読むのは一瞬で事足りる。
それに…
病室に三毛猫…。
いかにも不自然な組み合わせだ。
逃げないと大変なことになる。保健所など呼ばれたら悲惨だ。
それなのにあたしはカンナと目があったら動けなくなっていた。
思考など読めるはずもない。ただその儚げな姿に身体がすくんで動けなくなってしまったのだ。
その時、カンナはあたしにつぶやいた。
「ネコちゃん…。あたし知ってるんだ。もうすぐあたし死ぬんだよ。でもね。お母さんもお父さんもそのことあたしに言わないの。だからあたしもなんにも言わないんだ。」
なんとも言えない思考があたしの頭に入ってきた。
自分の存在がなくなってしまうことに対する恐れと寂しさ。
残されたものに対する思い…。
できることならまだ生きたいと思う強い気持ち。
本当にもう何とも言えない。
あたしはネコの姿のまま「ニャオン」と鳴くしかなかった。
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