化け猫の憂鬱

阪上克利

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化け猫と月の兎

プロローグ

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あたしの名前は三池綾子みいけあやこ
 職業は看護師。
 自分で言うのもなんだけど……どこにでもいるような30歳近くの女だ。
 ただ一つ違うのは、あたしの正体は人間ではなく三毛猫であること。
 半分人間で半分は猫。
 人はあたしのような存在を化け猫と言う……。


 ◆◆◆◆◆◆


 あたしは病院で働いている。
 緩和病棟と呼ばれる病棟は治る見込みのない患者が最後の時を安らかに迎えられるためにある病棟で、あたしは長い間、この病棟で勤めていた。
 緩和病棟ではいろいろあった。
 生きたくても生きることがかなわない多くの患者を診るということに、当初、あたしは何の抵抗も持たなかった。
 寿命が来れば死ぬ。
 これが自然の摂理だ。
 化け猫のあたしは……そんなもので悲しむのは人間だけだと思っていた。

 だけど……14歳という若さでこの世を去らなければならなかったカンナとの出会いがあってからあたしの中で大きな変化があった。
 カンナのことがあって以来……生きたくても生きることがかなわない患者を診るということに胸がつぶれるような思いがこみ上げはじめた。
 これはこちらの命も削られるようだった。

 あたしは……気持ちが少しずつ疲弊していくのを感じていた。

 カンナの死から……ちょうど2年。
 今年もカンナに言われて植えたひまわりは芽を出して元気に成長している。
 辛そうにしているあたしを見て……というわけではないだろうけど……
 あたしは異動で緩和病棟を離れることになった。

 たぶん、あのまま緩和病棟にいたら、ノイローゼになってしまったかもしれない。
 いい潮時だったと自分では思っている。

 異動先は外科病棟だった。
 外科病棟には治る見込みのある患者がやってくる。
 緩和病棟に比べると同じ病院でも生きる気力が満ち溢れているように思える。
 あたしの心は少しずつふさぎ込んだ気持ちから、光がさすように明るくなっていった。
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