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修学旅行
蒸気機関車
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前回と同じく、今回も高校時代の修学旅行の話である。
とにかくボクは日中、スキーを滑ってどんなに身体を動かしても当時はまったく疲れなかった。
当然のことだが夜は興奮して眠れない。
しつこいようだが今ならビールでも飲んでコテンと寝てしまうだろう。
若いと言うのはすごいことである。 前回と同じく、今回も高校時代の修学旅行の話である。
とにかくボクは日中、スキーを滑ってどんなに身体を動かしても当時はまったく疲れなかった。
当然のことだが夜は興奮して眠れない。
しつこいようだが今ならビールでも飲んでコテンと寝てしまうだろう。
若いと言うのはすごいことである。
疲れてはいないものの、ボクと同室の連中はみんな真面目な奴ばかりだった。
翌日に備えて早めに寝ていたのである。
まあいくら疲れていないと言ってもそれはただ単にハイになって疲れを感じていないだけであり、実際にはしっかり休まないと怪我の元であることはなんとなくあの頃のボクでも理解はできていた。
だから一応は布団の中にもぐってじっとしていたのである。
ただ……。
そうは言うものの寝れないのは事実なわけで……仕方なく布団の中でバカな話をしていたのである。
『汽車ってどんなだっけ?』
なんでそんな話になったのかは分からない。
布団の中でそんなくだらない話をしていたのはボクと保田くんと森くんだった。
この3人は全員、鉄道研究部だったから、もしかしたらこの年の夏休みに鉄道研究部の活動で乗りに行ったD51の話からそんな話になったのかもしれない。
ちなみに……部屋に残っていたのはボクら以外には多田くんがいた。
多田くんが次の日に備えてゆっくりしたいから寝かせてくれと言っていたので、遊びたいメンバーは他の部屋に移動していたのである。
今、考えてみると、明日に備えて寝るという真面目な活動は多田くんと同室だったからそうなったのかもしれない。
とにかく多田くんが布団の中で寝ようとしている時にボクら3人はそこそこな大きな声でくだらない話を始めたのである。
『どんなって?』
保田くんがボクに聞いてきた。
『いやさ。夏に乗りに行ったじゃん』
『ああ』
『あの時の汽車って、なんか違う感じがするんだよね』
ボクは保田くんと森くんに言った。
汽車の何が違うかという話をしたかどうかは覚えていない。
断っておくがこれはあくまで記憶の断片をうまくつなぎあわせて、脚色している会話であるからしてそういうことを踏まえて楽しんでもらえるとありがたい。
『現実はそんなものだよ』
森くんはいつものように早口で言った。
彼は頭の回転が速いのでボクが言おうとしたことを瞬時に理解したのだろう。
要は、ボクは夏に乗ったD51は自分が想像する蒸気機関車とはなんとなく違っていたという話をしたかったのだ。
『なんかさ……蒸気機関車ってさ……しゅっしゅっしゅっしゅっ……って感じじゃん』
ボクがそういうと……
保田くんは何を思ったか……布団から起き上がってけっこうな大声で機関車のマネをしだした。
これにはいつも悪乗りをあおって笑っているボクや森くんもあせった。
『おい。やめろって』
森くんは保田くんに言った。
『おもしろいけどもう少し静かにしたほうが……』
珍しく殊勝なことを言うボク。
というのも多田くんはスキーで転びまくって疲れたと何度も言っていたし、彼は早寝早起きで基本朝方の生活パターンで、高校生活は無遅刻無欠席の皆勤賞をとったような男なのだ。そのような男が横で寝ているにもかかわらず横で騒がしくするなんて自殺行為である。
『おいおい……静かにしてくれよ。』
多田くんは基本、穏やかな男である。
最初は穏やかにボクらを注意していた。
だからこそ、ボクも森くんも必死で保田くんを止めたのだ。普段、穏やかな人間が怒ったときのパワーはすさまじいからだ。
ただここが保田くんの分からないところである。こうやって周りから止められると彼は暴走するのである。
『しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! ぷ――――――――っ!』
『だからやめろって!』
森くんが言った。
正直、そんなに面白くもなくただうるさいだけだったので、ボクも森くんと一緒に止めたのを覚えている。大体こんなに面白くないネタを引っ張るぐらいなら小林亜星氏のイラストを捨てずにそのネタをもう少し引っ張った方がよほど面白いはずである。
とにかくおもしろいとかそうでないとか言う問題の前に『寝たい』と言っている人間がいるにもかかわらずこういうことをやる……『空気が読めない』とはこういうことを言うのであろう。
気がつけばボクも森くんも大声で保田くんを止めていた。
『いい加減にしろ!!!!』
多田くんの怒りは頂点に達し、怒鳴り声が部屋に響き渡った。
事態はこれで収束した。
ボクと森くんは『ほら言わんこっちゃない』と言う顔で保田くんを見た。保田くんはと言えばきょとんとして布団にもぐりこんでいた。
この話をすれば保田くんに『君だって大声出してたじゃないか』と言われるかもしれない。
記憶の話で、定かでない話を少しの脚色と共に書いているこのエッセイだが、このエピソードでボクが悪乗りせずに森くんと共に保田くんの暴走を止めたという部分に関しての記憶に関しては鮮明である。
確かにボクも騒いでいたのは事実だし、森くんも盛り上がっていた。
保田くんばかりが騒いでいたわけではない。
しかし、やはり一番やかましかったのはまぎれもなく保田くんであり『やめろ』と言われていても、なお、騒ぎ続けたのも保田くんなのである。
ボクと森くんは多田くんが穏やかに言っているところで空気を読んで少なくとも騒ぐことはしなかった。
大声を出してしまったのはあくまで保田くんを止めるための不可抗力なのだ。
翌朝、ボクが風呂に入りに行くと浴室には多田くんがいたので、あらためてキチンと謝ったのを覚えている。ボクは騒いだ中心人物ではないが、それでも彼が嫌がることをしてしまったことには変わりがないからだ。
多田くんがすんなり許してくれたのは言うまでもない。
疲れてはいないものの、ボクと同室の連中はみんな真面目な奴ばかりだった。
翌日に備えて早めに寝ていたのである。
まあいくら疲れていないと言ってもそれはただ単にハイになって疲れを感じていないだけであり、実際にはしっかり休まないと怪我の元であることはなんとなくあの頃のボクでも理解はできていた。
だから一応は布団の中にもぐってじっとしていたのである。
ただ……。
そうは言うものの寝れないのは事実なわけで……仕方なく布団の中でバカな話をしていたのである。
『汽車ってどんなだっけ?』
なんでそんな話になったのかは分からない。
布団の中でそんなくだらない話をしていたのはボクと保田くんと森くんだった。
この3人は全員、鉄道研究部だったから、もしかしたらこの年の夏休みに鉄道研究部の活動で乗りに行ったD51の話からそんな話になったのかもしれない。
ちなみに……部屋に残っていたのはボクら以外には多田くんがいた。
多田くんが次の日に備えてゆっくりしたいから寝かせてくれと言っていたので、遊びたいメンバーは他の部屋に移動していたのである。
今、考えてみると、明日に備えて寝るという真面目な活動は多田くんと同室だったからそうなったのかもしれない。
とにかく多田くんが布団の中で寝ようとしている時にボクら3人はそこそこな大きな声でくだらない話を始めたのである。
『どんなって?』
保田くんがボクに聞いてきた。
『いやさ。夏に乗りに行ったじゃん』
『ああ』
『あの時の汽車って、なんか違う感じがするんだよね』
ボクは保田くんと森くんに言った。
汽車の何が違うかという話をしたかどうかは覚えていない。
断っておくがこれはあくまで記憶の断片をうまくつなぎあわせて、脚色している会話であるからしてそういうことを踏まえて楽しんでもらえるとありがたい。
『現実はそんなものだよ』
森くんはいつものように早口で言った。
彼は頭の回転が速いのでボクが言おうとしたことを瞬時に理解したのだろう。
要は、ボクは夏に乗ったD51は自分が想像する蒸気機関車とはなんとなく違っていたという話をしたかったのだ。
『なんかさ……蒸気機関車ってさ……しゅっしゅっしゅっしゅっ……って感じじゃん』
ボクがそういうと……
保田くんは何を思ったか……布団から起き上がってけっこうな大声で機関車のマネをしだした。
これにはいつも悪乗りをあおって笑っているボクや森くんもあせった。
『おい。やめろって』
森くんは保田くんに言った。
『おもしろいけどもう少し静かにしたほうが……』
珍しく殊勝なことを言うボク。
というのも多田くんはスキーで転びまくって疲れたと何度も言っていたし、彼は早寝早起きで基本朝方の生活パターンで、高校生活は無遅刻無欠席の皆勤賞をとったような男なのだ。そのような男が横で寝ているにもかかわらず横で騒がしくするなんて自殺行為である。
『おいおい……静かにしてくれよ。』
多田くんは基本、穏やかな男である。
最初は穏やかにボクらを注意していた。
だからこそ、ボクも森くんも必死で保田くんを止めたのだ。普段、穏やかな人間が怒ったときのパワーはすさまじいからだ。
ただここが保田くんの分からないところである。こうやって周りから止められると彼は暴走するのである。
『しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! ぷ――――――――っ!』
『だからやめろって!』
森くんが言った。
正直、そんなに面白くもなくただうるさいだけだったので、ボクも森くんと一緒に止めたのを覚えている。大体こんなに面白くないネタを引っ張るぐらいなら小林亜星氏のイラストを捨てずにそのネタをもう少し引っ張った方がよほど面白いはずである。
とにかくおもしろいとかそうでないとか言う問題の前に『寝たい』と言っている人間がいるにもかかわらずこういうことをやる……『空気が読めない』とはこういうことを言うのであろう。
気がつけばボクも森くんも大声で保田くんを止めていた。
『いい加減にしろ!!!!』
多田くんの怒りは頂点に達し、怒鳴り声が部屋に響き渡った。
事態はこれで収束した。
ボクと森くんは『ほら言わんこっちゃない』と言う顔で保田くんを見た。保田くんはと言えばきょとんとして布団にもぐりこんでいた。
この話をすれば保田くんに『君だって大声出してたじゃないか』と言われるかもしれない。
記憶の話で、定かでない話を少しの脚色と共に書いているこのエッセイだが、このエピソードでボクが悪乗りせずに森くんと共に保田くんの暴走を止めたという部分に関しての記憶に関しては鮮明である。
確かにボクも騒いでいたのは事実だし、森くんも盛り上がっていた。
保田くんばかりが騒いでいたわけではない。
しかし、やはり一番やかましかったのはまぎれもなく保田くんであり『やめろ』と言われていても、なお、騒ぎ続けたのも保田くんなのである。
ボクと森くんは多田くんが穏やかに言っているところで空気を読んで少なくとも騒ぐことはしなかった。
大声を出してしまったのはあくまで保田くんを止めるための不可抗力なのだ。
翌朝、ボクが風呂に入りに行くと浴室には多田くんがいたので、あらためてキチンと謝ったのを覚えている。ボクは騒いだ中心人物ではないが、それでも彼が嫌がることをしてしまったことには変わりがないからだ。
多田くんがすんなり許してくれたのは言うまでもない。
とにかくボクは日中、スキーを滑ってどんなに身体を動かしても当時はまったく疲れなかった。
当然のことだが夜は興奮して眠れない。
しつこいようだが今ならビールでも飲んでコテンと寝てしまうだろう。
若いと言うのはすごいことである。 前回と同じく、今回も高校時代の修学旅行の話である。
とにかくボクは日中、スキーを滑ってどんなに身体を動かしても当時はまったく疲れなかった。
当然のことだが夜は興奮して眠れない。
しつこいようだが今ならビールでも飲んでコテンと寝てしまうだろう。
若いと言うのはすごいことである。
疲れてはいないものの、ボクと同室の連中はみんな真面目な奴ばかりだった。
翌日に備えて早めに寝ていたのである。
まあいくら疲れていないと言ってもそれはただ単にハイになって疲れを感じていないだけであり、実際にはしっかり休まないと怪我の元であることはなんとなくあの頃のボクでも理解はできていた。
だから一応は布団の中にもぐってじっとしていたのである。
ただ……。
そうは言うものの寝れないのは事実なわけで……仕方なく布団の中でバカな話をしていたのである。
『汽車ってどんなだっけ?』
なんでそんな話になったのかは分からない。
布団の中でそんなくだらない話をしていたのはボクと保田くんと森くんだった。
この3人は全員、鉄道研究部だったから、もしかしたらこの年の夏休みに鉄道研究部の活動で乗りに行ったD51の話からそんな話になったのかもしれない。
ちなみに……部屋に残っていたのはボクら以外には多田くんがいた。
多田くんが次の日に備えてゆっくりしたいから寝かせてくれと言っていたので、遊びたいメンバーは他の部屋に移動していたのである。
今、考えてみると、明日に備えて寝るという真面目な活動は多田くんと同室だったからそうなったのかもしれない。
とにかく多田くんが布団の中で寝ようとしている時にボクら3人はそこそこな大きな声でくだらない話を始めたのである。
『どんなって?』
保田くんがボクに聞いてきた。
『いやさ。夏に乗りに行ったじゃん』
『ああ』
『あの時の汽車って、なんか違う感じがするんだよね』
ボクは保田くんと森くんに言った。
汽車の何が違うかという話をしたかどうかは覚えていない。
断っておくがこれはあくまで記憶の断片をうまくつなぎあわせて、脚色している会話であるからしてそういうことを踏まえて楽しんでもらえるとありがたい。
『現実はそんなものだよ』
森くんはいつものように早口で言った。
彼は頭の回転が速いのでボクが言おうとしたことを瞬時に理解したのだろう。
要は、ボクは夏に乗ったD51は自分が想像する蒸気機関車とはなんとなく違っていたという話をしたかったのだ。
『なんかさ……蒸気機関車ってさ……しゅっしゅっしゅっしゅっ……って感じじゃん』
ボクがそういうと……
保田くんは何を思ったか……布団から起き上がってけっこうな大声で機関車のマネをしだした。
これにはいつも悪乗りをあおって笑っているボクや森くんもあせった。
『おい。やめろって』
森くんは保田くんに言った。
『おもしろいけどもう少し静かにしたほうが……』
珍しく殊勝なことを言うボク。
というのも多田くんはスキーで転びまくって疲れたと何度も言っていたし、彼は早寝早起きで基本朝方の生活パターンで、高校生活は無遅刻無欠席の皆勤賞をとったような男なのだ。そのような男が横で寝ているにもかかわらず横で騒がしくするなんて自殺行為である。
『おいおい……静かにしてくれよ。』
多田くんは基本、穏やかな男である。
最初は穏やかにボクらを注意していた。
だからこそ、ボクも森くんも必死で保田くんを止めたのだ。普段、穏やかな人間が怒ったときのパワーはすさまじいからだ。
ただここが保田くんの分からないところである。こうやって周りから止められると彼は暴走するのである。
『しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! ぷ――――――――っ!』
『だからやめろって!』
森くんが言った。
正直、そんなに面白くもなくただうるさいだけだったので、ボクも森くんと一緒に止めたのを覚えている。大体こんなに面白くないネタを引っ張るぐらいなら小林亜星氏のイラストを捨てずにそのネタをもう少し引っ張った方がよほど面白いはずである。
とにかくおもしろいとかそうでないとか言う問題の前に『寝たい』と言っている人間がいるにもかかわらずこういうことをやる……『空気が読めない』とはこういうことを言うのであろう。
気がつけばボクも森くんも大声で保田くんを止めていた。
『いい加減にしろ!!!!』
多田くんの怒りは頂点に達し、怒鳴り声が部屋に響き渡った。
事態はこれで収束した。
ボクと森くんは『ほら言わんこっちゃない』と言う顔で保田くんを見た。保田くんはと言えばきょとんとして布団にもぐりこんでいた。
この話をすれば保田くんに『君だって大声出してたじゃないか』と言われるかもしれない。
記憶の話で、定かでない話を少しの脚色と共に書いているこのエッセイだが、このエピソードでボクが悪乗りせずに森くんと共に保田くんの暴走を止めたという部分に関しての記憶に関しては鮮明である。
確かにボクも騒いでいたのは事実だし、森くんも盛り上がっていた。
保田くんばかりが騒いでいたわけではない。
しかし、やはり一番やかましかったのはまぎれもなく保田くんであり『やめろ』と言われていても、なお、騒ぎ続けたのも保田くんなのである。
ボクと森くんは多田くんが穏やかに言っているところで空気を読んで少なくとも騒ぐことはしなかった。
大声を出してしまったのはあくまで保田くんを止めるための不可抗力なのだ。
翌朝、ボクが風呂に入りに行くと浴室には多田くんがいたので、あらためてキチンと謝ったのを覚えている。ボクは騒いだ中心人物ではないが、それでも彼が嫌がることをしてしまったことには変わりがないからだ。
多田くんがすんなり許してくれたのは言うまでもない。
疲れてはいないものの、ボクと同室の連中はみんな真面目な奴ばかりだった。
翌日に備えて早めに寝ていたのである。
まあいくら疲れていないと言ってもそれはただ単にハイになって疲れを感じていないだけであり、実際にはしっかり休まないと怪我の元であることはなんとなくあの頃のボクでも理解はできていた。
だから一応は布団の中にもぐってじっとしていたのである。
ただ……。
そうは言うものの寝れないのは事実なわけで……仕方なく布団の中でバカな話をしていたのである。
『汽車ってどんなだっけ?』
なんでそんな話になったのかは分からない。
布団の中でそんなくだらない話をしていたのはボクと保田くんと森くんだった。
この3人は全員、鉄道研究部だったから、もしかしたらこの年の夏休みに鉄道研究部の活動で乗りに行ったD51の話からそんな話になったのかもしれない。
ちなみに……部屋に残っていたのはボクら以外には多田くんがいた。
多田くんが次の日に備えてゆっくりしたいから寝かせてくれと言っていたので、遊びたいメンバーは他の部屋に移動していたのである。
今、考えてみると、明日に備えて寝るという真面目な活動は多田くんと同室だったからそうなったのかもしれない。
とにかく多田くんが布団の中で寝ようとしている時にボクら3人はそこそこな大きな声でくだらない話を始めたのである。
『どんなって?』
保田くんがボクに聞いてきた。
『いやさ。夏に乗りに行ったじゃん』
『ああ』
『あの時の汽車って、なんか違う感じがするんだよね』
ボクは保田くんと森くんに言った。
汽車の何が違うかという話をしたかどうかは覚えていない。
断っておくがこれはあくまで記憶の断片をうまくつなぎあわせて、脚色している会話であるからしてそういうことを踏まえて楽しんでもらえるとありがたい。
『現実はそんなものだよ』
森くんはいつものように早口で言った。
彼は頭の回転が速いのでボクが言おうとしたことを瞬時に理解したのだろう。
要は、ボクは夏に乗ったD51は自分が想像する蒸気機関車とはなんとなく違っていたという話をしたかったのだ。
『なんかさ……蒸気機関車ってさ……しゅっしゅっしゅっしゅっ……って感じじゃん』
ボクがそういうと……
保田くんは何を思ったか……布団から起き上がってけっこうな大声で機関車のマネをしだした。
これにはいつも悪乗りをあおって笑っているボクや森くんもあせった。
『おい。やめろって』
森くんは保田くんに言った。
『おもしろいけどもう少し静かにしたほうが……』
珍しく殊勝なことを言うボク。
というのも多田くんはスキーで転びまくって疲れたと何度も言っていたし、彼は早寝早起きで基本朝方の生活パターンで、高校生活は無遅刻無欠席の皆勤賞をとったような男なのだ。そのような男が横で寝ているにもかかわらず横で騒がしくするなんて自殺行為である。
『おいおい……静かにしてくれよ。』
多田くんは基本、穏やかな男である。
最初は穏やかにボクらを注意していた。
だからこそ、ボクも森くんも必死で保田くんを止めたのだ。普段、穏やかな人間が怒ったときのパワーはすさまじいからだ。
ただここが保田くんの分からないところである。こうやって周りから止められると彼は暴走するのである。
『しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! しゅっ! ぷ――――――――っ!』
『だからやめろって!』
森くんが言った。
正直、そんなに面白くもなくただうるさいだけだったので、ボクも森くんと一緒に止めたのを覚えている。大体こんなに面白くないネタを引っ張るぐらいなら小林亜星氏のイラストを捨てずにそのネタをもう少し引っ張った方がよほど面白いはずである。
とにかくおもしろいとかそうでないとか言う問題の前に『寝たい』と言っている人間がいるにもかかわらずこういうことをやる……『空気が読めない』とはこういうことを言うのであろう。
気がつけばボクも森くんも大声で保田くんを止めていた。
『いい加減にしろ!!!!』
多田くんの怒りは頂点に達し、怒鳴り声が部屋に響き渡った。
事態はこれで収束した。
ボクと森くんは『ほら言わんこっちゃない』と言う顔で保田くんを見た。保田くんはと言えばきょとんとして布団にもぐりこんでいた。
この話をすれば保田くんに『君だって大声出してたじゃないか』と言われるかもしれない。
記憶の話で、定かでない話を少しの脚色と共に書いているこのエッセイだが、このエピソードでボクが悪乗りせずに森くんと共に保田くんの暴走を止めたという部分に関しての記憶に関しては鮮明である。
確かにボクも騒いでいたのは事実だし、森くんも盛り上がっていた。
保田くんばかりが騒いでいたわけではない。
しかし、やはり一番やかましかったのはまぎれもなく保田くんであり『やめろ』と言われていても、なお、騒ぎ続けたのも保田くんなのである。
ボクと森くんは多田くんが穏やかに言っているところで空気を読んで少なくとも騒ぐことはしなかった。
大声を出してしまったのはあくまで保田くんを止めるための不可抗力なのだ。
翌朝、ボクが風呂に入りに行くと浴室には多田くんがいたので、あらためてキチンと謝ったのを覚えている。ボクは騒いだ中心人物ではないが、それでも彼が嫌がることをしてしまったことには変わりがないからだ。
多田くんがすんなり許してくれたのは言うまでもない。
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