阪上くんと保田くん

阪上克利

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修学旅行

優里さん

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 修学旅行の帰りのバスの中では、楽しかった一週間に終わりを告げるのに少しの寂しさを感じながら窓の外の風景を眺めたのを覚えている。
 窓の外は晴天で、青い空がくっきり見えていた。雪はものすごく積もっており、青い空と白い雪のコントラストが雪国で生活したことのないボクの感性を刺激してくれた。
 こんな環境の中、一日中、小説のネタを考えながら、少し気分転換に温泉につかったりスキーしたりしながら毎日を暮したい……などと非常に甘い幻想にひたったのを覚えている。

 そういう幻想の中では必ず女の子が出てくる。
 田舎にいるあまり化粧もしていない清純な子が自分と付き合うことになるような妄想をするのである。
 心の中で何を考えようと自由だが、こうやって文字にしてみると実に恥ずかしい。
 前回の話でも女子の話をしたが、男子しかいない高校時代の話なのになぜにこんなに女子の話をするのかといえば……実はバスガイドさんの話をしたかったからである。

 ボクは小学校・中学校・そして高校の行きのバスなどすべてあわせてもバスガイドさんはすべておばさんで、残念ながら今まで若くてかわいいバスガイドさんに出会うことはなかった。

 ところがである!!

 ボクは最終学歴が専門学校卒なので修学旅行というのはこれが最後のものだったのだが、最後の最後で特大ホームランが来たのである。
 もうそれは9回裏2アウトフルベース、得点3-0でビハインド。絶体絶命からのサヨナラ満塁ホームランクラスの快挙だった。

 ちょっとわかりづらい例えだったかもしれないが……要するに高校の修学旅行の帰りのバスでのガイドさんがちょっとないぐらい美人だったということである。

『村山優里と申します。よろしくお願いします』
 彼女はそう自己紹介した。
 そんなに可愛かったにもかかわらずボクは彼女の名前を覚えていないので適当に仮名をつけて表記した。
 てゆうか、仮に本名を覚えていたところでここに書くわけにはいかないのだが……。

 色白で痩せすぎではなく、かといってふっくらしている感じでもない。
 目は二重で……一言で言えば日本テレビの水卜麻美アナのような感じを想像していただければわかりやすい。

 個人的な好みとしてはこれで優里さんが少しなまってくれたら言うことなかったのだが、贅沢を言ってはいけない。
 いずれにしても今までの人生の中で彼女よりキレイなバスガイドに当たったことはなかったわけだからボクの高校生活の中ではベスト10に入るぐらいの快挙だったと言える。

 武山くんに至っては一緒に写真を撮っていてしかも住所まで交換していたらしい。

 彼とは高校を卒業して以来会ってはいないが、おそらく彼も結婚して家庭をもっていることと思う。そのお相手がこの時の優里さんだったら……実に人生とは数奇で面白いものであると感じられるのだが……
 まあ、そんなことは可能性としては極めて低いのだけど。

 当時のボクはそういう美人がいても遠目で見ているだけだった。
 保田くんも同じである。てゆうか保田くんは知らない人と話すということが基本的には大嫌いなので、向こうが話しかけてくれない限りは話さない。

 ボクは遠目で優里さんを見ながら保田くんに言った。
『いやあ……最後の最後に大当たりだったねえ』
『まったくだ』
 こんな会話をしながらも当人には何も声をかけないのだから実に気持ちの悪い二人である。

 これが女の子なら絵になるのだが男がこういうことをすると、ただ単に気持ちの悪い引きこもり気味の人間に見えてしまうのである。
 こういうところは実に男は損である。

 というのも女の子がかっこいい年上の男性に声をかけられずに遠目で見ているだけというのとあまり変わらないからである。
 男だとどうして絵にならないか?
 少し考えてみたが、恋愛の関係上、やはり『好き』と言うのは男性の方であり、男性は行動的であるのが通常だからではないだろうか? 生物学的にも人間以外の動物は雄の方がなんらかのアピールを雌にしている光景がよく目立つ。つまりこういうことにおいて男性は常に行動的であり、女性はいつも受動的であるというのが定説であると考えるのがごく自然な流れなのだろう。
 だからこそ男が美人を目の前に声もかけることもできず、ただ仲間内だけで話をするにとどまるというのは第三者からすれば見苦しい光景でしかないように写ってしまうのだろう。

 てゆうか実際に客観的に自分の行動を見ると確かに見苦しい。

 ただこれがまだ高校生の十代の頃だったのが救いである。
 同じことを今やっていたらはっきりいって犯罪に近い行為である。

 バスは少し走ったところでお土産屋に寄ることになった。
 優里さんの軽快なトークをもう少し聞きたかったところなのだが、ボクは、さも『別に興味ないっすよ』という顔をしてお土産屋さんに降りていった。

 バスを降りたところで武山くんが優里さんと一緒に写真を撮っていた。
 ちょっとうらやましかったがそこに混ざるだけの図々しさはあの時のボクにはなかった。保田くんに至ってはそれに気づいていたかどうかも実に怪しいものである。
 人生と言うのはある程度、自分の気持ちに正直に生きた方が得をすることがある……ということをボクはこの時の経験をはじめとして、『恋をする』という分野で学んだような気がする。
 好きなのに理由もなく気持ちを抑えたりすると間違いなく損をするし、どう考えてもその気のない人と付き合うとこれまた相手に悲しい思いをさせてしまう。そういった意味では自分の気持ちに正直に生きると言う部分はある程度、必要のように思える。

 あくまで『ある程度』であるが……。

 お土産屋に入ったボクはいろいろ見たが南部鉄器を購入した記憶がある。
 南部鉄器で入れるお茶が美味しいと聞いたからだ。
 お土産屋ではいろいろ見たが、何を買ったかは南部鉄器を購入した以外は覚えていない。

 ボクらは、お土産屋を出て、お昼ごはんを食べて盛岡から新幹線で横浜に帰る手はずになっていた。
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