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じっと待っているだけでは魚は釣れない
運命の出会い?!
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靖男にとって管理釣り場でのニジマス釣りはいつも楽しかった。
克利が運転する車に乗って、東名高速に乗り、御殿場の『御殿場フィッシングエリア』に行く。
ここは人工的な池にニジマスやイワナを放しており、それをルアーで釣るという楽しみだ。
今までも克利とは釣りに出かけることがあった。
大抵の釣りはエサをつけて釣るものだし、海に出かけて釣れた魚を持って帰ることも多かった。
靖男は魚を持って帰ることにはいつも違和感を感じている。
てゆうか持って帰っても捌けないし、食べれない。
だから釣れた魚は持って帰らないと決めている。
克利と釣りに行くのはまったくもってかまわないし、どちらかというと楽しいのだが、生物を素手で触るのは嫌だった。魚は生臭いし、エサはちょっと気持ち悪いものが多い。
だからキャッチアンドリリースのできるこういう釣りは靖男にとってはありがたかった。
また他の釣りと違って、どういうわけか、ニジマスは靖男の竿によくかかってくれた。
釣りをしている間、克利は靖男にいろんなことを話してきた。
主に、克利が結婚してからは彼の妻のことが多いのだが、靖男の仕事のことや、昔の友人のことなど、多くの話でも盛り上がり、普段こんなに笑わないんじゃないかというぐらい靖男は笑って釣りをしていた。
よく考えてみると靖男の方から話しかけることはあまりない
『どうですか?釣れてますか??』
『今日は活性上がってますよ。』
釣りをしていると不意に他の釣り人から声をかけられる時がある。
克利は気さくに他の釣り人と話すことが多い。彼は知らない人と話すのには特に抵抗はないらしい。
声をかけてきたのは若い女性だった。
どこかで見たことがあるな…ちらりと声の方を向いて靖男はそう思ったが、自分には関係のない話なので釣りに専念することにした。
『お姉さん・・・どこかであったことあるなあ。』
克利のこの言葉に靖男は気づいた。
どおりでどこかで見たことがあると思ったわけだ。釣具屋のあの店員さんだ。
昨日、釣具屋でレジで話をしたのだから、覚えていたのだ
そもそもあの釣具屋は克利に教えてもらっていった釣具屋だ。克利が『どこかでみたことある・・・』と言っていたのも納得できる。
『そうですか?確かにわたし釣具屋で勤めてるんでお会いしてるかもしれませんね。』
『ああああああああああ!!!!!そうだ!釣具屋のレジであったよ。お姉さん。』
やたら大きな声を上げて克利は言った。
こいつはリアクションが何にしても大きい。
『お店の常連さんでしたか。すみません。こんなところでお客さんに会うなんて思ってもいなかったもんで。』
『いやいやいや。でも…お姉さん、今日休みでしょ?一人で??』
『痛いとこつかれちゃいました・・・一人です。』
女性は小さく肩をすくめながら言った。
目は二重、肌は白い。
けっして美人とは言えない彼女だが、感じの良さはお店にいたときのままだった。
『いやいや…。釣りは一人でも楽しいですからね。でも一人なら良ければ一緒に釣りませんか?』
え?
靖男は心の中でつぶやいた。
明らかに狼狽している自分がいることが分かる。
知らない人と釣りをすることなど考えもしなかったし、ましてそれが女性であるとは…。
まあ…でも断られるのがオチだろうな…。
『いいんですか?じゃあ…。』
靖男の思いとは裏腹に女性はあっさり一緒に釣りをすることに同意した。
えええ!
靖男は反射的に一歩、遠くに移動した。
『保高くん、どうした?顔が引きつってるよ。ああ、すいません。こいつはボクの友人で保高と言います。でボクは阪上です。よろしく。』
『橘と言います。よろしく。』
女性の名前は橘里奈というらしい。
結局、克利はこの女性としばらく話して、名前まで聞き出した後、一人で場所を変えるといって行ってしまった。
しかしこの短期間の間によくもまあ、そんなに話すことがあるもんだ、と靖男は思っていた。
『阪上さんって面白い人ですね。奥さんがうらやましいです。』
『なんかでもあいつ愚痴ばっか言ってますよ。』
『そうなんですか?でも幸せそうですよ。』
『確かにそれはそうですね。』
話題が止まる。
沈黙の時が流れる。
管理釣り場とは言え、自然の中に作られた場所なので、鳥のさえずる声が聞こえる。
天気もよく暖かい。
こういう時は何の話をすれば良いのだろうか。
『そういえば…保高さん、昨日お店に来ましたよね。覚えてますよ。』
『え、ああ、まあ…。』
『ニジマス釣り、はまりました?』
『ええ。あ、まあ一応…。』
靖男は居心地が悪かった。
なんとなく話すこともないし、克利が早く帰ってこればいいのに、と思った。
『保高さんって彼女さんとかいるんですか?』
『いやあ、いたらこんなところにいませんよ。』
『ええ。意外ともてそうなのに。』
『そんなもんですかねえ。』
『無口な人ってもてるんですよ。』
『でも阪上くんにはもっと話せっていっつもうるさく言われてますよ。』
『それは相手によりますよ。』
『そうなんですか?』
『そんなもんです。ケースバイケースですよ。…てか保高さん!!』
『はい?』
『きてますよ!竿立てて!!』
靖男はニジマスがいつルアーに食いついたかが分からない時がある。
まあ、素人なんだから仕方あるまい。
なんだかんだいいながら靖男はニジマスとのやりとりを楽しみつつゆっくりと岸に魚を寄せた。
すると里奈がネットを使って魚をすくってくれた。
かがんだ里奈の栗色の髪の毛からほのかにいい匂いがして、靖男はなんだか里奈の後ろにいるのが申し訳なく思えた。
『良かったですねえ。40オーバーですよ。』
『ありがとうございます。』
そんなやりとりがあって、何度かお互いがニジマスを数匹かけて釣り上げ、克利も帰ってきてまた3人で釣り、時間はあっという間に夕方になった。
『橘さん。一緒に食事でもどうですか?うちのかみさんも来るし。』
克利は当たり前のように里奈を食事に誘った。
釣りの帰りに食事に行くのはいつものことだ。
その時には確かに克利の妻である空もやってくる。
『え?お邪魔じゃないんですか?』
『お邪魔どころか、助かりますよ。かみさんに釣りを教えてやってください。』
食事の時間はそれなりに楽しい。
釣りの話で盛り上がれるからだ。
ただやっぱり靖男にとってはいつもと同じようにあまり自分からは積極的に話さなかった。
というより話すことなどないからである。
克利が運転する車に乗って、東名高速に乗り、御殿場の『御殿場フィッシングエリア』に行く。
ここは人工的な池にニジマスやイワナを放しており、それをルアーで釣るという楽しみだ。
今までも克利とは釣りに出かけることがあった。
大抵の釣りはエサをつけて釣るものだし、海に出かけて釣れた魚を持って帰ることも多かった。
靖男は魚を持って帰ることにはいつも違和感を感じている。
てゆうか持って帰っても捌けないし、食べれない。
だから釣れた魚は持って帰らないと決めている。
克利と釣りに行くのはまったくもってかまわないし、どちらかというと楽しいのだが、生物を素手で触るのは嫌だった。魚は生臭いし、エサはちょっと気持ち悪いものが多い。
だからキャッチアンドリリースのできるこういう釣りは靖男にとってはありがたかった。
また他の釣りと違って、どういうわけか、ニジマスは靖男の竿によくかかってくれた。
釣りをしている間、克利は靖男にいろんなことを話してきた。
主に、克利が結婚してからは彼の妻のことが多いのだが、靖男の仕事のことや、昔の友人のことなど、多くの話でも盛り上がり、普段こんなに笑わないんじゃないかというぐらい靖男は笑って釣りをしていた。
よく考えてみると靖男の方から話しかけることはあまりない
『どうですか?釣れてますか??』
『今日は活性上がってますよ。』
釣りをしていると不意に他の釣り人から声をかけられる時がある。
克利は気さくに他の釣り人と話すことが多い。彼は知らない人と話すのには特に抵抗はないらしい。
声をかけてきたのは若い女性だった。
どこかで見たことがあるな…ちらりと声の方を向いて靖男はそう思ったが、自分には関係のない話なので釣りに専念することにした。
『お姉さん・・・どこかであったことあるなあ。』
克利のこの言葉に靖男は気づいた。
どおりでどこかで見たことがあると思ったわけだ。釣具屋のあの店員さんだ。
昨日、釣具屋でレジで話をしたのだから、覚えていたのだ
そもそもあの釣具屋は克利に教えてもらっていった釣具屋だ。克利が『どこかでみたことある・・・』と言っていたのも納得できる。
『そうですか?確かにわたし釣具屋で勤めてるんでお会いしてるかもしれませんね。』
『ああああああああああ!!!!!そうだ!釣具屋のレジであったよ。お姉さん。』
やたら大きな声を上げて克利は言った。
こいつはリアクションが何にしても大きい。
『お店の常連さんでしたか。すみません。こんなところでお客さんに会うなんて思ってもいなかったもんで。』
『いやいやいや。でも…お姉さん、今日休みでしょ?一人で??』
『痛いとこつかれちゃいました・・・一人です。』
女性は小さく肩をすくめながら言った。
目は二重、肌は白い。
けっして美人とは言えない彼女だが、感じの良さはお店にいたときのままだった。
『いやいや…。釣りは一人でも楽しいですからね。でも一人なら良ければ一緒に釣りませんか?』
え?
靖男は心の中でつぶやいた。
明らかに狼狽している自分がいることが分かる。
知らない人と釣りをすることなど考えもしなかったし、ましてそれが女性であるとは…。
まあ…でも断られるのがオチだろうな…。
『いいんですか?じゃあ…。』
靖男の思いとは裏腹に女性はあっさり一緒に釣りをすることに同意した。
えええ!
靖男は反射的に一歩、遠くに移動した。
『保高くん、どうした?顔が引きつってるよ。ああ、すいません。こいつはボクの友人で保高と言います。でボクは阪上です。よろしく。』
『橘と言います。よろしく。』
女性の名前は橘里奈というらしい。
結局、克利はこの女性としばらく話して、名前まで聞き出した後、一人で場所を変えるといって行ってしまった。
しかしこの短期間の間によくもまあ、そんなに話すことがあるもんだ、と靖男は思っていた。
『阪上さんって面白い人ですね。奥さんがうらやましいです。』
『なんかでもあいつ愚痴ばっか言ってますよ。』
『そうなんですか?でも幸せそうですよ。』
『確かにそれはそうですね。』
話題が止まる。
沈黙の時が流れる。
管理釣り場とは言え、自然の中に作られた場所なので、鳥のさえずる声が聞こえる。
天気もよく暖かい。
こういう時は何の話をすれば良いのだろうか。
『そういえば…保高さん、昨日お店に来ましたよね。覚えてますよ。』
『え、ああ、まあ…。』
『ニジマス釣り、はまりました?』
『ええ。あ、まあ一応…。』
靖男は居心地が悪かった。
なんとなく話すこともないし、克利が早く帰ってこればいいのに、と思った。
『保高さんって彼女さんとかいるんですか?』
『いやあ、いたらこんなところにいませんよ。』
『ええ。意外ともてそうなのに。』
『そんなもんですかねえ。』
『無口な人ってもてるんですよ。』
『でも阪上くんにはもっと話せっていっつもうるさく言われてますよ。』
『それは相手によりますよ。』
『そうなんですか?』
『そんなもんです。ケースバイケースですよ。…てか保高さん!!』
『はい?』
『きてますよ!竿立てて!!』
靖男はニジマスがいつルアーに食いついたかが分からない時がある。
まあ、素人なんだから仕方あるまい。
なんだかんだいいながら靖男はニジマスとのやりとりを楽しみつつゆっくりと岸に魚を寄せた。
すると里奈がネットを使って魚をすくってくれた。
かがんだ里奈の栗色の髪の毛からほのかにいい匂いがして、靖男はなんだか里奈の後ろにいるのが申し訳なく思えた。
『良かったですねえ。40オーバーですよ。』
『ありがとうございます。』
そんなやりとりがあって、何度かお互いがニジマスを数匹かけて釣り上げ、克利も帰ってきてまた3人で釣り、時間はあっという間に夕方になった。
『橘さん。一緒に食事でもどうですか?うちのかみさんも来るし。』
克利は当たり前のように里奈を食事に誘った。
釣りの帰りに食事に行くのはいつものことだ。
その時には確かに克利の妻である空もやってくる。
『え?お邪魔じゃないんですか?』
『お邪魔どころか、助かりますよ。かみさんに釣りを教えてやってください。』
食事の時間はそれなりに楽しい。
釣りの話で盛り上がれるからだ。
ただやっぱり靖男にとってはいつもと同じようにあまり自分からは積極的に話さなかった。
というより話すことなどないからである。
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