隣の二階堂さん

阪上克利

文字の大きさ
23 / 62

三日坊主はいいことなのか否か

しおりを挟む
 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くことをあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

 ……。

 あれ? 今夜は音が聞こえてこない。
 留守ではないはずなんだけど……。
 夕凪ゆうなは残念そうにあたしを見る。
 あたしは夕凪ゆうなに言った。
『お茶にでもしようか。お姉ちゃん、呼んできてくれる?』
 別に例の癖がでなくても二階堂さんとのおしゃべりを中止する理由にはならない。


 --------------


 筋肉痛でしんどいのでついついジョギングをさぼってしまった。
 痛さが消えたらやろうと思っていたのだが、痛いのがなくならないのでやっていない。

 だからさぼったと一瞬思ったけど……断じてさぼりではない。

 痛いという感覚は身体が不調を訴えているサインなのだ。
 無理は良くない。

 とか言いながら……ジョギングは三日坊主になってしまいそうな勢いだ。
 でも三日坊主ってそんなに悪いことなんだろうか。
 三日続いたんだから良いじゃないか。
 ふとそんなことを思いながら筋肉痛の身体に鞭打ちながら晩御飯を作る。

 痛い……。
 特に太ももとか腰とかが痛い。
 痛いというか……もう辛い。
 出来る限り動きたくない。
 でも動かないと晩御飯が食べられないので頑張って動く。

 あたし頑張ってるよ。
 偉い。
 自分を褒めてやりたい。
 もう三日坊主でいいじゃない。
 よく頑張ったよ。

 たまには玉子焼きが食べたいと思ったので作ってみた。
 玉子が焼けた甘くて独特のいい匂いがする。
 痛いのを我慢して作ったかいがあった。

 それにしても三日坊主はなぜ悪いことのように言われるのだろうか。
 あたしから言わせれば運動嫌いのあたしが走るという行為を始めただけでもすごいことだと思う。自画自賛で大変恐縮だが、あたしにとって身体を動かすということは、普通の人の3倍しんどいことなのだ。
 何といってもモチベーションが上がらない。
 大体、なんでわざわざ疲れるようなことを貴重な時間を使ってやらなければならないのだ。
 一体何が楽しいのだ。
 子供じゃあるまいし……。

 そういえばお隣の夕凪ゆうなちゃんはよく走る。
 よく考えてみれば夕凪ゆうなちゃんに限らず子供はなんだか意味もなく走っている。
 しかも全力疾走だ。
 生きる力がみなぎっているのかもしれない。
 年を追うごとに走らなくなるのは大人になって落ち着くからだけではないだろう。
 躍動やくどうするような生命力が自分のうちになくなるからではないだろうか。

 でもなあ…。
 あたしは昔から走るのが嫌いだった記憶がある。

『真面目に走れ!』
 体育の授業の時に先生から怒られたこともある。
 涙が出るのを必死でこらえた。
 いや……真面目ですけど何か……と言いたかったのを我慢したのが昨日のことのようだ。
 そもそもあたしは鈍足なのだ。
 別にふざけていたわけではない。

 鈍足なら鈍足でも自分のペースで走ることができれば楽しいには楽しい。
 でもしんどい時にわざわざ我慢して走るのは嫌だ。

 やっぱりあたしは身体を動かすのが嫌いなのだ。
 嫌いなことをするのはストレスが大きいし、絶対に身体に良くない。
 いや……でも辞めたら太ってしまう。
 それは絶対に避けたい。
 うーん……。

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。
 ん?
 今日は痛いから台所から動いていないのでやらかしていないはず……。
 まあ……お茶の誘いは嬉しいな。

 甘い玉子焼きでも持って行ってあげるかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...