隣の二階堂さん

阪上克利

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デートでファミレスというのはありなのか否か

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 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
 ちょっと変わっている二階堂さんは実は子供や動物が大好きだ。

 彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くのはとても楽しい。そんな時間をあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

 どんどんどんどん……

 あたしと夕凪ゆうなは顔を見合わせる。
 やっぱり壁を叩く音がする。
 あたしは夕凪ゆうなに言った。
 『お姉ちゃん、呼んできてくれる?甘いものでも食べましょうって』


 ――――――――――


 ここ最近……
 ファミリーレストラン、通称『ファミレス』の味の質が非常に向上しているように思える。
 何と言っても低価格だし、それに昔はファミレスではあまり大手を振って飲めなかったお酒が最近ではそんなに抵抗なく飲めるようになった。
 理由はなんでか分からないけど……。
 それであたしの中でのファミレスの評価はうなぎのぼりで、下手な居酒屋チェーンよりも楽しいのではないかと思っている。

 たまに一人でファミレスに行くことがあるが、とても楽しい。
 とにかくサイドメニューが充実しているので酒の肴には困らない。
 基本的に居酒屋ではないので質のいいお酒にめぐりあえるということはないが、それでもそこそこ美味しいお酒が飲める。生ビールなどは冷えていて美味しいし、意外と赤ワインが美味しかったりする。
 ファミレスには肉料理が多いので赤ワインが安価で呑めるのは本当にありがたい。

 この調子だと、他にも美味しいものはたくさんあるのだろうけど、まだ試してはいない。

 今度、また一人で楽しんでこようか……などと考えている。

 そんなことを考えているとついつい顔がにやけてしまうのだが、こんな風に思う人ばかりではないということを今日のランチの時に知った。

 『デートでファミレスはないよね――』

 会社の先輩の松沢さんはランチのお弁当を食べながら言った。

 いや……あたしは嬉しいんだけど。
 だっておごってくれるんでしょ?
 いやおごってくれなくて割り勘だったとしてもリーズナブルだし、酒も肴もそこそこ美味しいし言うことないじゃん。

 ……というようなことをあたしが言ったら……力一杯、全否定された。

 『いやいやいや……そこじゃないから。そこそこ美味しいとかじゃないから』
 『え? 違うの?? てゆうか……それ以外がなんかあるの?』
 ふとあたしが松沢さんから目をそらすと困った顔をした心音さんと目が合った。
 良かった。
 あたしはどうやらまともな感覚らしい。

 『だってドラマのワンシーンみたいな状況に浸りたくない?』

 分からん。

 てゆうか松沢さんはなんか夢見すぎなんじゃないか……と思うことがある。
 デートと言っても状況にもよるだろう。

 そもそもだ。
 付き合い始めてから時間がある程度経っても、毎回そういうお洒落な店に行きたいのか?
 それとも最初のデートでそういうお洒落な店に行きたいのか?
 その辺の問題もある。

 『それは最初のデートでってこと?』
 あたしは率直に聞いてみることにした。
 その辺の状況が分からないことにはどうにも言えない。

 『違うわよ――。そんなん毎回に決まっているじゃない』

 あたしは困って一緒にランチしている心音さんを見た。心音さんは目が合うと無言であたしに『いつものことだから気にしないで』というような表情をしていた……。

 『ふううう……』
 夕方、自宅の台所でお弁当を洗いながらあたしは今日の出来事を思い返した。

 疲れた……。

 まあ……最初のデートはそれなりのお店というのも分かるけど……だとしても、どのタイミングのデートなのかがちょっと分からない。
 告白もまだで、これから告白という段階だったら……ちょっと微妙だ。
 相手の男性のことをこちらも好きなら問題ないが、断らなければならない状況だった場合は申し訳なさすぎる。

 それに付き合い始めて毎回そんな高いレストランに連れていかれるのもちょっと引く……。
 毎回高いところでご飯を食べるということは無駄遣いではないか。いくらデートと言ってもお金を使わずに楽しむことだってできるはずだ。
 その辺の経済観念を疑ってしまう。

 まあ……でも……だからといって……。
 いついかなる時も、ファミレスというのは嫌だけど……。

 うーーん……
 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。
 そういえばファミレスの割引券がたくさんあるので、お隣の春海ちゃんに持って行ってあげよう。
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