隣の二階堂さん

阪上克利

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寒い日に暖かいものを食べるのは美味しいのか否か

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 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。

 『人参、ちゃんと食べなさい』
 最近、夕凪ゆうなは偏食をするようになった。
 考えてみれば当たり前のこととは思うのだが、栄養バランスを考えると、好き嫌いはない方が良い。

 どんどんどんどん……

 あたしと夕凪ゆうなは顔を見合わせる。
 『につまったみたい……』
 夕凪ゆうなはあたしに言った。
 うまくごまかされたなあ。
 『じゃあ、その人参、一口だけでもいいから食べなさい。食べたらお姉ちゃんと一緒にデザートにしましょう』


 ――――――――――


 今日は寒いので会社帰りに暖かいうどんを食べて帰ってきた。
 寒い日には暖かいものが身に染みて美味しい。
 いつからそんな嗜好しこうになったのだろうか、と思うことがある。

 あたしはアパートの部屋の真ん中であおむけに横になり、満腹になったお腹を撫でながら天井を眺めながらぼんやりとそんなことを考えてみた。

 ああ……ちょっと眠い。
 お腹いっぱいだ。
 調子に乗って天ぷら頼んだのは間違いだったような気がする。
 そしてお腹がプニプニするような気もするが……
 細かいことは気にしないようにしよう。

 それにしても、寒い日に暖かいものは確かに美味しい。
 逆に暑い日には冷たいものがほしくなる。

 子供の頃はそんなことも考えずに食べたいものをいつでもねだっていたような気がする。
 寒くてもアイスクリームを食べていたし、暑くてもラーメンを食べていた。子供はそういう感覚が鈍いのだろうか。
 ふとお隣の夕凪ゆうなちゃんの顔が目に浮かぶ。
 そういえば最近は人参が食べられないらしく、たまにママに怒られている。
 確かにちょっと癖があるから子供のうちは人参は食べるのはきついかもしれないなあ……
 そういえば子供の味覚と大人の味覚はかなり違う。

 うん。
 やはり子供の味覚は寒暖の差に鈍いのかもしれない。

 いや……ちょっと待てよ。

 あたしは大人になった今でも寒い日に冷たいものが欲しくなる時がある。
 だって、どんなに寒くても最初の1杯は生ビールではないか。

 あれはなぜか美味しい。

 寒いのだから最初から暖かいお酒にすればいいのだが、何故か暖かいお酒を最初から飲む気にはなれない。本当に不思議だ。

 もちろんそうでない人もいる。
 そういう人を見るとあたしは『すごいなあ……』と思ってしまう。

 逆に、暑い日に関しても熱いものをあえて食べたいと思うことがある。
 たぶんそれは冷たいものを食べすぎていたり、エアコンの下に長時間いたりして身体が冷えている場合が少なくない。
 『暑い時に熱いものを食べる』というのは身体には優しいような気がする。暑い時にはとにかく冷たいものばかり食べると内臓が冷えてあまり身体に良くないという話も聞いたことがある。

 こうやっていろいろ考えてみると……必ずしも子供の感覚が鈍いわけではないのだろう。

 お腹のプニプニが気になって仕方ないのであたしは起き上がった。
 結論はでない。

 てゆうか……どうでもいい話ではある。
 しかし、気温と食べ物に関する考察に対してそれなりの結論が出ると彩り豊かな生活が送れるかもしれないのだ。

 うーーん……
 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。

 玄関を開けるといつものように夕凪ちゃんがいた。
『お姉ちゃん、今日あたしね、人参食べたんだよ』
『そう、偉いわねえ』
 あたしは夕凪ちゃんの頭を撫でた。

 甘めに味付けした『にんじんしりしり』なら夕凪ゆうなちゃんでも美味しく食べられるだろうから今度、作って持って行ってあげよう。
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