青く澄み渡っている雲一つない空の下に住んでいるボクたちの何もないような日々

阪上克利

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旧型のザクでニューガンダムに挑むぐらい無謀なこと。

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 最近……
 土曜日になると朝風呂していることが多い。

 いや、まあ……朝風呂は好きだからなんの文句もないのだけど……

『ガス代かかるんだよね……』 
 かみさんから嫌な顔をされるのが少々辛い所だろうか。

 いや、それは分かっている。 
 そして辞めたいとも思っている。 
 でもね。 
 夕方、お風呂に入ろうとするとすでにもうだれかが入ってて、入れるのが1時間後とかになっちゃうのだ。 
 それでボクは先にビールを飲んでしまう。

 かみさんと息子がお風呂から出る頃には、良い感じでビールを3本ぐらいは空けちゃってる。

 だから先に入らせてほしい。 
 でも気づいたら誰かに先に入られている。 
 さすがにボクも朝風呂は贅沢だということは100も承知なので、なるべくなら夕方の時間にお風呂に入るように心がけているのだ。

 朝、お風呂に入ってしまう理由にはもう一つある。

 それは、夜中に寝汗をかいてしまうことがあるからだ。 
 なんか暑いなあと思うと首すじにびっしょり汗をかいている。 
 さすがに最近は寒くなったのでそういうこともなくなったが夏の暑い時期は毎日のように夜は寝汗をかいていた。 
 こうなると夕方にお風呂に入っても意味がない。 
 何と言っても夜中に汗をかいて気持ち悪いことになってしまうのだ。

 かみさんと息子を起こしてしまうのは申し訳ないので、夜中にシャワーを浴びることはさすがにないが、一人暮らししてたら絶対にシャワーを浴びるだろう。

 そういえばお風呂のことをこんなにも考えるようになったのはいつごろからなのだろうと、これを書きながら思った。

 実はボクは実家にいる頃から朝、お風呂に入る癖があり、実家の母からもかみさんと同じようなことを言われていた。
 その時は夜に入らない分、朝入るのだからそんなに変わらないと思っていたのだけど……
 よく考えてみればみんなが夜に入っているのだから、朝に追い炊きすればその分、ガス代はかかってしまうのである。

 だから実家にいたときは朝、風呂に入るときはシャワーだけで我慢するようにしていた。

 当然、冬は寒いが、当時は若かったので耐えられた。
 最近では無理だ。
 それなりに歳をとっておじさんボディーになってしまっているこのボクは、冬の寒さにシャワーだけで立ち向かうことなどできない。

 それはまるで旧型のザクでアムロが操るニューガンダムに挑むぐらい無謀な話である。

 よく分からない例えだと言われそうだが、それだけ無謀なことだと言いたいのだ。
 冬の寒さにシャワーだけで立ち向かう……。
 絶対に風邪を引いてしまうだろう。

 だから最近では朝にお風呂に入るときは追い炊きして身体を温めている。

 自分のだらしなさのために朝風呂に入っているボクだが、やっぱり朝風呂は気持ちがいい。
 失敗したのになんか得している。

 そんなある日。

 昨日もお風呂入れなかったし……
 追い炊きしてお風呂に入ろうかな――。

 少し早起きしたボクはそんなふうに思いながら心の中で鼻歌を歌いつつ気分良く浴室に向かう。
 浴室を開けて風呂の蓋を開けると……

 あ。

 お湯が……
 お湯が抜かれてる……。

 この時の絶望感と言ったらない。
 たぶん、前日のうちにかみさんが抜いたのだ。

 いや、ちょっと待て。
 ボク、まだ入ってないし。

『夜、入らないからだよ』

 浴室の前で絶望しているボクに、少し早起きしていつの間にかボクの後ろにいたかみさんはぼそりと言う。

『炊いていい?』
『お湯張るわけ?』
『うん。寒いし』
『ダメに決まってんじゃん』
『えええ!!』
『昨日入らなかったんだから罰ゲームだと思ってよ』

 罰ゲーム……。
 確かに本来なら夕方に入らなければならないものを、そうしなかったのだから何か得する感じになるのはおかしい。

 いや!
 風邪ひくから!!
 風邪引いたら医療費はガス代を超えてしまうから。

『風邪ひいても病院は行かない。そこまでが罰ゲーム』
 浴室の柱に左肩を預け、ちょっと洒落たポージングをしながら、にやりと笑いながらボクに話すかみさん。
 いや、そんな寝起きのパジャマでどや顔されてもなあ……

 仕方ないのでこの日ばかりはシャワーだけで済ますのだけど……
 やっぱり寒い。

 お風呂はちゃんと夜に入るようにしよう……この時は本気でそう思った。
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