青く澄み渡っている雲一つない空の下に住んでいるボクたちの何もないような日々

阪上克利

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意気込んでもいつも雨降り

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 今年、やってみたいことの一つ。
 毎年クロダイを釣りたいと言いながらも、ダメなので今年は本気で狙ってみたいと思う。

 そう思って行った1月2日の釣り。

 今まで、正月の釣りにはいい思い出はない。
 寒くてすぐにカラオケに行ったとかそんな思い出の方が多い。
 とにかくまともに釣りをした記憶がないのだ。

 だから、ここ数十年はお正月に釣りなど行かなかったのだけど……
 今年はたまたま友人に声をかけられたので、それだったらと思い、行くことにした。

 当日は箱根駅伝が行われるので、ゆっくり見たかったのだけど……
 最近は便利なものでスマートフォンからでも見ることができる。
 釣りに行っても釣れない間はスマートフォンで箱根駅伝を見ればいいか……などと安易に考えていた。

 若い頃はさほど興味もなかったのだけど、結婚してからは楽しみにしている箱根駅伝。
 いや……たぶん若い頃も好きだったのだろうけど、あの頃は家でじっとして箱根駅伝を見ているよりも普段は仕事で忙しくなかなか会えない友人と久しぶりに食事したり話したりする方が楽しかったから、そんなに興味がないような感じになっていたのかもしれない。
 結婚してからは友達付き合いも少なくなった。
 高校の同級生もそれなりに生活が変わって、地元から旅立ち、他の土地にいる。
 多田くんなどがいい例で、彼は地方に行ってしまった上に、子供ができてしまったのでなかなか会えないでいるのだ。

 寂しい話だが、恐らくもう次に会える機会は皆無だと思う。

 人生というものはそういうものだろう。
 人間づきあいにしても歳をとると、どんどん更新されていくのだ。

 さて……
 若い日を思い出すように今年は釣りに行った。
 誘ってくれた友人というのは、高校の同級生ではない。
 結婚してから新たにできた友人だ。

 釣りに行く前は釣れることを期待する。
 いや……
 釣れることしか考えない。

 もしかしたらこれが釣れない原因なのかもしれない。

 今回は本気でクロダイを狙ってみようと思った。
 長い棒ウキを使い、ハリス針に結んだ糸をある程度長くして、針の近くに錘をつける。
 なるべく仕掛けが自然に沈むようにして、海底近くを狙うのがポイントだ。

 この仕掛けなら、エサを海底近くに沈めるのでカサゴなども釣れるかもしれない。
 しかも長い棒ウキで釣るのだから、魚がかかったらこの長い棒ウキが綺麗に海中に引き込まれるのか……などと考えるとなんだかわくわくした。

 当日。
 釣り場は寒かった。
 風が少し強く、しかも冷たい北風だった。
 まあ、お正月はこういうことが多いのだ。
 想定内である。

 仕掛けを作り、エサをつける。
 そして投入。
 ウキが海面に浮かぶ。

 ……え……

 思わず絶句したのは潮の流れが早かったからだ。
 投入したウキはあっという間に右に流されていく。

 まったくもって想定外である。

 これでは釣りにならない。
 ある程度、潮の流れは必要なのだけど、あれだけ流れが早かったら、カゴ釣りにして、錘もけっこう重いものにしなければ仕掛けが流されてしまい、魚は絶対に食いつかない……と思う。

『ダメだ……こりゃ……』

 ボクがそうつぶやくと、スマートフォンから箱根駅伝の実況アナウンサーの声がした。
『雨が落ちてきたようですね』
 釣りをしていた時、箱根駅伝のランナーが走っていたのはちょうど3区。
 戸塚から平塚の間の区間で、そこで雨が降っているということは、ボクらが釣りをしているところに雨が落ちてくるのは時間の問題だった。

 ボクは早々に仕掛けを片付けた。

 あまりにも釣れないので同行した友人も『ラーメン食べに行こう』と言う始末。
 前日から釣りを心待ちにしていた息子に至っては仕掛けを作っている間に『寒い』とか言って車から出てこない。

 正月の釣りはこれで何連敗なんだろうか。
 数えてはいないが……正月からこんな感じだと今年の釣りもさほどうまくはいかないような気がする。

 まあ……このエッセイとしてはそれの方が盛り上がるからいいのだけど……。
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