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時代の移ろう速度を思う。

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 雪にすっぽり包まれる冬。
 車の流れが今と違って極端に少なく、時折り遠くから聞こえてきては近くを通り過ぎ遠ざかっていくチェーンの音が鈴の音に聞こえた幼少期。
 湯倉神社からほど近いそのころ住んでいた湯の川は、子どもにとって絶好の坂道があった。

 ビンディングなどという洒落た呼び方は知らなかった。
 板にしても、今の機能的なものからすれば絵に描いたツール程度のお粗末な代物。
 長靴の先を板についた輪に通し、靴の後方をバネで止めるだけ。かかとが固定されないから、操ることなど考えてはいけないスキー板もどき。

 小学校低学年のときに離れてからずっと行く機会がなかったけど、大人になってから訪ねたら、渡辺病院側から少しのぼった路地も、湯倉神社から赤川に伸びる道も舗装されていて驚いた。
 交通量も白が黒に変わったほどに激増している。
 まさか函館で浦島太郎になるなんて。

 住宅街でスキーなんてもうできない。

 子どもが生まれて雪遊びができるようになったころ、見晴公園にソリを持って出かけた。
 時代は気持ちを追い越すほどの速度で移ろいでいる。
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