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14 愛し子の想い

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「セヴリーヌ様の着る服は全てここのクローゼットに揃えています」
「え?」
ベッドに座っていたロジェが立ち上がり、ベッド脇の両開きのクローゼットを開くとそこには仕立てのよさそうな女性ものの服がずらりと掛けられていた。
殆どの服が女性ものの服で埋め尽くされており、ロジェ自身の服はその片隅に少しだけあるだけだ。
「こんな服……いつの間に?」
ロジェは常に身軽で荷物が少なかった為、一番大きな荷物が私だった筈だ。
いくら記憶を呼び起こしても、これらの服を運んでいた気配はなかった。

「僕達がここに到着する前に、直接ここに届ける手配をしたので」
「そ、そうなのね」
研究塔に入る一年前には、既に揃えていたことになる計算だ。段取りが早すぎるような気もするが、今となっては有り難い。

「それと……身分証を手に入れたら僕の傍を離れるつもりなのですか?」
「え?」
私は首を傾げる。
そう言えばロジェは人の心が読めるのだっけ、と口を開けるようになって改めて感じた。
まあ正直、読まれて困るようなことは考えていないのだが。
「いつまでも子供のお世話になる訳にはいかないことくらい、私でもわかっているわ」
「セヴリーヌ様のお世話は僕が一生します」
「え?」

三百年も時間を飛んで、右も左もわかっていない私を優しいロジェは心配してくれているのだろうか。
しかし、そこまで責任を感じてくれなくてもいい。
私は動ける身体を手に入れただけで、ロジェに感謝しているのだから。
私がそう言う前に、私の心を読んだロジェが先に口を開いた。

「違います。責任とかではなく……先程約束したではありませんか。僕の全てをセヴリーヌ様に捧げる代わりに、セヴリーヌ様の全てを僕に下さいと」
「ええ、怖気づいた私に勇気を与えようと思って言ってくれたわよ、ね……?」
私の言葉を聞きながらどんどん不機嫌になっていくロジェに戸惑い、最後は疑問形になってしまう。
「もう、本当にセヴリーヌ様は……っ!」
ロジェは濡れた髪をガシガシと引っ掻いた。
冷たい飛沫が手に飛んできた気がして、髪を乾かさないままのロジェが風邪をひかないか心配になる。
「ロジェ、私はここで着替えさせて貰うから、貴方は髪を乾かして頂戴?」
「家族だと思っているなら、いいじゃないですか。僕がいても」
「ええ……?」
私は眉を下げてちょっと困った。

本当に子供がいたら、十九の息子の前で全裸になる母親って普通なのだろうか?いややっぱり駄目な気がする。

「ロジェ、そんな子供みたいな――」
「セヴリーヌ様、僕は貴方の子供ではなく、恋人になりたいのです」
「……え?」
唐突なロジェの告白に、私は目を丸くさせた。
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