前世の敵は今世の伴侶

イセヤ レキ

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アルテネは同性婚が認められているが、国王は無類の女好き。

嫁がされた相手が男であれば、問答無用でペットの猛獣のエサにするか、前線にいる兵士たちにあげて、心か身体が壊れるまで遊ばせると聞いていた。


「さて、私は猛獣か前線か、どちらでしょう?」

剣を奪われたとしても、カルロには気功がある。
どちらであっても、生き延びる自信はあった。


少し愉快な気分でアルテネへ入国した途端、馬車はガタンと大きな音を立てて停止する。

カルロは早速お出ましか、と思いながら馬車から颯爽と飛び降りた。


狙いが自分であるなら、逃げればいい。
御者や従者の運が良ければ、巻き込まれずにすむだろう。


そして周りを見渡したカルロは、首を傾げる。

馬車がアルテネの兵士に囲まれたのは明白だったが、全く殺気を感じないのだ。


一頭の立派な黒馬に跨った実力者がすいと近付いてくるが、いくら警戒して気を探ろうとも、やはり相手の気はひたすら穏やかで、むしろ好意的にすら感じるほどだった。


「ストラヘイムからようこそ、カルロ殿。私はノルディアス。ここから先は俺が案内しよう」

ノルディアス。
それは、一度邂逅したことのある、アルテネ王国の王弟の名前である。

しかし、その姿を前にしたカルロの口から溢れたのは、違う名前だった。

「……雷震?」
「はは! 久しぶりだな、蘭雪。以前交わした約束を果たしてもらいにきたぞ」

前世の敵であった、眉目秀麗な男がそこにいた。



***



カルロの予想に反して、アルテネの歓迎ぶりは目を見張るものがあった。
まるで本当に嫁ぎにきたのではないかと勘違いしそうなほどの、饗されぶりである。

カルロを乗せて来た馬車はストラヘイムへ戻され、国境から城までの道程はノルディアスの馬に一緒に乗って移動した。

どうやらカルロの逃亡を阻止したいらしく、確かにここまでがっちり腰に手を回されれば逃げられない、とカルロは早々にその手段を諦める。

「よく躾けられた、賢く力強い、頼りになる馬ですね」

休憩中、二人分の体重を受け止め大変だったであろうノルディアスの黒馬を撫でながら褒めちぎれば、黒馬はスリスリとカルロの頬に自分の鼻先を擦り付けた。

どうやら、気に入って貰えたらしい。

「そうだろう。しかしそうベタベタされると、妬いてしまうな」
「あなたの愛馬だということはわかっております」
「違う、そうじゃない」
「?」


アルテネの領主の屋敷や、大きな街の高級宿に泊まりながら、カルロを連れた一行は城のある首都を目指す。

道中はずっとノルディアスに監視され、それこそ用を足す時くらいしか自由な時間はなかった。
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