Mな俺は飼われたい

イセヤ レキ

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10 怠惰な日

「朝から盛りすぎだろ……!!」

俺はシーツを交換しながら照れ隠しモードで文句を口にする。
性欲が強い俺も散々楽しんでいたことは、完全に横に置いといた。

「ごめん。でも、もうこれで昨日のことは酔った勢いだとか言えないだろ?」

そう答えが返ってきて、ぐ、と言葉に詰まる。
洗濯機をセットした飾音がにやりと笑いながら、戻ってきた。

「彬良、体調はどう?」
「体調?別に普通だけど。熱も咳もない」
「……そう。まあ普通なら良かった」

布団を出さなかったことを気にしているのかなと思いながら、「いつも通り、寒くもなく快適だったよ」と気を遣って言葉を添えてみたが、飾音は微笑んだだけだった。

「ところで彬良、今日明日の予定は?」
「あー、冷蔵庫の中の消費期限チェックして、買い出しするくらい?」
「なら、明日までウチにいられるね」

言い切られて唇を尖らせた。
なんでだよ。
消費期限、今日で切れるヤツがあるかもしれないのに。

「そんな可愛くむくれられても」

飾音は俺の顎をクイと上に向けて、尖らせた唇に触れるだけのキスを落とすと、ソファの上に座る俺の横に腰を下ろした。

「お腹空いただろ、何か宅配で頼もうか」
「……あのさぁ」
「ん?」
「……飾音って、本当にS?」
「え?」

俺が疑いの眼差しで飾音を見れば、飾音はスマホ片手にキョトンとして首を傾げた。

「だ、だって、無理やり、とか、一方的に乱暴にされたり、とかないし、どっちかっていうと、甘々だなって……」
「いいの?」
「え?」
「彬良、痛いの嫌なんだろ?痛い思いをさせて逃げられたら一生後悔するから、こちらとしては少しずつセーフゾーンを探っている感じだけど。昨日からの反応を見るに、彬良は確かにМだけど、攻められるのが好きなだけかなって思って」
「う……ん?そうか?……そうかも」
「でも、無理やりも好きなんだね。もう少し攻めていいってわかって助かるよ、教えてくれてありがとう」
「う……」

思わず俯いてしまう。

しかし、無理やり飾音に犯される自分を想像すれば、下半身がズグ、と疼いた気がした。

性癖がバレて恥ずかしいけれど、思えば飾音は俺の性癖を満たすために提案してくれたのだ。
俺は攻められることでM気質が満たされ、飾音は同性とのえっちの事前学習ができる。
だったら飾音にはなんでも曝け出して相手をして貰った方が、俺にとってはいいんじゃないだろうか。

こんな機会はもうないだろう。
飾音の本命が飾音に振り向けば、当然だが俺は相手にされなくなる。
だったら、女の子相手にはお願いできないことも、飾音には言ってしまったほうがいいかもしれない。
もう、これ以上ないというほど恥ずかしいところをお互いに曝け出している仲だし。

「……誰でもっていう訳じゃないけど、無理矢理されてみたい、かも」
「うん、わかった。……え?」

正直に吐露すれば、飾音がふと何かに引っ掛かったようにこちらを見る。
今は顔が赤いだろうから、あまり見て欲しくないんだけど。

「ん?」
「誰でもっていう訳じゃないってどういう意味?例えば、知らない奴に犯されるのは駄目ってこと?」

知らない奴に犯される?

想像したら、鳥肌が立ちそうになった。
いや、女に乗っかられるのも、男に掘られるのも、どっちも好きな相手がいい。

「少なくとも、好感が持てる相手がいい」

そういえば、AVとかでも本当に女の子が辛そうな悲鳴をあげているレイプモノは苦手だった。
いや、演技の良し悪しとかはわからないけど、なんとなく直感で。

「ふーん、わかった」

飾音はスマホをいじりながら、何やらニヤニヤしているように見受けられた。

「なに笑ってんだよ」
「いや、別に。……というか、今俺、笑ってた?」
「驚くほど表情筋動いてないけど、俺にはわかるの」

昔からなぜかわかる。
高校一年で同じクラスになって、飾音が陽キャグループに絡まれていた時、俺からみれば嫌そうに見えたから助けたんだけど、元々無表情が標準装備だから誰も何も気づかなかったらしい。
そんなことが何回かあって、高一の時は他クラスにいた飾音の幼馴染だった雅人からも初対面時に「俺ですらわからない時あるのに、よくわかるな」と言われ、気づけば三人でつるむことが多くなった。

「……そうだね、彬良だもんな」
「なんだそれ」

ただ、飾音が同性愛者だということには気づけなかったけど。
不覚だ!


結局その日は飾音の家からどこに出掛けるでもなくゲームしたり映画見たりして怠惰に過ごした。
俺としては家にいても似たような過ごし方なので、すぐ外に出たがる雅人よりはずっと楽だ。
まあ、付き合いはいいほうなので、誘われれば断らないのだが。

雅人はアウトドア派で、飾音はインドア派。
俺は基本インドアだが、誘われれば断らずに参加して、どんな環境でも楽しめるたちである。

「……ところで、飾音」
「ん?」
「この手は、どうにかならんのか」
「気にしないでいいよ」
「いや無理だろ」
「気になる?」
「なるって、そりゃ」

部屋にあった雑誌を見ていた俺の後ろに回り込んだ飾音の手は、さきほどから借りているトレーナーの隙間から入り込んで、俺の真っ平な胸をさわさわと触り続けていた。
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