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寝入った万葉の、髪をそっと撫でる。
サラサラの髪が、気持ちいい。
「あのクソ女……」
入社式で初めて会った時から、万葉は俺が狙っていた。
それまで俺は女が好きだと当たり前に思っていたし、セックスする相手も女だけだった。
万葉に会って初めて、自分がバイだと知った。
初めて、自分から好きになった相手だった。
元気で明るくて、喜怒哀楽がはっきりしていて、なんにでも一生懸命な万葉。
陰口が嫌いで、俺の噂話をしようとした奴にもはっきりと「気になるなら本人に聞けよ」と言っていた。
人の悪意に鈍感で、人が好くて、騙されやすくて。
だからあんな女にもころっと引っ掛かるんだ。
男同士だし、俺が好きだというには、万葉は真っ直ぐすぎた。
まずは気持ちを隠したまま、いい同僚として、付き合うつもりだった。
万葉の一生が欲しかったから、これまでになく慎重だった。
たった半年で、こんなふうに手を出すつもりはなかった。
徐々に距離を詰めて、同僚の中でも一番仲の良いポジションまできて、これから万葉をどろどろに甘やかして頼らせて、俺に依存させるつもりだったのに。
好きだった万葉を、よりによってあんな女に寝取られた。
菓子を渡すたびに男を値踏みし、相手からの好意を測る、あざとい女。
意味深な視線を俺たちに投げかけ、この新人たちが私を巡って争えばいいのに、と妄想しているのが手に取るようにわかった。
俺は散々、あの女はやめろと万葉に言ったが、馬鹿かと思うほど純粋な万葉はまんまとあの女に引っ掛かった。
――だから、寝取り返してやった。
俺の培ってきた禄でもない交友関係のお陰で、あの女が誰とでも寝る女だって万葉にはわからせられたから良かった。
相手の男も、美人な女と寝た上に俺から数万円貰えるんだから、美味しい話だっただろう。
今でも万葉が、あのクソ女の都合の良いセフレ枠にでもされていたらと思うと、腸が煮えくり返る。
「本当に、まだ手を出す気はなかったんだけどな」
貴重な同僚。
それが、万葉の中での俺の評価。
あの女と寝た、と聞くまでは、ゆっくり進めていく予定だった。
しかし、そうのんびりと進めていられなくなった。
身体からであってもいいから、振り向かせないと。
そう思って、色々準備した。
これから恋人に昇格するまで、色々と頑張らないといけない。
身体で繋いだ縁は、切れやすいものだから。
俺がセフレを容赦なく切ったみたいに、万葉から切られる前に、退路を断って囲い込まないと。
まあ、万葉は単純で優しいから、俺が縋りついたら邪険にはできないだろう。
「情で訴えるのが一番かもな」
起きたら、好きだと伝えようか。
順番は違ったけど、本気なんだって。
お試しでいいから、俺と付き合ってくれって。
うん、それが一番いい気がする。
きっと顔を真っ赤にして、俺の告白に懸命に応えようとするんだ。
「ちょっと考えさせて」と直ぐに断れないだろう万葉の様子が目に浮かぶ。
会社で誰かと親しくしたら悲しそうな顔をして、誰かに肩を組まれたら嫌そうな顔をして、俺が好きだってことを万葉に意識させて、意識させて、意識させて。
意識していることを、好きだって勘違いして貰えばいい。
あの女のことを好きだって勘違いしたみたいに。
「俺が誰かに告白する日がくるとは思ってなかったな」
社会人になるまで、思ってなかった。
誰と付き合っても、誰とセックスしても、楽しいと思わなかった。
それはただの暇つぶしで、性欲処理だった。
ローションなんて、女に使ったこともない。
万葉との行為に準備したものだ。
クンニだって、女にしたことはない。
万葉だから、フェラするのも全く抵抗なかった。
むしろ、俺の愛撫に悶える万葉が、可愛くて。
本当に、愛しくて。
「ん……」
その時万葉が、ころり、と寝がえりをうった。
余程昨日の行為が疲れたのか、すぅすぅと可愛い寝息をたてたまま、まだ起きる様子はない。
安心しきった顔で、このまま惰眠を貪っていて欲しいのに、早く起きて、その瞳に俺を映して欲しい、とも思ってしまう。
陶磁器のように綺麗で白く、しっとりとした美しい肌。
キスマークなんてつけたことはないのに、万葉の身体には俺がつけた痕が全身に散らばっていた。
「……好きだよ、万葉」
――これは、好きだった子をNTRれたので、NTR返した、そんなお話。
サラサラの髪が、気持ちいい。
「あのクソ女……」
入社式で初めて会った時から、万葉は俺が狙っていた。
それまで俺は女が好きだと当たり前に思っていたし、セックスする相手も女だけだった。
万葉に会って初めて、自分がバイだと知った。
初めて、自分から好きになった相手だった。
元気で明るくて、喜怒哀楽がはっきりしていて、なんにでも一生懸命な万葉。
陰口が嫌いで、俺の噂話をしようとした奴にもはっきりと「気になるなら本人に聞けよ」と言っていた。
人の悪意に鈍感で、人が好くて、騙されやすくて。
だからあんな女にもころっと引っ掛かるんだ。
男同士だし、俺が好きだというには、万葉は真っ直ぐすぎた。
まずは気持ちを隠したまま、いい同僚として、付き合うつもりだった。
万葉の一生が欲しかったから、これまでになく慎重だった。
たった半年で、こんなふうに手を出すつもりはなかった。
徐々に距離を詰めて、同僚の中でも一番仲の良いポジションまできて、これから万葉をどろどろに甘やかして頼らせて、俺に依存させるつもりだったのに。
好きだった万葉を、よりによってあんな女に寝取られた。
菓子を渡すたびに男を値踏みし、相手からの好意を測る、あざとい女。
意味深な視線を俺たちに投げかけ、この新人たちが私を巡って争えばいいのに、と妄想しているのが手に取るようにわかった。
俺は散々、あの女はやめろと万葉に言ったが、馬鹿かと思うほど純粋な万葉はまんまとあの女に引っ掛かった。
――だから、寝取り返してやった。
俺の培ってきた禄でもない交友関係のお陰で、あの女が誰とでも寝る女だって万葉にはわからせられたから良かった。
相手の男も、美人な女と寝た上に俺から数万円貰えるんだから、美味しい話だっただろう。
今でも万葉が、あのクソ女の都合の良いセフレ枠にでもされていたらと思うと、腸が煮えくり返る。
「本当に、まだ手を出す気はなかったんだけどな」
貴重な同僚。
それが、万葉の中での俺の評価。
あの女と寝た、と聞くまでは、ゆっくり進めていく予定だった。
しかし、そうのんびりと進めていられなくなった。
身体からであってもいいから、振り向かせないと。
そう思って、色々準備した。
これから恋人に昇格するまで、色々と頑張らないといけない。
身体で繋いだ縁は、切れやすいものだから。
俺がセフレを容赦なく切ったみたいに、万葉から切られる前に、退路を断って囲い込まないと。
まあ、万葉は単純で優しいから、俺が縋りついたら邪険にはできないだろう。
「情で訴えるのが一番かもな」
起きたら、好きだと伝えようか。
順番は違ったけど、本気なんだって。
お試しでいいから、俺と付き合ってくれって。
うん、それが一番いい気がする。
きっと顔を真っ赤にして、俺の告白に懸命に応えようとするんだ。
「ちょっと考えさせて」と直ぐに断れないだろう万葉の様子が目に浮かぶ。
会社で誰かと親しくしたら悲しそうな顔をして、誰かに肩を組まれたら嫌そうな顔をして、俺が好きだってことを万葉に意識させて、意識させて、意識させて。
意識していることを、好きだって勘違いして貰えばいい。
あの女のことを好きだって勘違いしたみたいに。
「俺が誰かに告白する日がくるとは思ってなかったな」
社会人になるまで、思ってなかった。
誰と付き合っても、誰とセックスしても、楽しいと思わなかった。
それはただの暇つぶしで、性欲処理だった。
ローションなんて、女に使ったこともない。
万葉との行為に準備したものだ。
クンニだって、女にしたことはない。
万葉だから、フェラするのも全く抵抗なかった。
むしろ、俺の愛撫に悶える万葉が、可愛くて。
本当に、愛しくて。
「ん……」
その時万葉が、ころり、と寝がえりをうった。
余程昨日の行為が疲れたのか、すぅすぅと可愛い寝息をたてたまま、まだ起きる様子はない。
安心しきった顔で、このまま惰眠を貪っていて欲しいのに、早く起きて、その瞳に俺を映して欲しい、とも思ってしまう。
陶磁器のように綺麗で白く、しっとりとした美しい肌。
キスマークなんてつけたことはないのに、万葉の身体には俺がつけた痕が全身に散らばっていた。
「……好きだよ、万葉」
――これは、好きだった子をNTRれたので、NTR返した、そんなお話。
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最後まで読んでそっちかー!と思わずデカい声を出してしまいました😆
ラストめちゃめちゃサイコーでした😆
こんにちは😃❗️
いつもお読みいただいているとのこと、とても励みになるお言葉ありがとうございます✨️
そうなんですよ、あまりsideを書かない私ですが、これだけはsideが肝なので最後までお読みいただけて良かったです(笑)
これからも楽しんでいただけるような作品を執筆できるよう、頑張ります🎶