セフレ、のち、旦那

イセヤ レキ

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ファミレスから父親に電話をして、見合いの中止と明日士楼を連れて行って良いかをお願いすれば、電話越しに両親と妹が歓喜したのが伝わった。
スピーカーモードにしていなくてもその賑やかさが耳に入ったようで、士楼は冷めた自分のフライドポテトをつまみながら笑っている。

「じゃあ、また明日」
「うん」

現実味のない話が急に決まり、何だかふわふわした気持ちのまま金曜日の夜は士楼と別れた。
持っていく服で悩む必要がなくなったので、そのままさっさと翌日に備えて眠ろうとしたのだが、何故かその日は中々寝付けなかった。


翌日私が一泊分の手荷物を持って士楼との待ち合わせ場所に向かうと、彼は既に到着していた。
士楼と新幹線に乗り込み実家へ向かったところで、本当に単なるセフレだった筈のこの男と結婚するかもしれない、という実感がじわじわと湧いてくる。


「……士楼、実家に戻ると多分、私の妹と甥っ子がいるんだけど。シングルだから、出来たら父親に関しては聞かないで貰っていいかな」
「了解」

妹の話は、私の口から話すつもりはなかった。彼女のプライバシーに関わることだし、父親に関して言及さえしなければ、私達は遠く離れて生活しているし知らなくても何の問題もない。

「妹さんって、何歳下なんだ?」
「……同い年」
「え?双子」
「うん。二卵性だから、似てないんだけどね」
「そうなんだ。……そいや親父さんて、酒飲む人?」
「めっちゃ飲む人」
「なら良かった。煙草は?」
「吸わない」
「了解」
「因みに、母親からも全く同じこと聞かれたよ。煙草吸うことバレてるからね」
「マジか」


「うち、古い民家だからすきま風が凄いんだよ。驚かないでね」
「古き良き時代の日本家屋か。今は密閉度をあげて計画換気だから、その頃の家の良さってないよな」
「日本の気候そのものが変わってる気がするもん。昔通りの家にしたら、熱中症で皆倒れそう」
「確かに」

二人で色々話していれば、新幹線はあっという間に地元へ私達を運んでくれた。

因みに、私達は友人の紹介で三年前に出会い、私のお見合い話で自分の気持ちを自覚した士楼がつい最近結婚を前提に付き合いたいと告白し、私がOKしたということになっている。
ほぼ真実に近いから、無理して話を盛る必要はない。


電車を乗り継ぎ、バスに揺られ。
ここ四年程跨いでいなかった敷居を、久しぶりに跨いだ。
「お姉ちゃん!」
「久しぶり、よしか。りっ君も大きくなったなぁ~!ああ、先生。これから妹を、よろしくお願い致します」

家に着くと、両親より先に妹親子と、妹の旦那様になる人が広い庭でフリスビーをして遊びながら私達を出迎えてくれた。
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