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3 聞いてない
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「ちょっと父さん!! 聞いてないんだけど!?」
男子トイレの個室に入り、電話に出た父に声を荒らげて問い詰めた。
『そんな大きな声を出さなくても聞こえている』
恐らく僕からの苦情は予想通りだったのだろう。
父の声は落ち着いたものだった。
「見合い相手が男だなんて、聞いてないよ!」
『男だとは言わなかったが、女だとも言ってないぞ』
屁理屈だ!!
そう言われてみれば、確かに父は、普通「お嬢さん」とか「娘さん」と言ってもいいところを「お子さん」と言っていた気がする。
でもあの話の流れからして、僕が見合い相手の性別について確認するわけがない。
絶対に、計画的、意図的、作為的に話したとしか思えない。
「男と見合いなんて、どういうこと!?」
『どうも何も、説明した通りだ。先方がお前との見合いを望んだだけだ』
僕は頭を抱える。
日本って、同性婚は認められていたっけ!?
答えはノーだ。
何を考えているんだ、うちの親も、相手の親も、相楽さん本人も!!
『お前、まだ見合い中だろう? 失礼だから、早く席に戻りなさい。結婚はないにしても、久しぶりに会うんだから昔話に花を咲かせるくらいはいいんじゃないか?』
「え?」
それってどういうこと?
そう聞こうとした時、トイレの出入り口のドアが開閉した音がした。
「天海さん、お腹の具合はどうですか? お辛いままなら、薬を買って来ようかと思うのですが」
ちょっとお腹の調子が、と言ってレストランの個室を抜けてきたのだが、心配した相楽さんが様子を見に来てしまったようだ。
僕は慌ててその場で通話を切ると、仕方なく……本当に仕方なく、腹を括る。
僕は何も知らなかったけど、父は納得してこの場を設けたのだ。
だったら彼の相手をしなければ、本当に失礼な話になってしまう。
「す、すみません。もう大丈夫そうなので、直ぐに戻ります」
「なら良かった。ゆっくりでいいので、無理はしないでください」
「はい、ありがとうございます」
相楽さんの気配が外に出たことを確認してから、僕は一応水を流して個室から出た。
両手を洗いながら、父の言葉を反芻する。
……昔話に花を咲かせるって、どういうこと?
前に会ったことがあるってこと?
思い出そうとしても僕の記憶に彼が引っ掛かることはなく、首を捻りながら個室に戻った。
「すみません、抜けてしまって」
僕が挙動不審だったことに気づいていないはずはないのに、相楽さんはほっとしたような笑顔で迎え入れてくれた。
「お酒はやめておきましょうか。白湯を用意させましたので」
「ありがとうございます」
高級ワインをキャンセルさせたことと彼の優しさに申し訳なく思いながら、彼の向かいに着席した。
そして、ぺこりと頭を下げる。
「ええと、その……改めまして、相楽さん。僕は天海世那と申します」
「はい、存じております。全く変わらないので、直ぐにわかりました」
「その、僕をどこで知ったのでしょうか? 申し訳ないのですが、僕には相楽さんの記憶がなくて……」
肩身の狭い思いをしながら、それでも恐る恐る尋ねる。
「懐かしいですね」とか知ったかぶりをして話を合わせたほうがいいのかもしれないけど、本当に記憶に掠りもしないのだ。
だったら素直に尋ねようと、白旗を振った。
僕の覚えがありません発言に気分を害する様子もなく、相楽さんはにこやかに「天海さんとは、同級生でした」と答えてくれる。
同級生。
そこまでヒントを貰いながらも、小中高大、どの記憶を検索してもこんなイケメンは引っ掛かってこなかった。
相楽という名前の同級生ならいたけど、今目の前にいる相楽さんとは正反対の印象な人だ。
そこまで、考えて、ハタ、と気づく。
同級生だった相楽は、いわゆるヤンキーだ。
金髪でピアスを何個も開けてて、授業はさぼりまくっているのに頭だけはよくて、いつも喧嘩で出来た傷を作っていて何人もの女に囲まれていた、わかりやすく拗らせていた彼は、確かに高身長でイケメンだった。
男子トイレの個室に入り、電話に出た父に声を荒らげて問い詰めた。
『そんな大きな声を出さなくても聞こえている』
恐らく僕からの苦情は予想通りだったのだろう。
父の声は落ち着いたものだった。
「見合い相手が男だなんて、聞いてないよ!」
『男だとは言わなかったが、女だとも言ってないぞ』
屁理屈だ!!
そう言われてみれば、確かに父は、普通「お嬢さん」とか「娘さん」と言ってもいいところを「お子さん」と言っていた気がする。
でもあの話の流れからして、僕が見合い相手の性別について確認するわけがない。
絶対に、計画的、意図的、作為的に話したとしか思えない。
「男と見合いなんて、どういうこと!?」
『どうも何も、説明した通りだ。先方がお前との見合いを望んだだけだ』
僕は頭を抱える。
日本って、同性婚は認められていたっけ!?
答えはノーだ。
何を考えているんだ、うちの親も、相手の親も、相楽さん本人も!!
『お前、まだ見合い中だろう? 失礼だから、早く席に戻りなさい。結婚はないにしても、久しぶりに会うんだから昔話に花を咲かせるくらいはいいんじゃないか?』
「え?」
それってどういうこと?
そう聞こうとした時、トイレの出入り口のドアが開閉した音がした。
「天海さん、お腹の具合はどうですか? お辛いままなら、薬を買って来ようかと思うのですが」
ちょっとお腹の調子が、と言ってレストランの個室を抜けてきたのだが、心配した相楽さんが様子を見に来てしまったようだ。
僕は慌ててその場で通話を切ると、仕方なく……本当に仕方なく、腹を括る。
僕は何も知らなかったけど、父は納得してこの場を設けたのだ。
だったら彼の相手をしなければ、本当に失礼な話になってしまう。
「す、すみません。もう大丈夫そうなので、直ぐに戻ります」
「なら良かった。ゆっくりでいいので、無理はしないでください」
「はい、ありがとうございます」
相楽さんの気配が外に出たことを確認してから、僕は一応水を流して個室から出た。
両手を洗いながら、父の言葉を反芻する。
……昔話に花を咲かせるって、どういうこと?
前に会ったことがあるってこと?
思い出そうとしても僕の記憶に彼が引っ掛かることはなく、首を捻りながら個室に戻った。
「すみません、抜けてしまって」
僕が挙動不審だったことに気づいていないはずはないのに、相楽さんはほっとしたような笑顔で迎え入れてくれた。
「お酒はやめておきましょうか。白湯を用意させましたので」
「ありがとうございます」
高級ワインをキャンセルさせたことと彼の優しさに申し訳なく思いながら、彼の向かいに着席した。
そして、ぺこりと頭を下げる。
「ええと、その……改めまして、相楽さん。僕は天海世那と申します」
「はい、存じております。全く変わらないので、直ぐにわかりました」
「その、僕をどこで知ったのでしょうか? 申し訳ないのですが、僕には相楽さんの記憶がなくて……」
肩身の狭い思いをしながら、それでも恐る恐る尋ねる。
「懐かしいですね」とか知ったかぶりをして話を合わせたほうがいいのかもしれないけど、本当に記憶に掠りもしないのだ。
だったら素直に尋ねようと、白旗を振った。
僕の覚えがありません発言に気分を害する様子もなく、相楽さんはにこやかに「天海さんとは、同級生でした」と答えてくれる。
同級生。
そこまでヒントを貰いながらも、小中高大、どの記憶を検索してもこんなイケメンは引っ掛かってこなかった。
相楽という名前の同級生ならいたけど、今目の前にいる相楽さんとは正反対の印象な人だ。
そこまで、考えて、ハタ、と気づく。
同級生だった相楽は、いわゆるヤンキーだ。
金髪でピアスを何個も開けてて、授業はさぼりまくっているのに頭だけはよくて、いつも喧嘩で出来た傷を作っていて何人もの女に囲まれていた、わかりやすく拗らせていた彼は、確かに高身長でイケメンだった。
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