友人たちの距離感がバグっている

イセヤ レキ

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俺の友人の海霧かいむは、いわゆるイケメンでカッコイイ。
そんな海霧の隣にはいつも、海霧の大親友であり可愛い容姿の陽那樹ひなきがいる。

陽那樹は女だらけの実家に居場所がなくて、全寮制の男子校に進学したそうだ。
そしてそこで海霧と知り合い、お互いの部屋に入り浸って、青春時代をなんでも一緒に過ごしたらしい。

だからか、普通以上に二人は仲が良い。
仲が良いというレベルではなく、距離感がバグっている。


ある日、いつもぽわぽわしている陽那樹がいつも以上にぽわぽわしていたのに気づいたのも、当然海霧だった。

「おい陽那樹、ちょっと顔が赤くないか? 熱がありそう」
「うーん、大丈夫だと思うよ? 喉とかも痛くないし」

海霧は陽那樹の前髪をそっと持ち上げ、こつん、とおでこをくっつける。
今にも唇がくっついてしまいそうな距離に違和感を覚えることもないのか、陽那樹はそれに驚くでもなくなされるがままじっとしていた。

「……うん、やっぱり熱ありそうだな。今日は早退しよう。俺も付き合うから」
「一人で帰れるからいいよ」
「だめ。熱がある陽那樹は色っぽさが増すからな」
「なんだよ、色っぽさって」

あはは、と陽那樹は無邪気に笑うと、海霧はじと、と陽那樹を見つめる。

「じゃあ、保健センターで休ませて貰うから、講義が終わったら一緒に帰ろ?」
「ああ。陽那樹、絶対に一人で帰るなよ」
「うん、わかったって」
「待て、防犯ブザー持っていけ。保健センターで襲われそうになったら、すぐに鳴らすんだぞ」
「銀行でもないのに、襲われることなんてないよ」

その日二人は、仲良く手を繋いで帰っていった。


またある日のこと、俺とその二人を含む仲良し四人組で帰りにファストフード店に寄った時のことだ。

「陽那樹、口元にソースついてる」
「え、どこ」

自分で拭こうとして紙ナプキンを掴んだ陽那樹がそれを口元へ持っていく前に、海霧の手が伸びる。

「ここ」

海霧はぐっと親指で陽那樹の口元についたソースを拭うと、陽那樹をじっと見つめたままその指をペロリと舐めた。

「ありがと~」

よくあることなのか、陽那樹はその仕草になんの抵抗も見せずにこっと笑ってお礼を言った。


電車を使う時、海霧はいつも陽那樹を座らせて自分は隣に座るか、陽那樹の前に立つ。
二人で立つ時はいつも陽那樹を守るように海霧が壁になる。

バスケサークルで良いプレイが出来た時、俺が陽那樹の肩に手を回すと、海霧がその手をはたき落とす。


「……っていうの、やっぱりおかしくない?」
「そうかな。でも、どうしていきなりそんなことが気になったの? もしかしていく、二人のどちらかが気になってるとか?」

あらぬ疑いを掛けられそうになり、俺は慌てて首を横に振った。


「いやまさか。もしかして付き合ってたりするのかなって、単に二人の関係が気になっただけ。でも、海霧の片想い止まりな気もするし……」

十中八九、海霧は陽那樹のことを好きな気がする。
あの独占欲が単なる親友に向けられるものだとしたら、逆にある意味ヤバイ。

「へえ。でもさ、そう思っているなら陽那樹の肩に手を回すのは駄目じゃない?」
「確かに、悪かったかな。でもその場の雰囲気とか盛り上がりとか、あると思わない? ほら、ろうとは普通にするからついあいつらにもしちゃうんだよな~」

ちなみに海霧本人の肩に手を回しても、叩かれることはない。
自分がされるのは大丈夫なようだ。
ただ、狼のほうを見て嫌そうに顔を顰めるだけだ。

そいやなんで、狼のほうを見るんだ?


「いくら友達でも、僕にしてることをそのまましちゃ駄目だよ」
「まぁね。大丈夫、それくらいはわかってる。……ところでさぁ、狼。雨が凄いから、カラオケでも寄ってく?」
「いいね、そうしようか」

俺は親友の狼とカラオケで雨宿りをしようとした、のだが。

「うわ、狼! なんでそんなに濡れてるんだよ!」

傘を忘れた狼と一緒に、俺の傘で二人並んで帰っていたのだが、傘を持っていた筈の狼が身体半分以上濡れていることに気づいてビビる。

びしょ濡れのまま入れば、店に迷惑をかけるかもしれない。
そう思って、カラオケに入店しようとした狼の腕を引っ張る。

「育?」
「そのままじゃ風邪ひくだろ」

俺はスマホで空き状況を確認すると、カラオケ店の斜め向かいにあるレンタルルームに躊躇なく入った。

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