「あなたを愛することはない」と百日前に言った「私」の顛末

イセヤ レキ

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2 婚約者は親友の恋人

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そんな私は現在進行形で恋をしている。

相手は第八騎士団の副団長である、マクシムだ。
平民であるが、騎士団に入団して実力を認められ、今は副団長にまで昇りつめた実力主義者である。

日に焼けた肌と、健康的な逞しい身体、そして何より誰に対しても明るく物怖じしない、溌剌とした性格。

単細胞だと多少悪く言われることもあるけれど、私はその素直で自分に嘘をつかないお人柄が大好きだ。


9カ月ほど前の生誕祭というお祭りで困っていた私を助けてくれた人であり、私の周りにはいないタイプの彼を知って、気になって、好きになるまで、たいした時間はかからなかった。

この9カ月で頑張ってお近づきになって、つい先日、私から好きだとお伝えして、マクシムからも「じゃあ俺と付き合う?」とお返事をいただいたばかりだった。


なのに。
なのに、だ。
そんな幸せ絶頂の私を不幸のどん底に落としたのが、目の前の男、リナートだ。

ウェルズリー公爵子息であるリナートは、官僚の仕事についているらしい。
興味がないからよくは知らないが、あまり人を褒めないタイプの私の父が「これ以上はない良縁」と言っていたから、きっと仕事は出来る人なのだろう。


リナートの返事を聞く前にお店の店員がやってきて、私たちの前にレモネードを置いた。

この店は摘みたて葡萄のジュースで有名だが、私の一押しはこのレモネードだ。
この店で一度レモネードを飲んでからはほかの飲み物を注文したことがないほどに好きで、目の前に置かれたレモネードに口をつければ、爽やかな酸味と一握りの甘味が口いっぱいに広がり鼻から抜けた。


「私がオレリア嬢をお慕いしているからですよ」
レモネードのお陰で気分を良くした私に男はのうのうとそう発言し、私を呆れさせる。


この男は、バカなのだろうか?

私が、この男と私の親友であるキャロットが恋仲であることを知らないとでも思っているのだろうか?

それとも、私がキャロットと親友であることを知らないのだろうか?


男爵令嬢だったキャロットは、昔から身体が弱く、療養するしかなかった私の、数少ない友人の一人である。
私の感性とは真逆の感性を持った女性で、結婚するなら金持ちだと言い、成人すると同時に五十代の平民の金持ちのところへ後妻として嫁いでいった。

夫婦二人とも奔放な性格で、その金持ちと結婚する際には、好きな男と好きなだけ遊んでもいいが、旦那様のほうの女遊びにも口を挟まないという条件で結婚したらしいのだ。

私の理解を超えるが、そうらしいのだ。

それからキャロットは、既婚者ながらも何人かの男性と楽しく遊んで、しょっちゅう社交界で陰口という噂話をされていた。

その中で最近、ここ3カ月くらい前から噂になっていたのが、目の前の男、リナートだ。
噂話に疎い私の耳にもその話が入ってきてからすぐ、街中で二人が堂々と肩を並べてデートをしているところを私自身が三回も見ているのだから、それは真実だろう。
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