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12 親友の慰め
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「……恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
馬車の中で、私は正面に座るリナートに謝罪した。
リナートは無表情のまま、口を開く。
「恋人にあんなことを言われれば誰だって戸惑うだろうし、悲しいだろう。怒ってもいいし、泣いてもいい。しかし、誰かを好いたことを恥じる必要はない。彼はああいう奴だが、それでもオレリア嬢が好いたところが全て嘘ではなかった筈だ」
「~~っ!」
私は、馬車の中で泣きに泣いた。
「このまま帰宅しては、伯爵が心配するだろうから」
リナートの配慮で、キャロットに頼んで急遽彼女の旦那様が営む宿に泊まらせて貰えることになった。
事情を知らないキャロットはそれでも駆け付けてくれて、私は彼女の胸で一日泣いて泣いて、涙が枯れ果てるまで泣いた。
リナートは何かあれば呼んでくれと下の部屋に泊まってくれたが、翌朝吹っ切れた様子の私を見て、キャロットに後を任せると言って、先にお帰りになられた。
キャロットがいてくれて安心している筈なのに、なぜか私は残念な気持ちで胸がいっぱいになった。
「キャロット、あなたとリナート様は、恋人同士だったのではないの?」
私がパンパンに泣き腫らした目を氷水で冷やしながら尋ねると、彼女はカラカラと大笑いする。
「私とリナート卿が? あっはっは、まさか!」
「でも私、キャロットとリナート様がデートしているところを、三回も見たのよ?」
キャロットは自分の気に入らない男を連れて歩くような女性ではない。
私が尋ねると、キャロットは苦笑した。
「ああ、あれね。お金も貰って口止めされているから詳しいことは言えないけれども、あの人なりのリサーチよ」
「リサーチ?」
「ええ、情報収集。完璧主義者だから、話だけじゃなくて実物を見ないと気が済まないみたいで、それに付き合っただけよ。3回付き合っただけで、こりごりだわ。面白いことの言えない頭の固い男って私のタイプじゃないのよね。もっと会話で楽しませてくれないと」
「そうだったのね」
どうやらリナートと一緒にいても、キャロットは楽しくないらしい。
自分は毎回楽しませてもらっているなと思って、少し不思議な気がした。
そうだ、リナートとのお出掛けは、いつでも楽しかったのだ。
嫌な思いも、窮屈な思いもしなかったし、不信感も抱かなかった。
そしてどうやら、リナートとキャロットは相思相愛ではなかったらしい。
恋人がいるのに自分に求婚したと勘違いをして腹を立てたが、それが誤解だとわかって、私は青褪める。
謝罪をしなければ、と強く思った。
そして気付いた。
リナートになぜ求婚したのかと聞いたとき、彼はなんと言っていた?
「それより、私たちが恋人だと勘違いしているということは、リナート卿はオレリアにまだ何も言っていないの?」
「え?」
「だから……ああもう、流石に私の口からは言えないってば」
「えっと……」
「きちんと求婚されたんでしょ? そのとき何か言ってなかった?」
そうだ。
求婚した理由を尋ねたとき、彼は「私がオレリア嬢をお慕いしているからですよ」と、そう言っていたのだ。
彼は私に、好きだから結婚したいと申し出てくれていた。
今更ながら告白された事実を知って、ぼん、と含羞で頭が沸騰したようだった。
「まあ、リナート卿が本気だって、やっと気づいたようね」
「お願いだから、私の心を読まないで……!」
「でも、デートしたってことは、断ってはいないのでしょう?」
「それは、そうだけど……」
デートをするようになった経緯を思い出して、私は再び顔を青くした。
本気で好きだと言ってくれた人に、私はなんということを言い放ってしまったのだろうか。
私がマクシムにあんなことを言われたとして、私だったら平然と対処できただろうか。
「今日のオレリアは、赤くなったり青くなったり忙しいわね」
キャロットのからかう声が、遠くで聞こえる。
今すぐ、リナートに会って謝らなくては。
そう強く思ったが、彼とはしばらく会うことが叶わなかった。
馬車の中で、私は正面に座るリナートに謝罪した。
リナートは無表情のまま、口を開く。
「恋人にあんなことを言われれば誰だって戸惑うだろうし、悲しいだろう。怒ってもいいし、泣いてもいい。しかし、誰かを好いたことを恥じる必要はない。彼はああいう奴だが、それでもオレリア嬢が好いたところが全て嘘ではなかった筈だ」
「~~っ!」
私は、馬車の中で泣きに泣いた。
「このまま帰宅しては、伯爵が心配するだろうから」
リナートの配慮で、キャロットに頼んで急遽彼女の旦那様が営む宿に泊まらせて貰えることになった。
事情を知らないキャロットはそれでも駆け付けてくれて、私は彼女の胸で一日泣いて泣いて、涙が枯れ果てるまで泣いた。
リナートは何かあれば呼んでくれと下の部屋に泊まってくれたが、翌朝吹っ切れた様子の私を見て、キャロットに後を任せると言って、先にお帰りになられた。
キャロットがいてくれて安心している筈なのに、なぜか私は残念な気持ちで胸がいっぱいになった。
「キャロット、あなたとリナート様は、恋人同士だったのではないの?」
私がパンパンに泣き腫らした目を氷水で冷やしながら尋ねると、彼女はカラカラと大笑いする。
「私とリナート卿が? あっはっは、まさか!」
「でも私、キャロットとリナート様がデートしているところを、三回も見たのよ?」
キャロットは自分の気に入らない男を連れて歩くような女性ではない。
私が尋ねると、キャロットは苦笑した。
「ああ、あれね。お金も貰って口止めされているから詳しいことは言えないけれども、あの人なりのリサーチよ」
「リサーチ?」
「ええ、情報収集。完璧主義者だから、話だけじゃなくて実物を見ないと気が済まないみたいで、それに付き合っただけよ。3回付き合っただけで、こりごりだわ。面白いことの言えない頭の固い男って私のタイプじゃないのよね。もっと会話で楽しませてくれないと」
「そうだったのね」
どうやらリナートと一緒にいても、キャロットは楽しくないらしい。
自分は毎回楽しませてもらっているなと思って、少し不思議な気がした。
そうだ、リナートとのお出掛けは、いつでも楽しかったのだ。
嫌な思いも、窮屈な思いもしなかったし、不信感も抱かなかった。
そしてどうやら、リナートとキャロットは相思相愛ではなかったらしい。
恋人がいるのに自分に求婚したと勘違いをして腹を立てたが、それが誤解だとわかって、私は青褪める。
謝罪をしなければ、と強く思った。
そして気付いた。
リナートになぜ求婚したのかと聞いたとき、彼はなんと言っていた?
「それより、私たちが恋人だと勘違いしているということは、リナート卿はオレリアにまだ何も言っていないの?」
「え?」
「だから……ああもう、流石に私の口からは言えないってば」
「えっと……」
「きちんと求婚されたんでしょ? そのとき何か言ってなかった?」
そうだ。
求婚した理由を尋ねたとき、彼は「私がオレリア嬢をお慕いしているからですよ」と、そう言っていたのだ。
彼は私に、好きだから結婚したいと申し出てくれていた。
今更ながら告白された事実を知って、ぼん、と含羞で頭が沸騰したようだった。
「まあ、リナート卿が本気だって、やっと気づいたようね」
「お願いだから、私の心を読まないで……!」
「でも、デートしたってことは、断ってはいないのでしょう?」
「それは、そうだけど……」
デートをするようになった経緯を思い出して、私は再び顔を青くした。
本気で好きだと言ってくれた人に、私はなんということを言い放ってしまったのだろうか。
私がマクシムにあんなことを言われたとして、私だったら平然と対処できただろうか。
「今日のオレリアは、赤くなったり青くなったり忙しいわね」
キャロットのからかう声が、遠くで聞こえる。
今すぐ、リナートに会って謝らなくては。
そう強く思ったが、彼とはしばらく会うことが叶わなかった。
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