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第二章 カップル(ABC)編
4
お腹が少し満たされ、食べたことと外にいたことで私の身体に熱が戻り、私は名残惜しかったけれども借りていた山田さんのジャケットを肩から外す。
「大分身体が温かくなったよ、ジャケットありがとう」
「そっか、良かった。そうだ、何か羽織る物買おうか」
山田さんはそのまま、高級ブティックの立ち並ぶ方を指さす。……いや、そっちには私が買えるような値段のものはないです。まぁ、知らない場所で山田さんの方向感覚が狂ったのだろうけど。有難い提案だけど、今は余計な買い物は控えたい。羽織る物にお金を使うより、山田さんとのデートに使いたいから。
「ううん、買わないで大丈夫」
「そう?なら……水族館に再入場はやめておく?」
「うーん……入りたい、けど……」
私は悩んだ。再入場はしたい。折角山田さんがチケット購入してくれたんだし、人がいたから飛ばしていたり、じっくり見られなかったエリアをもっと堪能したい。でも、あの寒さが私を躊躇させる。初デートに風邪ひきました、だけは避けたい。
「じゃあ、戸枝さんさえ良ければこのジャケットまた貸そうか?」
山田さんは、自分のジャケットを再び私に差し出した。
「……いいの?」
物凄く、嬉しいけど。私は期待に満ちた目で山田さんを見たのだろう。山田さんは優しく微笑み、「勿論」と頷いてくれた。
私達は結局、その後また直ぐに水族館へ再入場し、お茶の時間に水族館を後にした。プラネタリウムも同じフロアにあって、また今度こっちも遊びに来ようね、なんて約束したりして。
「お昼ご飯どうする?」
「もうお昼って時間じゃないよね」
しっかりとした昼食を逃した私達は、二人で笑いながらそのまま大きなパフェを販売しているカフェに入った。一度は入ってみたいと思いながらも、千円以上するパフェの値段に躊躇して入れなかったお店だ。
店内は女性の方が圧倒的に多かったので、山田さんの居心地が悪いのではないかと心配したけれども、彼は気にならないようだった。
私はウキウキとしながらメニューに目を通す。星座の数だけパフェのバリエーションを提供しているようで、値段が高いだけあってどれも凄いボリューム感だ。
「自分の星座のパフェにしようかなぁ……でもなぁ……」
自分の星座はメロンがメインだったけど、イチゴ味が食べたい気分だった。
「戸枝さんは何座?」
「えとね、私は双子座。山田さんは?」
「俺は射手座」
射手座を見ると、チョコレートがメインのパフェだった。
「どれも美味しそうだね~」
「うん、悩むね。でも、戸枝さんはイチゴ味が食べたいんじゃない?」
山田さんにそう言われ、私は驚いた。
「……あれ?私、そんなにイチゴパフェばっかり見てた?」
「うん。穴が開くんじゃないかって思う程見てた……って訳じゃなくて、戸枝さんイチゴ味好きじゃない」
うわー!
山田さんに言い切られて私は照れて俯く。
なんだろう、好みを把握して貰えているのって、凄く付き合っているっぽい。いや、付き合ってるんだけど!
とにかく、嬉しくて、こそばゆい。
そして気付いた。……自分は山田さんの好みを全然知らないということに。
「……ごめん、引いた?」
「え?」
私がその事実にショックを受けていると、山田さんが苦笑して言った。
「いや、俺が余計なこと言って……気持ち悪がらせたかなって」
私は首を傾げる。ん?なんで??
「ううん、むしろよく見てくれているんだなって嬉しかったけど……でも確かに、そう感じるのは山田さんだからかも。他の男性にそう言われて嬉しく感じるかどうかは、微妙だね」
「そう?なら良いんだけど……少し表情が曇ったから」
あの一瞬の変化に気付くなんて、山田さんは相手の感情の機微に敏感な人なのかもしれない。
「ああ……それは、山田さんは私の好みを知ってくれているのに、私は全然知らないんだなーって思って……それで……」
なんだか申し訳なく感じて、語尾が小さくなっていく。
「そっか。でも、気にしないでいいよ。俺は戸枝さんのことずっと見ていたから知ってるだけで、戸枝さんにはこれから知って貰えれば嬉しいな」
「……うん」
ずっと見ていた、なんて言われてキュンとして。私もこれから、山田さんのことを沢山知っていきたい、と改めて思った。
「大分身体が温かくなったよ、ジャケットありがとう」
「そっか、良かった。そうだ、何か羽織る物買おうか」
山田さんはそのまま、高級ブティックの立ち並ぶ方を指さす。……いや、そっちには私が買えるような値段のものはないです。まぁ、知らない場所で山田さんの方向感覚が狂ったのだろうけど。有難い提案だけど、今は余計な買い物は控えたい。羽織る物にお金を使うより、山田さんとのデートに使いたいから。
「ううん、買わないで大丈夫」
「そう?なら……水族館に再入場はやめておく?」
「うーん……入りたい、けど……」
私は悩んだ。再入場はしたい。折角山田さんがチケット購入してくれたんだし、人がいたから飛ばしていたり、じっくり見られなかったエリアをもっと堪能したい。でも、あの寒さが私を躊躇させる。初デートに風邪ひきました、だけは避けたい。
「じゃあ、戸枝さんさえ良ければこのジャケットまた貸そうか?」
山田さんは、自分のジャケットを再び私に差し出した。
「……いいの?」
物凄く、嬉しいけど。私は期待に満ちた目で山田さんを見たのだろう。山田さんは優しく微笑み、「勿論」と頷いてくれた。
私達は結局、その後また直ぐに水族館へ再入場し、お茶の時間に水族館を後にした。プラネタリウムも同じフロアにあって、また今度こっちも遊びに来ようね、なんて約束したりして。
「お昼ご飯どうする?」
「もうお昼って時間じゃないよね」
しっかりとした昼食を逃した私達は、二人で笑いながらそのまま大きなパフェを販売しているカフェに入った。一度は入ってみたいと思いながらも、千円以上するパフェの値段に躊躇して入れなかったお店だ。
店内は女性の方が圧倒的に多かったので、山田さんの居心地が悪いのではないかと心配したけれども、彼は気にならないようだった。
私はウキウキとしながらメニューに目を通す。星座の数だけパフェのバリエーションを提供しているようで、値段が高いだけあってどれも凄いボリューム感だ。
「自分の星座のパフェにしようかなぁ……でもなぁ……」
自分の星座はメロンがメインだったけど、イチゴ味が食べたい気分だった。
「戸枝さんは何座?」
「えとね、私は双子座。山田さんは?」
「俺は射手座」
射手座を見ると、チョコレートがメインのパフェだった。
「どれも美味しそうだね~」
「うん、悩むね。でも、戸枝さんはイチゴ味が食べたいんじゃない?」
山田さんにそう言われ、私は驚いた。
「……あれ?私、そんなにイチゴパフェばっかり見てた?」
「うん。穴が開くんじゃないかって思う程見てた……って訳じゃなくて、戸枝さんイチゴ味好きじゃない」
うわー!
山田さんに言い切られて私は照れて俯く。
なんだろう、好みを把握して貰えているのって、凄く付き合っているっぽい。いや、付き合ってるんだけど!
とにかく、嬉しくて、こそばゆい。
そして気付いた。……自分は山田さんの好みを全然知らないということに。
「……ごめん、引いた?」
「え?」
私がその事実にショックを受けていると、山田さんが苦笑して言った。
「いや、俺が余計なこと言って……気持ち悪がらせたかなって」
私は首を傾げる。ん?なんで??
「ううん、むしろよく見てくれているんだなって嬉しかったけど……でも確かに、そう感じるのは山田さんだからかも。他の男性にそう言われて嬉しく感じるかどうかは、微妙だね」
「そう?なら良いんだけど……少し表情が曇ったから」
あの一瞬の変化に気付くなんて、山田さんは相手の感情の機微に敏感な人なのかもしれない。
「ああ……それは、山田さんは私の好みを知ってくれているのに、私は全然知らないんだなーって思って……それで……」
なんだか申し訳なく感じて、語尾が小さくなっていく。
「そっか。でも、気にしないでいいよ。俺は戸枝さんのことずっと見ていたから知ってるだけで、戸枝さんにはこれから知って貰えれば嬉しいな」
「……うん」
ずっと見ていた、なんて言われてキュンとして。私もこれから、山田さんのことを沢山知っていきたい、と改めて思った。
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