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第三章 新婚(調教)編
8
「私もさ、結婚したい人がいるんだけど」
「うん」
「彼のお仕事上、女性のファンとかがいて、なかなかそういった話に進展しなくて……」
「うん」
私の脳裏に、バンドマンや舞台俳優といった人達が思い浮かぶ。うーん、普通の生活を送るのはちょっと大変そう。そんな人と結婚したいなんて、余程好きなのかもしれない。
「それで、私もこれ以上待てなくて、いつになったら結婚出来るの?って聞いたんだ。そうしたら彼が、自分よりも先に、人気のある先輩が結婚すれば少しは矛先が分散されるかもしれない、だけど先輩には結婚したい程のイイ人がいないって言われて」
「……うん」
うーん、意味がわからない。アイドルグループとかの結婚報告について言っているのだろうか?でも、結婚なんてファンにいちいち報告するものなのかな?する人もいるだろうけど、秘密裏に結婚している人なんて沢山いそうだけど。
「それでね、ごめん。戸枝さんがまさかもう山田君と結婚してるなんて思わなくて……その先輩に、紹介したいなって思っちゃったんだ」
「ええ!?」
いきなり話が明後日の方向に流れて、私は驚いた。でも、良ちゃんがいるから私には協力できない話だ。茂木さんには悪いけれども、相談にはこれ以上乗れそうにない。誰か、私の友達で今フリーのお友達いたかなぁ……?
「その子?紹介したいって言ってた子」
私が自分の友達の恋人事情について考えてると、少し……いやかなり軽い感じの声が私達の座るボックス席の横から降って来た。
「リョーヘイ!来てくれたんだ」
茂木さんのテンションが物凄くあがり、声のトーンも一オクターブ上がる。恐らく茂木さんの彼氏だろう。私が横を見れば、ちょっと……いやかなり派手目のスーツを着た人が二人並んでいた。話の成り行きからすると茂木さんが既に呼んでいたのだろう。一体いつそんな時間が、と思って、店に入る前に自分が良ちゃんに連絡していた時、彼女も同じくこの人達に連絡していたのかもしれないと思い至る。ああ、だから茂木さんは四人席に座っていたのか。でも、茂木さんなら私の結婚指輪にいち早く気付いていてもおかしくなさそうだけど……。
「うっわ!すげー美人じゃん!!」
「マジか……レベル高過ぎ、想像以上だわ」
二人は挨拶もせずにそう言うので、私はなんとなく不快になりながらも頭を下げた。どう考えても、私が苦手な人達だ。確かに茂木さんが言う通りカッコいいかもしれないけれども、個人的には出来たらお近づきになりたくないタイプ。
「私……」
帰るね、と続ける前に、茂木さんがパン!と両手を合わせた。
「リョーヘイ、ごめん!戸枝さん、結婚してるんだって!」
私は、きちんと私が人妻だという説明を茂木さんがしてくれたことに、安堵する。結婚して良かったことの一つが、好意を持たれた時に結婚してる話をすれば、直ぐに諦めてくれるということだ。
「なんだ、そーなんだ」
「残念だなぁ、でも一杯飲むくらい、いいっしょ」
二人は全く意に介することなく、一人は茂木さんの横に、もう一人は私の横に座った。帰りたくても、それを防ぐように外側に座られてしまい、少し途方に暮れる。けれども、直ぐにこんな時に使える技を良ちゃんから伝授されていたことを思い出した。あの時は心配性だなぁ、そんなことないから、なんて良ちゃんに笑って言っていたけれどもまさか本当にこんなことが起きるとは。「すみません、ちょっと私お手洗いに行きたいです」と言って荷物を持ったまま席を立ち、トイレから良ちゃんにメッセージアプリで状況と直ぐに帰宅すると伝える。お会計もあるし、流石に挨拶もしないのは失礼だと一度席に戻った。
「うえーい、待ってましたキララちゃん!」
変なノリで出迎えられた私は、「すみません、私もう帰ります」と言ったのだけど、茂木さんが「えー、折角戸枝さんに会えたのに!」と残念そうに言われて少し申し訳なく感じてしまう。
だから、「じゃああと十分!こいつの特技だけ見てやってよ!」と男性の一人に言われて頷いた。後十分だけと時間が決まっていれば、帰りやすい。目の前に置かれたお酒には一切手を付けず、自分で頼んだ飲みかけの麦茶を空にし目の前で始まった手品を見て……。
今私が寝ているのは新居のベッドだけれども、私の昨日の記憶はそこで途切れている。どうやって私はこの家に帰って来たのだろう?そうだ、彼女はどうしたのだろう?
「あの、茂木さんは……」
「……きちんと自分の家に帰ったと思うよ」
そっか、なら良かった。私は安堵する。
「人の心配より、自分の心配して欲しいな」
良ちゃんに言われて、私はハッと気付いた。
「もしかして、私が寝ちゃったから良ちゃんが迎えに来てくれたの?」
「……」
私がそう聞けば、良ちゃんは溜息をついた。
ん?茂木さんが良ちゃんに連絡してくれたんじゃないのかな?
「あ、じゃあ茂木さんが私をこの家まで……」
と言い掛けて、さっき良ちゃんに言われた言葉を思い出す。さっき良ちゃん、簡単にお持ち帰りされちゃうとか何とか私に言ってなかった?
「……」
まさか、と思って私は良ちゃんを見る。
「うん」
「彼のお仕事上、女性のファンとかがいて、なかなかそういった話に進展しなくて……」
「うん」
私の脳裏に、バンドマンや舞台俳優といった人達が思い浮かぶ。うーん、普通の生活を送るのはちょっと大変そう。そんな人と結婚したいなんて、余程好きなのかもしれない。
「それで、私もこれ以上待てなくて、いつになったら結婚出来るの?って聞いたんだ。そうしたら彼が、自分よりも先に、人気のある先輩が結婚すれば少しは矛先が分散されるかもしれない、だけど先輩には結婚したい程のイイ人がいないって言われて」
「……うん」
うーん、意味がわからない。アイドルグループとかの結婚報告について言っているのだろうか?でも、結婚なんてファンにいちいち報告するものなのかな?する人もいるだろうけど、秘密裏に結婚している人なんて沢山いそうだけど。
「それでね、ごめん。戸枝さんがまさかもう山田君と結婚してるなんて思わなくて……その先輩に、紹介したいなって思っちゃったんだ」
「ええ!?」
いきなり話が明後日の方向に流れて、私は驚いた。でも、良ちゃんがいるから私には協力できない話だ。茂木さんには悪いけれども、相談にはこれ以上乗れそうにない。誰か、私の友達で今フリーのお友達いたかなぁ……?
「その子?紹介したいって言ってた子」
私が自分の友達の恋人事情について考えてると、少し……いやかなり軽い感じの声が私達の座るボックス席の横から降って来た。
「リョーヘイ!来てくれたんだ」
茂木さんのテンションが物凄くあがり、声のトーンも一オクターブ上がる。恐らく茂木さんの彼氏だろう。私が横を見れば、ちょっと……いやかなり派手目のスーツを着た人が二人並んでいた。話の成り行きからすると茂木さんが既に呼んでいたのだろう。一体いつそんな時間が、と思って、店に入る前に自分が良ちゃんに連絡していた時、彼女も同じくこの人達に連絡していたのかもしれないと思い至る。ああ、だから茂木さんは四人席に座っていたのか。でも、茂木さんなら私の結婚指輪にいち早く気付いていてもおかしくなさそうだけど……。
「うっわ!すげー美人じゃん!!」
「マジか……レベル高過ぎ、想像以上だわ」
二人は挨拶もせずにそう言うので、私はなんとなく不快になりながらも頭を下げた。どう考えても、私が苦手な人達だ。確かに茂木さんが言う通りカッコいいかもしれないけれども、個人的には出来たらお近づきになりたくないタイプ。
「私……」
帰るね、と続ける前に、茂木さんがパン!と両手を合わせた。
「リョーヘイ、ごめん!戸枝さん、結婚してるんだって!」
私は、きちんと私が人妻だという説明を茂木さんがしてくれたことに、安堵する。結婚して良かったことの一つが、好意を持たれた時に結婚してる話をすれば、直ぐに諦めてくれるということだ。
「なんだ、そーなんだ」
「残念だなぁ、でも一杯飲むくらい、いいっしょ」
二人は全く意に介することなく、一人は茂木さんの横に、もう一人は私の横に座った。帰りたくても、それを防ぐように外側に座られてしまい、少し途方に暮れる。けれども、直ぐにこんな時に使える技を良ちゃんから伝授されていたことを思い出した。あの時は心配性だなぁ、そんなことないから、なんて良ちゃんに笑って言っていたけれどもまさか本当にこんなことが起きるとは。「すみません、ちょっと私お手洗いに行きたいです」と言って荷物を持ったまま席を立ち、トイレから良ちゃんにメッセージアプリで状況と直ぐに帰宅すると伝える。お会計もあるし、流石に挨拶もしないのは失礼だと一度席に戻った。
「うえーい、待ってましたキララちゃん!」
変なノリで出迎えられた私は、「すみません、私もう帰ります」と言ったのだけど、茂木さんが「えー、折角戸枝さんに会えたのに!」と残念そうに言われて少し申し訳なく感じてしまう。
だから、「じゃああと十分!こいつの特技だけ見てやってよ!」と男性の一人に言われて頷いた。後十分だけと時間が決まっていれば、帰りやすい。目の前に置かれたお酒には一切手を付けず、自分で頼んだ飲みかけの麦茶を空にし目の前で始まった手品を見て……。
今私が寝ているのは新居のベッドだけれども、私の昨日の記憶はそこで途切れている。どうやって私はこの家に帰って来たのだろう?そうだ、彼女はどうしたのだろう?
「あの、茂木さんは……」
「……きちんと自分の家に帰ったと思うよ」
そっか、なら良かった。私は安堵する。
「人の心配より、自分の心配して欲しいな」
良ちゃんに言われて、私はハッと気付いた。
「もしかして、私が寝ちゃったから良ちゃんが迎えに来てくれたの?」
「……」
私がそう聞けば、良ちゃんは溜息をついた。
ん?茂木さんが良ちゃんに連絡してくれたんじゃないのかな?
「あ、じゃあ茂木さんが私をこの家まで……」
と言い掛けて、さっき良ちゃんに言われた言葉を思い出す。さっき良ちゃん、簡単にお持ち帰りされちゃうとか何とか私に言ってなかった?
「……」
まさか、と思って私は良ちゃんを見る。
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