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6.妹の外泊
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その日から、僕は瑠偉くんとお試しでお付き合いをすることになった。
とは言っても、今までと大して変わらない。
二人でのお出掛けをデートと呼んで、瑠偉くんから頻繁に触れられるくらいだ。
瑠偉くんは僕が久瑠実の送迎を優先しても怒らないし、久瑠実へのプレゼントを買っても「成人した妹にプレゼントなんて買ってるの?」なんて言わない。
むしろ一緒にプレゼントを選んでくれたし、送迎にも付き合ってくれた。
そして、僕が認めたくない現実を突きつけてくれる。
「瑠偉くん。久瑠実が帰って来ないらしいんだけど……!」
僕は瑠偉くんを呼びつけ、久瑠実からの「今日は友達の家に泊ってくるね」と一行だけスマホに寄越された言葉を見せた。
「ああ、彼氏の家にお泊りじゃないかな」
いや、そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないって、本当にお友達の家かもって、思いたかったのに!
「学生なのに、お泊りって……!」
僕は頭を抱えて床に座り込む。
いつかはこんな日が来るとは思っていた。
思っていたけど、想像以上に辛い。
僕の可愛い妹が、僕以外の誰か他の男と一緒にいることを選ぶなんて。
「今時、学生の外泊なんて当たり前だって」
「僕はしたことないよ」
「うん、久遠さんはね」
どんな誘いも断って、久瑠実がいるこの家に帰って来た。
お兄ちゃんなんだから、妹をひとりにさせて、寂しがらせたり悲しませたりしてはいけないし。
今の会社に就職を決めたのだって、ホワイト企業で定時に仕事を切り上げられるからだ。
「どうしよう。今日は寝れないよ」
「じゃあ、今日は俺が久瑠実の代わりに一晩中一緒にいてあげるよ。そうすれば少しは気が紛れるんじゃない?」
「……いいの?」
それだと今度は瑠偉くんを「外泊する学生」にしてしまうのだけど、と思いながらも瑠偉くんを見上げる。
「ウチも久遠さんの家と同じで、帰っても誰もいないし。久遠さんの家なら俺の両親も心配しないから、むしろ嬉しいんだけど」
「そっか。うん、それじゃあ、そうして貰ってもいいかな?」
「喜んで」
「ありがとう」
親御さんにはきちんと連絡することをお願いして、僕は六歳年下の恋人?に甘えることにした。
「久遠さん、眠れないなら、とことん起きてようよ。何して遊ぶ?」
「うーん、瑠偉くんとなら、久しぶりにチェスをやりたいな」
「いいね」
僕たちは部屋を明るくして、二人でチェスをして過ごした。
何回かゲームをして時計を見ると、もう夜中の一時。
夜更かしをしたのなんて、小学生だった久瑠実が熱を出して一日中看病をした日以来だ。
普段は規則正しい生活をしているせいか、目がシパシパしてきて、思考は雲がかかったように全く回転しなくなった。
たまに頭をフラフラと揺らし、ハッと現実に戻る僕を見て、瑠偉くんはくすくすと笑う。
瑠偉くんは一晩の徹夜なんてなんともないみたいで、元気そうだ。
若いって凄い。
「久遠さん、もう限界でしょ? ほら、ベッドに行こう。寝るまで傍にいるから」
「うん……」
瑠偉くんに連れられ、僕はもそもそと自分の冷たいベッドに潜り込む。
「瑠偉くんは一緒に寝ないの?」
「うーん、久遠さんを眠れなくしちゃいそうだから、やめとくよ」
優しい瑠偉くんがそんな意地悪をするとは思えないけど、僕はそっかと言って瞳を閉じた。
眠気はピークで、これ以上は限界だ。
「瑠偉くん……久瑠実から何か連絡……」
「まだ来てないよ。連絡来たら起こすから、ゆっくり寝てて」
「……うん……」
瑠偉くんが僕の手を握ってくれて、その温かさに安堵する。
久瑠実がいない時は、どこかで怪我をしていないかとか、倒れていないかとか、ひとりで泣いていないかとか、とにかく不安に襲われることが多かった。
それは大きくなった今でも、変わらない。
人間、大人になっても傷つくものだから。
だから、瑠偉くんがいなければ、きっとこんな安心した気持ちで寝入ることなんて出来なかっただろう。
昔は逆だったのに。
そんなことを考えているうち、気づけば僕は、意識を手放していた。
とは言っても、今までと大して変わらない。
二人でのお出掛けをデートと呼んで、瑠偉くんから頻繁に触れられるくらいだ。
瑠偉くんは僕が久瑠実の送迎を優先しても怒らないし、久瑠実へのプレゼントを買っても「成人した妹にプレゼントなんて買ってるの?」なんて言わない。
むしろ一緒にプレゼントを選んでくれたし、送迎にも付き合ってくれた。
そして、僕が認めたくない現実を突きつけてくれる。
「瑠偉くん。久瑠実が帰って来ないらしいんだけど……!」
僕は瑠偉くんを呼びつけ、久瑠実からの「今日は友達の家に泊ってくるね」と一行だけスマホに寄越された言葉を見せた。
「ああ、彼氏の家にお泊りじゃないかな」
いや、そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないって、本当にお友達の家かもって、思いたかったのに!
「学生なのに、お泊りって……!」
僕は頭を抱えて床に座り込む。
いつかはこんな日が来るとは思っていた。
思っていたけど、想像以上に辛い。
僕の可愛い妹が、僕以外の誰か他の男と一緒にいることを選ぶなんて。
「今時、学生の外泊なんて当たり前だって」
「僕はしたことないよ」
「うん、久遠さんはね」
どんな誘いも断って、久瑠実がいるこの家に帰って来た。
お兄ちゃんなんだから、妹をひとりにさせて、寂しがらせたり悲しませたりしてはいけないし。
今の会社に就職を決めたのだって、ホワイト企業で定時に仕事を切り上げられるからだ。
「どうしよう。今日は寝れないよ」
「じゃあ、今日は俺が久瑠実の代わりに一晩中一緒にいてあげるよ。そうすれば少しは気が紛れるんじゃない?」
「……いいの?」
それだと今度は瑠偉くんを「外泊する学生」にしてしまうのだけど、と思いながらも瑠偉くんを見上げる。
「ウチも久遠さんの家と同じで、帰っても誰もいないし。久遠さんの家なら俺の両親も心配しないから、むしろ嬉しいんだけど」
「そっか。うん、それじゃあ、そうして貰ってもいいかな?」
「喜んで」
「ありがとう」
親御さんにはきちんと連絡することをお願いして、僕は六歳年下の恋人?に甘えることにした。
「久遠さん、眠れないなら、とことん起きてようよ。何して遊ぶ?」
「うーん、瑠偉くんとなら、久しぶりにチェスをやりたいな」
「いいね」
僕たちは部屋を明るくして、二人でチェスをして過ごした。
何回かゲームをして時計を見ると、もう夜中の一時。
夜更かしをしたのなんて、小学生だった久瑠実が熱を出して一日中看病をした日以来だ。
普段は規則正しい生活をしているせいか、目がシパシパしてきて、思考は雲がかかったように全く回転しなくなった。
たまに頭をフラフラと揺らし、ハッと現実に戻る僕を見て、瑠偉くんはくすくすと笑う。
瑠偉くんは一晩の徹夜なんてなんともないみたいで、元気そうだ。
若いって凄い。
「久遠さん、もう限界でしょ? ほら、ベッドに行こう。寝るまで傍にいるから」
「うん……」
瑠偉くんに連れられ、僕はもそもそと自分の冷たいベッドに潜り込む。
「瑠偉くんは一緒に寝ないの?」
「うーん、久遠さんを眠れなくしちゃいそうだから、やめとくよ」
優しい瑠偉くんがそんな意地悪をするとは思えないけど、僕はそっかと言って瞳を閉じた。
眠気はピークで、これ以上は限界だ。
「瑠偉くん……久瑠実から何か連絡……」
「まだ来てないよ。連絡来たら起こすから、ゆっくり寝てて」
「……うん……」
瑠偉くんが僕の手を握ってくれて、その温かさに安堵する。
久瑠実がいない時は、どこかで怪我をしていないかとか、倒れていないかとか、ひとりで泣いていないかとか、とにかく不安に襲われることが多かった。
それは大きくなった今でも、変わらない。
人間、大人になっても傷つくものだから。
だから、瑠偉くんがいなければ、きっとこんな安心した気持ちで寝入ることなんて出来なかっただろう。
昔は逆だったのに。
そんなことを考えているうち、気づけば僕は、意識を手放していた。
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