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15.シスコン男の攻略法
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久瑠実の話を要約すると、こうだった。
瑠偉くんが僕を想っていた期間は、小学生から。
シスコンな僕を手に入れるため、瑠偉くんはまず、久瑠実の信用を得るところからスタートした。
「正直に言えば、昔は私も勘違いしていたのよ」
小中学生時代の久瑠実やクラスメイトは、常に久瑠実の味方をして久瑠実に良くする瑠偉くんを、久瑠実が好きなのだと思い込んでいた。
「確かにあいつはずっとおにぃが好きだと言っていたし、おにぃによく思われたいから私に良くするって言ってたの。でもまさか、恋愛の意味で好きだなんて、同性だし思わないじゃない?」
久瑠実の言葉に僕は頷く。
それでも、小中学生の時は瑠偉くんとよく話したらしい。
「私の好きな人の情報を聞く代わりに、私も色んな話をしたの。でも、高校に行く頃、その情報がおにぃに流れているってことに気づいて。私、ショックだった」
勝手に久瑠実の心配をして、プライバシーに関わる情報を手に入れていたことが悪いことだったのだと改めて気づかされて、胸が痛む。
「ごめ……」
「あいつが、本当におにぃに恋してるって、その時やっと気づいて」
ショックの原因、そっちだった。
「それで、軽い失恋して。今まで私を利用しておにぃの信頼を獲得した分、私もあいつを利用してやろうと思って。それ以来、気になる人との間を取り持ってもらったりしたんだ」
「そうだったんだ」
ということは、久瑠実の初彼はもしかして瑠偉くんのお友達だったりしたんだろうか。
「そしたら今度はあいつ、おにぃの彼女が本当におにぃにとって相応しいかどうか、試せって言ってきて。私もおにぃの彼女に文句を言われたことあってムカついたことあったし、軽い気持ちで彼女と会ってる時に呼び出したりしちゃったんだよね」
「……え?」
「それ、実はずっと謝りたかったんだ、ごめん。簡単にあいつの口車にのせられて、おにぃの邪魔しちゃったから」
「そ、そうだったんだ……でも、多分久瑠実がそういうことしなくても、別れていたと思うから気にしないでいいよ」
「うん……ありがとう」
僕があの頃、彼女より久瑠実を優先していた事実はなくならない。
そうでなければ、彼女たちもきっと、離れていかなかった。
「それでね、大学に入ってからは、今度はおにぃがこのままだと、お泊りなんて許して貰えないぞって言われて。やっと今の彼氏と出会えて、舞い上がってた時だったからさ。おにぃの依存先、じゃない拠り所をあいつにするのに、協力したの」
ものの見事に、僕は二人の思い描いた通りに落ち着いたということだろうか。
「まあとにかく、あいつがおにぃを想っていた期間は、おっそろしく長いの。」
「そうみたいだね」
「妹の私が言うのもなんだけど、おにぃがシスコンだってことをとことん利用して、私とおにぃの信頼勝ち取って、それを利用して、最終的にはおにぃを攻略しちゃったわけよ」
「凄い執着だね」
「でしょ」
僕が長く、久瑠実を想っていたみたいに。
僕も瑠偉くんからずっと、長く想われていたんだ。
そんな想われ方を嬉しいと思うばかりの僕と、久瑠実は兄妹だ。
どうやら久瑠実も、そんな執着をされたいと羨ましく思うのだろう。
だから、三年の交際期間が「短い」のだ。
「でも、それとこれは話が別だよ」
「えええ!なんで!?」
「久瑠実がいつかは結婚したい相手なら、同棲はやめたほうがいいよ。ずっと一緒に住むだけで、結婚しなくても満足する相手だったら、反対しないけど。結婚はタイミングだから、そのタイミングを外す覚悟で、つまり今の彼氏と結婚できなくてもいいなら、同棲してもいい」
「……うん、わかった。もう少し、考える」
完全には納得しなかったようだけど、久瑠実はこくりと頷いた。
「ところで、久瑠実の彼氏と瑠偉くんって、知り合いなの?」
「元々は知り合いじゃないけど、この前おにぃの彼氏って紹介したから、連絡先は知ってる程度かな」
「そうなんだ」
その後、リビングで寝てしまいそうな久瑠実を起こして部屋まで連れて行った。
直ぐに寝入った可愛い寝顔に「おやすみ」と小さく声を掛けて、部屋を出る。
うーん、僕もそろそろ覚悟を決めなきゃな。
シスコン男の攻略をじっくりと練った瑠偉くんは、最後の仕上げ段階に入ったのだろう。
同棲に頷かない僕を、うんと言わせる方法。
久瑠実がこの家からいなくなれば、僕がなんの未練もなくなることを、瑠偉くんは知っているのだ。
「さすが瑠偉くんだなぁ」
僕が知らないうちに、愛しい人を焦らせてしまったのかもしれない。
「今回ばかりは、久瑠実とは関係なく、瑠偉くんと一緒にいたいって言わなきゃ」
喜んでくれれば、いいけれど。
瑠偉くんの笑顔を思い浮かべながら、僕はスマホを手にしたのだった。
~完~
瑠偉くんが僕を想っていた期間は、小学生から。
シスコンな僕を手に入れるため、瑠偉くんはまず、久瑠実の信用を得るところからスタートした。
「正直に言えば、昔は私も勘違いしていたのよ」
小中学生時代の久瑠実やクラスメイトは、常に久瑠実の味方をして久瑠実に良くする瑠偉くんを、久瑠実が好きなのだと思い込んでいた。
「確かにあいつはずっとおにぃが好きだと言っていたし、おにぃによく思われたいから私に良くするって言ってたの。でもまさか、恋愛の意味で好きだなんて、同性だし思わないじゃない?」
久瑠実の言葉に僕は頷く。
それでも、小中学生の時は瑠偉くんとよく話したらしい。
「私の好きな人の情報を聞く代わりに、私も色んな話をしたの。でも、高校に行く頃、その情報がおにぃに流れているってことに気づいて。私、ショックだった」
勝手に久瑠実の心配をして、プライバシーに関わる情報を手に入れていたことが悪いことだったのだと改めて気づかされて、胸が痛む。
「ごめ……」
「あいつが、本当におにぃに恋してるって、その時やっと気づいて」
ショックの原因、そっちだった。
「それで、軽い失恋して。今まで私を利用しておにぃの信頼を獲得した分、私もあいつを利用してやろうと思って。それ以来、気になる人との間を取り持ってもらったりしたんだ」
「そうだったんだ」
ということは、久瑠実の初彼はもしかして瑠偉くんのお友達だったりしたんだろうか。
「そしたら今度はあいつ、おにぃの彼女が本当におにぃにとって相応しいかどうか、試せって言ってきて。私もおにぃの彼女に文句を言われたことあってムカついたことあったし、軽い気持ちで彼女と会ってる時に呼び出したりしちゃったんだよね」
「……え?」
「それ、実はずっと謝りたかったんだ、ごめん。簡単にあいつの口車にのせられて、おにぃの邪魔しちゃったから」
「そ、そうだったんだ……でも、多分久瑠実がそういうことしなくても、別れていたと思うから気にしないでいいよ」
「うん……ありがとう」
僕があの頃、彼女より久瑠実を優先していた事実はなくならない。
そうでなければ、彼女たちもきっと、離れていかなかった。
「それでね、大学に入ってからは、今度はおにぃがこのままだと、お泊りなんて許して貰えないぞって言われて。やっと今の彼氏と出会えて、舞い上がってた時だったからさ。おにぃの依存先、じゃない拠り所をあいつにするのに、協力したの」
ものの見事に、僕は二人の思い描いた通りに落ち着いたということだろうか。
「まあとにかく、あいつがおにぃを想っていた期間は、おっそろしく長いの。」
「そうみたいだね」
「妹の私が言うのもなんだけど、おにぃがシスコンだってことをとことん利用して、私とおにぃの信頼勝ち取って、それを利用して、最終的にはおにぃを攻略しちゃったわけよ」
「凄い執着だね」
「でしょ」
僕が長く、久瑠実を想っていたみたいに。
僕も瑠偉くんからずっと、長く想われていたんだ。
そんな想われ方を嬉しいと思うばかりの僕と、久瑠実は兄妹だ。
どうやら久瑠実も、そんな執着をされたいと羨ましく思うのだろう。
だから、三年の交際期間が「短い」のだ。
「でも、それとこれは話が別だよ」
「えええ!なんで!?」
「久瑠実がいつかは結婚したい相手なら、同棲はやめたほうがいいよ。ずっと一緒に住むだけで、結婚しなくても満足する相手だったら、反対しないけど。結婚はタイミングだから、そのタイミングを外す覚悟で、つまり今の彼氏と結婚できなくてもいいなら、同棲してもいい」
「……うん、わかった。もう少し、考える」
完全には納得しなかったようだけど、久瑠実はこくりと頷いた。
「ところで、久瑠実の彼氏と瑠偉くんって、知り合いなの?」
「元々は知り合いじゃないけど、この前おにぃの彼氏って紹介したから、連絡先は知ってる程度かな」
「そうなんだ」
その後、リビングで寝てしまいそうな久瑠実を起こして部屋まで連れて行った。
直ぐに寝入った可愛い寝顔に「おやすみ」と小さく声を掛けて、部屋を出る。
うーん、僕もそろそろ覚悟を決めなきゃな。
シスコン男の攻略をじっくりと練った瑠偉くんは、最後の仕上げ段階に入ったのだろう。
同棲に頷かない僕を、うんと言わせる方法。
久瑠実がこの家からいなくなれば、僕がなんの未練もなくなることを、瑠偉くんは知っているのだ。
「さすが瑠偉くんだなぁ」
僕が知らないうちに、愛しい人を焦らせてしまったのかもしれない。
「今回ばかりは、久瑠実とは関係なく、瑠偉くんと一緒にいたいって言わなきゃ」
喜んでくれれば、いいけれど。
瑠偉くんの笑顔を思い浮かべながら、僕はスマホを手にしたのだった。
~完~
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