蹴落とされた令嬢は村人Aと結婚しました。

イセヤ レキ

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「お前が犯した罪は重いっ!!」
その日私は、陛下の御前で兵士に取り押さえられていた。
「お前の歌は、瀕死の魔物にさえ活力を与え、甦らせてしまう……悪の力だ。よって、二度と声を発する事のない様に喉を潰し、舌を切ろう」

冷たい表情で陛下は私に告げた。

私の婚約者であった第一王子曰く、国が時間と金を注ぎ込んでやっとの事で捕らえた古竜が、私の歌で息を吹き返したように元気になり、逃げ去ってしまったのだという。

その日まで私は、歌で人間ひとを癒やす神子扱いだった為に、いきなり180度違う態度で蔑まれどうして良いのかわからなかった。
その素晴らしい能力を遺憾なく発揮してくれ、と言われて、いつでも命令を受ければ何処にでも赴いて忠実に実行したのに。

よくよく聞けば、元気になるのが人間なら良いが、古竜含む魔物を元気にされるのは都合が悪いらしい。

私の能力は人間にしか対応していないと勝手に判断して、魔物を含む万物に活力を与えるとわかった瞬間に魔女呼ばわりだなんて、こちらとしても良い迷惑だ。

私の力が聖なる力ではなく悪の力だと言い始めたのは、恐らく第一王子の勢力と真っ向から対立する第二王子の勢力だった。私を庇ったのは両親だけで、元々貧弱だった我が家系を守ろうとしてくれる貴族はおらず、第一王子はさっさと悪の令嬢と成り下がった私を捨て婚約破棄し、直ぐ様公爵令嬢と新たに婚約を交わした。何事もなかった様に私は処刑され、舌を切られ、喉を潰されて痩せた大地に放逐された。


道端で倒れて死にそうな時に助けてくれ、私を甲斐甲斐しく看病してくれたのが、私の旦那様の村人A……クリフである。



クリフは、一目見て犯罪者であるとわかる処分を受けた私にも優しくしてくれた。そしてクリフはとても物知りだった。木の実と何かの根っこと他の何かを混ぜて擦り潰し、それを1日3回、私に飲ませた。薬だと言われても信じられない程に不味く、本当は私を毒殺しようとしているのではないかと勘繰った位だ。結局私は、クリフを信じる気持ち半分、どうにでもなれという気持ち半分で1日3回の拷問に耐え、その後3ヶ月程で無事に回復した。舌と喉が再生して普通に話せる様になった時には、本当に驚いた。

そして私が起き上がって話せる様になると、クリフは「君に僕のお嫁さんになって欲しいのだけど」と、両手いっぱいに摘んだ野バラを私に差し出しながらプロポーズをしてくれた。
その頃の私は命の恩人である以上に既にクリフの優しさに酷く心を奪われていたし、前向きな返事をしたかった。もう平民だから、両親の許可はなくとも結婚は出来る筈。けれども、自分が犯罪者である事がどうにも気になってしまい、両親と連絡が取れるまで保留にして貰った。

次の日タイミング良く届けられた手紙をクリフから受け取った私は、結局両親の快諾と後押しを貰えた。そして無事に村の外れにある小さな教会で二人きりの結婚式を細々とあげたのだ。


細々とではあるが、ウエディングドレスを見た時には卒倒しそうになった事はよく覚えている。私の目に狂いがなければ、夜露の煌めきと呼ばれる最高級の絹の生地に、偽物には見えない宝石が流れ星の様に編み込まれたデザインのもので、王妃様であってもこれ程のドレスを身に纏っていらっしゃらないのではないかと思ったからだ。

でも、クリフは「そんなに良い物は流石に買えないよ」と笑って言ってたから私の目が狂っていたらしい。お陰で気軽に着られて良かった。こんな片田舎にあんな豪華な物があったら、村を焼き払ってでも手に入れようとする強盗が出たかもしれないので心から安堵した。

ただ、その日以来クリフから必ず身に付けるように言われた指輪は一見すると何の変哲もない宝石の付いていないガラスの指輪だが、見る人が見ればかなり高価な石を削って作った結婚指輪である。本当は持ち歩きたくないのだけど、クリフがお願いするのでずっと指に嵌めている。この長閑な田舎ではガラスですと言えば皆納得してくれるのが、とても有り難かった。
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